eiiconがバーチャルコワーキングの提供開始。日本最大級OIプラットフォームが仕掛ける完全会員制コミュニティ。
日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」、弊メディア「TOMORUBA」を運営するeiiconが、さらなるオープンイノベーションの活性化に向けて、バーチャルコワーキングスペース「SHABERUBA(シャベルバ)」をリリースすることを発表した(※詳細はこちら)。
SHABERUBAはオンライン上の仮想コワーキングスペースで、自身のアバターを操作し、別のユーザーと対話をしたり、コミュニティマネージャーへの相談や、イベントに参加することが可能だ。AUBAユーザーの会員制コミュニティのため、ビジネス意識の高い人達との偶発的な出会いが楽しめる。オンライン会議ツール機能も搭載しており、お互いに顔を見ながらオープンイノベーションを進めていけるのも特長だ。
今回はeiicon company代表の中村 亜由子、COOの富田直、カスタマーサクセスの栗山彩香に開発の経緯や今後の展望について伺った様子をお届けする。ちなみに、本取材もSHABERUBAの「個室機能」を利用して行っている(下画像参照)。
2度目のコミュニティサービスへの挑戦。前回の失敗から学んだこととは
ーーまずはSHABERUBAを開発した狙いについて教えて下さい。
富田:私達は、明確な目的をもって出会う場所として「AUBA」、情報を収集する場として「TOMORUBA」を運営しています。2つのサービスの中間、つまり偶発的な出会いを生み出す場として作ったのが、今回の「SHABERUBA」です。
具体的に「こんな企業と出会いたい」という目的が定まっていなくても、SHABERUBAにくればビジネス感度の高い人達と出会えます。イベントも定期的に行っていく様子なので、一緒に参加している方などと気軽に情報交換をしてもらえらばと思います。個室に入ればビデオ通話も可能なので、出会いだけでなく打ち合わせにもご利用いただけます。
ーーいつごろからSHABERUBAの構想を練っていたのでしょうか。
中村:偶発的な出会いを生み出せるコミュニティは、ずっと作りたいと思っていました。実際に2018年にはコミュニティサービスをリリースしていたのですが、うまくグロースさせられずにクローズしました。
グロースできなかった理由は、オフラインの「場」では得られる「リアルタイム性」を再現できなかったからだと考えています。
AUBAでは、真剣にオープンイノベーションに取り組む企業が多いため、2~3日返信がなくてもさほど問題なくプロジェクトは進みます。しかし、明確な目的のない企業が繋がるには、リアルタイムにコミュニケーションができなければオープンイノベーションに発展しません。
偶発的であるが故、『強い目的意識を持たない=最初からのコミットがない出会い』。
それをオンライン上で演出するには「今、偶々話しかけて、それに今、呼応する」というものが非常に重要で、テキストベースの前回のコミュニティサービスでは場をつくりきることができませんでした。
そのため今回、『その場にいる相手とリアルタイムで会話できること』に強くこだわりSHABERUBAを設計しました。
たまたまの出会いがオープンイノベーションに発展する可能性も決して低くないと考えています。
ーーやっとの思いでリリースにたどり着いたんですね。収益モデルについてはどうお考えですか。
中村:AUBAに登録さえしていれば誰でも無料で利用が可能です。スポンサー企業に対しては、部屋を貸し切ったり、SHABERUBA内で事例を打ち出せるような機能追加を考えていますね。
今後、SHABERUBAがどのように使われているかにもよりますが、スポンサー企業へのサービス設計も充実させていきたいと思います。
常時いるカスタマーサクセスが、オープンイノベーションをサポート
ーーSHABERUBA内で、オープンイノベーションを活性化する仕組みがあれば教えて下さい。
栗山:CS(カスタマーサクセス)のスタッフがバーチャル上に常駐していることです。これまでAUBAユーザーの様々な悩みを聞いてきましたが、多くの企業が躓いているのが「どの業界にどんな企業がいて、どのように共創できるのかイメージが湧かない」ということです。初めてオープンイノベーションを検討している企業は、他業界のことを知らないのでイメージが湧かないのも無理はありません。
AUBAには無料のオンライン面談サービスもあるため、そこでも私達CSに相談してもらえますが、SHABERUBAではより気軽に相談してもらえると思います。CSの中でユーザーの相談を受けているスタッフは4人いるので、最低ひとりは常駐する仕組みにしていきます。
ーー仕事をしながらSHABERUBAに常駐するのは大変なようにも感じますが。
