アグリバイオベンチャーの「グランドグリーン」 | 総額5億円の資金調達、ゲノム編集共同研究開発サービスを本格的に開始
アグリバイオベンチャーであるグランドグリーン株式会社は、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社、Beyond Next Ventures 株式会社、静岡キャピタル株式会社(あいぎん未来創造ファンド4号投資事業有限責任組合、および静岡キャピタル8号投資事業有限責任組合)、その他個人投資家1名を引受先とした第三者割当増資により、シリーズBラウンドで約5億円の資金調達を実施した。シードラウンド以来の累計調達額は約8.3億円となる。
膨大な時間とコストがかかる植物育種に独自の技術開発で挑む
グランドグリーンは次世代の農・食を創造する、研究開発型のアグリバイオスタートアップだ。2017年4月に名古屋大学発ベンチャーとして創業した。一般に植物の育種には、短くても5年~10年という膨大な時間とコストがかかると言われている。開発期間を大幅に短縮することが期待されるゲノム編集技術は、医薬などを中心に様々な分野で活用が進んでいる。一方で、植物分野におけるゲノム編集は活用できる作物や品種が少ないことなどがグローバル共通の課題でもある。
グランドグリーンでは創業当初より、あらゆる作物・品種でゲノム編集技術を利用可能にするための標準技術化に取り組んできた。2021年にトマト市販エリート品種での概念実証を終え、2022年よりゲノム編集共同研究開発サービスを本格的に開始しているという。
共同開発 開発サービス実施フロー(例)
※ゲノム編集共同研究開発サービスの詳細はコチラより。
独自開発した作物のゲノム編集プラットフォーム技術(汎用的デリバリー技術「gene App™」、ゲノム編集kit「3GE™ (triple GE)」、ゲノミクス等を含む)を用いて、種苗会社や食品会社等を含む5社とそれぞれ共同開発を行っている。戦略策定からゲノム編集の実施、官庁への届け出データ取得まで、一気通貫のサービスを提供する。
種苗から新たな価値を生み出し、農業と食を通じた社会への提供を目指す
激変する地球環境に適応しながら、持続可能な発展を続けるため、よりスピーディに、より効率の良い種や苗を開発していくことが求められている。トマトに加えてダイズ、エゴマなどの実用作物品種においてゲノム編集の概念実証を達成しており、2024年までにゲノム編集品種の上市を目指している。
併せて、2022年度から科学技術振興機構(JST)産学競争プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)「食と先端技術共創コンソーシアム」への参画が決定した。共同研究先である名古屋大学とともに、ダイズ実用品種におけるゲノム編集技術をさらに安定・高効率な技術へと発展させるとともに、機能性成分を高含有するダイズ実用品種の作出に取り組むという。
今回の資金調達により、本開発の強化、および適用作物品種の更なる拡張と共同開発パイプラインを拡大することにより、食糧問題はもちろん、農薬や化学肥料など環境負担の低い種苗の開発や、バイオ燃料等の代替エネルギー開発など、種苗から新たな価値を生み出し、農業と食を通じた社会への提供を目指していく考えだ。
ゲノム編集技術について 〜新種苗の開発期間を1/3に短縮〜
ゲノム編集技術は、生物のゲノム中の狙った場所に変化を誘発することで、ピンポイントに特徴を変える技術だ。自然界でも通常発生する変化の場合は、遺伝子組換え作物とは異なり、規制の対象とはなっていない(日本では任意の届出が求められている)。
ただし、作物や品種によってはゲノム編集技術が適用できないことが多く、当初期待されたような迅速な新品種開発にはつながっていなかったそうだ。今回、当社が開発したプラットフォーム技術は、市販されている様々なエリート品種に直接ゲノム編集を行うことを可能にする。これにより、新種苗の開発にかかる期間を大幅に短縮(半年〜1年でゲノム編集種子を取得可能)するとともに、エリート品種の多くの優れた特徴はそのままに、ピンポイントに改良を行うことができる。
出資者からのコメント
■東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 マネージャー古川圭祐氏
『グランドグリーン社は世界で戦う可能性を秘めたアグリバイオベンチャーです。難しいとされている植物のゲノム編集に革新をもたらし、作物の収量や栄養価の増加など様々な効果が期待されています。汎用的デリバリー技術「gene App™」やオリジナルゲノム編集kit「3GE(triple GE)™」などの同社の技術力の高さ、またメンバーの事業に対する熱意を感じ、この度の投資に至りました。持続可能な食料生産及び農業の実現に向けて、今後グランドグリーン社と共に貢献できることに期待しております。』
■Beyond Next Ventures株式会社 マネージャー金丸将宏氏
『2018年の創業初期から関わらせていただく中で、グランドグリーンの技術の可能性はますます高まっています。同社が開発する植物向けのゲノム編集技術によって、膨大な時間と費用のかかる農作物の新品種開発が大きく効率化されます。さらに、食農分野のみならず、環境や医療などの領域においても大きな変革を起こし、様々な社会課題を解決するプラットフォームになると確信しています。今後も引き続き同社の成長をサポートしてまいります。』
代表者からのコメント
■グランドグリーン株式会社 代表取締役 丹羽優喜氏
『この度の資金調達にご協力下さった皆様に、心から感謝申し上げます。
当社は、先端テクノロジーで植物のポテンシャルを最大限引き出し、世界を幸せにする、というミッションを共有するメンバーが集い、事業を進めて参りました。引き続きこの理念に共感していただいた投資家、共同開発パートナー、生産者や農業と食に関わるあらゆるパートナーの方々とともに、より良い作物を、より持続可能な形で提供するべく、事業を進化させて参ります。』
グランドグリーンとは
次世代の農・食を創造する、研究開発型のアグリバイオスタートアップ。2017年4月に名古屋大学発ベンチャーとして創業し、2021年1月にJ-Startup CENTRALに選定された。「Envision Future Plants. さあ、未来の子どもたちのために未来の植物を描こう。」のスローガンの下、スピーディな種苗開発を実現し、激変する環境に対応した新たな農業・食を目指している。
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