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【総合商社・原田産業×スタートアップ】ユーザーヒアリング32社に、ニーズ調査100社実施の採択企業も!事業がブーストするアクセラの魅力を2社との対談から紐解く

【総合商社・原田産業×スタートアップ】ユーザーヒアリング32社に、ニーズ調査100社実施の採択企業も!事業がブーストするアクセラの魅力を2社との対談から紐解く

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2022年2月、総合商社の原田産業株式会社(以下、原田産業)は、2期目となるアクセラレータープログラム「HARADA ACCELERATOR 2021」のデモデイを実施した。デモデイには、昨年、実施されたビジネスプランコンテストで採択された以下のスタートアップ6社が登壇。

■株式会社エナジーフロント 「介護向けプロダクト”リフティ・ピーヴォ”の海外展開」

事業概要:企業や研究機関の開発や市場開拓支援を行い、メーカーとしてユニバーサルデザインブランドAUNを展開


■株式会社Medifellow 「海外駐在員向けのヘルスケアサービスの提供」

事業概要:全世界に全診療科のオンラインヘルスケアを提供


■株式会社Lightblue Technology  「外食・食品産業向けにペストコントロールソリューションを提供」

事業概要:人にフォーカスした画像解析技術”Human Sensing”で、人の状態に関する複雑な解析を超高速/超軽量で計測・データ化


■株式会社Nossa  「通信業界向けに360度映像コミュニケーションツールを提供」

事業概要:フィールドワーカーの遠隔サポートを可能にする、360度映像を用いたコミュニケーションツール「Nossa360」の開発・提供


■Hmcomm株式会社(エイチエムコム)  「AI異音検知などサービスの販売方法の具体化」

事業概要:ディープラーニングを用いた音声認識処理・自然言語解析処理技術のプラットフォームと、異音検知ソリューションを提供


■Animal Alternative technologies 「培養肉製造システムRenaissance Farms®の国内展開」

事業概要:顧客の培養肉事業を開発~量産フェーズにおいて、原料及びハードウェアの調達、バイオプロセスの調整まで一気通貫でサポートするRenaissance Farms®培養肉製造システムを展開。

AI画像解析、音声認識処理・自然言語解析処理、360度映像を用いたコミュニケーションツール、独自の機構による介護・リハビリ製品、培養肉ソリューション、オンライン医療と、約5ヶ月間にわたる幅広い領域での共創の成果が発表された。今後、原田産業では、これらの成果をもとに事業化に向けた取り組みを加速させていく。

そこで、今回、TOMORUBAでは「HARADA ACCELERATOR 2021」を通じて、顧客の変革パートナーとして、最高の一手を共創している原田産業の取り組みの全容に迫るインタビュー取材を実施した。プログラムの事務局を担当したBusiness Co-Creation Teamの鈴木一平氏、佃征志郎氏、加藤智明氏の3名。そして、採択企業である株式会社Nossa(以下、Nossa)の福井高志氏、株式会社Lightblue Technology(以下、Lightblue Technology)の園田亜斗夢氏をお招きし、共創の過程や現在について伺った。

――原田産業は、顧客にどのような新しい価値提供をしているのか。顧客課題をどのように考え、解決に向けてACCELERATORの実践を続けているのか?また、約100年の歴史を誇る老舗総合商社と最新技術に強みを持つスタートアップの共創は、いかにして形作られているのか? 

まずは原田産業の3名に「HARADA ACCELERATOR 2021」の総括をお聞きし、そのあとにNossa、Lightblue Technologyそれぞれの共創内容について深掘りした。

顧客課題に日々向き合う社内の各事業部から共創テーマを設定。結果、採択6社中3社でPoCが決定。顧客との親密な関係性を生かし、素早いライトパーソンへの到達・濃密なユーザーヒアリングを多数実現。

――「HARADA ACCELERATOR 2021」のデモデイが終了しました。まずは、プログラム全体の所感をお聞かせください。

原田産業・鈴木氏:昨年度に比べて、各事業部が当事者意識を持ちやすいプログラムを設計できたと感じています。今年度のプログラムのポイントは、社内の6事業部が共創テーマを設定し、事業部内の開発手法の一つとして共創を位置付けたことです。

昨年度のプログラムでは、弊社の事業ドメインからやや離れた共創案を採択したのですが、それ自体は有意義な試みではあるものの、既存の事業部が共創案を我が事として落とし込むまでに時間がかかりました。そうした事態を避けるため、各事業部に共創テーマを設定してもらいました。そして、各部署が共創活動の手ごたえを少しずつ感じられることも目指していました。結果的に昨年度よりも当事者意識が高まり、共創のスピード感も大幅に向上しています。


