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【東邦ガス×スタートアップ】AIによるヒトの可視化/採用DX/介護記録AIシステム――共創プログラムデモデイレポート

【東邦ガス×スタートアップ】AIによるヒトの可視化/採用DX/介護記録AIシステム――共創プログラムデモデイレポート

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東海3県(愛知・岐阜・三重)の地元経済に大きく貢献してきた「東邦ガス」。中期経営計画では、“エネルギーとともに、エネルギーの先へ”をスローガンに掲げ、エネルギーの供給を強化すると同時に、新たな領域への挑戦も加速している。こうした取り組みの一環として、同社は昨年11月より初となる共創プログラム「TOHOGAS ACCELERATOR PROGRAM 2020」を開始。次の2つのテーマを掲げ、共創パートナーを募ってきた。

<テーマ1> 東海3県の『ものづくり』のスマート化を実現

<テーマ2> 医療・福祉分野のDXを支援し、地域の利用者の『くらし』の質を向上

数多くの応募があった中から、2020年度は3社(Lightblue Technology/batton/エクサウィザーズ)を採択し、2021年1月よりビジネスプランの検討をスタート。両社でのディスカッションや見込み顧客へのヒアリングなどを行い、3つの共創ビジネスプランを練り上げたという。

そして去る3月29日(月)、その中身を披露するオンラインデモデイが開催された。同社がスタートアップと共創する新しいビジネスの萌芽とは?――スタートアップ×東邦ガスが描く構想に迫る。


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「アピールしたい点を、存分に発揮してほしい」―イノベーション推進部・小島氏

デモデイの冒頭、本プログラムをリードするイノベーション推進部 デジタル変革グループ 次長 小島正嗣 氏が、次のように挨拶を行った。

「今回、ものづくりと医療・介護の2分野で、共創によってお客様の課題を解決しうるサービスを提供していきたいとの考えから検討を進めてきた。コロナの影響もあり、膝を突き合わせて議論のできない状況ではあったが、そんな中でも各社と個別に打ち合わせをさせてもらい、本日のデモデイを迎えられることに感謝している。具体的な議論の開始が1月からだったため、非常に短い期間ではあったが、各社ご尽力いただき、私自身このデモデイを楽しみにしてきた。ぜひアピールしたい点を、存分に発揮してもらいたい」(小島氏)

●テーマ1:東海3県の『ものづくり』のスマート化を実現

続いて、イノベーション推進部 デジタル変革グループ 青山高幸氏が、テーマ1 を設定した背景や課題を共有した。青山氏によると、東海3県におけるものづくり企業のうち約99%が中小企業だが、中小製造業では人手不足が年々深刻化しているという。人手不足の影響もあり、大手製造業と中小製造業の生産性が開く傾向にあり、中小は大手に対し「約50%の生産性しか発揮できていない」と現状の課題を共有。

こうした観点より、中小製造業の生産性向上が重要であると考え、このテーマを設定したことを明らかにした。今回の共創においては、株式会社Lightblue Technologyとともに、中小製造業が省人化や生産性向上を図れるサービスの開発に取り組んだという。

東邦ガスがLightblue Technologyと描く共創プランは、『AIによるヒトの可視化で製造現場のムダ・ムラ カイゼン』だ。

デモデイに登壇したLightblue Technology・佐藤あい氏によると、同社は人にフォーカスしたAIアルゴリズムやIoT実装に強みを持つ東大発のスタートアップであり、現場作業の可視化において、すでに大手企業との協業実績を複数持つという。この現場可視化技術を用いて、中小製造業が抱える人手不足の課題に取り組んでいく。


▲Lightblue Technology 佐藤あい氏

●テーマ2:医療・福祉分野のDXを支援し、地域の利用者の『くらし』の質を向上

次に、イノベーション推進部 デジタル変革グループ 世古純基氏が、テーマ2を設定した理由について説明した。世古氏によると、病院・福祉施設は災害時でも安定稼働が求められることから、エネルギーの供給だけではなく設備も含めて、東邦ガスが深く入り込んで支援を行ってきたという。また、この業界に対しては、すでに同社の業務効率化支援実績が豊富にあり、顧客からの信頼も厚い。

