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アジャイル開発、AI、クラウドの専門家が在籍――DNPのリアル×デジタル技術で共創実装力を加速。

アジャイル開発、AI、クラウドの専門家が在籍――DNPのリアル×デジタル技術で共創実装力を加速。

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大日本印刷株式会社(以下、DNP)が主導するオープンイノベーション「DNP INNOVATION PORT CO-CREATION#2020」。印刷技術を主軸に、出版、包装、エレクトロニクスなど、様々な領域で製品やサービスを提供してきた同社が、パートナー企業との連携によって新たな価値を共創し、”本気で”社会課題の解決をねらう取り組みで、「子育て」「モビリティ」「環境」の3つのテーマで募集を開始している。


▲「DNP INNOVATION PORT CO-CREATION#2020」の詳細はコチラ

同社は印刷技術のイメージが強く、AI・アプリ開発・デジタル・DXなどにも強いというイメージはなかなか想起しづらい部分もあるが、今回は、こうした共創の取り組みに対して、AIやセンサー技術、ブロックチェーン、5Gなどの先端テクノロジーを用い、DNPのオープンイノベーションを下支えする部隊である「DX基盤開発部」に注目。同部から佐藤陽平氏、さらに「DNP INNOVATION PORT」を主導するビジネスデザイン本部から金井剛史氏を招いてインタビューを実施した。実際に手がけてきた共創事例を紹介していただきながら、同社が先端テクノロジーを駆使して、どのような価値を生み出そうとしているのか、共創においてどのようなリソースとして活用できるのか掘り下げた。

2020年に発表した中期経営計画では、IoT・次世代通信関連を注力事業として掲げたDNP。なかでも、情報コミュニケーション事業においては「DX for CX」というキーコンセプトを掲げ、デジタル技術の活用をより一層推進する姿勢だ。今、同社の最前線を張る「開発現場」の様子について伺った。


▲大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部 DX基盤開発部 アジャイル開発推進グループ 佐藤 陽平氏

2011年にDNP新卒入社後、システム企画部門に配属。経験を積んだのち、システム開発部門に異動となり、以来、様々な開発案件に従事。2020年4月にDX基盤開発部に配属とってからは、同社におけるアジャイル開発を牽引する立場として、数々の開発現場で手腕を振るっている。


▲大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 第1CXセンタービジネスデザイン本部 第1部マーケティンググループ 金井剛史氏

2008年にDNP新卒入社後、主に鉄道会社をクライアントにマーケティングやSP業務の支援を担当。2012年頃からは研究所と共に先端技術を活用したナビゲーション、インフォメーションにかかわるサービス、アプリ開発などに従事。2018年10月にビジネスデザイン本部にジョインする。

アジャイル開発、AI、クラウド ー DNPにDXを先導する新たなエンジニア組織。

――まず、佐藤さんが所属するDX基盤開発部について教えてください。

佐藤氏 : DNPは2020年4月から3ヵ年間の中期経営計画をスタートさせています。そのなかで、情報イノベーション事業部が掲げたキーコンセプトが「DX for CX」です。「DX for CX」とは、ただ単にデジタル化やICT化を進めるのではなく、新たな顧客体験(CX)を実現する手段としてDXを活用することを意味しています。

情報イノベーション事業部内に新設されたDX基盤開発部は、「DX for CX」を技術やシステムの側面からサポートして、具現化する役割を担っており、アジャイル開発や、AI技術、クラウドを推進しています。

――アジャイル開発やAI技術、クラウドを推進する背景や狙いは何でしょうか。

佐藤氏 : まず、アジャイル開発についてですが、現在の世の中に新たな価値を提供するためには、アジャイル開発は必須の手段であり、DNPにおいても体制の確立が急務です。アジャイル開発に必要な環境やアセットを整備してから実践するのではなく、実践を通じてノウハウを蓄積し、それと同時に環境やアセットの整備を進めることで、社内におけるアジャイル開発体制の確立を目指しています。

また、新たな顧客体験を創出するうえで、AI技術は欠かすことができません。そこで、近年、急激に進化するAI技術を社内に取り込み、DNPの強みである印刷技術や情報技術を生かしたAIサービスの開発・提供を目指しています。

最後に、クラウドに関しては、セキュリティ・ガバナンスを確立したうえで、プロダクト開発環境としてのマルチクラウド化を推進しています。AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructureなどに関する専門知識を蓄積しています。