▲原田産業株式会社 Business Co-Creation Team ゼネラルマネージャー 鈴木一平氏

――「共創のスピード感が向上した」とは、具体的にどのような変化があったのでしょうか。

原田産業・佃氏:共創の初期段階から深い議論ができるようになりました。昨年度は「どの事業部が共創を受け持つのか」から話を始めなければならなかったし、担当の事業部が決まっても事業ドメインと共創案の合致点を探るところがスタート地点でした。

それが、今年はすぐに本質的な議論に着手できた。この変化は、具体的な成果にも表れていて、今年はすでに採択の6社中3社でPoCが実施又は決定していますし、プログラム終了後も継続して取り組んでいくと決まった案件がほとんどです。


▲原田産業株式会社 Business Co-Creation Team プロジェクトマネージャー 佃征志郎氏

原田産業・加藤氏:スピード感の向上は私も実感しています。議論が深まりやすいのはもちろんですが、今年はユーザーヒアリングなど、共創案を協業先に繋げるフェーズにも速やかに移行できました。各事業部がテーマを設定しているので、カタリスト(採択企業を伴走支援する原田産業の担当者)も共創案にマッチするお客様を想定しやすかったのではないでしょうか。


▲原田産業株式会社 Business Co-Creation Team プロジェクトマネージャー 加藤智明氏

――ユーザーヒアリング件数は採択企業1社平均で10〜15社だったと伺っています。約5ヶ月間のプログラム期間でこの数字は驚きです。

原田産業・佃氏:そうですね。最も多かったのは、Lightblue Technologyさんです。取引先全体の中から属性を絞って32社にユーザーヒアリングを実施、その内20社からニーズを確認できました。全体としてもユーザーヒアリングの実施効率は格段に良くなっています。

弊社は総合商社ですが、メーカーさんやエンドユーザーさんとも日常的にコンタクトしているので、お客様との関係性が親密です。多数のユーザーヒアリングが実施できたり、素早くライトパーソンに到達できたりしたのは、日々の活動の賜物ですね。弊社のネットワークそのものが「HARADA ACCELERATOR」の強みになっていると思います。

【Nossa×原田産業】 30社以上へのコンタクトなど原田産業のサポートが追い風となり、プログラム期間中に受注1件、トライアル2件を獲得

――共創テーマ「建設業界向け快適・安全な空間ソリューション」では、Nossaが開発する360度映像コミュニケーションツール「Nossa360」をローカル5G環境で活用する共創案が採択されました。はじめに、Nossaの採択理由をお聞かせください。

原田産業・鈴木氏:共創テーマでは建設業界向けとなっていますが、本件の協業先は通信業界です。弊社では、以前から通信関係の商材を扱っているのですが、ハードウェアの提供が中心でした。これからはハードウェアのみならずソフトウェアも活用したサービス提供も行っていきたいと考えていました。他方、通信業界のお客様にも、ローカル5G環境で有効活用できるソリューションへのニーズが高まっており、双方の課題にフィットするのがNossa360でした。

――Nossa代表の福井さんにもお伺いします。Nossaが「HARADA ACCELERATOR 2021」に応募した理由を教えてください。

Nossa・福井氏:Nossa360は幅広い業種で利用できるツールですが、リソースに限りがあるなかで、どの業界に優先的にアプローチしていくかを模索することが課題でした。原田産業さんは総合商社として数多くの事業やネットワークを保有されていますので、プログラムに参加することで相性の良い業界を見極められるのではないかと考えました。実際に、当初から建設業界向けの共創テーマに応募していたわけではなく、「その他」のカテゴリでエントリーしています。


▲株式会社Nossa 代表取締役 福井高志氏

原田産業・鈴木氏:応募企業の皆さんには、共創テーマごとにエントリーしていただいているのですが、共創の可能性を狭めたくなかったので、事務局側が事業部に提案して採択を検討してもらうケースもありました。Nossaさんの場合、それが通信業界向けの共創テーマに繋がった形です。

――共創はどのような過程で進んでいったのでしょうか。

Nossa・福井氏:原田産業さんには30社以上にコンタクトを取っていただき、私が同席のもと7社でNossa360のデモを実施しました。その後、福岡の通信事業者である株式会社QTnet様とPoCを実施し、最終的にはQTnet様がローカル5G環境を提供する九州工業大学様から受注をいただきました。現在までのプログラムの成果は、受注1件、トライアル2件です。

