ローンチから5年、登録数23,000社を突破した「AUBA」―5年の月日を経て創業者たちが描く戦略とは
社会・経済に大きな影を落としている新型コロナウイルスだが、そうした状況を打破すべく新規事業に挑む企業は数多い。そして、新規事業を創出するために用いられる手法として俄然注目が高まってきているのが、オープンイノベーションだ。
TOMORUBAでは、2000社を超える東証一部上場企業の中から、各業界ごとに積極的にオープンイノベーションに挑戦している企業を調査したが、その数は数百社にものぼる。また一方で、大企業や自治体がアクセラレータープログラムを主催する事例も年々増加傾向となっており、外部企業と共に新しい価値を創出しようという取り組みは熱を帯びているといえるだろう。
さらに、内閣府が「日本オープンイノベーション大賞」を毎年開催して事例を表彰したり、経済産業省が「オープンイノベーション促進税制」を制定するなど、国としてもオープンイノベーションを推進している。
――このように、新たな事業を生み出す手法として期待されるオープンイノベーションを下支えてきたのが、eiicon companyだ。
eiicon companyは、2017年2月にオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」をローンチ。そして、2022年2月には5周年を迎え、特設ページもオープンした。企業・団体へのコンサルティング支援や「Japan Open Innovation Fes」をはじめとするオンライン/オフラインのイベント実施などを積み重ねることで認知も拡大。現在、AUBAの累計登録社数は23,000社、累積共創事例数は1,700を突破し、日本最大級のオープンイノベーションプラットフォームへと成長してきた。
事実、「オープンイノベーション支援サービス 満足度」、「新規事業支援サービス 満足度」、「共創実績が豊富な会社」に関する調査でAUBAが一位を獲得する(※)など、市場からも確かな評価を得ている。
※出典:プレスリリース『おかげさまで3冠達成!「オープンイノベーション支援サービス 満足度」「新規事業支援サービス 満足度」「共創実績が豊富な会社」でAUBAがNo.1を獲得!』
5年の節目を迎えた「AUBA」の”これから”
5周年を迎える「AUBA」を牽引してきたのが、eiicon company 代表/founderである中村亜由子と、CDO/COO 共同創業者である富田直だ。オープンイノベーションという手法をマーケットに浸透させてきた中村と富田は、この5年という月日をどのように捉えているのか?そして、これからAUBAをどのように発展させていくのか?展望を語った。
【eiicon company 代表/founder 中村亜由子】
「新たな世界を見るために、爆速で事業計画を引き直している」
2008年、日本にオープンイノベーションという言葉が入ってきた当初はなかなか理解されず、特に大企業からは懸念を示されていました。「よく分からないけれど、大企業がスタートアップとコラボするものなんでしょ?」と思われていましたし、実際そういうオープンイノベーション“ごっこ”が横行していたんです。そんな市場もまだでき上がっていないタイミングの2017年に、eiiconは参入。当時「理論」だと言われていたオープンイノベーションを、おそらく私たちが初めて「手段」だと言い切りました。
2018〜2019年あたりになると「オープンイノベーションって手段だよね」と言う人も増えてきて、近年では、オープンイノベーションという言葉が当たり前に使われるようになってきました。私が考えるオープンイノベーションの最終的なゴールは、「その言葉自体がなくなっている状態」です。オープンイノベーションはイノベーションを起こす上での一つの「手段」であって、その中には資本業務提携やアクセラレーター、M&Aなど細かい選択肢がいくつも内包されています。
ですから、将来的にはオープンイノベーションという言葉を使うより先に、より具体的な連携のあり方から議論を進められるのが理想です。また日本においては、世界各国と手を組める状態になるのが望ましいと思います。例えばアフリカの人口増大は多くの方が知っている課題ですが、彼らの負を解消する事業をグローバルの力で生み出せたら、新たな世界が見られそうです。そんな世界を実現するために、今eiiconは爆速で事業計画を引き直しています。
