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【10/8 応募締切】地域版SOIP<関西編>説明会レポート!―サッカー・ラグビー・学生スポーツ団体のホストチームが抱える課題と思い描く未来

【10/8 応募締切】地域版SOIP<関西編>説明会レポート!―サッカー・ラグビー・学生スポーツ団体のホストチームが抱える課題と思い描く未来

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地域に根差したスポーツチームと共に、ビジネスアイデアの社会実装を目指す「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD(ビジネスビルド)」――。スポーツとあらゆる産業の共創により、新たなビジネスを生み出すことを目的として、スポーツ庁が主催するアクセラレーションプログラムだ。

本年度は、北海道、関西、中国、沖縄の全国4つのエリアで、プログラムを同時に開催する。各エリアに根差すスポーツチームが、共創したいテーマを提示し、全国からビジネスアイデアを募る。選ばれた企業は2日間にわたって催されるビジネスビルドで、ビジネスアイデアをブラッシュアップし、事業の骨組みまでを創る。ビジネスビルドで採択された企業は、各スポーツチームと共にインキュベーションへと進む流れだ。

11/5(金)・11/6(土)に「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD KANSAI」が開催される関西エリアからは、「ガンバ大阪(サッカー)」「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(ラグビー)」「関西学院大学 競技スポーツ局(学生スポーツ全般)」の3チーム・団体が参戦。去る9月27日、各チームの代表者がテーマについて説明する、オンライン説明会が開催された。本記事では、その説明会の様子をレポートする。

※関連記事:【地域版SOIPに迫る<関西編>】万博に向けて盛り上がる「関西」からは、サッカー・ラグビーと学生スポーツ団体が参戦!各チームが提示する共創テーマとは? 

【ガンバ大阪】 「スタジアムから地域に広がる、新たなエンタメ体験」

ガンバ大阪からは、営業部 部長の伊藤慎次氏が登壇。伊藤氏はクラブの特徴を次のように紹介する。今年10月に30周年を迎えるガンバ大阪は、2005年のリーグ優勝を契機に認知度が急上昇。当時、ホームスタジアムに課題感を持っていたことから、2016年には4万人収容の新スタジアム(Panasonic Stadium Suita)を募金だけで完成させた。

クラブのホームタウンは、北大阪エリアの14市3町(約300万人)だが、「地元から選手を育てよう」という考えのもと、選手の育成に注力している。中でも伊藤氏がクラブの中枢だと強調するのは、ガンバ大阪のアカデミー(下部組織)だ。地元の青少年を小・中学校から高校にわたって育成し、トップ(Jリーガー)にまで育て上げる。さらに海外へと羽ばたかせ、実力をつけてもらうのだという。代表的な選手には、現在も海外で活躍する堂安 律選手などがいる。

また、地域貢献活動にも力を入れており、コロナ禍前は年間171回にものぼる地域活動を実施してきた。しかしコロナ禍においては、残念ながら年間10回以下にとどまっていると明かす。


コロナ前の2019シーズン平均入場者数は、2万7708人。これはJリーグの中で第3位の入場者数である。翌年の2020シーズンは3万人の集客を目指していたが、コロナ禍により7602人にまで落ち込んだ。観客動員のベースとなっているのはファンクラブで、個人・法人含めて約1万人の年間チケットホルダーがいる。集客にあたっては、デジタルマーケティングを積極的に活用。特に登録数20.5万人を誇る、ガンバ大阪のJリーグIDはDMの開封率も高く、効果的なのだという。

そんなガンバ大阪は、募集テーマとして次の3つを提示する。

(1)クラブのリソースを活用した地域の社会課題解決、SDGsの実現

(2)スタジアムと万博記念公園における、新たな移動体験の創出とスポーツパーク化

(3)テクノロジーを活用した選手のコンディション管理

この3つを設定した背景や課題について、伊藤氏は次のように説明する。まず1つ目に関して、サッカーの試合日とされるマッチデーは年間25日程度しかない。残る期間においても稼働させたいという。例えば、クラブのリソースを活用しながら、外部企業などと連携をして、SDGsの推進活動を行うといったことを想定している。

