事業開発の手法「プロトタイピング」におすすめのツール3選。メリットや注意点は?
近年、事業立ち上げの手法として注目を集めている「プロトタイピング」。プロトタイプ(試作品)を作りながら完成形に近づけていくことで、効率的な事業開発を可能にしてくれます。これから事業を作っていく人にとっては、必須のスキル・ノウハウと言ってもいいでしょう。
今回はプロトタイピングを行うメリットや注意点、プロトタイピングを効率的に進めてくれるツールを紹介していきます。
プロトタイピングとは?
プロトタイピングとは、実際のプロダクト開発を始める前に、簡単な機能やデザインのみを実装したプロトタイプ(試作品)を作ることを指します。紙に絵を描いたり、3Dプリンターを使ったりと様々な方法があり、目的やフェーズによって適したプロトタイピングを行うことが重要です。
近年ではソフトウェアやWebサービスの世界で注目を集めるプロトタイピングですが、その考えは古くからありました。例えば、建築物を建てる前に、模型を作って顧客に見せながらイメージをすり合わせていくのもプロトタイピングの一種です。プロトタイプを作ることで、早期に改善点や問題点を見つけ出し、よりよいサービスを生み出す確率を飛躍的にアップしてくれます。
プロトタイピングのメリット
プロトタイピングを行うことで、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
●早期にフィードバックを得られる
プロトタイピングを行うことで、開発の途中でフィードバックを得られるため、顧客やユーザーとの認識のズレを防げます。もし完成品を作ってから問題やニーズのズレが発覚した場合、それまでの作業が無駄になることも。細かくフィードバックをもらったり、検証が行えていれば結果的に無駄がなく、効率的な開発が行なえます。
●チームの一体感を作れる
プロトタイプを作ることで、チームの認識を合わせながら開発を進められます。プロトタイプが行われる以前はリサーチから開発、デザイン、マーケティングとそれぞれのフェーズでそれぞれの専門家がバラバラに仕事をしてきました。
その方法ですと、それぞれのメンバーの視野が自分の担当範囲にフォーカスされてしまい、全体的な視点を失いがちです。プロトタイピングでは、開発前から様々なメンバーの意見を取り入れるため、メンバー全体の一体感を作り広い視野で仕事を進められます。
●撤退のリスクを抑えられる
サービスが完成したからといって、必ずしも成功するわけではありません。市場から受け入れらなければ、撤退する勇気も必要です。しかし、事業への投資が大きいほど、なかなか撤退できずに余計に損失を膨らませてしまうケースもあります。
プロトタイピングなら低コストでテストを行えるため、撤退の意思決定も早い段階で行えます。結果的に事業開発のサイクルを早め、成功へ近づくことができるでしょう。
プロトタイピングを行う上での注意点
様々なメリットのあるプロトタイピングですが、注意しなければ行けない点もあるので見ていきます。
●目的のないままプロトタイピングしてしまう
プロトタイピングによって事業開発のハードルが低くなっているため、明確な目的のないままサービス作りを始めてしまうことがあります。思いつきのままプロトタイプを作って、手応えがあったら本格的に事業化を進めようとするケースも少なくありません。
しかし、目的のないままプロトタイピングを行っても意味がありません。プロトタイピングは、あくまで仮説を検証して、効率的に事業を立ち上げるために行うことを忘れないようにしましょう。
●検証が手段ではなく目的になってしまう
プロトタイピングにおいて検証は必要不可欠です。しかし、検証を重視するあまり、いつしか検証が目的にすり替わってしまうケースがあります。
テストを繰り返していると仕事をしている気になってしまいますが、目的を見失っては無駄な時間で終わってしまいます。「このプロトタイプを作って、何を解決したいのか?」という目的思考を忘れずにもっておきましょう。
●ユーザーの意見に踊らされる
