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国内アクセラレータープログラムの発起人に聞く。事業を創る上で必要なTIPSとは?――Business Development Week#3

国内アクセラレータープログラムの発起人に聞く。事業を創る上で必要なTIPSとは?――Business Development Week#3

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日本最大級オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」が運営する、事業を活性化するメディア eiiconlabが手がける最前線で活躍するビジネスパーソンによるブログコンテンツ『PRO bcon(プロ ビーコン)』。企業という枠を持ちながら、個として日本の事業創出を牽引するビジネスパーソンが「生の声」として発信している。

2019年10月よりこのPRO bcon企画が始動。日本が生き残るために必要なTipsを探る場として、日本を代表するイノベーターであるPRO bconによる新たな事業を生み出すために考える週間「Business Development Week」を大手町SPACESにて開催している。 

日本全土の事業活性化をより加速させる企画として、隔週で実施するセッションでは各テーマにあわせ、実際に第一線で戦うPRO bconが登場。第3回目となるweek3のテーマは「アクセラレータープログラム」だ。

今回、「事業を創る上で必要なTIPS」と題し、事業会社のアクセラレーターを実践する3名のPRO bconを迎え、事業活性化のヒントやノウハウをシェアした。MCは、お笑いコンビ「フルーツポンチ」とeiicon代表の中村亜由子が務め、PRO bconそれぞれに純粋な疑問をぶつけていき事業創りに必要なエッセンスを紐解いていった。

【写真左→右】

●eiicon company代表/founder 中村 亜由子

●NTT東日本ビジネス開発本部 第二部門 アクセラレーション担当 山本 将裕氏

●東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ 課長補佐 加藤 由将氏

●NTTコミュニケーションズ株式会社 経営企画部 岩田 裕平氏

●お笑いコンビ フルーツポンチ 亘健太郎氏、村上健志氏

大企業に眠る埋蔵リソースを掘り起こせ!NTT東日本流、アクセラレータープログラム活用法。

トップバッターのPRO bconは、NTT東日本株式会社 山本 将裕氏。現在3期目のアクセラレータープログラムが進行中の山本氏に話を聞いた。

3年前に有志で立ち上げたNTT東日本のアクセラレータープログラムは去年組織化し「LIGHTnIC」というプログラム名でベンチャー共創を進めている。eiicon中村からは、何故アクセラレータープログラムを実施するのか、その背景についての質問があった。

山本氏は、ベンチャー企業の支援は国も投資家も進めている中で、NTT東日本、NTTグループが持っているリソースを、起業家やベンチャー企業に使ってもらうことは社会的意義もあると考え、実施に至ったというのが理由のひとつだという。そして活かしきれていないリソースを活用し、ベンチャー企業のビジネス拡大に貢献、またNTT東日本としても新しいビジネスを作るきっかけとなるような機会を作ろうとプログラムを立ち上げた。

全国に通信ネットワークを張り巡らしている同社は様々な業種業態の顧客との接点がある。その企業が持つ課題や事業領域にまつわる社会課題の声が集まってくる一方で、なかなか解決できていないのが実情だと話す山本氏。そこでベンチャー企業の技術やサービスを活用して、社会課題を解決できればより良い社会に繋がると期待する。

ベンチャー企業をベースとしたプログラムを行なっている背景としてはやはり、スピード感。技術力・サービス力ともに培ってきているベンチャーが増えていることもあり、優秀な人材もベンチャー企業に流れてきている。そういう企業と共にビジネスを作ることによって自分たち自身もスピード感を持って変わっていきたいと山本氏は語る。

▲NTT東日本株式会社 ビジネス開発本部 第二部門 アクセラレーション担当 山本 将裕氏

2010年にNTT東日本に入社。初期配属である宮城県石巻支店では東日本大震災を経験。その後、仙台で自治体営業にて高齢者向けIoT見守り事業に従事。2014年より本社ビジネス開発本部へ異動、2015年よりNTTグループ横串ネットワーキング活動「O-Den」を組成。翌年には、大企業中堅若手有志団体のONE JAPAN共同発起人となり、現・共同代表。2017年よりNTT東日本アクセラレータープログラムの立上げ、2018年組織化。数々のベンチャー企業との協業による新規事業創出を手掛ける。

押さえておきたい3つのポイントは「スピード感」「巻き込み力」「収益性」。

次に、プログラム実施する際に押さえておきたいポイントとは?という質問に対し、大きく3つあると山本氏は話した。一つは前述にもあるスピード感。二つ目は、巻き込み力。一組織だけではなかなかアクセラレーターは成り立たない。他事業部やグループ会社を巻き込めるハブ(事務局)となるような箱(組織)をしっかり用意する必要がある。

