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今年はアグリ、電子部品、メタバースの3領域が受賞。「FASTAR 4th DEMODAY」注目のスタートアップ3社に迫る

今年はアグリ、電子部品、メタバースの3領域が受賞。「FASTAR 4th DEMODAY」注目のスタートアップ3社に迫る

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2月22日、中小機構(※)の主催、サムライインキュベートが支援するアクセラレーション事業「FASTAR(ファスター)」の第4期 DEMODAYがオンラインで開催された。「FASTAR」は中小機構の専門家や外部専門家が伴走支援し、資金調達や事業提携に向けた成長の加速化を目指すプログラム。都市部に限らず、地方を含む全国のスタートアップや起業家を対象に実施している。

第4期となる今回は、先端テクノロジーや独創的なサービスを有するスタートアップ8社が参加し、プログラムの成果を発表するDEMODAYもフルオンラインで開催された。多くの視聴者が見守るなか、次の8社が磨きこんだビジネスプランを発表した。


審査員は次の3名が担当し、「経産新規室賞」「JR東日本スタートアップ賞」「サムライインキュベート賞」が用意された。※主催者である中小機構は、企業と共に事業計画を策定支援した立場のため、賞は設定していません。

<審査員>

■経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室 室長補佐 岡本英樹 氏

■JR東日本スタートアップ株式会社 代表取締役社長 柴田裕 氏

■株式会社サムライインキュベート 代表取締役 榊原健太郎 氏

(※第4期「FASTAR」は、株式会社サムライインキュベートが運営)


▲審査員3名と、ピッチを行ったスタートアップ8社の代表者

本記事では、受賞3社のプレゼンのサマリーと、DEMODAY直後の受賞者インタビューの内容をお届けする。受賞者が語る「FASTAR」の魅力とは?本プログラムを通じてどのような事業成長を成しえたのか?今後の展望とは?――3社の代表に話を聞いた。

※中小機構:国の中小企業政策の中核的な実施機関として、起業・創業期から成長期、成熟期に至るまで、企業の成長ステージに合わせた幅広い支援メニューを提供する独立行政法人。正式名称は、独立行政法人中小企業基盤整備機構。

“未活用農産物の粉末化”の株式会社エーエスピー、事業戦略を整理し「経産新規室賞」受賞

「経産新規室賞」を受賞したのは、株式会社エーエスピー(所在地:大阪府)だ。出荷前に畑で廃棄される農作物や流通過程で発生する食品の端材を集め、粉末化して販売する事業を展開している。粉末の特徴は、混ぜることによる「見映え(色)」と、皮・種も使うことで得られる「機能性」だ。これらにより商品の魅力度を高めている。



現在は、この粉末を使った料理人とのレシピ開発や、百貨店とのワークショップ開催などに取り組んでいる。また、防災食としての活用も見込んで商品開発を進めているそうだ。さらに、青山学院大学や帯広畜産大学と共同研究も開始し、商品としての付加価値向上などを目指す。新しい粉もん文化で、「規格外品」や「フードロス」という言葉をなくしていく構想だという。――DEMODAY直後、代表の林氏に話を聞いた。


――「FASTAR」を知ったきっかけと、参加を決めた理由について教えてください。

林氏: 応募のきっかけは、中小機構の方からの紹介です。応募前、別のビジネスコンテストで受賞をしたのですが、そこで事業を進めるにあたり「資金調達や資本政策を本格的に検討しよう」という話になりました。事業計画をつくり込むのであれば、伴走支援をしていただいた方がいいだろうと考え、本プログラムに応募をすることにしたのです。


▲株式会社エーエスピー 代表取締役 林 直樹 氏

――資金調達に向けた事業計画・資本政策づくりが目的だったと。実際、「FASTAR」に参加してみて得られたメリットは?

林氏: 「FASTAR」に参加する前、事業の広がりを期待できる機会にはすべて飛びつき、走りながら複数のプロジェクトをこなしていました。その結果、事業が拡散するという状況に陥ってしまったのです。そうした中、「FASTAR」に参加することで、事業の整理をすることができました。これが、もっとも大きなメリットだったと感じています。

事業戦略から逆算して、個々の案件の優先順位づけを行い、事業を絞り込みました。その結果として、事業としての伝わりやすさ、分かりやすさを得ました。経済産業省の補助金事業にも採択されるという成果にもつなげることができましたね。

――「FASTAR」をきっかけに、具体的にどのような事業計画の変化が生まれたのでしょうか。

林氏: もともとBtoBに特化していたのですが、メンターから「BtoCの可能性もあるのでは」というアドバイスをいただきました。議論をした結果、BtoBの座組をつくりながら、BtoCに参入するという流れをつくることに。これによって、事業としての深みを加えることができたと思っています。

――「FASTAR」から提携先を紹介してもらったりもしたのですか。

林氏: はい。そのひとつが本日の発表でもご紹介した、青山学院大学さんです。「FASTAR」経由でご紹介いただき、継続的な産学連携の話へと発展しています。もうひとつは、提携先ではないですが、日本政策金融公庫さんです。担当者をご紹介いただいたことに加え、金融機関向け事業計画のつくり方についてもアドバイスをいただきました。飛び込みで行くこともできますが、ご紹介いただいたほうがより熱心な方と出会うことができます。そういった意味でも、よかったと感じています。


