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「ゲーム」×「医療」のかけ算で生まれるビジネスとは?

「ゲーム」×「医療」のかけ算で生まれるビジネスとは?

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オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」では、日々新たな共創事例が生まれている。それは、耳目を集める「大企業×スタートアップ」による共創だけにとどまらない。本記事では、1992年に創業以来、ゲーム事業を主軸としながらもここ数年で医療事業に挑んでいる老舗ベンチャー「株式会社エイプリル・データ・デザインズ」のAUBA活用事例について紹介する。

同社は、コロナ禍のさなかにある今年の3月、「AUBA」に登録。4月頃より共創の可能性を探るべくコンタクトを取り始め、複数の企業と共創を開始しているという。TOMORUBA編集部では、代表取締役を務める濱田功志氏にインタビュー。AUBAを活用するに至った理由や他社と共創を進める際のポイント、今後の共創ビジョンについて聞いた。


▲株式会社エイプリル・データ・デザインズ 代表取締役 濱田功志氏

原点に立ち返り、医療業界へと踏み出す

――御社はゲーム事業が主軸ですが、なぜ医療事業に進出しようとお考えになったのですか。

濱田氏 : そもそも、当社が10年前に始めたオンラインコミュニティ「キャラフレ」は、社会問題を解決したいという想いで始めたものなんです。現実世界に居場所がないと感じ、それをネットの世界に求める人たちの居場所づくりのために、この「キャラフレ」をスタートしました。こうした背景を持つ事業ですから、将来的には引きこもりやメンタルヘルス問題の解決につなげていきたいとの構想がスタート当初からありました。

しかし、ゲーム屋さんが「メンタルヘルス問題を解決したい」と言ったところで専門外ですし、「なんちゃって医療アプリ」になってしまいます。やはり、医療業界に踏み込んで実績を積みながら、そのゴールを目指したい。

こうした考えから、2015年にクラウド問診ツール「問診ナビ(R)」の開発を始めました。この「問診ナビ」の実績を足がかりに、ゆくゆくはゲーム事業と合流させ、オンラインコミュニティを活用しながら、メンタルヘルス問題の解決につなげようと考えています。




――医療業界へと領域を拡大するにあたり、他社との共創で進めようと考えた理由は?

濱田氏 : 時代の流れを読んでいくと、そういう方向に世の中が向かっているとの感触があったからです。ひと昔前の考え方だと、自社のノウハウは知財としてしっかり守ることが当たり前でした。

しかし今は、自社のノウハウをオープンにして、他社のノウハウとシナジー効果を生み出しながら、一緒に繁栄を目指していく時代です。私たちは医療について素人なので、医療業界の専門家や医療関連の事業に取り組まれている方たちとのネットワークを大切にしたいと考えました。

「自社の振り返りツール」として、AUBAを活用

――どのようなきっかけでAUBAを知り、使ってみようと?

濱田氏 : 新型コロナの影響で予定していた営業活動ができなくなり、極端な言い方をすると暇になってしまったんです。そこで一度、立ち止まって自社の振り返りをしようと考えました。事業の「これまで」と「これから」を整理して、自社のポジショニングを見直そうと思ったんです。そんな時に偶然見つけたのが、AUBAでした。

AUBAに登録すると、「プロフィール欄を埋めましょう」というガイドが最初に出てきますよね。このプロフィール欄が、自社の振り返りをする自習教材として活用できると思ったんです。登録するとすぐに、AUBAのカスタマーサポートから連絡がきて、「やり方が分からなければ教えます」と声をかけてもらったんですが、「ちょっと待って、ゆっくり考えたいから」とお伝えして、自分でコツコツと時間をかけてプロフィールの作成に取り組みました。


▲AUBAに掲載しているエイプリル・データ・デザインズのプロフィール画面


――自習教材としてプロフィール欄を完成させた後は、どうされたのですか。

濱田氏 : 納得のいくプロフィールが完成したので活用してみようと思い、何社かこちらからコンタクトを取りました。実際にやり取りをしてみて、先方がプロフィールをよく読んでいらっしゃることが分かったので、コンタクトの取り方はストレートに短く「面談希望です」と伝えています。

――調剤薬局を展開するアイセイ薬局さんと共創を進めていらっしゃると聞きました。アイセイ薬局さんへも濱田さんからコンタクトを?

濱田氏 : はい、そうです。アイセイ薬局さんに興味を持った理由は、私たちが取り組んでいる「問診ナビ」事業と、事業分野が近かったからです。病院やクリニックが医療の中心にあるとした場合、その周辺に調剤薬局や介護施設があります。

私たちは、ど真ん中の病院・クリニック向けというよりは、周辺をカバーしていくことによって、中心の医師の負担を軽減していくことが目標でした。アイセイ薬局さんの場合、事業の中心は調剤薬局です。さらに、介護福祉事業や医療モール開発事業も展開されていて、その幅広さにも魅力を感じました。

――アイセイ薬局さんとは、具体的にどのような取り組みを行われているのですか。

濱田氏 : リリース前なので詳しいことはお伝えできませんが、アイセイ薬局さんが開発しているプロダクトがあるのですが、そのプロダクトの一要素として「問診ナビ」を使ってもらう予定です。先方には、「問診ナビ」を組み込むことで、新しいプロダクトの価値を高められるだろうと感じてもらえました。ポイントは、「患者目線で課題を解決していこう」という点で、ビジョンが一致したことでしたね。

――やはり、「ビジョンの一致」は大事ですね。

濱田氏 : はい、お会いした方と、同じビジョンの実現に向けて意気投合できるかがすべてです。そこに関しては、攻め方はなくて数を打たないと分からない。実際にお会いしてみて、仕事の話をする中で、「波長が合う、合わない」や「意気投合する、しない」はどうしてもある。意気投合できなければ、いくら会社対会社でメリットがありそうでも、うまくいかないと思います。