最後の三つ目は、収益性があるか。つまり、ベンチャー・NTT双方にとって収益になりうるビジネス開発であるかという点だ。この3つを押さえて仕組みとしてつくれるかがアクセラレータープログラムを行うにあたり重要になってくると山本氏は言う。

最後に本イベントのテーマにもある「事業を創る上で必要なTIPS」について述べた。山本氏は、まずは3つのポイントを押さえた上で、ベンチャー・自社・社会の3方にとってWIN-WIN-WINとなる共創の形を模索し続けること、成立させることを絶対に忘れないことが重要だと締めくくった。

※山本氏のPRO bconブログはコチラから。

5年間加速度的に拡大する東急アクセラレートプログラム。実施のきっかけは「東急の弱点克服」

続いてのPRO bconは日本のアクセラレータープログラムの先駆けとしてこれまでに多くのベンチャー共創を推進している東急株式会社 加藤 由将氏。同氏は、東急グループとベンチャーとの事業共創プログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」を立ち上げ、運営統括を務める。さらに2019年には、オープンイノベーション施設「Shibuya Open Innovation Lab(SOIL)」を開設した。交通インフラ企業として知名度を誇る同社は、何故アクセラレートプログラムを実践するのか。

東急グループは鉄道事業を始め、ホテル、不動産、フィットネス、百貨店など、様々なサービス事業を展開している。加藤氏は、リアルのBtoCサービス事業を展開しているが故にテクノロジーの研究開発に弱い側面があると話す。そのため新しい技術を開発して現場に入れるということを十分にできていない。

だからこそ、ベンチャー企業が開発した最先端の技術・アイデアが活かせる場を東急グループが提供できるような仕組を作る必要がある。そうして立ち上がったのが東急アクセラレートプログラム(TAP)だと加藤氏は話す。

東急には200社以上のグループ会社がある。その中でTAPに参加したいグループ会社には、どんな課題があるのか?どんな技術を求めているのか?――そういった声をヒアリングしてリストにまとめ、その課題やニーズをベンチャーに発信しているという。

「実績が出ない」などの理由から、アクセラレータープログラムを1度実践して終わっている企業も少なくない。そうした中で、2015年から5年連続実施しているTAP。さらに通常年に1〜2回の募集が多いが、TAPは365日募集窓口を開設している。何故ここまで拡大し続けられるのか?成功の秘訣を、さらに深掘っていく。

▲東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ 課長補佐 加藤 由将氏

2004年、東京急行電鉄株式会社に入社。2008年、社内新規事業として不動産・建築業界のマッチングビジネス「東急電鉄 住まいと暮らしのコンシェルジュ」のコンセプトデザインから現場運営まで携わる。2015年、渋谷を中心としたグローバルなイノベーション拠点を形成することを目標とし、再開発に併せたベンチャーエコシステムを構築するため、東急グループとベンチャーとの事業共創プログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」を立ち上げ、運営統括を務める。

成功の秘訣は結果を出し続けること。結果の出し方からアクセラの勝ち筋が見えてくる。

継続拡大できている理由としては「結果を出し続けているからです。」と加藤氏。大きな実績は年間ひとつ生まれるくらいではあるが、小さな実績をいくつも作っていくのがポイントだと話す。また実績に関しても「売り上げ」にフォーカスしてしまうとなかなか難しい。「コストカット」から見ていくと明確に数字に出てくるのでそこから実績を作っていくのが良いと話す。

「売り上げに貢献できるビジネスをベンチャーと見つけられたら大きいですね。直近で言えば、まさしく今日(11/8)ですね、渋谷の109にライブ配信スタジオ『SHIBUYA109 LIVE TV ハチスタ』を超十代というベンチャーさんと協業し、オープンしました。東急としてはこれまで不動産としてテナントに場所を貸していたビジネスからライブコマース事業に参入する。東急グループとして初めての試みですので、売り上げにも寄与すると期待されています。」とホットな事例を紹介した。

「5年も続けていくとなると、もちろん自社のビジネス拡大・利益は期待されて当然だと思いますが、それだけグループ会社と連携していれば風通しもよくなりそう。」――このようにフルーツポンチの亘氏から言われると、加藤氏は「ドンピシャです。まさしくその通りなんです。」と驚きながら答える。

組織が大きくなればなるほど、縦割りとなり、なかなか若手の意見や現場の課題が反映されない中、声を出せる場があるというのは若手社員にとっても業務のモチベーションになり、より新しいビジネスが生まれやすくなるという。

