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【10/22 応募締切】地域版SOIP<沖縄編>説明会レポート―スポーツ産業の可能性が眠る沖縄の地でサッカー、卓球、野球のホストチームが描く共創とは?

【10/22 応募締切】地域版SOIP<沖縄編>説明会レポート―スポーツ産業の可能性が眠る沖縄の地でサッカー、卓球、野球のホストチームが描く共創とは?

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地域に根差したスポーツチームと共に、ビジネスアイデアの社会実装を目指す「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD(ビジネスビルド)」――。スポーツとあらゆる産業の共創により、新たなビジネスを生み出すことを目的として、スポーツ庁が主催するアクセラレーションプログラムだ。

本年度は、北海道、関西、中国、沖縄の全国4つのエリアで、プログラムを同時に開催する。各エリアに根差すスポーツチームが、共創したいテーマを提示し、全国からビジネスアイデアを募る。選ばれた企業は2日間にわたって催されるビジネスビルドで、ビジネスアイデアをブラッシュアップし、事業の骨組みまでを創る。ビジネスビルドで採択された企業は、各スポーツチームと共にインキュベーションへと進む流れだ。

11/19(金)・11/20(土)に「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD OKINAWA」が開催される沖縄エリアのホストチームは、「FC琉球」「琉球アスティーダ 」「楽天イーグルス」の3チーム。いずれも、沖縄の地域に根付き、熱い支持を受けるプロスポーツチームだ。

去る10月7日、各チームの代表者がテーマやリソースについての発表や、沖縄のスポーツ産業を深く知る有識者らによるパネルディスカッションから構成されるオンライン説明会が開催された。本記事では、その模様をお届けする。

東アジアの中心に位置し、魅力的な文化や風土を持つ沖縄。その地におけるスポーツ産業の現在地点が明らかとなる内容だ。応募を検討している方はもちろん、沖縄のスポーツ産業に興味のある方はご一読をお勧めする。

※関連記事:【地域版SOIPに迫る<沖縄エリア編>】スポーツを“第3の産業“に―「沖縄エリア」からは、サッカー・卓球・野球が参戦!共創への想いを、各チームが力強く語る!

沖縄のスポーツ産業の可能性・課題とは?―有識者によるパネルディスカッション

説明会では、プログラムの概要説明などに先立って、沖縄のスポーツ産業を取り巻く環境やその可能性についてのパネルディスカッションが行われた。パネラーは、名古屋を拠点とするVC・株式会社MTG Venturesの藤田豪氏、「沖縄のIT番長」を称し、沖縄のスタートアップ支援に取り組む常盤木龍治氏。司会は、沖縄を拠点とするスポーツマーケティング企業・株式会社レジスタの青田美奈氏が務めた。



●テーマ①「今、沖縄のスポーツ・ヘルスケア市場がアツい理由とは?」


パネルディスカッションは、沖縄のスポーツ産業の可能性や強みについての議論からスタートした。司会の青田氏が、沖縄のスポーツ産業の強みについて尋ねると、常盤木氏は「シンプルに、強いチームが多いことです」と答える。

今回のプログラムにホストチームとして参加する琉球アスティーダは、2020年に卓球のプロリーグ・Tリーグを制し、日本一のプロ卓球チームとなっている。また、同じくホストチームであるFC琉球は、サッカーJ3で優勝経験を持つほか、J2でも上位争いに食い込むなどの健闘ぶりを見せている。

常盤木氏は、こうしたチームの活躍は、スポーツコンテンツの根幹を成す価値であり、沖縄のスポーツ産業における大きな強みだと語る。それに加え、近年では、強いリーダーシップを発揮して、新たな形での資金調達やファン層の開拓に挑戦する経営者も増えており、沖縄のスポーツ産業は、今まさに地域に根差した文化として確立されつつあるとした。


続いて、藤田氏は、沖縄のプロスポーツチーム同士の「連携」に可能性を感じると述べた。藤田氏によれば、沖縄では、他の地域に比べて、プロスポーツチーム同士の交流が盛んであり、競技の枠を超えて近しい関係を築いているという。こうした関係性を活用すれば、新しい体験価値の提供や相互送客が可能となるため、沖縄のスポーツ産業をより拡大に導くことができるのではないかと語った。