――プログラム期間中に受注を獲得されたのですね。デモでの提案先やエンドユーザーの反応はいかがでしたか。

Nossa・福井氏:通信事業者さんのニーズを肌で感じることができました。もともとローカル5G環境でのNossa360の活用は想定してはいましたが、改めてニーズを確認できました。

また、原田産業さんと協業先との関係性の強さが非常に心強かったですね。デモの場でも「原田産業さんが言っているのだから、まずは話を聞いてみよう」という雰囲気があって、取り組みも進みやすかったです。一般的なアクセラレーションプログラムの場合、協業先との関係性はあっても、その先の適切な事業部や人物にたどり着くまでに時間を要することがしばしばあります。

しかし、原田産業さんの場合、すぐにライトパーソンに繋げていただけましたし、デモの最中も「以前、こんな課題をお持ちでしたよね」や「競合する製品はありますか」など、私からは尋ねられないこともどんどん掘り下げてくれました。こうしたサポートが受けられるのは「HARADA ACCELERATOR」ならではだと思います。

――九州工業大学からの受注にも原田産業からのサポートが影響していますか。

Nossa・福井氏:はい。九州工業大学様はキャンパス内のコワーキングスペースにNossa360をご導入いただくのですが、その担当者の方がデモに参加されていたことが受注のきっかけでした。Nossaだけではなかなかたどり着けない人物に直接お会いできたのは、原田産業さんのお力あってこそです。

――共創の今後の展望をお聞かせください。

Nossa・福井氏:まだ、詳細は決まっていないのですが、通信事業者さんがローカル5Gのソリューションを求めていることは確かなので、まずは原田産業さんと一緒に販路を広げていきたいです。

原田産業・鈴木氏:弊社としても、まずはNossaさんと市場を開拓していくつもりです。商社の強みの一つは、さまざまな価値やサービスをバンドルしてご提供できることだと考えています。その事よりお客様とのコミュニケーション機会を点から線へ、面へ、と展開していきたいと考えております。そこで生まれた機会をNossaさんへまた還元できればと思います。

また、弊社も選ばれる立場だと思っているので、今後も良い緊張感で取り組みを進めていきたいです。もし、Nossaさんが他社のほうがパートナーとして適していると思われるのであれば、他社を選んでいただいてもよいと思います。だからこそ、弊社は選ばれる存在になれるよう、真剣に努力を続けていけると思いますので。

――最後にお伺いします。福井さんは、どのような企業が「HARADA ACCELERATOR」に適しているとお考えでしょうか。

Nossa・福井氏:自社のソリューションがどの業界にマッチするかや、特定の業界の課題やトレンドを詳しく知りたいという企業には、非常にメリットが大きいと思います。市場の生の声を聞けるのが「HARADA ACCELERATOR」の大きな魅力だと思いますので、ご興味のあるスタートアップさんにはぜひご参画をおすすめします。


【Lightblue Technology×原田産業】 100社以上へのニーズ調査。プログラムを通じて、自社だけでは辿り着けない両社にとっても新たな市場ニーズ・課題にアクセスできた

――共創テーマ「外食・食品工場に向けたサステナブルソリューション」では、Lightblue TechnologyのAI画像解析技術を活用したペストコントロール(※外食・食品産業における害虫駆除・防除)ソリューションが採択されています。採択理由を教えてください。

原田産業・佃氏:弊社では、長年、「食」に関する事業を展開しているので、オペレーションコストが外食・食品産業の重要な課題であることを把握していました。さらに、2021年6月からは、食品を扱う全事業者に国際基準の衛生管理手法「HACCP」が完全義務化され、外食・食品産業における業務効率化のニーズが急拡大していました。

その状況を踏まえ、弊社は衛生管理ソリューション「HACCP Station」を提供開始したのですが、Lightblue TechnologyさんのAI画像解析技術は衛生管理に親和性が高く、「HACCP Station」のソリューションを強化していくうえで有効だと思われました。

また、Lightblue Technologyさんがテクノロジーファーストの会社ではなかったというのも採択のポイントです。Lightblue Technologyさんは非常に多彩な技術をお持ちですが、それを課題解決のために活用するという前提で事業を作られている点が魅力的でした。

――Lightblue Technologyが「HARADA ACCELERATOR」に応募された理由をお聞かせください。

Lightblue Technology・園田氏:私たちは人にフォーカスした画像解析技術を開発・提供しているのですが、これまで主に技術をご提供してきたのは、建設業や製造業、林業などの安全管理の分野でした。安全管理は人命にも関わるため、画像解析に非常に高い精度が求められています。ときには限りなく100%の精度が要求されることもあり、技術的な限界に直面することや、実導入するまでの意思決定に長いプロセスが必要なことも多くあります。

