「テレイグジスタンス」から「鉄塔の擬人化」まで!?未来のコミュニケーションを変えていく本気の共創とは?
NTTグループの中でも新しい領域に挑戦するための会社として、1999年にグローバル企業として発足し、190を超える国・地域へネットワークサービスを提供しているNTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)。テクノロジーが急速に発展し、産業や社会の構造にも急激な変化の波が押し寄せている中、同社はデジタルトランスフォーメーション(DX)をグローバル規模で起こすべく、さまざまな施策を推進している。
協業パートナーとの共創によって、こうした変革をよりスピーディーに成し遂げ「未来のコミュニケーションを変えていく」ために、NTT Comとしては初めてとなるオープンイノベーションプログラム=「NTT Communications OPEN INNOVATION PROGRAM」を2019年1月から開始した。
■迅速な意思決定を行うために、新たな仕組みを構築
現在、国内でもさまざまな企業がオープンイノベーションに取り組んでいるものの、事業化に至らずPoC段階で終わってしまうケースも少なくない。そうした状況の中でNTT Comのプログラムでは、「本気で事業化を目指す」という。――そのために、運営事務局が中心となって、全ての既存事業部を巻き込みながらプログラムを推進している。
さらに特徴的なのが、幹部を巻き込んで、組織にとらわれない、枠を超えたジャッジメントができる仕組みを作り上げた。これにより、ヒト・モノ・カネといった社内のリソースをより迅速に提供していくことができる。
一方、同プログラムのもう1つの魅力は、募集テーマに合わせて用意されたスケールの大きな提供リソースだ。全世界139拠点にも及ぶデータセンターや鉄塔・無線中継所などの設備、P2P通信技術といったNTT Comの事業の根幹を成す領域をリソースとして用意している。また、同社のラグビーチーム「シャイニングアークス」の各種データ、練習場、クラブハウスといったリソースを活用した募集テーマも用意されている。
<プログラム募集テーマと提供リソース>
コンセプト : “世界のインフラから未来のコミュニケーションを変えていく”
(1)離れた場所でも自由自在に、身体を動かす体験の拡張
・主な提供リソース:インターネット上でロボットとP2P通信するためのモジュール
(2)設備運営の自動化で次世代データセンターを創造
・主な提供リソース:全世界に広がる総面積40万㎡以上のサーバールームや通路など
(3)ラグビーを革命するスポーツテック
・主な提供リソース:ラグビーチームおよび練習場・クラブハウス
(4)山中の無線中継所や鉄塔を活用した新たなサービス
・主な提供リソース:山中の無線中継所や都心部の鉄塔・通信ビル
▲CDO(Chief Digital Officer)も担う、代表取締役副社長・丸岡亨氏<写真左から3番目>を中心に、全社を巻き込みながらプログラムを牽引している事務局メンバーたち。
■6チームによる協業プラン発表会を開催
同プログラムは、2019年1月に告知され、3月に書類・面談選考を実施した。そこで、東京ロボティクス株式会社、株式会社構造計画研究所、YouVR Inc.、株式会社フーモア、メトロウェザー株式会社、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)という6つのパートナー企業・団体が選出され、4月にキックオフ・アイデアブラッシュアップを開催、8月末に行われるDemoDayに向けて共創プロジェクトが進行している。各テーマ領域の現場で実際に業務にあたっている意欲的なNTT Com社員が社内で選抜され、各共創プロジェクトのオーナーとして伴走しながら遂行している。
そして、6つの共創プロジェクトの協業プラン発表会が5月27日(月)に、NTT Comの大手町オフィス内で開催された。代表取締役副社長・丸岡氏を筆頭に、経営企画部長・稲葉氏、技術開発部 技術戦略部門長・貞田氏、クラウドサービス部長・飯田氏、NTT国際通信 代表取締役社長/クラウドサービス部 データセンターサービス部門長・松尾氏、ヒューマンリソース部 担当部長・高橋氏、サービス基盤部長・渡邊氏といったNTT Comの幹部が参加。積極的に質問やアドバイスが飛び交い、協業プラン発表会は熱気と盛り上がりを見せた。
