「第1回 日本オープンイノベーション大賞」の受賞者が決定!選ばれた14の取組・プロジェクトとは?
イノベーションの創出を巡る国際的な競争が激化する中で、研究開発等の成果を迅速に社会実装し、社会的ニーズの解決や新たな価値の創造につなげるには、組織の壁を越えて知識や技術、経営資源を組み合わせ新しい取組を推進するオープンイノベーションがますます重要になる。
――こうした状況を踏まえ、今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取り組みを称えるために、内閣府が主導し、創設された「日本オープンイノベーション大賞」。(※参考記事:内閣府・石井芳明氏が語る『日本オープンイノベーション大賞』への想い)
池井戸潤氏(作家)、入山章栄氏(早稲田大学大学院 経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール 准教授)、各務茂夫氏(東京大学 教授 産学協創推進本部 イノベーション推進部長)、谷本有香 氏(Forbes JAPAN 副編集長)、Tom Kelley氏(IDEO 共同経営者)、向井千秋氏(東京理科大学 特任副学長)といった外部有識者で構成された日本オープンイノベーション大賞選考委員会による選考の結果、「第1回 日本オープンイノベーション大賞」の受賞者が決定。2019年2月5日に発表された。
以下のように、内閣総理大臣賞をはじめとした12の賞が、14の取組・プロジェクトに授与される。
受賞した取組・プロジェクトの概要とは?
「第1回 日本オープンイノベーション大賞」を受賞した14の取組・プロジェクトの具体的内容はどのようなものだったのか。以下に紹介していく。
【内閣総理大臣賞】 超多項目健康ビッグデータで「寿命革命」を実現する健康未来イノベーションプロジェクト
<内容> 2005年からの「岩木健康増進プロジェクト」の住民健康データを軸に腸内細菌、内臓脂肪、唾液(口腔)等の検査を含む健康ビッグデータを構築。これを弘前大学医学研究科、東大・京大のAI研究者、生物統計の専門家や参加企業で分析、疾患の予測モデルを開発。また、青森県健康経営認定制度の創設や約1万人の健康増進リーダー・サポーター育成等産学官民の強固な連携のもとに社会環境の整備を強力に進め、社会実装 を推進。
【科学技術政策担当大臣賞】 大企業発のスタートアップ「ミツバチプロダクツ(株)」の挑戦
<内容> 市場規模が小さい等の理由でパナソニックで事業化しないと決定されたホットチョコレート事業アイデアをカーブアウト。独立したガバナンス体制で、他社連携も独自判断で実施し、短期間で量産まで実行できる体制を確立した。社外(当時)デザイナーのこだわりデザインを導入し、認知度の低い「チョコレートを飲む」食文化をパリ のチョコレートの祭典でも提案するなど、事業展開中。
【総務大臣賞】 リアルタイム津波浸水被害予測システムの開発と運用
<内容> 東北大学の地球物理学と津波工学の研究者、地震情報処理と津波浸水予測の実績のある企業、スパコン の開発運用企業の連携で世界初のシステムを構築。災害から「生き延びる、素早く立ち直る」社会の実現に 向けた活動が可能に。参画メンバーで東北大発ベンチャー「(株)RTi-cast」を2018年3月に設立し、さらなるイ ノベーション創出への活動を強化。
【文部科学大臣賞】 基礎研究段階からの産学共創 ~組織対組織の連携~
<内容> 創薬分野(中外製薬、大塚製薬)では、世界でトップレベルの免疫学研究を企業の資金供給で基礎研究段階 から推進。極めて高い研究実績や企業が持つ様々な創薬関連技術を駆使し、世界的研究成果を社会価値 の創出に繋げる。情報分野(ダイキン工業)では、世界から若手研究者を募り、その発想や熱意と企業が持つノウハウとを結びつけ、新たな価値を創造する。
【厚生労働大臣賞】 医療のIoT化を実現するスマート治療室SCOTの開発
<内容> 世界トップレベルの工場自動化の方法論を治療室に導入。医師やエンジニアなど多種多様な人材体制のも と、自動車部品メーカー、医療機器メーカーなど11社と5大学が連携。知財戦略を練り「知財合意書」のもと、 企業間の問題発生事案もなく進行。
【農林水産大臣賞】 宮崎県における産学官連携による公設試験場発ベンチャー企業「一般社 団法人食の安全分析センター」の設立と残留農薬分析技術の社会実装
<内容> 宮崎県総合農業試験場が開発した残留農薬迅速分析技術を基盤に、島津製作所、大阪大学、神戸大学などとの共同研究により次世代型分析装置「超臨界流体抽出クロマトグラフ」を開発。分析受託機関「食の安 全分析センター」を設立し、ISO準拠の迅速かつ低コストな分析技術を活用し、残留農薬や食品機能性の受 託分析、GAP指導員有資格者の配置による指導などを通じて農産物の高付加価値化や輸出の促進に貢献 した。
【経済産業大臣賞】 「JR東日本スタートアッププログラム」を通じた イノベーションの社会実装チャレンジ
<内容> 「スタートアップ」×「JR東日本スタートアップ(出島)」×「JR東日本」の三位一体の座組を構築。 地域経済の活性化推進である「青森におけるインバウンドのお客さまへの QR 決済利用促進」(Origami)や 「駅ナカ傘シェアリング事業での再生可能素材の製品化」(TBM)、サービスの効率化を目指した「AI無人決済店舗」(サインポスト)などの社会課題解決を実施。