【eiicon company CDO/COO 共同創業者 富田直】
「オープンイノベーションという文化を根付かせる」
始めこそ訝しげに見られていたオープンイノベーションですが、今の日本にイノベーションが必要なのは明らかですし、事業会社も各々そう思っているでしょう。第4次産業革命によりあらゆる業界で技術革新が進む今、1社だけの画一的なもの作りには限界があります。それよりも、複数企業がコラボして新しいものを生み出す方が、イノベーションのスピードを早められると考えます。
例えばカーボンニュートラルにどう対応するか、DXをいかに推進するか、そしてコロナ禍の課題をどう解決するか。これらにおいてオープンイノベーションは最適な手段で、実際、多くの企業が大幅な予算を投入しています。そう考えると、僕たちがサービス開始当初から掲げてきた目標の「オープンイノベーションという文化を作る」は叶えられているのかもしれません。
コロナ禍で受注がドンと下がり、「このままでは会社が危ない」という危機をメンバーと一緒に乗り越えてきました。こうした経験をしたことで、メンバー各自が会社のことを自分ごととして深く捉えられるようになり、eiiconは会社としてより強固になれた気がします。泥臭くて大変なことも正直ありますが、メンバーと一緒に文化を作りつつ様々な企業、そして日本のイノベーションを支援していきたいですね。
各界の有識者によるeiicon、そしてオープンイノベーションに対しての期待
また、AUBAのサービス開始5周年を迎えるにあたり、大手企業やスタートアップ、VC、メディア、アカデミア、官庁・自治体など、幅広い分野の有識者からeiicon companyやオープンイノベーションへの期待について、コメントいただいた。以下に紹介していく。(順不同)
【KDDI株式会社 事業創造本部 ビジネスインキュベーション推進部長 中馬和彦氏】
eiiconさん、5周年おめでとうございます。
日本におけるオープンイノベーションを牽引する仲間として、これまでのエコシステムの裾野拡大に加えて、今後は世界で活躍するスタートアップの輩出に貢献できるよう一緒にがんばりましょう!
【経済産業省 新規事業創造推進室長 石井芳明氏】
eiicon5周年おめでとうございます!政府では「成長と分配の好循環」を目指しており、「成長」の鍵となるイノベーションの推進は大きな政策課題です。特に、スタートアップ、大学、大企業、自治体、政府など様々なセクターの潜在力を発揮し具体的な社会課題解決に導くオープンイノベーションの環境整備は重要。今後、民間と行政が連携したプロジェクトの促進を図ります。ともに行動する仲間として、eiiconさんのますますのご活躍を期待しております。
【一般社団法人Japan Innovation Network 代表理事 西口尚宏氏】
オープン・イノベーションという言葉は広がったが、オープン・イノベーションの実践は広がったのだろうか?オープン・イノベーションはツールでもなければノウハウでもない。それは、オープン・イノベーションという生き方なのだ。日本社会は、本当にオープン・イノベーションという生き方をしているのだろうか?単なるツールに止まっていないだろうか?2022年に、一度、立ち止まって考えてみたい。
【新規事業家 守屋実氏】
我が国のオープンイノベーションの歴史には、2つの大きな区切りがあります。ひとつはコンセプトが輸入された2003年、もうひとつは、eiiconが創業された2017年です。
ビフォーeiiconは、模索の時代でした。言葉は在れど個別の取り組みが散在している型化前の時代だったのです。そこにeiiconが誕生。唯一無二のオープンイノベーションプラットフォ-マーとして、価値ある出会いを量産。オープンイノベーションという選択肢が当たり前となる、アフターeiicon時代が始まったのです。
我が国のイノベーションの加速の陰にeiiconあり。5周年、おめでとうございますっ!