こうしたミクロでの観点がある一方で、マクロでの観点においても、とくに介護業界は高齢化の進行により、近く市場が2倍強にまで成長することが見込まれている。これらの背景から、医療・福祉分野に焦点をあて、DX支援によって業界の課題解決につなげていきたいと考え、本テーマを設定したと話す。今回は次の2社(株式会社batton/株式会社エクサウィザーズ)とともに共創プランの検討を行ったという。

まず、battonと取り組む共創プランは、『まるっとDX採用』という共創プランだ。同社は、AI搭載型のRPAやDXコンサル、DXソーシングなどを手がけるスタートアップ。batton・笠井氏の説明によると、同社が提供するRPAの大きな特徴は、「操作が簡単なこと」だという。プログラミング言語を使うことなく、直感的にロボットを作成できる。

また、画像認識AIを搭載しているため、デバイスや位置情報が変わっても同じように稼働する点も強みだ。このようなプロダクトの特徴を活かしながら、医療・福祉分野における事務作業の負担軽減に取り組んでいくという。


▲batton 笠井博志氏

続いて紹介するのは、エクサウィザーズと取り組む『介護施設とICTをつなげて業務効率化を実現~「話す」だけで介護記録~』という共創プランだ。

エクサウィザーズは、AIを利活用したサービス開発によって、産業革新や社会課題解決に挑んでいるスタートアップ。慢性的な人手不足に悩む介護業界に対して、ICTの導入サポートを行い、介護従事者が被介護者と向き合う時間を増やし、介護の質を向上させることを共創ビジョンに掲げ、ビジネスプランを練り上げたという。

エクサウィザーズ・結城氏によると、今回は幅広い介護業務の中でも「介護記録の音声入力」の可能性を探るという。具体的には、エクサウィザーズが今年ローンチしたばかりの「CareWiz 話すと記録」というプロダクトを用いて、法定で記録すべき内容の音声入力の実現を目指す。


▲エクサウィザーズ 結城崇氏

「今回の経験をもとに、挑戦を重ね、前に進んでいきたい」―執行役員・小野田氏

3つのプランが披露された後、本デモデイでメンターを務めた、東邦ガス株式会社 イノベーション推進 部長(執行役員)小野田久彦氏と、eiicon company 代表/founder 中村亜由子氏が講評を行った。

eiicon company・中村氏は、「昨年10月にプログラムがスタートし、本日のデモデイを迎えたが、コロナ禍の影響もあり3チームともまだ市場で試せてはいないので、4月以降のなるべく早い段階で、市場で試すことに取り組むといいのではないか」とアドバイス。さらに「ここからの皆さんの頑張りを、我々も見守っていきたい」と伝えた。

執行役員・小野田氏は、東邦ガスとして初めてのプログラム開催だったが、とてもよい経験になったと述べ、「実際に形にしていくのは難しい仕事だが、やりがいもある。こうした取り組みを重ねていくことが、会社の目指す方向にも合致する。東邦ガスが今後、お客様にどのようなものを提供できるか考えながら、様々な新しいことにトライしていきたい」と語った。また、「今の世の中に求められていなければ、存在する価値はない。この思いをしっかり持って、今回の経験をもとに前に進んでいきたい」と語り、同社初となる共創プログラムのデモデイを締めくくった。


▲東邦ガス株式会社 執行役員 イノベーション推進部長 小野田久彦氏

取材後記

東海3県に限らず、慢性的な人手不足に悩む「ものづくり」や「医療・介護」の現場。そこにAIやRPAといった先端テクノロジーを導入することで、現場の課題解決につなげようとする3つのビジネスプランが提案された。講評にもあったが、プランを社会に実装するこれからが本番。今後、どう現場に導入され、現場の人たちに役立つソリューションとして仕上がっていくのか。引き続き、進捗を追っていきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子)

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  • 眞田幸剛

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