私たちの組織は、プロダクトを開発するのはもちろん、アジャイル開発・AI技術・クラウドを社内で当たり前のものとして利用できる環境を作っているのが特徴です。飛行機に例えるなら、「開発」という機体の操縦と、「環境づくり」という滑走路の整備を両方行うのが、DX基盤開発部のミッションです。

Google共同ハッカソン、AWS DeepRacer ー DNPのデジタルを支えるAI人材育成

――「滑走路を整備する」とは、具体的にどのような活動なのでしょうか。

佐藤氏 : ノウハウの蓄積や技術を学ぶ取り組みに力を入れています。その一例が、AI分野の人材育成を目的として開催した、Google Cloudとの協働ハッカソンです。


▲2020年2月よりスタートさせたハッカソン。DNPからは全国の開発拠点から選抜したエンジニアが参加した。(https://www.dnp-innovationport.com/news/1318/


ハッカソンは2020年2月からスタートし、DNP側から選抜された15名のエンジニアとGoogle Cloudのエンジニアが、半年以上にわたってプロダクトの共同開発を行っています。技術交流を通して、他社のカルチャーや開発手法を学ぶだけでなく、開発したプロダクトは実用化・事業化を視野に入れるなど、人材の急成長を促す仕組みを採用しています。

また、「AWS DeepRacer」というAIの強化学習で走行するラジコンカーを使った取り組みでは、一定以上の成果を残すことができました。DX基盤開発部では、AWS DeepRacerを用いて、社内レースや子供向けのAI体験会、大学での講義などを開催し、スキルを蓄積。最終的には、ラスベガスで開催された「AWS re:invent 2019」内のサーキットレース世界大会「AWS DeepRacer Championship Cup」で、DNPのエンジニアが1位と2位を獲得するに至りました。

こうした取り組みに共通しているのは、「楽しみながら学ぶ」という点です。やはり、楽しいことは身に付くのも早いですし、仲間も集まりやすく、周囲の協力も得られやすいです。AWS DeepRacerの場合も、当初から「世界一を目指します」と社内に宣言していたため、グループ会社も含めて数多くの人材が集まり、互いに切磋琢磨し、情報共有をしながら、技術を高めていくことができました。現在のDX基盤開発部の技術力は、こうした取り組みの末に築き上げられました。


▲DX基盤開発部の若手エンジニアたち。左から佐藤氏、「AWS DeepRacer Championship Cup」での好成績を牽引した堀江直人氏、米澤美貴氏、加藤輝実氏。

次世代型店舗から動画配信プラットフォームまで。DX基盤開発部のリソースを活かしながら実現してきた共創事例の数々

――DX基盤開発部では、すでに複数の共創プロジェクトを推進してきたと伺っています。これまで、どのような「新たな顧客体験」を生み出したのでしょうか。

佐藤氏 : まず挙げられるのが、最新のIoT機器を体験できる次世代型店舗「boxsta(ボクスタ)」の事例です。boxstaは、主にスタートアップ企業が開発した、最新のIoT機器が体験できる店舗なのですが、店内に設置したカメラとマイクで来店客の動きや音声をセンシングして、そこから得られるデータをAIで解析し、メーカー側にフィードバックする仕組みになっています。この音声のセンシングに用いられた音声テキスト自動変換技術や自然言語処理技術は、スタートアップのラトナ株式会社との共創により開発されました。


▲2019年11月〜12月、渋谷スクランブルスクエアにて展開された「boxsta」。


金井氏 : boxstaのビジネス面での肝は、来店客の反応や表情をデータ化できる点です。従来、百貨店や家電量販店などでは、販売員の方が直接コミュニケーションをして来店客の反応を伺い、アナログな手法でメーカー側にフィードバックしていました。

来店客のリアルな反応は、製品開発やマーケティング施策を実施するうえで非常に重要な情報です。しかし、そのフィードバックがこれまでは不完全な状態で行われていました。そうした課題を、AIとセンシングの技術で解決するのがboxstaです。

佐藤氏 : boxstaの開発にあたっては、プロジェクトの初期段階からエンジニアが携わっています。こうした開発スタイルをDX基盤開発部では重要視していて、プロダクトを手がける動機やその価値を見出す時点からエンジニアが入り込むことで、より精緻な仮説の設定や最適な仕組みづくりが可能になります。