ここで青田氏は、沖縄のスポーツ産業をさらに拡大するためには、地域との連携も欠かせないのではないかと問題提起する。チーム間のネットワークを、地域に波及させるためには、どのようなアイデアがあるかと尋ねた。

常盤木氏は「既存のスポーツチームの運営手法を革新する必要がある」と答える。常盤木氏は、地域でスポーツ教室を開催するといった交流手法は、すでに完成されたモデルであり、現状以上の効果を期待するのは困難だと語り、観光、小売、アパレルなどの他産業とのシナジーを生かした、新たな地域とのエンゲージメント向上策が求められていると話した。

藤田氏は、これに付け加える形で、昨今の沖縄における起業の機運の高まりに触れる。リモートワークの定着により、近年、沖縄に移住する起業家が増加しする傾向にある。これに伴い、沖縄県内での起業や起業家同士が結びつく機会も増加しており、企業間のシナジーが生み出しやすい土壌が築かれつつあるという。藤田氏は、今後、こうした動きがスポーツ産業にも及び、地域との連携や新たなチーム運営の確立を加速させるのではないかと語った。


●テーマ②「ここでしか聞けない!沖縄スポーツ・ヘルスケア産業の活性化に足りないもの」


沖縄のスポーツ産業の可能性が語られる一方、同業界が抱える課題にも焦点が当てられた。青田氏は、パネラーの両者に「沖縄のスポーツ産業に足りないものは何か」と投げかけた。

これに対し、藤田氏は「グローバルな視点」だと回答する。沖縄はソウル、北京、上海、台北など、東アジアの主要都市の中心に位置し、アジア市場にほど近いという強みを持つ。しかし、その一方で、アジア展開を手がけるスポーツチームはまだまだ少なく、強みを生かし切れていないのが現状だという。藤田氏は「今回のプログラムが、アジア展開の一つのきっかけになってほしいです」と期待を込めた。

次に、常盤木氏は、沖縄のスポーツ産業の課題として「タッチポイントの可視化」を挙げる。タッチポイントとは、チームや運営企業、ファン、地域、行政など、それぞれの主体が関わりを持つ「接点」のことだ。常盤木氏は、沖縄のスポーツ産業ではアナログなチーム運営が主流であり、そのためにタッチポイントの不可視化が起こっていると指摘する。

常盤木氏は、自身のスタートアップ支援の経験などを踏まえ、「沖縄のスポーツ産業は、ファンのどの層が積極的にファングッズを購入してくれていて、どの層が地域とのパイプ役になってくれるのかといった、それぞれの役割や性質の違いを、デジタルで可視化して、正しく捉え直す必要があると思います」として、デジタル技術の活用によるチーム運営の変革を促した。

ここで、青田氏は、沖縄のスポーツ産業が、それらの課題を乗り越えるためには、人材の確保が重要ではないかと語り、両者に「沖縄のスポーツ産業はいかに優秀な人材を確保していくべきか」と尋ねた。

藤田氏は、「短期的には、優秀な人材を外部から招き入れ、長期的には育成するのがベストです」としたうえで、「人材のシェア」を提案する。スポーツマーケティングなどに精通した人材は希少であるため、そうした人材を各スポーツチームで確保するのは至難の技だ。そこで、藤田氏は、複数のチームで一人の人材を共有し、そこから知見やノウハウを学ぶ形で、各スポーツチームの人材を育成していくべきだと述べた。


この藤田氏の提案に対して、常盤木氏は、沖縄のスポーツ産業における目的と課題の可視化の必要性を説いた。常盤木氏は「現状、沖縄のスポーツ産業は、解決すべき課題を共有できていないため、どのような人材を、どの領域で、どの程度の数、どれくらいの期間で必要なのかが不明確です。外部から人材がなかなか参画してこないのは、そのためです」として、人材の確保よりも先に、沖縄のスポーツ産業の目的を明確化するべきだと訴えた。

●応募企業へのメッセージ

パネルディスカッションの最後に、青田氏は応募を検討している企業へのメッセージを聞いた。パネラーの両者は、応募企業に以下のように呼びかけ、プログラムへの積極的な応募を求めた。

