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3社対談で解き明かす「コロナ禍における産学連携のススメ」

3社対談で解き明かす「コロナ禍における産学連携のススメ」

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新型コロナウイルスの世界的な流行は、企業のイノベーション活動に大きな影響を与えたことは、もはや言うまでもないことだろう。その影響は、企業同士の連携のみならず、産学連携にも及んでいる。互いが行き来出来ない現状において、新規事業や共同研究の停滞、マッチングの課題などが生じているのだ。

こうした状況の中、新たな産学連携の形(産学連携・知財流通モデルのDX パラダイムシフト推進事業)を提案するオンラインイベント『産学連携オンラインマッチングEXPO』が、12月15日~17日に開催される。その主催者は、産学連携を支援する株式会社キャンパスクリエイトだ。

DX時代、またコロナ禍において、産学連携にはどのような課題があり、何が求められるのか。そこには、企業はもちろん、大学の研究室、そして支援者、それぞれの視点があるはずだ。

そこで今回、支援者であるキャンパスクリエイトの高橋氏と須藤氏、企業のイノベーション活動に多く関わるフィールド・フローの渋谷氏、企業との共同研究や大学発ベンチャーなどにも関わる北海道大学教授の川村氏を迎え、話を聞いた。


▲株式会社キャンパスクリエイト 専務取締役 技術移転部GM 高橋めぐみ氏


▲株式会社キャンパスクリエイト 取締役 オープンイノベーション推進部・経営戦略企画部GM 須藤慎氏


▲株式会社フィールド・フロー 代表取締役 渋谷健氏


▲北海道大学 情報科学研究院 情報理工学部門 複合情報工学分野 教授 川村秀憲氏

コロナ禍で見えた、経営者の器と企業の意義

――コロナ禍により、オープンイノベーションにも多くの影響があったと思います。まずはキャンパスクリエイトのお二人から、その変化について聞かせてください。

株式会社キャンパスクリエイト 須藤氏(以下 CC・須藤氏):統計データは見ていませんが、実感値でいうと、各社主力事業に影響を受けるなかで、これまで進めてきたオープンイノベーションプロジェクトの見極めが必要になってきていると思います。

また、少し前からバックキャストや未来社会から遡るということが盛んに言われていますが、コロナ禍において事業環境が大転換している今、一層その重要性が増しています。

株式会社キャンパスクリエイト 高橋氏(以下 CC・高橋氏):私は産学連携をメインに活動をしている技術移転の担当ですが、特に輸出が絡む企業はキャッシュフローも含めて非常に苦しいというお話を伺います。

一方、大学ではコロナ禍で構内に入ることができない時期が続いたこともあり、研究そのものをスケジュール通りに推進できず、苦心している事態が続いています。


――続いて、フィールド・フローの渋谷さんに伺います。まずはキャンパスクリエイトさんとの関わりについて教えてください。

株式会社フィールド・フロー 渋谷氏(以下 FF・渋谷氏):私自身は、産学連携に限らず新規事業やイノベーション、最近ではDXといった領域で、企業サイドでファシリテーターという立ち位置でプロジェクトに関わっています。キャンパスクリエイトさんとは、国の政策事業やイベント、オープンイノベーション関連の行政施策の提案を一緒に行っています。

――渋谷さんから見たオープンイノベーションの現状についてお話しいただけますでしょうか。

FF・渋谷氏:まずはっきりしたことは、「経営者の器」です。この危機的状況の中で、企業の対応は予算を絞って延命治療をするか、または次の一手をすぐに模索し始めるか、大きく2つに分かれます。しかし単に予算を絞った企業は、どんどん芽が出なくなるでしょう。

一方、しっかり先を見据えているところは、お金と情報という非接触で動かせるものを使って、投資や議論を進めている印象です。また、テクノロジードリブンで物事を進めることの限界が見えてきたと感じます。これは決してテクノロジーを軽視しているというわけではなく、テクノロジーが重要だという前提に立ってのことですが、テクノロジーをいかに社会に活用するかという議論が進んでいます。

さらに、コロナによって一気に10年分くらい時間が進んだ感覚がありますが、その動きに追いつけない企業があちこちで見られるようになりました。イノベーションを推進するには、社会、技術、お金、そして人のことが分からなければなりません。そうした素地を組織文化も含めて創ることができているのか、そういう問いを突き付けられていると感じます。