そのため、その他の分野への参入も検討していたのですが、私たちはリード獲得やニーズ調査が得意なわけではないので、その部分のリソースをお借りしたいというのが応募の理由でした。


▲株式会社Lightblue Technology 代表取締役社長 園田亜斗夢氏

――共創案のペストコントロールソリューションにたどり着くまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか。

原田産業・佃氏:先ほどもお話した通り、当初は「HACCP Station」のソリューション強化を目的にしていたのですが、Lightblue Technologyさんの技術と業界のニーズを知っていくうちに、ペストコントロールに焦点が絞られていき、最終的には「HACCP Station」と独立したソリューションが出来上がったというのが共創の流れです。

Lightblue Technology・園田氏:ペストコントロールというテーマには、私たちだけでは辿り着けなかったと思います。私たちは、原田産業さんと違ってお客様の現場を知らないので、外食・食品産業の方々がペストコントロールにどれだけ苦心していることや、その領域にデジタルの力が求められていることなんて想像もできませんでした。

そうしたピンポイントの課題を解決するソリューションはビジネスとしての継続性も期待できますし、共創のパートナーとして、原田産業さんはとても心強かったです。

原田産業・佃氏:今回の共創は弊社としても貴重な経験ができました。実は、弊社も外食・食品のお客様がペストコントロールを課題視していることを把握できていませんでした。しかし、Lightblue Technologyの技術をご紹介していくうちに、あちらこちらからペストコントロールについての話題が出てきたのです。

そこで、外食・食品産業のお客様100社以上にペストコントロールに焦点を絞ってニーズ調査をしてみたところ、予想以上の反響で20社からニーズを確認できました。同じお客様でも、ご提案の切り口によって、全く違うニーズが浮き彫りになるというのは大きな学びになりましたね。

――園田さんは、他のアクセラレータープログラムと比べて、「HARADA ACCELERATOR」のどのような点が優れているとお考えですか。

Lightblue Technology・園田氏:「スタートアップと目線を合わせてくれる」という点です。例えば、プログラムの担当者の方は熱心だったとしても、現場の社員の方にはその熱が伝わっていなくて、共創が社内で閉じてしまうというケースは多いと思います。その点、原田産業さんは、スタートアップとともに社外の協業先のほうを向いて取り組みを推進してくれました。

今回の共創では、現地調査を通じて、技術の検証だけでなく、ビジネス面の検証まで実施できたのですが、それだけの成果を残すができたのは原田産業さんの積極的な姿勢があったからだと思います。

原田産業・佃氏:スタートアップと商社ではミッションや立ち位置が異なるので、プログラムでは私たち事務局のメンバーが間に入って、双方の常識をすり合わせるよう常に心がけていました。Lightblue Technologyさんに、その点を評価していただけたのは嬉しいですね。


――最後に、共創の展望についてお聞かせください。

原田産業・佃氏:まもなく、クロージングのためのミーティングが予定されているので、その席で両社の意思を確認しながら共創の今後について話し合います。今回のプログラムでは、ビジネスの全体像や市場規模をしっかりイメージすることができたので、個人的にもこの共創にはとても期待しています。

Lightblue Technology・園田氏:私たちも、共創には十分な手応えを感じています。また、私としては、プログラムを通じて、原田産業さんと一定の信頼関係を構築できたと思っているので、今後はペストコントロールの分野に留まらないお付き合いを望んでいます。

特に、私たちはグローバル展開も狙っているので、原田産業さんと海外事業でご一緒できれば嬉しいです。そのためにも、今は目の前のペストコントロールの分野でしっかり成果を残したいですね。



取材後記

「私たちの得意分野は『足を動かすこと』なので」――原田産業の佃氏は、取材中にそう漏らした。1社につき30件を超えるユーザーヒアリングの実施や、約5ヶ月間で3件のPoCなど、「HARADA ACCELERATOR」における共創の推進力には目を見張るものがある。その源泉が、原田産業の社員一人ひとりの「足を動かすこと」にあることは間違いない。老舗商社ならではのバイタリティと実行力。スタートアップにとってこれほど心強い味方はないだろう。

「HARADA ACCELERATOR」はまもなく2期目を終えようとしている。今、まさに芽吹き始めている新たな価値が、どのような花を咲かすのだろうか。採択6社の今後にも注目だ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太、撮影:齊木恵太)

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