「資金調達率は50%以上」——IBM BlueHubのインキュベーション・プログラム第4期がスタート!
日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)が、“日本発の革新的事業の創出”を目指すために展開している「IBM BlueHub」では、スタートアップ向けのインキュベーション・プログラムを実施している。
主にシード・アーリーステージのスタートアップに対して、IBMのテクノロジー支援や、IBMの顧客企業へのヒアリング、ベンチャーキャピタル(VC)からのメンタリングを提供。これらを通して、スタートアップが新しいビジネスを創出することが狙いだ。
2014年に第1期がスタートしてから第3期までが実施されており、プログラムを通してスタートアップ各社が提供するサービスの価値向上を後押ししている。例えば、プログラム第2期で最優秀賞を受賞したVRアプリを手がけるクラスター株式会社は、本プログラムを通してさらなるサービス強化を続けた結果、2017年5月に上場企業やベンチャーキャピタルなどから約2億円の資金調達を実現している。
現在、プログラムの第4期募集が始まり、応募期間は7月31日までとなっている。応募テーマは、「日本の産業をテクノロジーによって変革する」というもの。このテーマに対して、斬新なビジネスアイデアを持つスタートアップを広く募集している。——そこで、今回の第4期インキュベーション・プログラム実施にあたり、「IBM BlueHub」のリーダーである大山健司氏にプログラムの詳細を伺った。
■日本IBM株式会社 IBM BlueHub lead 事業開発担当 大山健司氏
外資系コンサルティング会社やベンチャー企業経営などを経て、2012年に日本IBMに入社。2016年より、IBM BlueHubのリーダーに就任。
※役職等は取材時のもの。なお大山氏は日本IBM株式会社を退職している。(2023年4月追記)
プログラム参加企業の半数以上が資金調達に成功
——「IBM BlueHub」では、2014年からインキュベーション・プログラム実施されています。ます、なぜこのプログラムが立ち上がったのかお聞かせください。
私たちIBMが提供してきたソリューションは、かつてはハードウェアが中心で、ユーザー層の多くが大手企業でした。しかし、現在当社のソリューションの軸はソフトウェアに移行しています。特に近年では、コグニティブ・ソリューションとクラウド・プラットフォームを市場に提供しており、ユーザー層をスタートアップにも拡大したいというマーケティング戦略があります。その一環として立ち上がったのが、「IBM BlueHub」です。
——「IBM BlueHub」の立ち上げには、マーケティング戦略が絡んでいたのですね。2014年に「IBM BlueHub」がスタートし、同時にインキュベーション・プログラムも開始されました。現在4期目の募集が始まっていますが、これまでの第1期〜第3期の状況はいかがだったでしょうか?
私たちのインキュベーション・プログラムは、単純に数字だけを追うようなメンタリングはしていません。しっかりとビジネスのコンセプト固めから手がけていきます。さらにメンタリング期間中から当社クライアントへの紹介も行っており、ユーザーヒアリングはもちろん、販路拡大のサポートも可能です。プログラムに参加したスタートアップには、大きなメリットを感じてもらえるでしょう。
——なるほど。
さらに、IBM ®Watsonなど、当社が展開しているテクノロジーを最大限に活用していただき、短期間にプロダクトの構築もしくは強化が可能です。当社のエンジニアたちによるサポートも受けられますし、IBMの技術リソースをフル活用できる点も好評ですね。
これまで第1期から第3期で合計15社のスタートアップがプログラムに参加しており、その50%以上がVC等からの資金調達に成功しています。そのことからも分かるように、「IBM BlueHub」ではクオリティの高いプログラムが提供できていると思います。当プログラムを卒業したスタートアップが、テクノロジーの活用により継続的に事業を拡大させ、将来的にはIBMの重要な顧客になってくれることを願っています。
▲第3期の「DemoDay」の模様。最優秀賞/SoftBank賞を受賞したのは、医師同士のQ&Aサービスを手がける「Antaa(アンター)」
経験豊富なVCによるメンタリングを受けられる
——2014年からスタートしたインキュベーションブログラムは、今回で4期目を迎えました。これまでのプログラムとの変更点はありますでしょうか?
はい。変更点は大きく2つあります。まず一つ目は、応募テーマです。これまでは、ビッグデータやIoTなど、フォーカスするテクノロジーが決まっていました。しかし、そうすることで、応募できるスタートアップが限られてしまいます。もっと幅広く、面白いビジネスアイデアを持っているスタートアップも参加してほしい。そうした考えから、今回はあえて特定のテクノロジーにフォーカスすることをやめました。
——2つ目の変更は、どのような点でしょうか?
メインメンターに、経験豊富なVCの方々を迎えたことです。特に、シード・アーリーステージのスタートアップのメンタリングに強いVCにお声がけし、「ぜひやってみたい」と好意的な反応をいただきました。例えば、大学発テクノロジーに強いBeyond Next Venturesさんや、社会課題に寄与するスタートアップに強いMistletoeさんなど、バラエティに富んだVCに参画してもらっています。第4期で選ばれたスタートアップは、これまで以上に精度の高いメンタリングを受けられると思います。
情熱を持ったスタートアップに応えられる万全のサポート体制
ーー第4期のプログラムを迎えるにあたり、どのようなスタートアップからの応募を期待していますか?
今回の応募テーマは「日本の産業をテクノロジーによって変革する」というものです。日本、そして世界を変えたいという、強い情熱を持ったスタートアップに来ていただきたいですね。その思いに対しては、当社とサポート企業、メンター陣など総勢30名以上のスタッフでサポートをしていきます。
また、プログラム期間中にメンタリングをするなかで、ビジネスやサービスのコンセプトが大きく変化する場合もあります。そうした状況をポジティブに受け入れるような「柔軟性」も持っていて欲しいですね。
——どのくらいの数のスタートアップに応募いただきたいですか?
第1期から第3期まで、平均して50〜60社からの応募がありました。今回はテクノロジーにフォーカスしないということもあるので、これまで以上の数のスタートアップにチャレンジしていただきたいですね。
——最後に、これからのBlueHubのビジョンを教えてください。
来年、第5期のプログラムを開催するか否かはまだ決まっていませんが、次回開催が決定すれば「海外」を大きなキーワードにしたいと考えています。例えば、日本でビジネスを展開したい海外のスタートアップに応募してもらったり、逆に、日本のスタートアップを海外に紹介したり。グローバルで展開するインキュベーション・プログラムにしたいという構想を持っていますね。
編集後記
第4期目を迎えた「IBM BlueHub」のインキュベーション・プログラム。IBMが持つ、Watson、Deep Learning、BIG DATA Analyticsといった高度なテクノロジーを存分に活用できる点が、最大の特徴といえるだろう。それに加え、今回はスタートアップ支援に熟知し、実績を持つVCがメインメンターとして参画。スタートアップが持つビジネスアイデアやサービスが、より高い精度で磨かれていくはずだ。
これまでに参加した企業の半数以上が資金調達に成功しているということからも分かるように、本プログラムから得られる価値は非常に高い。ビジネスアイデアやサービスを通し、本気で社会を変えたいという強い思いを持っているスタートアップには是非、挑戦してもらいたいプログラムだ。
▼インキュベーション第4期の募集についての詳細はこちらから
http://www-07.ibm.com/ibm/jp/bluehub/incubation-phase4.html
また、以下日程で説明会の開催も予定している。
●7月7日(金曜)19:00- 会場:永田町GRID B1F
●7月19日(水曜)19:00- 会場:永田町GRID B1F
(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)