これまでは何となく新しいことをしているように見えたけれど、単にそれっぽいことに投資をしているだけで、実態は技術のトレンドも追っていない、人も育てていない、目先の収益だけを追いかけていたような企業があぶり出され、本当にできるところに資本が移り始めたという感覚があります。

もう一つ特筆すべき変化は、スピード感を持って新しい取り組みを進める必要が出てくる中で、コミュニティベース、信頼ベースで新しいチャレンジが生まれやすくなったことです。このチャンスを活かすために、真剣に学ぶべきですし、新しい関係を創るべきだと思います。

研究室が変われば国が変わる-コロナ禍で生じた大きな文化の差

――続いて、北海道大学の川村先生にも加わっていただき、産学連携の視点でより深く伺っていきたいと思います。まず、コロナ禍における大学の現状について、産学連携の視点からお話しいただけますでしょうか。

北海道大学教授 川村秀憲氏(以下 北大・川村氏):私は大手企業との共同研究はもちろん、ベンチャーの経営にも関わっていますが、これまでみなさんがお話ししたことと同じ感想を抱いています。それを踏まえて大学の立場からお話しすると、コロナ禍で産学連携に影響が出てくるのは、予算組みの時期で考えると来年度(2021年度)以降だと思います。

もともと日本には少子高齢化や産業構造の変化など、取り組むべき課題は山積していました。それを大学も含めて先延ばしにしてきたのが、このコロナ禍で一気に噴出してきています。これをピンチと捉えるか、ビジネスを伸ばすチャンスと捉えるか、大学の研究室によっても差が出てきていると感じます。

オンライン授業等、学生の大学に対する意識にも間違いなく影響がある中、学生に対して、そして産学連携という視点で、どのような手を打つのか、これまでとは異なることをしていかなければ、選ばれる研究室にはならないでしょう。

――コロナ禍で、共同研究や方針の変化があったということはありましたか。

北大・川村氏:私が行っている共同研究では、コロナ禍により足踏みをしたプロジェクトもある一方で、Zoomなどの普及により逆にスピード感が増しているプロジェクトもあります。現状何か大きく変化したプロジェクトは今のところありませんが、先ほど申し上げた通り、来年度以降に変化が生じる可能性はあるでしょう。


――学生への影響についても少しお話しが出ましたが、川村先生の研究室では学生さんとのやり取りに影響はありましたか。

北大・川村氏:私の研究室はAI、コンピューターサイエンスが専門で、もともとSlackなどのコミュニケーションツールを活用していたため、あまり影響はありませんでした。ただ「研究室が変われば国が変わる」と言われるように、対面で会話をすることに非常に大きなこだわりを持つ先生の研究室は、大きな影響を受けていると感じます。

――川村先生が関わっていらっしゃるベンチャー企業は何社くらいあるのでしょう。

北大・川村氏:ファウンダーや役員として、直接経営に関わるベンチャーは5社ほどです。また、最近はAIを導入する企業が多いため、共同研究やアドバイザーも含めると、上場企業からベンチャーまで5社以上、全体で20社弱の企業とプロジェクトを進めています。情報交換を含めると、全国でもっと多くの企業と関わりがありますね。

CC・高橋氏:私たちキャンパスクリエイトとしても産学連携のアウトプットのひとつとして、大学発ベンチャーの技術に着目をしています。そうした観点でも、複数の大学発ベンチャーに関わっていらっしゃる川村先生とは、頻繁に情報交換をしています。

企業・大学・支援者、それぞれが抱える産学連携への課題

――これまで企業・大学の視点からコロナ禍による影響についてお話しいただきましたが、産学連携では現状、どのような課題、ニーズがあるのでしょうか。

CC・須藤氏:企業と大学で行き来ができなくなったことは、大きな課題だと感じています。企業からすると、研究室に実際に出向くことで得られる関係構築は非常に重要でした。また、大学の先生を自社の生産現場等に招き、アドバイスをいただくことも貴重な機会でした。

それができなくなったことによる難しさを感じていますし、さらには、産学連携全体として、オフラインでのイベントが軒並み中止となったことにも影響を受けています。オンラインで開催されるものはありますが、オンラインでの講義に慣れていない先生もいたり、大学自体に余力がなく手を付けられなかったりすることもあるため、業界全体として停滞感があります。

一方で、オンラインという手法を有効活用することもできると考えています。以前から、企業が大学に対してアプローチをするのはハードルが高いという印象がありました。オンラインでのコミュニケーションにより、そのハードルを下げられるのではないかと思います。

