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女性向けスポーツブランド「プロポ」をローンチしたロート製薬――女性の美と健康を促進するオープンイノベーション戦略とは?

女性向けスポーツブランド「プロポ」をローンチしたロート製薬――女性の美と健康を促進するオープンイノベーション戦略とは?

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一般用目薬市場では世界トップクラスのシェアを誇り、圧倒的な存在感を誇るロート製薬。OTC(一般用)医薬品分野での老舗企業であるため、医薬品のイメージが強い同社だが、実は「肌ラボ」「オバジ」シリーズが急成長するなど、女性向けスキンケア、化粧品分野でも大きな事業実績を持つ。

現在の売上構成比では、スキンケア製品が約64%(2018年3月期)となっており、いまやスキンケア事業が同社の主力事業となっている。さらに食品分野にもかねてよりチャンレンジし事業ドメインを拡大中だ。 

この10月には、「運動する女性の“かがやく”を応援」する新たなスポーツブランド「Propo」(以下、プロポ)をローンチ。第一弾ラインナップとして、プロテイン(食品)とウォーミングセラム(化粧品)の発売を開始し、スポーツ領域にも進出を果たした。

同社では、プロポブランドの拡大強化をミッションとして、女性の美と健康を、運動・スポーツシーンからともにサポートしていける共創パートナーを募集している。今回、同社食品事業グループ兼事業戦略室の南修二氏と、プロポの開発担当である食品事業グループ機能素材チームの桃原淑氏に、プロポの開発背景やブランドの特徴、目指す方向、さらには同社のオープンイノベーション戦略などについてお話をうかがった。

【写真左】 ロート製薬株式会社 食品事業グループGM 兼 事業戦略室 南修二氏

2001年、タニタ入社。営業を経て新規事業開発部で、WEB系子会社タニタヘルスリンクの起ち上げメンバーとなる。さらに、2012年開業の「丸の内タニタ食堂」を創業、大ヒット。その後、ロート製薬にジョインし、2016年から現職。食品グループ全体の統括をしながら、サプリメントや食品などの新事業開発も担当している。

【写真右】 ロート製薬株式会社 食品事業グループ 機能素材チーム 桃原淑氏

2012年、ロート製薬入社。入社後、内服医薬品の研究開発、健康経営推進グループとのダブルジョブなどを経て、2018年から現職。プロポ開発担当として立上げメンバーの中心となる。趣味は週末のランニングで、自分自身がいつも使いたくなるブランドとしてプロポを育てるべく注力している。

女性の美しく健康的なプロポーション作りを応援する新ブランド

――ロート製薬さんと言えば、アイケアやスキンケア商品のイメージが強いと感じます。今回、新ブランドとしてスポーツ領域にアプローチするプロポを開発された背景について教えてください。

桃原氏 : 当社は、女性向けのスキンケア製品・化粧品が売上の6割以上を占めており、女性の美と健康をサポートすることに従来から力を入れてきた企業です。しかし製薬企業である私たちには、単なる外見の美しさだけではない「内外美容」、つまり身体の内と外の両方から健康的な美しさをサポートしたいという思いがあります。

そのため、ABCクッキング様と一緒に妊活のセミナーをしたり、ドラッグストアの女性社員を集めて女性目線でドラッグストアを盛り上げるための勉強会を開催したりしてきました。商品でも、排卵日検査薬や妊娠検査薬などを開発しています。

その流れの中で、新たに女性の健康をサポートするための食品が開発できないかと考えたのがプロポの発端です。そのときに気付いたのが、先進国の中で日本だけが、BMI18.5以下の「痩せ型」の女性が増えているという状況です。 (注:BMIはBody Mass Indexの略で、肥満度を表す指数。22が標準とされる)

――痩せている女性が増えることに問題があるのでしょうか?

桃原氏 : 女性の美というと、痩身を目指す方が多いのですが、痩せすぎると貧血状態になりやすく、妊娠しにくくなるなど、女性の身体にさまざまな悪影響を及ぼします。

また出産の際には、子どもが栄養不足の状態で産まれるため、栄養吸収が良すぎる体質になり、将来の糖尿病のリスクが増すなどの問題もあります。そこで当社ではかねてより、痩せすぎは問題であるという啓発活動をおこなってきました。

一方で、最近ではタレントの中村アンさんが多くの女性の憧れとなっていることにも見られるように、ただ痩せているだけではなく、ある程度筋肉もついたしなやかで健康的な身体を目指したいという女性が増えてきました。そこで、女性の美しく健康的なプロポーション作りを応援するために作られたのがプロポです。