――「FASTAR」のプログラム期間はこれで終了ですが、練り上げた計画をもとに、今後、どのように事業を展開していく予定ですか。

林氏: 未活用農作物を活用していくにあたり、地域ごとの様々な企業と連携していく必要があります。ご紹介などによって個々につながることも可能ですが、どうしても点と点でのつながりにとどまってしまいます。地域全体を取りまとめていこうとした場合、自治体との連携は必須です。今回のプログラムを通じて、中小機構や経済産業省と関わりを持つことができました。

自治体との連携を考えた場合、これは非常に大きな後押しになります。先日、自治体の皆さんが集まる場でピッチを行いましたが、以前より具体的な話ができるようになりました。理解の速度もあがったと感じています。すべてのフードロスを、私たち1社だけで解決できるとは思っていません。参加いただく仲間を増やしながら、今後も本事業を前進させていきたいです。

――最後に「FASTAR」への参加を検討する企業にメッセージをお願いします。

林氏: 「FASTAR」に参加する場合、資本政策のための事業計画のブラッシュアップが主な目的になるとは思いますが、事業の整理などを通じて自社の強みを明確化できる機会にもなります。もし、今、悩まれているのであれば、飛び込んでみるとスッキリするのではないでしょうか。

“独自開発IHリフロー技術”の株式会社ワンダーフューチャーコーポレーション、露出機会を増やし「JR東日本スタートアップ賞」受賞

「JR東日本スタートアップ賞」を獲得したのは、株式会社ワンダーフューチャーコーポレーション(所在地:東京都千代田区)だ。同社は電子回路の実装に、IH(電磁誘導加熱)を利用することで、スポット加熱を実現する独自のIHリフロー技術を持つ。従来のはんだ付けと比較し、瞬時かつダメージレスで、特定箇所に歩留まり100%の実装ができるという。本技術を基軸に、IHリフロー装置の販売をするほか、IHリフロー装置を活用したものづくり事業、IH‐EMSも展開する。



すでにIHリフロー技術を使って形にした、FDS(Flexible Digital Signage)という3D形状のサイネージも開発、出荷も開始したという。さらに、株主でもあるサカタインクス株式会社(印刷インク大手)およびシークス株式会社(電子基板の受託製造日本最大手)との3社コラボレーションで、IHリフローの普及・売上・収益の確保を狙うという。――インタビューは同社代表の福田氏に実施。DEMODAYを終えてみての感想を伺った。


――「FASTAR」を知ったきっかけと、参加を決めた理由からお聞きしたいです。

福田氏: IPOやM&Aを視野に入れた際、CFO(Chief Financial Officer)に参画してもらう必要がありますが、当社の場合だと、まだCFOを雇えるほどのフェーズではありません。どうしようか検討していたときに、「FASTAR」のことを知りました。「FASTAR」では、証券会社大手のOBがメンターについてくれるなど、財務面での支援体制が整っています。まさに、当社にとって「渡りに船」だったのです。


▲株式会社ワンダーフューチャーコーポレーション 代表取締役社長 福田 光樹 氏

――「FASTAR」に参加することで、どのような変化がありましたか。参加することで得られたメリットについてもお聞かせください。

福田氏: 当社のIHリフローという技術は、多くの方がご存知ありません。なので、まずは知ってもらう必要があります。そのために、展示会に出展したりベンチャーピッチに登壇したりと、露出を増やす活動を続けてきました。一方で、知名度が高まってきた際、お客さまの求める要求レベルに技術が達していなければ、機会を逃してしまいます。ですから、助成金をいただきながら技術開発も進めています。会社を維持・拡大するためのアクセラと、技術を深めるためのアクセラ、両方を同時に進めながら事業成長を図っている状況なのです。

「FASTAR」は、このどちらかというと会社の維持・拡大のためのアクセラに該当します。参加することで、事業の整理ができたり、次のチャンスをもらえたり、次のアピールにつながる事業計画が策定できたり。こうした点が「FASTAR」に参加して得られた効用だと思いますね。

――どのようなアドバイスで、事業の整理ができたのですか。

福田氏: ファイブフォース分析のようなフレームワークを使って、色々とアドバイスをいただきました。私自身、フレームワークはこれまであまり用いてこなかったのですが、真面目に取り組んでみると、足りない部分が明確になって心に刺さる部分がありましたね。

また、2名のメンターについてもらったのですが、その方たちの人脈を通じて、様々な方とつないでいただきました。そうした紹介が、当社の普及活動の一助になったと思います。

――1年を振り返ってみて、「FASTAR」はどのようなフェーズの企業にマッチするプログラムだとお感じですか。

福田氏: VCから資金調達すると、必ず数年後のイグジットの方法を聞かれます。そのときに、必ずしも焦ってCFOを準備する必要はないと思うんですね。「FASTAR」に参加すればいいのです。「上場を狙いたいけれども、M&Aの可能性もあるし…」と迷っている段階の企業には、「FASTAR」をお勧めします。

