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【インタビュー<後編>】大企業とのオープンイノベーションで、“助け合い”のインフラを創るプロジェクト「アンドハンド」とは?

【インタビュー<後編>】大企業とのオープンイノベーションで、“助け合い”のインフラを創るプロジェクト「アンドハンド」とは?

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「困っている人を助けたい」。多くの人が、その気持ちを持っているはずだ。しかし実際に行動に移すことは、容易ではない。例えば、駅や電車で助けが必要そうな人を見かけても、自ら声をかけるには躊躇もあり、相手がどのような手助けを求めているのか分かりにくい場合も多い。そもそも、困っている人に気が付かないこともある。その課題に踏み込み解決しようとしているのが、「アンドハンド」だ。

「アンドハンド」は、身体的な困難や精神的な不安を抱えている人と、手助けをしたい人をBeaconでつなぎ、LINEを通じて具体的な行動をサポートするというプロジェクトだ。2017年3月にLINEが開催した「LINE BOT AWARDS」において、グランプリを受賞した。今後、「アンドハンド」は社会実装を目指し、大日本印刷、東京メトロ、LINEといった大企業と協業し、事業化を進めていく。まずは2017年内に実証実験を実施する予定だ。オープンイノベーションにより、“助け合い”のインフラを育てていこうとしている。 

昨日公開した対談記事<前編>に引き続き、<後編>では「アンドハンド」がグランプリを獲得した「LINE BOT AWARDS」の仕掛け人であるLINE・砂金信一郎氏が登場。なぜ「アンドハンド」が最も高い評価を得たのか。そして、これから「アンドハンド」が目指していく方向性について、話を聞いた。

【写真左から】砂金信一郎氏(LINE)タキザワケイタ氏(アンドハンド)松尾佳菜子氏(大日本印刷)中山砂由氏(東京メトロ)

LINE BOT AWARDSグランプリ獲得、そしてーー

――「アンドハンド」は「LINE BOT AWARDS」にエントリーし、今年3月には同アワードでグランプリを獲得しました。LINE・砂金さんには、なぜ「アンドハンド」が最も高い評価を得たのか、そのポイントをお聞きしたいです。

砂金:書類選考では、「よく分からないね」というのが正直な感想でした(笑)。まだ実装されていないことが大きな課題だったのです。ただ、「このメンバーなら、アワード当日までにモノにしてくるだろう」と、期待をしていました。

最終的には、海外からのエントリーと「アンドハンド」に絞られたのですが、審査員全員一致で「アンドハンド」がグランプリになったのです。単に友達と会話をするものではなく、「困っている人を助ける」ツールであること、自治体や公益企業とも組みやすく社会的な意義が高いという点が、大きな評価ポイントでしたね。また、これから様々な企業を巻き込んでプロジェクトを大きく育てていくフェーズにあり、賞金の1000万円を有効活用していただけるのではないかとも考えました。

▲LINE株式会社 LINE Bizセンター 広告・ビジネスプラットフォーム室 戦略企画担当ディレクター 副室長 砂金信一郎氏 

――「アンドハンド」に対して、今後LINEが果たしていく役割とは?

砂金:表彰したからには、このサービスが社会に根付くようサポートする使命がLINEにはあると考えています。LINE Beaconの開発を行うメンバーも引き続き協力していきますし、公共公益系のビジネスアカウントを担当しているメンバーも「アンドハンド」に関わり、できる限り支援していきます。駅などで「声かけ・サポート」ポスターなど交通広告を見かけることが多いことからも、「アンドハンド」のサービスが世の中から必要とされていることが分かります。スマホ、ビーコン、チャットボットと、実現できるテクノロジーも整っていますしね。

――グランプリ受賞前後で、どのような変化がありましたか?

タキザワ:グランプリ受賞を様々なメディアに取り上げていただいたことから、外部からの反響も飛躍的に増えましたね。「デバイスはどこで買えるのか」というお問合せ、妊婦さんからの熱烈な応援メール、視覚障害者や聴覚障害者、ヘルプマーク使用者の方からも、たくさんの貴重なご意見をいただくことができました。様々な声を聞いていくうちに「一日も早くサービスを提供し、ひとりでも多くの困っている方を手助けしたい」という想いがより強くなりましたね。

――このタイミングで起業はしないのでしょうか?

タキザワ:今の段階では起業は考えていません。大日本印刷、東京メトロ、LINEという強力なパートナーによって、デバイスやシステム開発、インフラ化は実現できると確信しています。しかし事業として回していくには、アンドハンドを知ってもらい、ビジョンに共感してもらい、サポーターになってもらい、手助けすべき状況になった際に行動してもらう必要があります。プロジェクトチームではまず、コミュニケーションやコミュニティ活動に注力することで、実証実験や事業化の支援を行っていきます。

「アンドハンド」がなくなることが、プロジェクトのゴール

――皆さんそれぞれが、アンドハンドを通して実現したいことを教えてください

松尾:「困っている人を助けたいけれど、あと一歩踏み出せない」という人たちの行動を、「アンドハンド」によって変えていけたらいいなと思います。助けて欲しい人と助けたい人の価値交換が起こるのかを検証すると同時に、当社としてビジネスの可能性があるのかを探索していきます。新しい価値を直接生活者に提供する主体事業へのチャレンジですので、試行錯誤していきたいですね。

中山:交通弱者の方がもっと外出しやすいよう、企業としてサービス向上に努めていきたいと考えています。より良い社会にしていきたいです。

砂金:何をもって成功とするのか、その評価軸を定めるのは難しいですが、ひとつは、メディアに取り上げられることですね。また、「アンドハンド」によって「助かった、ありがとう」が増えていけば成功なのだから、感謝の総量が可視化できるようになるといいですよね。

タキザワ:プロジェクトのゴールは、みんなが自然と手助けし合う社会になること。つまり「アンドハンド」のサービスが必要なくなることだと思っています。そこに向け、まずは問題提起することで少しずつ意識や行動を変えていきたいですね。

▲「アンドハンド」に関わるメンバーたち。各企業に所属する有志メンバーが、プロジェクトを支えている。

取材後記

2016年、タキザワ氏主宰のワークショップからスタートしたアンドハンドは、わずか1年でGoogle、LINEといった2つのアワードのグランプリを受賞し、複数の大企業が加わるプロジェクトへと成長した。すべてをプロジェクトメンバーだけで賄おうとはせず、早い段階からオープンイノベーションを意識し、共感してくれる仲間を増やしてきたからだろう。

サービスの事業化・実用化に向けた実証実験も、近日中に行われる予定だ。eiiconでは、実証実験の様子も引き続きレポートをしていく。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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