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顔情報をQRコード化する「顔認証SQRC」――SIer/startupとの共創で本人認証が必要な領域・業界への導入拡大(教育・物流・イベント・医療…)を目指す

顔情報をQRコード化する「顔認証SQRC」――SIer/startupとの共創で本人認証が必要な領域・業界への導入拡大(教育・物流・イベント・医療…)を目指す

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世界有数の規模を誇る自動車部品メーカー・デンソー。グループ企業であるデンソーウェーブは、QRコードを開発した会社としても知られ、その高度な技術力が世界に与えた影響は計り知れない。――そんなデンソーグループがオープンイノベーションによる新たな価値の創出に向けて動き出している。

それが「DENSO OPEN INNOVATION PROJECT」(第一期応募締切:6/30)だ。デンソーグループが全社横断かつ持続的に共創に取り組み、モビリティ分野以外での価値提供を目指すプロジェクトで、募集テーマには以下の2つを掲げ、共創パートナーを募っている。


【テーマ01】地方創生

・地域の暮らしに安心を提供するテクノロジー導入を実現

<キーワード>

医療DX、遠隔診療、フレイル予防、未病、災害対応、避難情報、遠隔見守り など

・活気ある地域コミュニティを実現

<キーワード>

コミュニティ、つながり、情報連携、体験、シェアリング、コミュニケーション、イベント、教室、

商店街、動画配信、買い物支援、遠隔授業、外出誘発 など

【テーマ02】QRコード×本人認証

・1対1認証を求められる環境へ安心安全なセキュリティ導入を実現

<キーワード>

期間従業員管理、宅配受取本人確認、金融機関、入退室管理、出席管理、試験、有資格者確認、ホテル、医療情報、宅配BOX、レジャー など

TOMORUBAではプロジェクトのキーマンにインタビュー取材を実施し、デンソーグループが見据える共創のビジョンをお届けしている。前回の執行幹部 兼 研究開発センタークラウドサービス開発部長 成迫剛志氏のインタビュー(※)に続き、お話を伺ったのは【テーマ02】の「QRコード×本人認証」を担当するデンソーウェーブの3名だ。

これまで、デンソーウェーブは、株式会社DMC天童温泉・山交バス株式会社と3社で連携し、山形県天童市におけるQRコードを活用した巡回バスの実証実験を行うなど、オープンイノベーションでも複数の成果を残している。



さらに、QRコード分野における卓越した技術力は他の追随を許さず、数々の独自技術を保有。今回のプロジェクトでも、顔情報をQRコード化して本人認証を行う「顔認証SQRC」を用いた共創を目指している。

独自技術である顔認証SQRCとは、一体どのような技術なのだろうか。そして、その活用がどのようなイノベーションを可能にするのだろうか。顔認証SQRCの開発やマーケティングを担うデンソーウェーブのメンバーに話を聞いた。

※関連記事:【OIプロジェクト始動!】執行幹部・成迫氏に聞く。数多のイノベーションを生み出し続けてきたデンソーが見据える先とは?

オフライン環境でも生体認証が可能――デンソーウェーブの独自技術「顔認証SQRC」を活用した共創

――まず、初めにデンソーウェーブさんが「DENSO OPEN INNOVATION PROJECT」への参画を決めた理由や狙いについてお聞かせください。

澤出氏 : 昨今、セキュリティなどの分野で生体認証システムが注目を集め、市場規模も拡大が続いています。一方で、生体認証に用いる識別データは、個人情報保護法における個人情報(個人識別符号)に該当するため、情報の取り扱いに苦慮する企業が増えています。

そうした課題に加え、独自技術「顔認証SQRC」を用いることで、安心・安全な生体認証の拡大や、日常における様々なシーンでの顔認証の活用・利便性の向上に繋げられるのでは、というのがプロジェクト参画の狙いです。