▲協業プラン発表会には、副社長や各事業部責任者など、幹部が出席し、活発に質問が飛び交っていた。
協業プラン発表会の開会の挨拶として、NTT Comの経営企画部長の稲葉秀司氏から「全て事業化することを願っている」という力強い宣言が発せられた。また、「事業化に向けた判断基準」として新規性・市場性・収益性・差別優位性が強調され、6チームによる共創プロジェクトのピッチが行われた。
<6つの共創プロジェクト>
【1】東京ロボティクス株式会社 × NTT Com
『テレイグジスタンスロボットを活用した遠隔地における専門作業の実現』プロジェクト
【2】株式会社構造計画研究所 × NTT Com
『ハンズフリーなデータセンターラック鍵解錠』プロジェクト
【3】YouVR Inc. × NTT Com
『データセンター・通信ビル内部のストリートビュー化とビジュアル情報プラットフォームの構築』プロジェクト
【4】株式会社フーモア × NTT Com
『NTT Comの鉄塔を活用した街おこし事業の創出』プロジェクト
【5】メトロウェザー株式会社 × NTT Com
『鉄塔を活用した小型ライダーの展開による風況データ活用の実現』プロジェクト
【6】慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM) × NTT Com
『ラグビーを革命するスポーツテックのシステムデザイン』プロジェクト
6つの協業パートナーとNTT Com社員によるチームメンバーは、協力しながら各プランを発表。テレイグジスタンスという先端技術から、鉄塔の擬人化というユニークなアイデアに至るまで、多様なプランが披露された。
発表会では、事業部責任者クラスからの積極的な意見・助言が目立った。例えば、『データセンター・通信ビル内部のストリートビュー化とビジュアル情報プラットフォームの構築』プロジェクトについては、「建物のインフラの老朽化の問題の解決もできる」、「ビルだけでなくトンネルも範囲になるのではないか。さらには画像以外にも音響などのデータも視野に入れるエコシステムになれるのではないか」といった具体的なアドバイスの声が上がり、また、『ラグビーを革命するスポーツテックのシステムデザイン』プロジェクトについては「企業スポーツの次の形を見せていただいた」や「企業スポーツは福利厚生として機能するだけでなく、地域を巻き込むことで地域と連携を深めて欲しい」という期待の声も寄せられた。
■講評――「NTT Comだけでは出てこないアイデアを、事業化させる」
6つの共創プロジェクトの講評は、代表取締役副社長・丸岡氏から行われ、以下のように述べた。
「オープンイノベーションプログラムは我が社でも初めての試みだが、NTT Comだけでは思いつかないアイデアが見ることができ大変興味深く、また、弊社のリソースを外部の方に使っていただく喜びも感じた。次ステップで各プランの実現可能性を見せていただく中で、事業化できるものが出てくると確信している。」
最後にはNTT Comの経営企画部ビジネスイノベーション推進室⻑である東出治久氏の乾杯の合図で懇親会が始まり、今後もパートナー企業・団体、NTT Comの連携を深めていくことが誓われ、この日の協業プラン発表会は幕を下ろした。
なお、本プログラムは8月末に実施されるDemoDayに向け、インキュベーションを継続し、各チームは実証実験やPoCに取り組んでいく。――そして、11月末には「事業化」の判断が下される予定だ。
■取材後記
本プログラムはNTT Comと協業パートナー企業・団体が「事業化をする」という目的を一致させて取り組んでいる。そのために、副社長・丸岡氏を含め、各事業部長クラスが協業プラン発表会に出席し、質疑応答も活発に行われた。NTT Comの事業の根幹を成す領域での共創プロジェクトが進んでいる点や、幹部がプログラムに積極的に参加している点など、NTT Comが同プログラムにかける「本気度」が垣間見える協業プラン発表会であった。これからプロジェクトは事業化に向けてPoC段階に入っていく。さらに深まっていく共創体制が”世界のインフラから未来のコミュニケーションを変えていく”というキーコンセプトを具体的な形に変えていくだろう。