――今後の展望は、どのように考えておられますか。

福田氏: IHリフロー技術はまだ知られていません。この技術を知ってもらうために、IHリフロー技術を活かしたプロダクトを自社で製造しました。それが今回、JR東日本スタートアップさんに興味を持っていただけたFDS(Flexible Digital Signage)です。まずはこのプロダクトを皆さんに知っていただくことで、その根底にあるIHリフロー技術を世の中に広げていきたいと考えています。


“リアル版メタバース『GENCHI』”の株式会社toraru、数値計画の強化で「サムライインキュベート賞」受賞

「サムライインキュベート賞」は、株式会社toraru(所在地:兵庫県)が受賞。同社はブラウザさえあれば、世界中のアバターワーカーが手足となって、自身の代わりに動き自らの代わりになってくれるメタバースサービス『GENCHI』を展開している。アバターワーカーとは、現地の付近に住む業務委託者(人)だ。ニーズの高い展示会用途を重視しながらサービス提供を始めているという。



実際に、アメリカで開催された「CES2022」にも実装。離れた場所から遠隔指示で、現地の視察ができる体験を提供した。同社は展示会を皮切りに、リサーチ調査、見学・下見などにも広げていく考えだ。将来的には現地をよりリアルに感じられるよう、触覚・嗅覚・味覚などを伝達する技術提携も進めていく方針だという。――プログラムを終えての所感を、代表の西口氏に聞いた。

――「FASTAR」を知ったきっかけと、参加を決めた理由をお伺いしたいです。

西口氏: きっかけは、起業家の友人がFacebookで共有していた記事でした。資金調達のサポートなどが支援内容として書いてあり、自分たちにちょうどよいプログラムだと思ったんです。当時はファイナンス面が直近の課題だったので、すぐに応募を決めました。


▲株式会社toraru 代表取締役 西口潤氏

――具体的にどのようなサポートを受けられたのですか。

西口氏: 当社の場合、公認会計士であるメンターに支援してもらいました。数値計画を立てるうえで、「どういう調達を他社はしている」という事例を紹介してもらったり、「こういった計画にしたほうがいい」というアドバイスをもらえたりしたことは、非常にありがたかったですね。ピッチに有効な計画と資金を借りるための計画、それぞれのポイントも教えていただきました。こうした計画を策定できたことは、「FASTAR」のメンターのおかげだったと思います。

――サポートの手厚さはどうでしたか。

西口氏: 当社のメンバーの1人のように熱心に、夜の22時頃まで議論につき合っていただいたこともありました。事業の理解にも時間をかけていただきましたし、計画段階ではさらに多くの時間を割いて計画案を作成いただいたと思います。先日は、全員『GENCHI』を使ったリアルメタバースで参加する展示会を、福島第一原発のある街で主催したのですが、そのときにも、「FASTAR」のメンターが参加してくださりました。非常に熱心にご支援いただけたと感じています。

――過去のプログラム参加企業からは、「FASTAR」のメンターは“手厳しい”という感想もありました。

西口氏: 手厳しいというほどではなかったですよ(笑)でも、DEMODAYのピッチ直後に、メンターからフィードバックのメールをいただいたのですが、「時間切れでしたね」や「せっかくの質問なのに、パスを撃ち落として終わっている。もう少し広がりがあるように説明しないと」といった内容でした。「まさに」という内容ばかりで、耳が痛かったですね(笑)。それでも、手厳しいというよりは、幅広く知識をお持ちなので、理解いただいたうえでの指摘だと思います。

――今後の展望はどうお考えですか。

西口氏: 「FASTAR」で作成した事業計画や数値計画を達成することが、まず取り組むべきことだと思っています。海外展開も本格化する予定で、「日本で広げてから海外へ」ではなく、「最初から海外で」という展開の仕方を検討しています。とくに『GENCHI』は特性上、距離が離れれば離れるほど価値が高まります。そのサービスの特性が活きるよう、グローバルで事業を展開する予定です。世界中に仮想交通網を張り巡らせる――これを実現していきたいですね。

――最後に「FASTAR」への参加を検討する企業にメッセージをお願いします。

西口氏: 「FASTAR」は各企業の特性を客観的に分析したうえで、最適な支援担当者をつけてくれます。もし自社に足りない部分があると感じているのなら、「FASTAR」の伴走支援を受けてみてはどうでしょうか。リソースの足りない部分を補ってもらえ、次のステージに進むための道筋をつくることができると思います。

取材後記

“伴走メンタリング”による事業計画策定支援を最大の特徴とする「FASTAR」。受賞者へのインタビューにおいても、「事業計画や資本政策立案の支援が非常に役立った」という声が多かった。実際、これまで29社が「FASTAR」のプログラムに参加したというが、そのうち16社が資金調達に成功。合計すると、38.6億円にも及ぶ調達額なのだという。こうした点からも、資金調達を検討するスタートアップにとって、有用なプログラムになるはずだ。第4期はこれで終了となるが、第5期も予定されているという。興味がある企業は、「FASTAR」で加速支援を受けてみてはどうだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子)

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