NTTドコモ、基地局×AIでクマ出没をリアルタイム検知 北海道で実証実験開始、人と野生動物の共生をめざす
株式会社NTTドコモは5月22日、北海道内の基地局に画像認識AIと連携した監視カメラを設置し、クマの出没をリアルタイムで検知する実証実験を開始したと発表した。実証期間は2026年5月22日から11月30日までを予定している。
本取り組みは、ドコモが保有する通信インフラとAI技術を活用し、野生動物による被害の低減と生物多様性保全の両立を目指すものだ。2025年に策定した「生物多様性中期ロードマップ」の一環として実施され、「ヒトと自然が“あたりまえに”共生している世界」の実現に向けた取り組みとして位置付けられている。
近年、北海道をはじめ全国各地でクマの生息域拡大が進み、人里への出没や農作物被害、人身事故が社会課題となっている。特に北海道ではヒグマによる人身被害が深刻化しており、自治体や関係機関による対策強化が求められている。一方で、捕獲や監視活動を担うハンターの高齢化や担い手不足も進行しており、従来の人的監視だけでは対応が難しくなりつつある。
こうした背景から、ICTを活用した効率的かつ広域的な監視体制の構築が急務となっている。
北海道の基地局2カ所で実証 映像をAIが24時間解析
今回の実証では、北海道内に設置された2カ所の基地局に監視カメラを設置。撮影された映像をリアルタイムで解析し、クマの出没を自動検知する仕組みを検証する。
対象となるのは、山の手エリアと白川エリアの基地局で、いずれもドコモの既存通信設備を活用する。基地局周辺には安定したモバイルネットワーク環境が整備されているため、山間部や郊外などのルーラルエリアでも映像伝送や通知をリアルタイムで実施できるという。
既存インフラを利用することで、新たな設備構築に伴う環境負荷やコストを抑えながら広域展開を可能にする点も特徴だ。将来的には複数の基地局を活用した面的な監視ネットワークの構築も視野に入れている。
docomo MECと画像認識AIを組み合わせ、低遅延で検知
技術面では、基地局に設置されたカメラ映像を画像認識AIが解析し、クマを自動検出する。
近年問題となっている「アーバンベア(都市部に出没するクマ)」は昼夜を問わず活動するため、監視システムには高い認識精度が求められる。今回の実証では、昼夜の明暗差や天候変化などの環境条件下でも安定した検知性能の実現を目指す。
また、推論処理にはドコモが提供するエッジコンピューティング基盤「docomo MEC(Multi-access Edge Computing)」を活用。通信網の近くでデータ処理を行うことで遅延を抑え、クマ出没のリアルタイム検知を可能にする。
AIによる自動判定と高速な通信基盤を組み合わせることで、人手に頼らない常時監視体制の実現を目指す考えだ。
将来的には位置マッピングや威嚇システムとの連携も
ドコモは北海道での実証を通じて、システムの有効性や検知精度を検証する。その成果を踏まえ、将来的にはクマ被害に悩む自治体への展開を目指す。
今後は単なる検知機能にとどまらず、クマ出現地点のマッピングや自治体・警察・猟友会など関係機関への迅速な通知機能の実装も検討している。さらに、威嚇音の発報指令などを組み合わせた総合的な鳥獣対策システムへの発展も構想しているという。
加えて、野生動物の農地や居住区域への侵入を抑制する新たな電気柵技術や関連ソリューションの研究開発も進めている。クマをはじめとする野生動物との適切な距離を保ちながら、人間社会との軋轢を減らす仕組みづくりを進める方針だ。
通信インフラが地域課題解決の基盤に
携帯電話基地局は全国各地に設置されており、これまで通信サービスを支える社会インフラとして機能してきた。一方で近年は、AIやIoT、エッジコンピューティングとの組み合わせによって、防災、インフラ監視、環境保全など多様な用途への活用が広がっている。
今回の取り組みは、通信設備を単なるネットワーク基盤としてではなく、地域課題解決のためのセンシングプラットフォームとして活用する新たな事例といえる。特に人口減少や担い手不足が進む地方においては、ICTによる自動化・省人化への期待は大きい。
クマ被害の防止と生物多様性保全という一見相反する課題に対し、通信インフラとAIを活用して解決策を提示する今回の実証。人と野生動物が共生する持続可能な地域社会の実現に向け、その成果が注目される。
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(TOMORUBA編集部)