「一言でいえば『You やっちゃいなよ!』といったところです。スポーツ産業と接点を持つ機会は極めて稀なため、多くの方はスポーツチームとの共創にイメージが湧かないところがあると思います。しかし、実際に関わりを持ってみると、『この課題ならウチで解決できるな』といった気付きが山ほどあります。そのため、『ウチの業界は畑違いだから…』などと自制することなく、スポーツという資源に興味があるならば、ぜひ応募いただきたいですね」(常盤木氏)

「スポーツ産業は、日本が海外市場に発信していける、競争力の高いビジネスです。また、今回のホストチームである、FC琉球、琉球アスティーダ、楽天イーグルスは、国内でも非常に先進的な3チームですので、チャンスはさらに大きいと感じています。是非、高い視座と志を持って、プログラムにのぞんでいただきたいです」(藤田氏)

沖縄スポーツ業界の特徴――ポイントとなるのが「三つの”ち”」

続いて、説明会では、青田氏により、沖縄のスポーツ産業の特徴が紹介された。冒頭、青田氏は、沖縄のスポーツ産業について「一言でいえば、『可能性しかない環境』です」と言い切る。そのポイントとなるのが「三つの”ち”」だ。三つの”ち”とは、「地域資源」「地の利」「知の基盤」という、沖縄ならではの三つのリソースのことだ。

青い海と温暖な気候(地域資源)、アジアの主要都市に4時間以内で移動できる地理的条件(地の利)、沖縄科学技術大学院大学を始めとした学術機関(知の基盤)。これら三つのリソースに支えられた沖縄のスポーツ産業には、大きな飛躍の可能性が秘められていると青田氏は熱く語る。


青田氏は、その可能性を裏付ける事実として、沖縄県内の各種スポーツ施設が充実していることを挙げる。1月から3月にかけて、全国のプロスポーツチームがキャンプに集結する沖縄では、スポーツ施設の建設や整備が進んでいる。そのほか、多様性のあるプロスポーツチームが数多く活動していることや、来年度からの県のスポーツ振興政策がさらに強化されることなどを挙げ、沖縄のスポーツ産業拡大に期待が持てることを強調した。


一方で、青田氏は、沖縄のスポーツ産業の課題として、キャンプシーズンなどスポーツが盛り上がる期間が限定的であること、島しょ県であるために県民以外とのタッチポイントを形成しづらいこと、スポーツ産業に知見やノウハウの豊富な人材が不足していることなどを挙げた。今回のプログラムでは、これらの課題を踏まえた、新たなスポーツビジネスの創出が期待される。

最後に、青田氏は、今回のプログラムを通じて、目指すゴールについて言及。チームの価値向上・財務強化、地域の経済効果の最大化、県内企業の経営力向上・人材育成という、三つの目標を達成し、スポーツ産業を観光、ITに次ぐ「沖縄の第三の産業」にすることが、最終的なゴールだとした。

ホストチームの代表者が、募集テーマ・提供できるリソースを発表

説明会の最後には、ホストチームそれぞれの募集テーマとリソースが発表された。

●FC琉球


▲琉球フットボールクラブ株式会社 事業部パートナー担当 友利 貴一 氏

■募集テーマ

・スポンサー、サポーターと交流を生み出す市場開拓

・サステナブルなスタジアム観戦体験

・選手の「移動」の負担を軽減するソリューション

沖縄県唯一のJリーグクラブであるFC琉球は沖縄市を中心とした、沖縄県全域をホームタウンとするクラブ。2014年にJ3リーグへ参戦、2018シーズンに、リーグ史上最速でのJ3優勝を果たした後は、J2においてJ1昇格に向けた争いを続けている。FC琉球の強みは、年間観客動員数10万人(2019年実績)を誇る地域からの熱い支持、そして、台湾サッカー教会とパートナーシップ提携を結ぶなど、アジア市場へのアプローチにも意欲的である点だ。