【国土交通大臣賞】 東北インフラ・マネジメント・プラットフォームの構築と展開
<内容> 従来の建設、土木関係者だけではなく、IT技術者が参画。東北大学IMCがコアとなり、各自治体との連携のも とインフラデータを蓄積・解析。得られた知見は新たなインフラ強化の研究開発に活かされ、データに関して は効率的なメンテナンスや改修などに活かされる。
【環境大臣賞】 定期旅客便を利用した温室効果ガスのグローバル観測 (CONTRAILプロジェクト)
<内容> JAL財団の呼びかけでこれまで関わりのなかった機関が集結。財団が外部資金を獲得し、環境研、気象研が 研究、ジャムコが測定機器開発、JALの旅客機で観測。装置に関わる2件の特許を出願し、世界初の観測シ ステムを構築。世界最先端のデータの取得、解析に活かされる。
【日本経済団体連合会 会長賞】 大企業若手有志プラットフォーム「ONE JAPAN」
<内容> 大企業において、自身や会社の将来の危機感等をきっかけに若手中心の有志活動が増加。ONE JAPANは、 課題を共有し、共にチャレンジする場を提供。志ある仲間が出逢う交流会や分科会を随時開催。外部での共 創(オープンイノベーション)と自社の変革の土壌づくりを行う。
【日本学術会議会長賞】 再生医療等臨床研究を支援する 再生医療ナショナルコンソーシアムの実現
<内容> 2016年4月~2018年11月の約10機関を軸とした臨床研究のデザイン・技術の支援において、59件の支援実 績を有し、内29件は支援目標を達成し、次の研究段階へシフトさせることができた。さらに患者にとって疑問 の多い再生医療等の治療に関する電話相談窓口を設置。各政府機関での対応が困難だった相談を一括で 対応するなど、再生医療の定着を精力的に実施。
【選考委員会特別賞】 「レンタル移籍」による人材育成とイノベーションのエコシステム構築
<内容> 手間をいとわない世界的にも類を見ないビジネスモデル。マッチングに留まらない移籍期間中の多様な支援 で、大企業、ベンチャー、移籍人材の関係深化を促進。ひとつの組織に所属しながら外に出て経験を積み、 また組織に戻ってきて力を発揮するという好循環を構築。
【選考委員会特別賞】 遺伝子組換えカイコによる新産業創出プラットフォームの構築
<内容> 農研機構の特許の実施許諾契約と共にノウハウを企業側に提供し、迅速な製品開発等を実施。また、医薬 品開発のための異分野連携のもと優位性と高付加価値を持つ製品開発を実施。高機能シルクでは、生産農 家から製品化までの一貫したグループを形成し、実用化を促進。
【選考委員会特別賞】 骨置換型人工骨「サイトランス グラニュール」の開発と実用化
<内容> 九州大のシーズをもとにジーシーが規制当局の公的相談制度を利用しながら検証試験を実施。さらに徳島 大、九州大、東京医歯大での治験で安全性と有効性を実証。歯科初のインプラント周囲でも使用可能な人工 骨として薬事承認され、製品化へ。口腔外科治療に広く利用される。
※受賞取組・プロジェクトの概要について※
https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/prize/projectgaiyo.pdf
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最優秀賞企業サインポストと2回の実証実験を経て、JR東日本スタートアップが見た景色。
表彰制度事務局の内閣府イノベーション担当企画官・石井芳明氏は、今回の「第1回 日本オープンイノベーション大賞」について次のようにコメントした。
『今回が第一回のこの表彰制度は、200を超えるオープンイノベーションの取組にご応募いただきました。
総理大臣賞は健康長寿という社会目標に大学、企業、自治体のプラットホームで取り組むプロジェクト。データを丁寧に集め、オープンな体制で分析、その成果を幅広く活用。民間投資の増加、医療費の削減、地域の平均寿命の延び等大きな社会インパクトを出しています。
内閣府科学技術担当大臣賞は、大企業に眠る潜在力の大きな技術や人材を外に切り出して、外部経営資源と結びつけて開花させるスキームの提案。日本の産業構造の革新の力になることが期待できる取り組みです。
今回の表彰では、大企業とベンチャーとの連携、コーポレートアクセラレータのご応募がたくさんあったことも特徴。いずれも優良案件で大接戦の審査となり、経済産業大臣賞では、頭一つ抜けた取組が選定されました。
経団連会長賞に次世代を担う若手の共同体プロジェクトが選ばれたことにも、新しい潮流を感じられます。
大臣賞・団体賞を受賞されたプロジェクトはいずれも、トップのリーダーシップ、現場の力、持続可能な仕組み作りが素晴らしく、横展開を図りたい案件。この表彰をきっかけに日本のオープンイノベーションが更に一歩前に進むことを祈念しています。』
なお、「第1回 日本オープンイノベーション大賞」の表彰式は下記の概要で開催される。専用フォームから参加申込みすることも可能だ。当日は受賞者パネルも実施される予定となっているので、オープンイノベーションに関する知見をさらに深める良い機会になるだろう。
■日時……平成31年3月5日(火) 15:30~19:00(表彰式 18:00~)(予定)
※表彰式後に交流会を予定
■場所……虎ノ門ヒルズ森タワー 4階 ホールB (東京都港区虎ノ門1-23-3)
■表彰式参加申込みフォーム