SDGsに関しては、すでに選手のユニフォームにSDGsロゴを付けたり、地域貢献活動に取り組んだり、エコ・スタジアム化を進めたりと様々な取り組みを進めている。今回、それをより拡充していくために、外部からのアイデアに期待しているという。


2つ目に関しては、スタジアム最寄駅(大阪モノレール「万博記念公園駅」)からスタジアムまでの移動体験向上を目指すものだ。過去には、途中でARクイズや音楽、抽選会といったイベントを開催したこともあるが、さらなる可能性を探りたいとのこと。加えて、大阪モノレールだけではなく、JRや阪急 近隣駅からの移動についても、新たなモビリティサービスを導入するといった方法で、移動体験の向上を図りたいという。


また、スタジアムだけではなく万博記念公園を含めた、スポーツパーク化も目指している。サッカーにとどまることなく「スポーツ全般」という括りで、新しい価値を創出するものだ。他チームでは、ボルダリング施設、バスケットコート、ランニングコース、スケボー広場などを近隣に設けている例がある。そういったものを導入することで、様々な世代が集う地域交流拠点として、スタジアムを365日稼働させていきたい考えだ。

最後に3つ目だが、現時点ではGPSの取得、再生医療の活用、練習場の定点カメラによる映像管理などを実施。様々な手法を用いて選手のコンディション管理を行ってきたが、他の可能性も探っていきたいそうだ。


【関西学院大学 競技スポーツ局】 「可能性を秘めた学生スポーツの選手・環境強化」

続いて、関西学院大学 競技スポーツ局(KGAD)より堀口 直親氏が登壇。堀口氏はまず、KGADの概要から説明をスタート。KGADとは、Kwansei Gakuin University Athletic Departmentの略で、大学のミッションを「競技活動や応援活動」を通じて達成することを目標とする、大学直下の組織だという。現在、15競技20チーム、1174人が所属している。

同局は正課外教育に挑んでいくにあたり、「安全・健康」「安心・健全」「学業両立」「競技力向上」「地域連携」の5つの指標を設けているそうだ。また、学生による企画・広報チームも作り、大学スポーツを身近なものに感じてもらえるよう発信にも力を入れている。これらの活動を通して学生らに、関西学院大学が定めるコンピテンシーを身につけてもらいたい考えだ。

堀口氏は、共創にあたってのKGADの強みを次のように説明する。KGADは、プロチームや企業チームと異なり、競技の種類が多岐にわたっている。また、加盟する学生数が1174名にものぼり、大きな組織となっていることも特長だ。さらに、同窓生(卒業生)がこの活動に強い関心を示している。同学の同窓会員数は21万人を超え、国内支部88カ所、海外支部25カ所(2014年3月現在)と、非常に大きな組織なのだという。

また現在、プロチームは企業連携が一般的になっているが、大学スポーツではまだほとんど例がない。だからこそ、連携の余地が大きく、異業種が参入できる可能性も大きいのではないかと話す。加えて、大学をハブとした地域連携のプラットフォームを構築できる可能性もあるとの考えを示した。


こうした夢のある団体だが課題も多い。もっとも深刻な問題が、各チームを率いる専従の指導者の少なさだ。専従指導者不足によって、学生アスリートのモチベーションの変化や技術練習の成果などに気づけない場合も考えられる。また、学生アスリートの健康管理にも不安があると話す。現状、スポーツ選手のコンディション管理ソフト「One Tap Sports」を導入しているチームもあるが、費用面などの負担からその数は多くない。加えて、栄養管理についても「心配が尽きない」と堀口氏は懸念する。