その中では、先ほど渋谷さんのお話しにもあったように、信頼関係がカギになると思います。当社としても信頼関係の構築と、それをベースとした共同研究のマネジメントの仕方、いかにアウトプットを出していくのか、あるべき姿を日々模索している段階です。

――渋谷さんは、課題やニーズについてどのように捉えていらっしゃいますか。

FF・渋谷氏:実業の立場からすると、大学の先生方の論文や研究成果は、「こういう実績があり、こういうことができる」というプロフィールとして見ています。その上で、実業としてその先にどんな未来を一緒に創ることができるのかを重視します。つまり、大学というよりも、その先生が対等なパートナーになれるかどうかを見ているのです。

この文脈でいくと、企業と先生の間に入るコーディネーターの能力が問われます。須藤さんがおっしゃる通り、コーディネーターが企業の経営層と先生との信頼関係を築くことがベースとなります。その上では、知識だけではなく、人間的な能力を備えている必要があります。

ただひとつ厄介なのは、ファイナンスが付いてこなければ動かないということです。企業と先生の間でコミュニケーションが進んでいたとしても、金融機関やVCが、この事業と個の研究分野の共創で何が起こるのかを読み解ける能力がなければ、お金は動きません。

産学連携のビジネスバリューやソーシャルバリューを、行政機関や金融機関がしっかりと理解して、政策的な投資や政策立案をしていかなければ、業界全体が立ち行かなくなります。そこは大きな課題だと感じています。


北大・川村氏:的を射たお話しだと思います。私の場合、企業との共同研究は指名で声を掛けていただくことがほとんどで、たとえ私が他の大学に行っても変わらないと思います。もちろん、企業から指名をしていただく努力をしている事が前提ですが、企業のご担当者が私と一緒に何かをしたいと興味を持ってくださり、私の話を7割理解してくださったとしても、稟議を経過し、経営者に届く時点では良くて3割程度の理解です。

そこで、説得するための材料をしっかりと渡すようにもしています。こうした工夫をしながら、研究内容を押し付ける事無く共同研究の相手を探しています。つまり、企業のニーズを聞いてから、落としどころを一緒に探っていくようにしています。

一方、企業と大学は、それぞれ価値観や方向性が異なります。大学の先生は「個」で対応をしていますが、企業は「組織」で対応をしているため、どうしてもすり合わせが難しいことがあります。そのような時、間にキャンパスクリエイトさんのような存在があることで、それぞれの言い分や想いを汲み取り、調整をすることができるのだと思います。人間臭い調整にはなりますが、コーディネーターの役割は非常に重要だと感じています。

――渋谷さん、川村先生、双方のお話しにコーディネーターの重要性ということが出てきました。キャンパスクリエイトとしてマッチングを行う際、どのようなことを心掛けていらっしゃるのでしょうか。

CC・高橋氏:お二人にお話しいただいた通り、技術分野だけではなく、数字に表れない「人となり」などは、かなり慎重に見てマッチングをしています。オンライン化により、日本全国の先生や企業とのコミュニケーションが容易になったことは事実です。

しかし、マッチングをするには、その場に行って企業がどうやってモノを作っているのか、どう顧客と接しているのか、そして先生が研究室をどう運営しているのかなどを確認しながら相性を見ることも大切です。その辺りは今後の課題だと考えています。

DX環境における産学連携の展望とは?

――高橋さんがおっしゃった通り、直接出向くことが難しいという前提がある中で、どのように産学連携を進めていくのか、今後の産学連携の在り方や、DX環境において産学連携の展望をお聞かせください。

CC・須藤氏:オンラインの利点を活かしながら、リアルでは大事なことを見失わないことが必要だと思います。気軽に参加できる分、最初のモチベーションは低いのかもしれませんが、オンラインによって産学連携のハードルが下がるということは重要です。当社が12月に行うオンラインイベントも、そうした狙いから企画に至っています。

ただ大事なのはその後です。信頼関係ベースで進めていくためには、コーディネーターがしっかりとフォローすること、そしてリアルでは双方が納得感を持った上で推進をしていくべきだと考えています。

――川村先生、実際に企業とのディスカッションなどがオンライン化によって容易になっていると感じますか。

北大・川村氏:そうですね。確かにプロジェクトの相談を受けるなかで、対面よりもZoomなどの方が気軽にできることはもちろんあります。一方、せっかく時間を捻出したにも関わらず、結局何も話が進まなかったということがあることも事実です。