社内の風通しやTAPに対する反応が変わってきたのは3期目から。200社以上あるグループ会社のうち最初に手をあげたのは3社。そこから仕組みや制度を変えながら徐々に参画事業者を増やしていき、5期目には26社。この26社とベンチャーの橋渡しを加藤氏含め3名で行なっている。

最後に加藤氏は、事務局もベンチャー企業と組みたい事業者側も熱量のない人がやると必ず失敗する。熱量のある人にやらせることが事業を成功させる近道だと話す。できるポストを用意して自発的に実践できる仕組みづくりが重要だと話した。

※加藤氏のPRO bconブログはコチラから。

危機感から生まれた初のプログラム。社内巻き込みの工夫も取り入れる。

本日最後のPRO bconはNTTコミュニケーションズ株式会社 ビジネスデザイナー 岩田 裕平氏。同社は、昨年初のアクセラレータープログラム(オープンイノベーションプログラム)を実施した。何故今、プログラムを実施したのか。

▲NTTコミュニケーションズ株式会社 経営企画部 ビジネスデザイナー 岩田 裕平氏

2013年NTTコミュニケーションズへ入社。約3年半、グループ会社でR&Dや新サービス開発、UXデザイン・ブランド戦略に従事。2015年に東京工業大学 チーム志向越境型アントレプレナー育成プログラムを修了後、経営戦略としてデザイン思考を推進するプロジェクトにジョインし、社内外への広義のデザインの普及を行う。2018年より社内スタートアップ制度を利用し、新事業の事業責任者に。同時にNTTのリソースを社外へ公開し、共創をしていく「オープンイノベーションプログラム」を立ち上げ、運営も行う。

同社のプログラムは出資等の機能はないため、アクセラレーターではなくより「共創」に重きをおいた形で実施することを目指すため「オープンイノベーションプログラム」と銘打って立ち上げた。背景としては危機感からだと話す。

これまで通信ビジネスを展開してきたが、このまま既存ビジネスを続けていても後退していく可能性がある。新たな柱となるビジネスを創っていかなければこれまでのような成長は望めないと経営層もこの危機感を持っていた。岩田氏は、オープンイノベーションに関するコアチームを立ち上げ、経営層をうまく巻き込みながら今回、初のオープンイノベーションプログラムを立ち上げた。

自社にないリソース且つ、やりたい事がお互い一致していれば、ベンチャー企業に限らず大企業やアカデミアからも応募を募った。同社がやりたい事として4つのテーマ(※)を今回募集したという。さらに、社内公募に呼びかけを行う事で、社内巻き込みを図った。

現在協業検討を進めている事業案もあり、これから面白くなりそうだと話す岩田氏。社内公募から参加している社員だからこそ、熱量もあり、プログラム期間中にも事業創りのマインドセットに変わってきているメンバーもいるという。「社会実装が最終出口であるため、まだまだ道半ば。これからです」と岩田氏は意気込みを語った。

※①遠隔でロボットを操作する技術/②次世代データセンター/③ラグビーを革命するスポーツテック/④無線中継所や鉄塔を活用した新たなサービス

リソースを扱える社員を主担当にする。今回のプログラムで得た収穫と展望。

今回のプログラムで良かった点を聞かれ、岩田氏はこう答えた。「プログラムテーマを公募にしたことによって選ばれた社員は当然、主担当となりますし、その担当者が実際に使えるリソースを提示しています。そこが一番良かったですね。当事者意識と、担当者がリソースを扱えるこの2点があるとプロジェクトが前に進みやすいです。

オープンイノベーションプログラムはやってみないと何も始まらない。リスクばかり気にしてしまう傾向のある大企業だからこそ最初はうまく経営層を巻き込みながら、リーンにスタートさせ、小さな成功体験を積み徐々に拡大させていくことも重要だと岩田氏は話を締めくくった。

※岩田氏のPRO bconブログはコチラから。

取材後記

多くの事業会社がアクセラレータープログラムを実践している中、今回3社3様のアクセラレータープログラムを紹介した。発起人たちの苦労も垣間見えながらも、大企業の新たな勝ち筋となる手法を実践しており、今回参考となるようなTIPSを得られたと思う。

3名に共通していたのはやはり事業創りに対する「熱量」ではないだろうか。この熱量の伝播・熱量を生み出すサイクルを各社の価値観やビジネスに合わせて構築していく事が、今後重要になってくるかもしれない。今後も各社の取り組みを注目していきたいと思う。

(編集:眞田 幸剛、取材・文・撮影:保美和子)

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