▲株式会社デンソーウェーブ 東京支社 セールス・マーケティング統括本部 マーケティング部 プロジェクト推進1室 澤出 華奈 氏

宮崎氏 : 顔認証SQRCは、顔の特徴点の情報をQRコード化して、本人認証に用いるソリューションです。ネットワークを介せずに本人認証が可能なため、顔認証用のサーバやデータベースが不要で、企業が個人情報を保持する必要もありません。

また、オフライン環境で利用できるため、災害や通信障害といったトラブルにも強く、従来の顔認証システムよりも即時に利用でき、簡便な本人認証が可能になります。


▲株式会社デンソーウェーブ 東京支社 セールス・マーケティング統括本部 マーケティング部 営業企画部 企画1室 企画1課 宮崎 龍太郎 氏

――これまで顔認証SQRCは、どのようなケースで活用されてきたのでしょうか。

澤出氏 : 一例としては、2019年に鹿児島銀行様と行った「キャッシュカードレス」の実証実験事例です。このときには、顔認証SQRCをATM取引時の本人認証に活用しています。鹿児島銀行様のお客様の顔を顔認証SQRCでQRコード化し、 従来はキャッシュカードで行っていた本人認証をQRコードに代替しました。

そのほか、建設現場の入退場管理にも活用されています。建設現場には、一定期間のみ作業に参加する、期間従業員が多いです。しかも、期間従業員は入れ替わりも激しいため、一人ひとり生体情報を登録・管理するのは現実的に困難です。その点、顔認証SQRCであれば、紙に印刷したQRコードを配布するだけで入退場管理ができますし、個人情報の取り扱いに関するリスクも低減できます。

――共創先からの顔認証SQRCへの評価はいかがでしょうか。

澤出氏 : 企業側が個人情報を保持しなくてよいことに高い評価をいただいています。「お客様自身が紙やスマホで個人情報を持ち歩ける」という点のメリットは大きいようです。また、通信環境の悪い場所でも生体認証を導入できる点にも評価が高いですね。


▲顔認証に利用する顔の特徴量をSQRCの非公開部に格納し、認証時のマスターデータとして利用。専用の顔認証用サーバ/DBを必要としないオフライン環境で1対1認証が行える本人確認システム。

イベント、オフィス入退、教育、無人機への組み込み…本人認証が必要な領域・業界への導入拡大を目指す

――今回のプロジェクトでは、顔認証 SQRCを活用して、どのような共創を目指すのでしょうか。

澤出氏 : 本人認証が必要な幅広いシーンに顔認証SQRCを届けたいです。例えば、教育業界ならば試験前の本人確認や出席管理、物流業界であれば宅配BOXや商品受け取り時の本人確認、イベント業界であれば会場への入退場管理など、顔認証SQRCの強みを活かせるシチュエーションは数多いです。

これまでデンソーグループではものづくりを主体としてビジネスを行ってきましたが、この顔認証SQRCに関しては、弊社だけのお客様接点では限りがある為、パートナー様と連携しながら、顔認証SQRCの適用領域の拡大に取り組みたいと考えています。


▲活用シーンイメージ

――「本人認証が必要なシーン」というと、実に様々な活用ケースが想定できますね。

谷藤氏 : はい。私としては、厳格な入退場管理が求められるシーンにも活用できるのではないかと思っています。

宮崎氏 : 私は医療分野への活用に可能性を感じています。医療情報は機微性の高い個人情報ですが、顔認証SQRCであればセキュリティと簡便さを兼ね備えた本人確認が可能なため、利便性高くご活用いただけるはずです。具体的には、ワクチンパスポートや薬剤の受け渡し時の本人確認などへの活用を想定しています。

求めているのは、SIerや特定業界向けにソリューションを展開しているスタートアップ。顔認証SQRC 技術を用いてパートナー企業のバリューアップにも繋げてほしい

――共創パートナーに求める条件を教えてください。

谷藤氏 : 今回の共創では、顔認証SQRCの導入拡大を目指しているため、新たなサービスを共同開発するというよりは、すでに広く利用されているシステムに新機能として組み込まれる形が望ましいです。そのため、共創パートナーとしては、何らかのサービスを提供しているSIer様や、特定業界向けにサービスを提供しているスタートアップ様などを想定しています。