――プロポブランドの最初の商品は、プロテイン(食品)とウォーミングセラム(化粧品)ですが、どうしてこのラインナップだったのでしょうか。

桃原氏 : 当社が後発でスポーツ業界に参入するにあたって、先ほどお話しした「内外美容」を特徴として打ち出していこうと考えました。そのため、私たちが実績を持つ分野として、内から美を支える食品のプロテインと、外からの商品であるウォーミングセラムをセットで開発したのです。

――それぞれの商品には競合商品もありますが、どのような点で他と差別化なさっているのですか。

桃原氏 : プロテインについては、エンドウ豆のタンパク質を主成分としている点が特徴です。広くプロテイン製品の原料とされている牛乳や大豆はアレルギー物質が含まれていますが、エンドウ豆はそれがないので、より多くの女性に安心して飲んでいただけます。

また、身体がポカポカと感じられるブラックジンジャーエキスや唐辛子を配合している点も特徴です。プロポプロテインを飲んでからヨガやエクササイズをおこなうと、いつもより汗が出やすいといった声をいただいています。また朝食と一緒に採れば、朝の目覚めを爽快にしてくれ、普段の通勤も軽いエクササイズになるでしょう。

一方、ウォーミングセラムについては、当社が百貨店で発売している高価格帯のスリミングジェルと共通の成分も用いられています。塗ることで血行を良くし身体を温めるものですが、プロテインと併用することで、さらに身体のポカポカ感が強まります。

南氏 : 機能面以外では、デザインにも気を使っています。これまでのプロテインにはどうしてもマッチョなイメージがあったので、女性がいつもそばに置いておきたくなるようなデザインにこだわりました。ロゴやカラーなど、ブランドのデザインコンセプトについては会社トップも交えて、そうとう時間をかけた議論を重ねて作り上げています。

▲プロテインはミックスベリー味とカフェオレ味の2種類を用意しており、各2,400円。ウォーミングセラムは、1,800円で発売している。(※税別価格)

これまで開拓してきたことがない、スポーツ市場への参入

――では次に、プロポブランドにオープンイノベーション戦略を取り入れようと考えた理由についてお聞きしたいと思います。

南氏 : これまで私たちの商品の売り先は、一般用医薬品はもちろん、スキンケアや食品も含めて、9割以上がドラッグストアでした。ドラッグストアに並べていただき、店頭で消費者に手に取っていただくという販売チャネルがほとんどだったのです。

しかし、プロポはスポーツ市場への参入であり、これまでとは違った販路の開拓、既存の販路にも対応した新たなプロモーション手法の開発などが必要になります。それらの面で、オープンイノベーションでなにかが生まれることを期待しています。

桃原氏 : プロポの販促活動の一環として、ヨガやフィットネスのインストラクター、トレーナーをしている全国200名の女性に「ロートスポーツビューティーマイスター」(プロポマイスター)という役割を担っていただいています。マイスターさんたちの生徒さんやSNSのフォロワーさんにプロポを広める活動をしていただく、インフルエンサーのような役割です。そういった取り組みにおいてもオープンイノベーションで新たな展開が考えられるのではないでしょうか。

▲プロポマイスター(Propo Webサイトより https://jp.rohto.com/propo/

――過去には、他社と協業した事例はあるのでしょうか。

南氏 : 個別には、いろいろな協業の実績はあります。私たちと共同研究をしていたスタートアップでその後上場した企業もありました。ただ、決まったメニューとして用意されている協業制度はありませんし、今回のようにオープンに募集をするのは初めての試みです。

桃原氏 : フィットネス業界大手のルネサンスさんが展開している都心型ヨガスタジオ「ドゥミルネサンス」と現在協業しています。プロポ用の特別プログラムを考案していただき、週1回実施中です。プロテインを飲み、ウォーミングセラムを塗ってからヨガをおこなうことで普段以上に汗をかくなどの体験ができ、そこでプロポを気に入ってもらったお客様にはその場で購入いただけるというものです。

――今回求めている協業相手は、スポーツ分野、女性向け限定ということになるのでしょうか。

南氏 : 限定はしませんが、ある程度その枠組みで考えています。例としては、「スポーツコンテンツ、サービスを提供している企業」「スポーツに限らず女性をターゲットにしたコンテンツ提供やマーケティングに強みを持つ企業」「健康や美に関する技術や、プロダクト、サービスを持つ企業」などが考えられます。

また、共創で取り組みたい内容としては、まず、スポーツシーンとのタッチポイントの拡大が挙げられます。プロポマイスターもそのひとつですが、さらにそれを拡大したい。ジムやヨガスタジオ、エステ、スポーツ食品、あるいは旅行など、さまざまなタッチポイントが考えられるでしょう。