――そのほかの共創事例はどのようなものでしょうか。

佐藤氏 : 2017年には「FUN’S PROJECT COLLEGE」というアニメーションクリエイターのためのオンライン学習プラットフォームをリリースしました。FUN’S PROJECT COLLEGEの特徴は、モバイル環境で学習コンテンツの動画を視聴できる点です。移動中などの少しの空き時間にアニメーションの技術の学習ができるという、2017年当時としては、珍しい顧客体験を提供できました。この動画配信のプラットフォームの構築では、社外のパートナー企業と協力し、デザインやUI、サーバーサイドの仕組み作りまで、一貫した設計思想のもと開発を進めました。

また、「移動に困っている人」と「手助けしたい人」をマッチングするスマホ用アプリ「Mayii(メイアイ)」も共創事例の一つです。Mayiiは、障がいを持つ方や高齢者などの移動に困難を抱える人と、そのサポートをしたい人が、アプリ上でお互いの位置情報を共有し、移動の手助けを行うアプリです。この開発はDNPの内製チームが主軸となって進めましたが、リアルタイム位置情報共有技術のシステム構築についてパートナー企業にご協力いただきました。


リアル×デジタル ー オールDNPの組織力/リソースが共創実装力を加速

――今後のDX基盤開発部の展望を教えてください。

佐藤氏 : 私個人としては、この組織をさらに拡大して、よりビジネスサイドに近い存在の部署にしたいと考えています。私たちはアジャイル開発、AI技術、クラウドを専門としていますが、これからのエンジニアはビジネスやサービスを理解し、プロダクトのコンセプトを最適な形で具現化する力を備えなければいけないと思うので、今後も人材育成などを通じて、より社内での存在感を増していきたいです。

――DX基盤開発部と共創するうえでの魅力は何でしょうか。

佐藤氏 : DNPは印刷会社を原点とする会社なので、文字、画像、デザイン、UI/UXといった分野に関する知見やノウハウは国内でも群を抜いています。そうした卓越した知見やノウハウをテクノロジーと融合させる開発ができるのは魅力ではないでしょうか。

また、DNPは製造業の側面も持っているので、テクノロジーをリアルの世界と繋げやすい点も強みです。例えば、アプリの開発だけでなく、デジタル技術が埋め込まれた端末や什器も社内で製造できるため、リアルな世界においても価値提供したいパートナー企業には大きなメリットになると思います。

金井氏 : 私たちビジネス企画サイドからすると、DX基盤開発部をはじめとしたエンジニアチーム自体がパートナー企業さんにとってDNPと共創していく魅力のひとつだと考えています。

特に佐藤さんが所属するアジャイル開発推進グループは、我々が企画を立てる段階から入ってもらったり、スタートアップのみなさんの手法や思考法と近い形で開発にアプローチするチームであるため、パートナー企業の皆さんと同じ目線で議論し、技術的なレベルの話はもちろん、現場にも何度も足を運ぶなどCXにもフルコミットしながら共創を進めることができると思います。

――最後に、現在、DNPとの共創を検討している企業にメッセージをお願いいたします。

佐藤氏 : パートナー企業の皆さんとは、「新たな顧客体験を創出する」という価値を共有しながら、ものづくりをしていきしたいと考えています。

もちろん、音声や画像、テキストデータの意味解析や、ほかにも3Dシミュレーション、VR、AR、モデリングといった3D関連技術など私たちの強みである個別の技術も重視していますが、それ以上に、「新たな顧客体験を実現するためには何をすべきか」を念頭において、私たちと議論し、共に考えていくことができるパートナー企業に出会いたいですね。


取材後記

インタビューのなかで「ここ最近のことですが、『アジャイル』という言葉が社内で定着してきたのを実感しています」と語った佐藤氏。聞けば、アジャイル開発のスピード感や思考法が、近年、社内のシステム系以外の部門にも定着しており、スタートアップ的な機敏さも根付き出しているという。そうした状況を踏まえて、佐藤氏は「アジャル開発の取り組みを組織として推進してきた成果だと思います」と振り返る。

アジャイル、AI、クラウド、機械学習、ディープラーニング etc…ともすれば、テクノロジーは単なる「スローガン」に留まってしまいがちだ。しかし、これらの技術を「当たり前のものとして利用できる環境」を作り上げるためには、多大なる苦労が求められる。DX基盤開発部は、そうした苦難の道を歩み続け、そして現在、その成果が実り始めている。

オープンイノベーションには、乗り越えなければならない「壁」が必ず立ちはだかる。そのときに必要なのは、困難に負けることなく、課題に対してコミットし続ける姿勢だろう。DX基盤開発部にはそうした「やりきる力」が息づいていることを実感した取材だった。

※「DNP INNOVATION PORT CO-CREATION#2020」の詳細はコチラから

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太、撮影:古林洋平)

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