▲【写真右】株式会社デンソーウェーブ 東京支社 セールス・マーケティング統括本部 マーケティング部 プロジェクト推進室2課 課長 谷藤 由利 氏

スピーディーな共創が可能な顔認証SQRC――約1か月という短期間での開発・実証実験の過去実績あり。

――共創パートナーに提供できるリソースについてお聞かせください。

澤出氏 : 今回は既存のサービスとの連携を想定しているため、共創時には顔認証SQRCのライブラリ及びライセンスをご提供します。また、私や宮崎が中心となって、これまでの共創ノウハウなどもご提供しながら、取り組みをサポートさせていただきます。

宮崎氏 : 顔認証SQRCは、QRコードの読み込みや認証に関するプログラムがライブラリ化されているので、組み込みが容易で、早期のリリースが可能です。

ご利用のアプリにこの機能を組み込むのであれば、一か月もかからず開発出来るのではないでしょうか。早い段階での成果が期待できるのも、顔認証SQRCの利点ですね。



――これまでデンソーウェーブさんでは、山形県天童市でQRコードを活用した巡回バス実証実験にのぞむなど、共創による社会課題解決に取り組んできました。今回の共創でも、何らかの社会課題解決を想定しているのでしょうか。

谷藤氏 : 顔認証 SQRCにはそのポテンシャルが十分に秘められていると思います。

例えば、無人機や無人店舗への活用です。昨今、労働力不足からコンビニエンスストアが24時間営業を取り止めたり、小売店が無人店舗を設けたりといったニュースをしばしば耳にします。また、宅配ボックスも急速に普及しており、今後は高額商品の受け渡しも珍しくなくなるはずです。そうしたときに、厳格かつ簡便に本人確認できる仕組みが求められるようになるはずです。

今後、人口減少に伴う労働力不足がますます深刻になる日本において、顔認証SQRCは重要な役割を果たすのではないかと期待しています。

顔認証SQRCの多様なユースケースの可能性を見いだしていけるパートナーと出会いたい

――それでは、最後にプロジェクトへの応募を検討している企業に向けてメッセージをお願いいたします。

澤出氏 : 顔認証SQRCを広げていくためにはパートナーの力が絶対に必要だと感じています。今回のプロジェクトでは、当社だけでは成し遂げられないような取り組みを目指していますので、様々な現場の困りごとや課題を解決したい企業はぜひご応募ください。

宮崎氏 : 顔認証は複雑なシステムと思われがちなのですが、今回のプロジェクトでは「顔認証って、こんなに簡単に使えるんだ」と多くの方に知ってもらえる機会にしたいです。技術的な問題については、私がしっかりサポートさせていただきますので、共創を通じて、新しいニーズを発掘していきましょう。

谷藤氏 : 刺激的な気付きを与えてくれるようなパートナーにぜひ出会いたいですね。「顔認証って、実はこんなシーンにも使えるんだ」という気付きを与えてくれるようなパートナーとぜひご一緒したいです。

取材後記

新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ危機――。昨今、社会の不確実性は急速に高まり、企業にも危機を見据えた備えが求められている。「個人情報の保有が不要」「災害時・ネットワーク遮断時にも利用可能」といった特徴を持つ顔認証SQRCは、リスクとの共生が避けられない現在の社会にふさわしい技術であり、イノベーションを起こすトリガーにもなり得るだろう。教育、物流、イベント、教育など、デンソーウェーブが想定する業界以外にも、顔認証SQRCが効果を発揮する場面も多いのではないだろうか。

DENSO OPEN INNOVATION PROJECTの募集はすでに開始されている。詳細な応募要項は以下のURLで確認できる。先行きの見通しが立たない、「VUCA」とも呼ばれる時代におけるイノベーションを模索する企業にとって、DENSO OPEN INNOVATION PROJECTはまたとない機会となるだろう。応募をぜひおすすめする。


「DENSO OPEN INNOVATION PROJECT」(第一期応募締切:6/30)

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太、撮影:加藤武俊)

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