共創をうまく進めるコツは、「くれくれ」にならないこと

――これまでの取り組みの中から見えてきた、共創をうまく進めるコツについて教えてほしいです。

濱田氏 : AUBAでは、営業行為は禁止と言われていますが、おそらく「営業」と「共創」の違いが分かっていない方も多いのではないでしょうか。とくに大企業が相手だと、「くれくれ」になりがちです。「相手を利用させてくれ」だとか、「相手の◯◯を使って何かさせてくれ」などです。

そういうアプローチだと、うまくいかないと思うんです。やはり、「くれくれ」ではなくて、自分が出せるものをしっかりと発信・提示する。そして、相手が興味を示さなければ、それで終わり。食い下がっても前に進むことはありません。

私は相手が大企業であっても中小・ベンチャーであっても、最初に「こちらからは、これが提供できます」と伝えています。アイセイ薬局さんの場合もそうでした。こちらから出せるものを提案したら、「じゃあ、こういう使い方できますか?」と、逆に提案をしていただけました。こちらから材料や強みだけを提案すれば、その活用方法まで言わなくても、逆に提案をいただけることが多いです。

――なるほど。ベンチャー企業と共創するときに、気をつけるべきポイントはありますか。

濱田氏 : ベンチャー同士の場合だと、アイデアをミックスして、新しい事業案ができても、そこで止まってしまうことがありますね。両者ともに資金的な体力がないので、進めようがないんです。それに、ベンチャー2社がアイデアを掛け合わせて新しいものができても、すべてが自社のものではないので、どこかに「資金を出してください」という提案もしづらい。

ですから、ベンチャー同士がアイデアを合成させて、そこに対して大企業の資本が入るような、「三つ巴」のマッチングができるといいと思いますね。ミックスしたアイデアに対して、旗振りをしてくれる、資本を持った会社が加わってくれると、おもしろいことができるはずです。

――現状、オープンイノベーションのメインストリームは「1対1」ですが、「三つ巴」のような組み方も可能性はありそうですね。

濱田氏 : はい。私たちは自社内にゲーム事業と医療事業を持っているのでよく分かるのですが、ゲームと医療をかけ合わせるだけで、山のようにアイデアが出てくるんです。たとえば、健康に関する記録をつけるのって面倒で続かない。医療業界の発想だけで開発すると、ユーザーは三日坊主で終わります。

しかし、ゲーム屋さんは、モチベーションを維持させるための精神的なインセンティブを付与するだとか、面倒なことをおもしろく続けさせるノウハウをたくさん持っています。あるいは、高齢者はITリテラシーが低いですが、そういった方たちにも、うまく操作してもらうノウハウはいくらでも持っています。

――では、異業種が組み合わさって、おもしろいアイデアが生まれたところに、資本のある会社が加わって、事業化まで持っていく仕組みがあればいいですね。

濱田氏 : はい。AUBAはサイトの設計上、「1対1」が前提となりますが、複数社を絡めていけるようなマッチングプラットフォームに成長してくれるとありがたいですね。

「時代の変わり目」は、新しいものを生み出すチャンス

――最後に、今後どういった事業展開を見据えていらっしゃるのか。共創ビジョンについてお聞かせください。

濱田氏 : さらに事業を広げていきたいと考えているところです。今、新たにアプローチしているのは「教育分野」です。教育分野は以前から取り組みたいと思っていて、Eラーニングにコミュニティ機能を付加するだけで、可能性がずいぶん広がると考えています。教育分野以外では、「地方創生分野」。この分野は、これまでも取り組んできたのですが、今、新型コロナの影響で地方の観光業界が大きなダメージを受けています。私たちとしても何かできればと考えているところです。

――具体的に、何かイメージされていることはありますか。

濱田氏 : たとえば、バーチャルツアーといった地方の経済を応援できるようなものを検討しています。これに関しては、私たちのような都内の企業が勝手に進めても意味がありません。どちらかというと、地方が主体で、私たちがそれをうまくアシストする形で進めていきたいです。

――濱田さんは、新型コロナをどのように捉えていらっしゃいますか。

濱田氏 : 厄災をチャンスという言葉で表現するのは憚られますが、ベンチャーにとってはチャンスですね。時代が動かないことには新しいニーズも産まれず、何もできないんです。時代が変わるタイミングというのは、私たちの望むタイミングでは来てくれませんが、3~4年周期では何かしらやって来ます。

たとえば、iPhoneが日本に上陸しましたが、あのタイミングはベンチャーにとってチャンスであり、勝負時でした。その次はブロックチェーンと仮想通貨ブーム、でもブームがひと段落すると、資本を持つ企業が参入し、淘汰がはじまります。そういう意味では、数年毎に到来する時代が動くタイミングこそが、資本よりアイデアが勝るチャンスです。ビフォアコロナから、アフターコロナに変わるタイミングは、まさしく変化の節目です。

取材後記

「ビジョンが一致しているか」「共創相手と意気投合できるか」を確認し、「先に自分たちが提供できるものを示す」。共創の起点において、どのように動くべきなのか、示唆に富む内容だった。また、「時代が変わるタイミングこそが、ベンチャーやスタートアップにとっては好機」という話に納得感を持つ人も多いのではないだろうか。いかに時代のうねりをとらえて、大波に乗るか。今がまさに勝負時なのかもしれない。

(取材・編集:眞田幸剛、文:林和歌子)



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オープンイノベーション共創事例

AUBAを活用し、事業共創へ至っている企業へインタビュー。オープンイノベーションで重要なポイントなどをヒアリングいたしました。