プロトタイピングのテストでは、ユーザーから様々な意見をもらいます。それらの意見を反映して、より質の高いプロトタイプにブラッシュアップしていくのですが、全ての意見が重要なわけではありません。個人的な要望に振り回されていると、無駄な作業ばかり多くなって仕事が進みません。多くの意見の中から、どれが本質的な意見なのか見極める必要があります。
プロトタイピングの種類
プロトタイピングには様々な手法があります。目的やフェーズによって使い分けると、より質の高いプロトタイピングが可能になります。一例を紹介するので参考にしてください。
●ファンクショナルプロトタイプ
「ファンクショナル(実用的、機能的)」な側面にフォーカスして作るプロトタイプです。最低限の機能と、どう動くのかシミュレーションできるプロトタイプを作っていきます。アプリやWebサービスなら、紙や付箋に画面を描いて機能を確認する「ペーパープロトタイピング」や、手動で画面を動かす「オズの魔法使い」などがあります。
コーディングができるのであれば、最低限の機能だけを実装してコーディングする「コードプロトタイピング」を作ってみてもいいでしょう。
●デザインプロトタイピング
デザインを確認するためのプロジェクトです。求められるデザインの精度はまちまちで、ボタンの配置などが分かればいいものもあれば、キレイにビジュアルを仕上げる場合もあります。フェーズによって使い分けましょう。
ボタンやテキストの配置を設計図に落とし込む「ワイヤーフレーム」や、実際のプロダクトに近い「モックアップ」などがあります。リアルな商品を作る時は、3Dプリンターを使うケースが増えています。
●コンテクスチュアルプロトタイプ
コンテクスチュアル(文脈的)なプロトタイプのことで、ユーザーがどんなシーンでサービスを使うのかイメージできる動画などを指します。ユーザーがプロダクトを疑似体験することで、具体的な問題や解決策、反応が見えてきます。クラウドファンディングなどでよく用いられている手法です。
プロトタイピングツール
プロトタイピングは紙とペン、もしくはパワーポイントなど既存のツールを使っても行えますが、専用のツールを使うとより効果的に行なえます。いくつか紹介するので参考にしてください。
●Prott
Goodpatch社が提供するプロトタイピングツールで、スマホひとつで簡単にプロトタイプが作れます。紙に書いたスケッチを読み込んで使えるほか、スマホで編集も可能です。デザインの知識がなくても簡単に扱えるため、誰でもどこでもプロトタイピングが行えます。1プロジェクトまで無料で使えるので、気軽に試してみましょう。
●InVision
海外のプロトタイピングツールで、EvernoteやAirbnbでも使われています。大きな特徴はSketchやPhotoshop、DropboxやSlackなどの外部サービスと連携されていること。Photoshopでデザインしたデータをそのまま取り組んでプロトタイプに使えます。
またリアルタイムで共同編集できるため、グループでの作業に大変便利です。こちらも1プロジェクトまで無料で利用できます。
●Adobe XD
https://www.adobe.com/jp/products/xd.html
デザインツールで有名なAdobe社が提供しているプロトタイピングツールです。Adobe社のツールといえば、機能が豊富でプロデザイナーのためのツールをいうイメージがありますが、こちらは誰でも直感的に操作が可能です。
Adobeの他のデザインツールと親和性が高く、ブラウザで共有できるのが特徴です。制限はあるものの、無料版があるのでぜひ試してみましょう。
編集後記
価値観が多様化している現代は、ユーザーの本質的なニーズをおさえるのは非常に難しくなっています。データや机上の空論だけで事業を進めるのは非常にリスクが高く、コストもかさんでしまいます。
検証を行いながら徐々にユーザーニーズにマッチさせるプロトタイピングは、まさに今の時代にあったビジネススキルと言えるでしょう。プロトタイピングを試してみたい方は、まずは無料のプロトタイピングツールを使うことから始めてみてはいかがでしょうか。
(eiicon編集部 鈴木光平)