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東京メトロが「つながり」をコンセプトにしたアクセラレーターを実施する理由とは?

東京メトロが「つながり」をコンセプトにしたアクセラレーターを実施する理由とは?

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179駅を有し、1日742万人の利用客数を誇る、東京メトロ。東京の生活やビジネス、観光の大動脈であるこの交通ネットワークを運営しているのが、東京地下鉄株式会社だ。同社は、新事業創造のためのアクセラレータープログラムに取り組んでおり、過去2回の開催を経て、現在採択企業との実証実験も推進している。

そしてこのたび、第3期となるプログラム「Tokyo Metro ACCELERATOR2018 ~共創[つながり]で東京は、熱くなる~」の開催が決定した。今回はプログラム名にも冠した「つながり」を大きなコンセプトに据えながら、「Life」・「Work」・「Visit」という3つのテーマを設けている。事業化することに注力したプログラム設計となっている点が、今回のポイントだ。

交通インフラを提供する東京メトロが、なぜ「つながり」というコンセプトを据えたのか?そして、3つのテーマを通して、パートナー企業とどんな価値を生み出していきたいのか?――プログラムの事務局メンバーに話を伺った。

【写真中央】 経営企画本部企業価値創造部 新規事業企画担当 /ICT戦略部 ICT戦略担当 課長 池沢聡氏

新規事業企画担当の課長として、プログラムを牽引。また、ICT戦略も担当しており、新規技術やICTサービス領域に関しての知見もプログラム運営に活かしている。

【写真右上】 経営企画本部 企業価値創造部 課長補佐 中村友香氏

財務部、経営管理部などを経験し、2016年に産休・育休を取得。2017年に復職後、プログラム事務局を担当し、企画運営を担う。また、過去のプログラムで採択したスタートアップとの共創も手がけている。

【写真左上】 経営企画本部 企業価値創造部 新規事業企画担当 主任 工藤愛未氏

運輸交通分野の国際協力を推進する外部団体への出向を経験し、2018年7月に現部署に異動。中村氏と同じく、アクセラレータープログラムの企画運営、採択したスタートアップとの共創を担当している。

【写真左下】 経営企画本部 企業価値創造部 新規事業企画担当 天野純一氏

大手メーカーでの営業職、イギリス留学、映画会社勤務などを経て、東京地下鉄に入社。駅員業務などを経て、2016年から現部署に配属。社内提案制度「メトロのたまご」の事務局も手がける。

【写真右下】 経営企画本部 株式上場準備室 藤井崇博氏

人事部で労務管理、働き方の見直しなどを手がけた後に、現部署に配属。以前から、アクセラレータープログラムへの興味が強かったこともあり、自ら挙手をし、プログラムの事務局を担当。

「東京の人口減」という大きな危機感。

――東京メトロでは「TOKYO METRO ACCELERATOR」を2016年〜2017年と2回開催してきました。そして今回、3期目の開催が決定しました。まずは、どのような課題意識や問題意識があり、プログラムを継続させているのかについてお聞かせください。

池沢 : 一番大きな課題は、東京の人口減です。2030年頃までは、東京の人口が増え続けていくという調査結果もありますが、その先の未来を見据えれば、人口が減っていくのは確実です。そうした背景から、新しい事業に取り組んでいかなければという危機感が強くあり、3期連続でアクセラレータープログラムを開催することを決定しました。そして今回は、「つながり」という明確なコンセプトでパートナーを募ります。

中村 : 第3期は、これまで以上に東京の可能性を追求したいと思っています。ですので、池沢がお話ししたように「つながり」というコンセプトを据え、東京の発展とともに長期的な目線で事業を育んで行きたいと思います。現在、オリンピック開催も間近に迫り、東京自体が大きく変容し、人々の価値観も急速に多様化してきています。――私たちはこうした変化を、事業機会と捉えて、「つながり」を基軸に新たな事業へと発展させていきたいと考えています。

天野 : 当社は、鉄道に関する資産やノウハウを有しています。「つながり」というフィルターを通して、鉄道運行や交通インフラという視点とは異なる、新しい活用の機会が見出せるのではないか。――本プログラムには、そうした期待も込められています。

――ちなみに、「つながり」というコンセプトはどういった経緯から生まれたのでしょう?

工藤 : コンセプト設計をする上で、我々が支えてきた“東京”という都市の特性について、事務局メンバーで議論を重ねました。東京は経済・文化の中心地として発展すると同時に、人々の流動性も高く、生活も多様化しやすく、社会構造が変化しやすい、という特徴があるのではないかと。

天野 : 昨今、単身世帯が増加し、働き方が変革している中で、それによる社会構造の変化が早いのはやはり東京であると。今までの家族・会社などの繋がりだけではない、枠にとらわれない「つながり」を生み出したいと考えています。 多様な価値観にそれぞれ共鳴することで新たな強いつながりを持つ。その中で新たな価値を生み出し、持続可能なビジネスを育んでいきたい。――第3期のプログラムでは、それを実現していきたいと考えています。

3つのテーマを通して、生み出したい価値とは。

――「つながり発展する」というコンセプトを軸にしながら、今回は「Life」・「Work」・「Visit」という3つの募集テーマを設けていますね。

中村 : はい。その3つのテーマを設定したのは、東京に集う人々の目的が、「Life」「Work」「Visit」の3つに集約されると考えたためです。

――3つのテーマについて、さらに詳しく教えていただけますか?

