「静かすぎて気を遣う」が4割超、静寂”と“にぎわい”の共存に音環境の設計の可能性 otonoha×愛知県半田市×図書館総合研究所×TOAが半田市立図書館で実証実験
株式会社otonohaは、愛知県半田市、株式会社図書館総合研究所、TOA株式会社と連携し、半田市立図書館で実施した音環境に関する実証実験の結果を公表した。調査では、従来「静かな場所」とされてきた図書館において、音や会話を一定程度許容する空間が利用者にどのように受け入れられるかを検証。その結果、会話可能エリアの設置に対して60.4%が賛成し、音環境の設計によって「集中」と「交流」を両立できる可能性が示された。
図書館の新たな課題に着目
近年の図書館は、本の貸出や閲覧だけでなく、地域の学びや交流の拠点として役割を広げている。一方で、「静かにする場所」という従来のイメージは依然として強く、子ども連れ利用者などにとっては心理的な利用ハードルとなる場合もある。
今回の実証では、大規模な改修工事を行うことなく、「音」を活用した空間設計によって利用体験を変えられるかを検証した。
実験は2026年2月から3月中旬にかけて実施。館内1階に3つの異なる環境を設置した。
1つ目は、川のせせらぎや鳥のさえずりなどの自然環境音やBGMを流す「音あり読書エリア」。2つ目は従来型の静寂環境である「音なし読書エリア」。3つ目はBGMを流しながら小声での会話を認める「会話可能エリア」だ。
来館者161名を対象にアンケートを実施し、それぞれの空間に対する評価や心理的影響を分析した。
会話可能エリアは6割超が支持
調査結果によると、「音や会話を許容するエリア」の設置について、賛成は60.4%(96名)、反対は18.1%(28名)だった。回答者の約68%が実際に会話可能エリアを利用しており、利用率も高かった。
また、図書館の音環境に対する印象では、「静かで落ち着く」が51%(81名)だった一方、「静かすぎて気を遣う」と回答した人も41%(66名)に達した。図書館の静寂は価値として認識されながらも、一部利用者にとっては心理的負担になっている実態が浮かび上がった。
特に、「静かすぎて緊張する」と感じている利用者では、会話可能エリアへの賛成率が82%に達しており、新たな空間へのニーズの高さが確認された。
自然音によるマスキング効果も高評価
音あり読書エリアでは、「周囲の音が気にならなかった」が69%(50名)、「快適だった」が68%(49名)と高い評価を獲得した。
特に自然環境音への反応が良く、周囲の生活音や物音を目立たなくする「マスキング効果」が利用者の集中や心理的な安心感につながったとみられる。
一方で課題も見えた。音なし読書エリアの利用者の27%(17名)が他エリアからの音漏れを気にしたと回答。会話可能エリアからのBGMや会話音が集中を妨げるケースも確認され、空間ごとの音を適切に分離するゾーニング設計の重要性が明らかになった。
カギは「音の有無」ではなく「音の設計」
分析では、高齢層ほど会話可能エリアに慎重な傾向が見られたほか、図書館を頻繁に利用するヘビーユーザーからは、導入そのものではなくBGMの音質や音量に対する改善要望が多く寄せられた。
また、会話可能エリアへの反対意見の多くは、コンセプト自体ではなく「重低音が強い」「テンポが速い」といった音源選定への不満に起因していたことも判明。BGMを不快と感じた利用者は全員がエリア設置に反対した一方、快適と感じた利用者の86%(32名)は賛成していた。
今回の実証は、「静かか、にぎやかか」という二項対立ではなく、利用目的に応じた音環境を設計することで、多様な利用者ニーズに応えられる可能性を示した。
otonohaは今後、今回得られた知見を活用し、図書館だけでなくオフィスや公共施設における音環境コンサルティングを強化していく方針だ。集中、交流、リラックスといった異なる活動を支える空間づくりにおいて、「音の設計」が新たな価値創出の鍵となりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)