【Forbes JAPAN 執行役員 Web編集長 谷本有香氏】
オープンイノベーションという言葉がバズワード化して久しい。
これまで型どおりのイノベーションが散見されたが、本来的には、個々の企業にフィットしたオープンイノベーションのやり方があるはずだ。
また、誰のためのオープンイノベーションなのか。
ユーザー不在の中でオープンイノベーションは絶対に起こらない。
企業はよりオープンに、そして、尖ったアイディアを丸くしない文化の形成が必要だ。
【株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長 笹原優子氏】
eiicon 5周年おめでとうございます!この5年の間に急激に環境も変わり、新たな日常に向けてライフスタイル、働き方、事業そのものの変革が必要となってきました。より一層多様な人、企業が、オープンな形で手を取り合って、時代を共に切り拓いていくコラボレーションや、それにより変革のスピードを加速していくことが大切になってきていると思います。
事業を創るではなく、新たな時代を切り拓く、そういったオープンイノベーションで日本、世界を豊かにしていきたいですね。
【株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 今野穣氏】
「オープンイノベーション」という概念が世界に初めて提唱されてから20年近くが経ちますが、私の周りではもう「オープンイノベーション」という言葉を聞くことが少なくなりました。
これはむしろ、ほぼ全ての大手企業がDXという文脈において、成長戦略・生産性向上の文脈でテクノロジーを活用することが所与の前提となり、その過程において、ベンチャー企業の有する技術やプロダクトを積極的に採用するようになったことの証左であると認識しています。
更に、コロナ禍を経て、新しい働き方と言った社内改革においても、ずっと先だと思っていたより多様でよりスマートな未来が早く到来したと言えるでしょうし、グリーンな社会への変革もこの先待った無しの状況です。
もはや当たり前の概念となった「オープンイノベーション」を更に推し進めて、日本全体で一致団結して、次の世代に繋ぐ新たな日本の形を創って行きたいと思います。
【Plug and Play Japan 執行役員 CMO 藤本あゆみ氏】
eiicon5周年、おめでとうございます!
目まぐるしく変わり、また多様化する消費者のニーズに応えていくために、新規事業の創出や既存事業の変革が各社に求められていますが、この5年間で日本のオープンイノベーションは大きく飛躍したと思います。多くの協業事例も生まれ、また取り組みを進める企業の数も格段に増えました。これからの5年はさらなる取り組み事例が生まれ、また国内だけではないグローバルな取り組みや、複数社でのn対nでの取り組みも生まれてくることを期待したいと思います。
【株式会社Yazawa Ventures 代表取締役 矢澤麻里子氏】
5周年おめでとうございます。
現在日本ではオープンイノベーションを実施する大企業が約半数にのぼり、私自身オープンイノベーションがますます当たり前になっていることを肌で感じています。CVCの立ち上げ・アクセラレーションプログラムの開催など形こそ様々ですが、大企業側も以前に比べ、スタートアップとより積極的な連携を求めるようになっています。今後さらに大企業とスタートアップの連携事例やPoC件数が増えることで、産業も活性化されていくと思いますので、私もVCという立場からオープンイノベーションを推進していきたいと思います。
【立教大学経営学部 助教 田中聡氏】
経営学者ヘンリー・チェスブロウが「オープン・イノベーションの時代(The era of open innovation)」と題した論文を発表したのが2003年です。発表当初は一過性に過ぎないバズワードと揶揄されることもありましたが、20年という月日の中で、少しずつ、しかし着実にその価値は社会的に認知されようになり、今ではその意義を疑う声も聞こえなくなりました。とりわけ、クローズド・イノベーション全盛の日本において、オープン・イノベーションのモメンタムを牽引してきたeiicon社の功績は偉大です。黎明期を過ぎつつある日本のオープン・イノベーション市場がこれから成長期・発展期へと更に進化していくことを夢見て、eiicon社の益々のご発展を心より祈念しています!
【広島県商工労働局イノベーション推進チーム 主任 尾上正幸氏】
eiicon5周年おめでとうございます。日本が世界と勝負するために業種業界の垣根を超えて合従連衡することがますます重要になっております。御社の活動はまさにこの合従連衡、官民連携、大企業とスタートアップ企業の協業を拡大させ深化させる、日本に必要な“オープンイノベーション”の機能だと思います。一地方自治体職員として、今後の地方への波及や発展を強く期待しております!
【GATARI Inc. 代表取締役 竹下俊一氏】
xRはメディア技術なので様々な掛け算によって価値を生み出します。
領域を横断して多種多様な企業様のアセットとxRの掛け算を加速させるオープンイノベーションはxRの普及浸透を加速するブースターです。
これからもオープンイノベーションを活用しながら様々な企業の方と連携して未来の日常となる価値を発見していきたいと思います。