こうした状況を踏まえ、今回は次のようなテーマを掲げる。

(1)テクノロジーを活用したチーム運営の効率化、チーム強化

(2)選手のコンディション向上・健康管理を実現する、ローコスト・サステナブルなソリューション

1つ目が、テクノロジーによる大幅な効率アップだ。新たな運営ツールを共同開発することで、専従指導者が少ない状況でも必要な指導が行き渡り、スムーズなチーム運営や戦術の構築等ができるようにしたいと話す。また、学業との両立で多忙な学生も多いため、強化ポイントなどを容易に把握でき、自主的にトレーニングを進められるようなツールを開発できれば理想だという。


2つ目は、健康面におけるサポートツールの開発だ。学生アスリートが自主的かつリアルタイムに、体調や精神状態の確認を行えたり、必要な栄養(食事)を把握できるようなサポートツールがあれば、ぜひ活用したいとのことだ。


堀口氏の説明終了後、鈴木康蔵氏(スポーツハブKANSAI スーパーバイザー)も、KGADと取り組むメリットについて次のように補足した。KGADの抱えている課題は、関西学院大学内だけにとどまるものではない。他の大学スポーツ、高校スポーツチームも同様の悩みを抱えている。したがって、KGADで共同開発したツールは、ありとあらゆる学生スポーツ団体で使える可能性がある。そうした横展開も視野に入れ、KGADとの共創をぜひ検討してほしいと呼びかけた。

【NTTドコモ レッドハリケーンズ大阪】 「変革するラグビーリーグで、新たなビジネス創出へ」

最後に、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪の広報 菊地新氏が登壇。菊地氏の説明によると、同チームはNTTドコモが保有するラグビーチームで、いわゆる企業スポーツにあたるという。54名の選手が在籍しており、多国籍なメンバー構成が特長だ。

ホームグラウンドは、ドコモ大阪南港グラウンド(大阪市住之江区)。ホストスタジアムは、長居公園内(大阪市東住吉区)に3つのスタジアムを確保している。チームスローガンは「PLAY TO INSPIRE」で、チームに関わるすべての人たちに良い影響を与えたいとの想いが込められているそうだ。2022年1月、新リーグとなる「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」が開幕するが、それにあわせてミッションやビジョンを新たに策定したという。


ビジョンには“Osaka Pride”を掲げているが、その中で「最善の努力」「最上の観戦体験」「最太のつながり」「最先端の実験場」の4つに注力していきたいと話す。特に4つ目では、スタジアムやチームを壮大な実験場として、パートナーと共にイノベーションを推進していきたいと意気込む。コミュニケーションワードは「最高の月曜日の朝を迎える」で、週末にある我々の試合を見ることで、週の初めである月曜日の朝を、気力に満ちた最高の状態で迎えてもらえるようにしたいという。

同チームが提示する、3つの募集テーマは次の通りだ。

(1)デジタル活用によるスタジアム観戦体験のアップデート

(2)新たなファン層の獲得につながるソリューション

(3)チーム・選手のIP(知的財産)やデータを活用したヘルスケアビジネスの創出

1つ目は、観戦者のリピート率向上と、エンゲージメントを高めるための新たな体験価値の提供を目的としたものだ。新リーグ開幕にともない、興行権が協会から各チームに移行する。各チームで試合運営、チケット販売、グッズの販売などを行えるようになる。そこで、NTTドコモの強みである5Gの通信技術と、5G対応の観客席、それに何らかのアイデアを掛け合わせて、来場者のエンゲージメントを高める仕組みを、共同で開発したいという。

2つ目は、新たなタッチポイントの創出を狙うもので、「無関心層には興味を、興味層には観戦を」促していくようなソリューションを見出すことが目的だ。


現時点における同チームの認知度調査を行ったところ、スポーツ界においてもラグビー界においても「存在感はまだ小さい」ことが分かった。一方で、チームの既存ファンから見ると「接点が多いと感じるチーム」だと受け止められている。また、スタジアムでの観戦理由については「好きな選手を見たいから」が42%と他チームより突出して高い。そのため、「選手個人への興味」を「チーム全体への興味」につなげていくことが課題だと話す。