栗山:相談を受け付けるために常駐していると言うよりも、SHABERUBAの中で仕事をしていると言ったほうがいいかもしれませんね。例えば、社内のコミュニケーションもSHABERUBAを使って行います。SHABERUBAならアバターを近づけるだけで話しかけられますし、MTGなどもSHABERUBAの個室で事足ります。
ぜひユーザーの方にも、SHABERUBAの中で仕事をしながら、オープンイノベーションや他社とのコミュニケーションのきっかけを探す、といった使い方をしていただけると嬉しいですね。今はオンラインの会議ツールを使う会社が増えていますが、SHABERUBAならわざわざ時間を調整したり、URLを発行する手間がいりません。「SHABERUBAにいるよ」とメッセージだけしておけば、気軽にコミュニケーションがとれるはずです。
ーーなるほど。イベントも開催していくとのことですが、どのような内容を想定していますか。
栗山:今のところ考えているのは、「ユーザー座談会」です。AUBAでオープンイノベーションを実践、成功した方に、どのようにAUBAを利用しているのか、どうしたらオープンイノベーションがうまくいくのか話してもらおうと思っています。
例えば今は、人材業界等の既存の業界であれば採用率などのデータはある程度公開されていますが、オープンイノベーションは新しい企業活動のため平均的なデータが公開されていません。そのため「自分たちはうまくやれているのかな」と心配になっている企業も少なくないのです。
AUBAはオープンイノベーションのための「ツール」なので、うまく使える人、使えない人がいます。今ではAUBAで月に50もの共創事例が生まれているので、うまく使えている人のノウハウを共有し、多くの企業がオープンイノベーションを成功できるようにしたいですね
▲「RECEPTION」のブースには、コミュニティマネージャーとしてカスタマーサクセスが常駐する予定だ。
SHABERUBAを「価値ある出会い」のプラットフォームに
ーー今はオープンイノベーションをサポートする競合も増えていると思いますが、SHABERUBAによってどのような差別化ができると思いますか。
中村:偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、私達に競合はいないと思っています。私達がやっていることは、オープンイノベーションというツールを浸透・促進させることです。ビジネス的に競合している企業はいても、「スタートアップを援助したい」「大企業の新規事業を活性化したい」など、そもそもの発端・ビジョンが異なっていると考えています。
ですので、競合を意識するよりも、自分たちがオープンイノベーション実践に必要だと思うサービスをどんどん展開していきたいですね。
富田:競合と言われる会社でも、コミュニティを作ることはできると思いますが、ここまでオープンなコミュニティを作れるのは私達だけだと思います。
なぜなら日本最大級のオープンイノベーションプラットフォームを保有しており、その大半は経営者・意思決定層の方々にご利用頂いており、完全会員制となっています。業界特化や地域に特化したコミュニティであれば、できるかもしれませんが、あらゆる業界の繋がりを目指すとなれば話が違います。
また、リアルなコミュニティはどうしても物理的な制限が出てしまいます。コロナ禍もあってこれまでビジネスコミュニティでのネットワークを求めている方々も多くいると思います。SHABERUBAなら全国どこからでも集まれますし、リアルと同じようにイベント後に参加者とコミュニケーションを取ることもできます。
ーー最後に今後の展望について教えて下さい。
中村:私達のミッションは一貫して「価値ある出会いが未来をつくる」の実現です。価値ある出会いを作るためにハードルを下げる機能は、随時追加していきたいと思います。
例えばオンラインでのコミュニケーションが市民権を得てきましたよね。
これはリアルで会社を訪問するのが一般的だった頃に比べて時間や労力、例えば、移動に関するコストだけでなく、資料の準備なども含めた諸々のコストを考えると、コスト自体が10分の1くらいに減ったと思います。
コストを削減できれば、それだけ会うためのハードルが下がり、多くの出会いが生まれますし、それに伴って価値ある出会いも増えていくはずです。SHABERUBAによって、さらに異なる出会い方を演出することで、多くの価値ある出会いを創出していければと思います。
富田:SHABERUBAを「ビジネス感度の高い人達のコミュニティ」というブランドにしていきたいですね。いずれは「SHABERUBA〇〇(地域名)」など、SHABERUBAの中で様々なコミュニティ形成がされていけば面白いと思います。コミュニティができれば、コミュニティマネージャーも必要になりますし、それぞれの地域を代表する企業に務めてもらえれば盛り上がるでしょうね。
国内だけでなく、海外の企業も巻き込んでいければ、オープンイノベーションの可能性も広がっていくはずです。もっとグローバルに展開できるように、将来的には翻訳機能や英語版のSHABERUBAなども作っていければと思います。
(取材・文:鈴木光平)