さらに、女性がスポーツを楽しむための機会づくりのしくみも求めています。ポイントなどを用いてスポーツ習慣化のインセンティブを与えるしくみや、日常生活の中でスポーツ機会を創出するしくみなどです。

――eiiconに登録している企業の中には、サラダ専門店を展開するスタートアップさんもいます。たとえば、こういった外食・食品関連の企業と、御社のプロテインを使った新しい食品やレシピの開発をするといった共創などは、いかがでしょうか。

南氏 : いいですね!ぜひ、ご紹介ください(笑)。私たちもいろいろアンテナは張っているのですが、人員も限られているのでキャッチできないことも多い。そういうシナジーが見込める新しいアイデアを、どんどんご提案いただくことが、今回オープンな場で募集をかけることの最大の目的です。私たちが思いもつかなかった発想があればとても嬉しいです。

会長直下の新規部署。「まずやってみよう」というスピーディーな意思決定

――逆に、共創を求めるスタートアップに対して御社からご提供いただけるリソースなどにはどのようなものがあるのでしょうか。

南氏 : メニューとして「これとこれを提供する」とあらかじめ決めているものは、実はありません。逆にいうと、必要なものを言っていただければ、たいていのことには対応できると考えています。たとえばオフィスでしたら、東京のオフィスにも大阪にもオープンスペースがありますので、自由に出入りいただいて協業のアイデアを煮詰めるということもできると思います。

ロート製薬の製品を使っていただいているお客様や、プロポマイスターさんなどの関係者にインタビューすることもできます。また、ドラッグストア、バラエティショップといった販売チャネルも必要に応じて活用いただけるかもしれません。

――御社のような老舗の大企業の場合、意志決定のスピードや、イノベーションに取り組むマインドなどの企業文化面も、共創する企業にとっては気になる部分です。

南氏 : 当社の新規部署は会長の直轄で作られ、トップの考え方が「まずはやってみよう。」というものなので、上場企業としてはかなり速い意志決定が可能です。ただし製薬会社ですから、根拠となるエビデンスは教えていただきたい点ですし、お客様のメリットが何なのかはご一緒に考えて続けていきたいです。

桃原氏 : うちは、大阪本社にも東京オフィスにも、社長室がないんです。気がつくと社長も役員も、一般社員の間でなにかやっていたり、社員食堂で社員と談笑しながら食事をしたりしています。他社の方からは、いい意味で大企業っぽくない、フランクな社風だとよくいわれます。

また、少し余談ですが、当社では2016年から「社外チャレンジワーク制度」として社員の副業を解禁していますし、社員が希望すれば興味のある他部署の仕事を兼任することができる「ダブルジョブ」も認められています。私自身、昨年まで健康経営推進グループという部署とダブルジョブをしており、そのときの経験が開発に役立っていると感じることも多々あります。

このように基本的に、新しいことへのチャレンジを推奨する気風が強い会社なので、共創パートナーとなる企業の方も協業しやすいのではないかと思います。

――いろいろな点で、柔軟な協業が組めそうな社風ですね。最後に、プロポの今後の展開、目指している将来像について教えてください。

南氏 : 既存の社内リソースを活用するという意味で、まず食品とスキンケアの商品からプロポはスタートしました。しかし、女性の美と健康を応援するという点では、展開可能性は無限に考えられます。

個人的には、たとえばスポーツウェアを作ったりしてもいいんじゃないかと思っていますし、いきなり飛躍しなくても、スポーツを続けるために手にする関連商品、プロテインであればシャイカーみたいなものは作っていきたいですね。

桃原氏 : 当社は会社としての規模はそこそこ大きいですが、私たちの事業は、これから成長を目指すベンチャーのようなものです。スタートアップの方と同じ目線で共創しながら、常に女性のそばにあって女性を応援するブランドとして、プロポを育てていきたいと思います。

取材後記

ロート製薬の東京オフィスに足を踏み入れた瞬間、柔らかな香りに包まれた。聞けば、同社が展開しているオーガニックエッセンシャルオイルによるアロマだという。世界トップブランドである「目薬」のイメージが強い同社だが、常に新しいことにチャレンジを続けてきた企業文化を背景に、事業領域を拡大している。いま誕生したばかりのプロポも、オープンイノベーションにより加速しながら、同社を支える柱のひとつとして成長していくだろう。ロート製薬の新たな挑戦を共に進めていきたいと感じた方は、企業の大小を問わない。ぜひ応募していただきたい。(▼応募の詳細はコチラ)

(編集:眞田幸剛、取材・文:椎原よしき、撮影:古林洋平)

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