菊地氏は同チームのことを、『現状はまだ何者でもないが「何者にでもなれる」可能性を秘めており、もともとのファンとの接点は非常に多い。「一度知れば興味が出てくる」ポテンシャルがある』と分析する。こうした点を踏まえ、新たなファン層の獲得につながるソリューションを一緒に開発していきたい考えだ。

3つ目は、チームをプラットフォームとし、選手のデータを活用した新たなヘルスケアビジネスの開発、地域の健康づくりを促進する新サービスの開発を目的としている。ラグビーは、大きな体格で素早く走らねばならないスポーツなので、常に体重・筋力・走力を維持する必要がある。そういったアスリートのフィジカルデータを、選手だけではなく地域住民・ファンにも還元していきたいそうだ。選手の運動・睡眠・食事といったデータを活かして、一般の人たちの健康づくりを促進するようなサービスを開発・提供したいと話す。

【基調講演】 スポーツにおける企業連携の可能性―アシックス・松下氏

最後に、株式会社アシックス 常務執行役員 松下直樹氏による基調講演の中から、企業連携の重要性や可能性について語られた部分を紹介したい。


松下氏は、昨今「共生社会の実現」が大きなポイントの1つになっていると話す。特に、パラスポーツの普及やSDGsの達成、住みやすい街づくり、バリアフリー化を、スポーツを通じて実現していくことが大事だと述べる。

また、オリンピック・パラリンピックは「“見る”スポーツ」だったが、自らも参加できる「“する”スポーツ」を推進し、一般市民の健康促進につなげていくことは、企業間連携で推進できるのではないかという。さらに、観光業界と連携して「スポーツツーリズム」の機運を醸成し、ビジネスにつなげていく必要性についても語った。

加えて松下氏は、連盟・大会の抱える課題を解決するための「課題解決型企業連携」の考え方を提示。その中で、連盟・大会の抱える課題を次のように共有する。少子高齢化・人口減少が深刻化する今、アナログな競技運営体制を見直す必要がある。審判を例に挙げると、平均日当700円とも言われ、ボランティア精神に依存している形だ。

デジタル化を進めて、運営や審判に関わる人員数の削減、時短を進めなければ、今後のスムーズな運営は見込めない。企業間連携を通じて、大会の運営全体をデジタル化し、人に頼らない体制を構築していかねばならないと述べた。

また、松下氏は多くのスポーツ団体が、運営費用の捻出に苦労しているのが実情だと続ける。企業間連携を進めることで、スポーツ団体自らがお金を稼ぐ仕組みの構築、運営体制の簡素化などが実現できるのではないかと話す。

最後に松下氏は、これから日本で開催予定の国際メガスポーツイベントの予定を紹介しながら、これらを「広く多くの方々が楽しめ、利益を享受できる形に持っていかねばならない。そのためには、様々な連携や考え方の共有が大事だ。ぜひ皆さまと共に、スポーツを盛り上げ、ビジネス化していきたい」と述べ、講演を締めくくった。

取材後記

「ガンバ大阪」「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪」「関西学院大学 競技スポーツ局」が参戦する本プログラム。同じ関西というエリアで活動をするスポーツチーム・団体ではあるが、抱える課題や構想する未来は三者三様だ。スタジアムでの実証実験、選手との共同研究、地域住民向け新サービスの共同開発など、さまざまな展開が考えうるのではないだろうか。少しでも思い描くビジネスアイデアがあれば、ぜひ「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD KANSAI」への応募を検討してほしい。応募締切は10/8(金)と迫っている。

※「ガンバ大阪」「関西学院大学 競技スポーツ局」「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪」によるプレゼンテーションの模様はアーカイブされています。より詳しい内容については以下より動画をご視聴ください。

https://youtube.com/playlist?list=PL1MhDv2xHIi1NII-H8VpZnRxrxYEEntki 

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子)

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見る者もする者も支える者も、携わるだけで一丸となることができる、究極のエンターテインメント。地域発の「スポーツ×〇〇」のビジネスで、スポーツを成長産業へ。スポーツ庁が推進する『地域版SOIP』と全国各地域でのオープンイノベーションの軌跡に迫ります。