「ちょっと上司にAIについて話を聞いてこいと言われたから」という軽い情報収集の意識で、かつ話を聞くだけならタダ、という態度ではお互いに不幸です。そういうプロフェショナルの使い方というのは、悪しき習慣であり、改めて欲しいところです。会社にとって、その先大きなリターンを期待するからこそ声を掛けるのでしょうから。

もちろん大学の先生も、その期待に応えられる意識で臨む必要があります。そうした、双方の意識を含めて、今後の日本の産学連携の在り方を変えていく必要があるでしょう。

――企業目線では、渋谷さんはどう考えていらっしゃいますか。

FF・渋谷氏:川村先生がお話しになったことが、今後のDX環境における産学連携のキモだと思います。企業の中には、自分たちの点数稼ぎのネタを取りに来ているという人もいますが、非常に失礼なことです。それに対して怒りを抱いている先生も、少なからずいると思いますし、この悪しき習慣が続けば、優秀な研究者がどんどん海外に流出する事態が促進されかねません。

一方で、大学サイド、先生サイドも、基本的なデジタルリテラシーから差が出てきていると思います。企業に無償で情報を提供することが先生の価値ではなく、研究を進めてアウトプット、アウトカムを創ることこそが社会的な価値ですから、そちらにできるだけフォーカスしていただきたいと考えています。DXとは、そうした本質的な価値にフォーカスすることですから。

DX時代の産学連携において、一つの答えを持つイベント

――最後に、12月のイベントについてキャンパスクリエイトのお2人に伺いたいと思います。本イベントの企画意図について聞かせてください。


↑12月15日~17日開催 『産学連携オンラインマッチングEXPO』

CC・高橋氏:本イベントは、企業が遠隔で参加できる次世代オンライン型の産学連携・知財流通マッチングモデルの構築を目指して、全国の大学が保有するシーズや大学発ベンチャーの技術と、オープンイノベーションに取り組む企業等とのオンラインマッチングイベントです。

意図として、ひとつは先ほどから須藤から話をした通り、産学連携の敷居を下げたいということがあります。オンラインだからこそ参加しやすく、活発なコミュニケーションが取れるのではないかと思います。企業が大学にアプローチするハードルを下げたいというだけではなく、大学の先生にももっと企業や社会の声を聞いてもらいたいのです。

もうひとつは、大学の研究シーズで求められているものが、より実践的になっていることが背景としてあります。危機的状況だからこそ、企業も実践的なアウトプットを求め始めている為、より実践に近い領域、アウトプットのイメージが付きやすいシーズに関して、声を掛けています。そういう点で、実践的な産学連携に取り組むきっかけになると考えています。

――特にイベントの見どころとなるのは、どのようなところでしょうか。

CC・高橋氏:私たちは電気通信大学がバックグラウンドのため、AIや情報通信系の分野に強いと思われがちですが、今回の展示会では、材料系やライフサイエンス領域など、広域TLOとして培ったネットワークを通じて、幅広い研究シーズの発表を予定しています。

もうひとつ、大学のシーズの出口として、大学発ベンチャーの技術に注目していると先ほどお話ししましたが、特別企画としてベンチャーピッチも計画しています。

CC・須藤氏:ウィズコロナ、アフターコロナで、産学連携が盛り上がるようなエコシステムをどう創るか、それが今後の目標です。今回のイベントはそのための大きな取り組みとなります。ぜひ参加をしていただき、ご意見をお聞かせください。

取材後記

コロナ禍において、産学連携の新たな課題が発生したというよりは、元々あった課題が無視できなくなっているのだと感じた。お互いに対する理解や尊重、イノベーションの目的の明確化、大学と企業をつなぐコーディネーターの信頼構築力、そういった本質的な問いが突きつけられているのだろう。

これからの産学連携の在り方を模索する中で、今回キャンパスクリエイトが主催するオンラインイベントは、大きな意味を持つ。『産学連携オンラインマッチングEXPO』は、2020年12月15日、16日、17日の3日間開催。大学、国立研究開発法人、大学発ベンチャーが数多く出展し、研究者・開発者によるプレゼン、研究・技術展示、来場者と出展者と面談が行われる。DX時代の未来を見据え、産学連携に取り組みたいという人は、ぜひ参加してみてほしい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵)

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  • 曽田 将弘

    曽田 将弘

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  • 早瀬 信行

    早瀬 信行

    • 学校法人 東洋大学 
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