天野 : それぞれの領域で、多様な価値観にそれぞれ共鳴し、つながり、持続的に発展をしていくようなビジネスを考えております。 まず「Life」ですが、これは共通の価値観・生活スタイル・趣味をもつ人々がつながることで、新たな暮らし方を創造していくことを意味しています。例えば、趣味趣向でつながるコミュニティからの発展や、家事・生活の場のシェアリング、暮らす場所を自由に選ぶ新たな生活スタイルといったものをイメージしています。

藤井 : 2つ目のテーマ「Work」に関してですが、企業に属す形だけでなく多様なスタイルで、同じ目的意識を持つ人々がつながり、支援し合い、最終的には社会に還元していくことを意図しています。 昨今多様な働き方が注目を浴びていますが、個人が主体性を持ち、それによって生まれたつながりによって経済を発展させていくための商品やサービスを作っていきたいと考えています。例えば、人や場所・時間を選べる働き方の提供、自分らしく働くためのスキルアップ支援・キャリアの拡大、スキルシェアリング・クラウドファンディングといったものをイメージしています。

工藤 : 最後の「Visit」は、目的の有無はもちろん、国内外を問わず、東京に訪れる人たちを思い描いてしています。いわゆる東京らしさではなく、それぞれの東京の楽しみ方、過ごし方を見つけ、発信・共有しながら、それぞれで新しい“東京”にアップデートしていく。パーソナライズされた観光体験や、「人」「コト」のつながりでみつける東京の楽しみ方、今までにない滞在のかたちなども考えられますね。

中村 : たとえば「谷根千」(※)のように、東京の下町情緒を体感できるエリアとして口コミで広がり、新たな観光スポットとして、日本国内はもちろん、海外からの観光客からも人気を集め、地元の方々と観光客のつながりも生まれてきています。「Visit」では、このような新しい東京の楽しみ方も提供していきたいですね。

 ※「谷根千」(やねせん)…文京区東端から台東区西端一帯の谷中、根津、千駄木周辺地区を指す総称

1日742万人が利用する様々なビジネス検証・実現を支援。

――東京メトロといえば、首都東京に集う人々を交通ネットワークで繋いできた「都会的」また「世界トップレベルの安心」のブランドイメージもありますね。 また179の駅や商業施設といったビジネス検証の場など、多種多様なリソースがあると思います。その中でも、特徴的なものがあればお教えください。

池沢 : 東京メトロは銀座線や丸ノ内線などは特に通勤・通学だけでなく、都心部で活動する人々の移動の利用が多く、時間帯で見ても、通勤・通学時間帯だけでなく日中の時間帯もご利用が多いという特徴もあります。

工藤 : また当社でこれまで蓄積してきた知見を活かし、駅での人の流れの動向などを活用することも可能です。人々がたくさん集まることで、ばく大な熱量を持った東京というフィールドでビジネス検証ができるのも、当社ならではだと思います。

中村 : その他には、東京メトロ24時間券などの各種企画乗車券と独自のコンテンツを掛け合わせるといったアイデアも考えられるかもしれません。

天野 : あとはPRの機会として、車内広告やSNSなどの利用も検討できます。私は、アンドハンドという共創プロジェクト(※)に参画した際も、車内広告でPRしたことで、多くのお客様に参加していただくことができました。

 ※【アンドハンドプロジェクト ~『#TOKYOのやさしさが試される5日間』~】 東京メトロ銀座線で行われた実証実験の裏側に迫る。https://eiicon.net/articles/386

東京メトロ社員が、「自分ごと」としてプログラムに挑む。

――事務局の体制について教えてください。

中村 : 一つの提案に対して、1人以上の当社社員がコーディネーターとして伴走し、最終プレゼンテーションも一緒に行います。ご応募いただいたパートナー候補任せにすることなく、社員が「自分ごと」としてプログラムを推進し、将来の事業化に向けて伴走していきます。

――実際に推進されている事例などはありますか?

中村 : ストアカさんと協業している「メトロde朝活」が象徴的な事例ですね。コーディネーターを務めたメトロの社員が積極的に取り組み、熱意を持って社内を巻き込んだことにより、実現可能性がスピーディーに高まりました。そのことで、ストアカさんからも信頼をいただいていますね。

――それでは最後に、応募を検討しているパートナー候補に向けて、メッセージをいただけますか?

中村 : 今回は、より本格的な事業化を実現させていきたいと考えています。これまでの東京メトロの固定観念を打ち破るような新しい事業を共創していきたいですね。

池沢 : つながりによる発展を生み出せるのであれば、IT・Webといった領域でも、もちろんOKです。継続的に発展していけるような事業・サービスを創りあげていきましょう。

取材後記

2020年に開催されるオリンピックに向けて、都市開発がスピーディーに進み、各種インフラも整備されつつある。東京という都市の「ハード」が拡充している一方で、東京で生活する人々は余裕が少なく、都市の「ソフト」面が充足しているとは言い難い。さらに、追い打ちをかけるように人口減という大きな問題が立ちはだかっている。 そうした状況に危機感を抱く声は多くあるが、鉄道事業をメインとしてきた東京メトロが取り組むという点が、とてもユニークだ。

パートナーとなる企業の斬新なアイデアや技術と、東京メトロの持つリソースの掛け合わせによって何が生まれるのか。そして人々の「つながり」を創出するどんな事業が生まれるのか。新たな局面を迎える第3期Tokyo Metro ACCELERATORに今後も注目していきたい。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:佐々木智雅)

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