今回のプログラムで活用できるリソースとしては、以下の4点を挙げている。

・チーム・選手を活用したプロモーション

・平均入場者数約5000名のホームゲームを活用したプロモーション

・県内各地域・自治体との絆と、CSR活動の共同実施

・パートナー企業のマッチングなどを行う、FC琉球ビジネスクラブを活用した協業体制の構築

発表の締めくくりに、友利氏は、FC琉球の経営理念「沖縄とともに、強くなる。」に触れ、地元・沖縄のため、新たな挑戦に共に挑んでくれるパートナーを求めたいと述べた。

●琉球アスティーダ


▲琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社 代表取締役 早川 周作 氏

■募集テーマ

・試合会場以外での全国ファン獲得の仕組みづくり

・アスリートメニューの開発や飲食販売ビジネス創出

・エンターテイメント化した次世代のスポーツ観戦体験

琉球アスティーダは、2018年に設立された、卓球・Tリーグに所属するプロ卓球チーム。設立時に掲げた「3年以内に必ず日本一になる」という目標を見事達成し、2020-2021シリーズにはリーグ王者に輝いている。

また、興行収入やスポンサー費用などを主要な収入源とせず、2021年には国内プロスポーツチームとして初の株式上場を果たしたほか、飲食事業やクラブトークンの発行などの多角的な展開で収益基盤を築いているのが特徴だ。


今回のプログラムで活用できるリソースとしては、チーム設立以来、蓄積してきた数々の知見やノウハウを挙げられている。

・スポーツビジネス全般

・コンサルティング、チームビルディング、ファンマーケティング、IPO支援、資本政策、ブランディング、営業支援

・スポーツバルの運営及びFC展開支援

・スポーツを通じた地方創生

・スポーツイベント開催ノウハウ

・クラブトークン、NFTの活用

最後に、早川氏は、「私たちは日本人の体格で、唯一、世界のトップが取れるスポーツは卓球だと考えています。そのため、共に世界を目指していける企業様とご連携ができるように楽しみにしています」と呼びかけ、発表を締め括った。

●楽天イーグルス


▲株式会社楽天野球団 野球振興部 部長 松野 秀三 氏

■募集テーマ

・キャンプ地沖縄との継続的なビジネス創出

・滞在時のフィジカル面をサポートするサービス

・滞在環境の充実につながるソリューション

宮城県・仙台を拠点とする楽天イーグルスは、2005年以来、沖縄でのキャンプを継続している。この間、17年間に渡って、沖縄のスポーツ産業の活性化や観光振興に貢献してきた。

楽天イーグルスは、近年、「プロ野球を中心としたエンターテイメントを提供する会社」への変革を図っていると松野氏は説明する。野球の試合を中心に、グルメ、ショッピング、アトラクション、音楽イベントなどのエンターテイメントを複合的に提供することで、ライト層のファンを取り込むのが狙いだ。この取り組みは功を奏し、2019年には過去最高の観客動員数182万人を記録するなど、ファン層の拡大は続いているという。


今回のプログラムでは、そうした多大な知名度を誇る、楽天イーグルスのコンテンツを幅広く活用することができる。

・球団肖像(ロゴ・ペットマーク等)

・球団保有コンテンツ

―野球関連/告知媒体

―アカデミーコーチ/エンジェルス/マスコット

・チーム、選手肖像(都度相談)

最後に、松野氏は、応募アイデアに求めるポイントとして「タッチポイントづくり」「安定したビジネスモデル」「ファン拡大」の三つを挙げ、「キャンプ期間中だけではなく、年間を通して、展開できるビジネスを共に作り上げていきたいです」と抱負を語った。

取材後記

今回の説明会では「沖縄のスポーツ産業の可能性」が何度も言及された。魅力的な文化や風土、地理的な優位性などの後押しを受け、沖縄のスポーツ産業は今まさに飛躍しようとしていることが分かる。しかも、今回のホストチームの顔ぶれからも分かるように、その可能性は、実に多様な形で結実し得るものだ。

FC琉球、琉球アスティーダ、楽天イーグルス。この三チームとの共創を実現させ、世界規模のビジネス展開を狙う企業は、ぜひ「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD OKINAWA」への応募を検討してほしい。応募締切は10/22(金)だ。なお、本説明会の模様は以下URLにてアーカイブされている。さらに詳しい内容を知りたい方は、ぜひご覧いただきたい。

https://www.youtube.com/watch?v=6qmuN8abJDQ

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太)

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  • 眞田 幸剛

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