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三重県のイノベーションエコシステムの縮図・『TOKOWAKA-MIE DEMO SUMMIT』レポート<前編>――起業家たちが挑んだ『REBORN PROGRAM』、全17ピッチを紹介!

三重県のイノベーションエコシステムの縮図・『TOKOWAKA-MIE DEMO SUMMIT』レポート<前編>――起業家たちが挑んだ『REBORN PROGRAM』、全17ピッチを紹介!

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三重県は、起業家支援や新規事業創出を通じ、県内で自律的に成長するスタートアップエコシステムの構築を進めている。その成果を発表するイベント『TOKOWAKA-MIE DEMO SUMMIT』が、3月2日に四日市商工会議所で開催された。同イベントは、「TOKOWAKA-MIE(常若-三重)」を舞台にした以下二つの新規事業プログラムの成果発表にフォーカスしている。

■三重県地域に根ざした起業家を徹底支援する起業支援プログラム

『TOKOWAKA-MIE REBORN PROGRAM 2025』

■三重県内事業者と全国のスタートアップによるビジネス創出を目的とするプログラム

『TOKOWAKA-MIE オープンイノベーションプログラム 2025』

会場では各プログラムに採択された起業家や事業者が登壇し、それぞれの事業構想や今後の展望をピッチ形式で発表。さらにトークセッションや参加者同士の交流も行われ、地域発の新規事業創出に向けた議論が活発に交わされた。

三重県の共創と挑戦が交わる、熱気の一日――『TOKOWAKA-MIE DEMO SUMMIT』が開幕

冒頭、主催者を代表して松下功一氏(三重県雇用経済部長)が挨拶。先行きが見通しにくい時代だからこそ「不易流行」の姿勢で、県の歴史や文化を大切にしながら、新しい挑戦に踏み出してほしいとエールを送った。

続いて、『TOKOWAKA-MIE REBORN PROGRAM 2025』の運営を担う株式会社LEOの古川千尋氏が登壇し、概要を説明。5回目の開催となる同プログラムは、自律的に成長・発展する産業エコシステムを県内に構築することを目指し、事業を創出する人を支援している。

今年度のプログラムは、起業に不可欠なマインドであるレジリエンス(困難を乗り越え前に進む力)を育みながら、地域に根ざした持続可能な事業創出を支援してきた。さらに今年度は、事業を加速させたい方向けの「アクセラレーションプログラム」と、アイデアを持ち新たな事業として進めたい方向けの「インキュベーションプログラム」の二種類のプログラムを推進してきたという。

次に、『TOKOWAKA-MIE オープンイノベーションプログラム 2025』の運営を担うeiiconの安達尚登氏が登壇。県内企業とスタートアップの共創を通じたモデルケース創出に向けた取り組みを紹介した。

審査員の鈴木成宗氏(有限会社二軒茶屋餅角屋本店)、中村亜由子氏(株式会社eiicon)、粟生万琴氏(株式会社LEO)からは挑戦者への期待が寄せられ、会場の熱気が高まる中ピッチがスタートした。

▲有限会社二軒茶屋餅角屋本店 代表取締役社長 鈴木成宗氏

▲株式会社eiicon 代表取締役社長 中村亜由子氏

▲株式会社LEO 代表取締役 粟生万琴氏

――本記事では『TOKOWAKA-MIE DEMO SUMMIT』レポートの<前編>として、『TOKOWAKA-MIE REBORN PROGRAM 2025』に登壇した起業家のピッチを、「アクセラレーションプログラム」(4社)・「インキュベーションプログラム」(13社/者)それぞれの受賞企業の取り組みを中心に紹介していく。

事業成長を加速させる「アクセラレーションプログラム」の受賞企業とは

●最優秀賞:株式会社FUKURA.FUKURA 丸島れい氏

『伝統と技術をサイエンスで解放。和菓子の価値を再定義し世界に挑む』

同社は、健康と美味しさを両立させる新しい間食として和菓子に着目し、伝統的な食文化を現代のウェルネス市場へ展開する事業を進めている。近年は自身の健康に積極的に投資する意識が高まりつつあるものの、満足感と健康性を同時に満たす間食の選択肢はまだ多くない。

同社は、プラントベースで低脂質という和菓子の特性に加え、日本の食文化に根付く精神性が世界的に高まるウェルネス志向と親和性が高いと捉え、新たな商品開発を進めてきた。開発した商品は、外皮に砂糖を使わず、お米の自然な甘みと素材の旨味を引き出したもの。餡は甘さの満足度を保ちながら血糖値の上昇を緩やかにする設計となっている。調理科学の知見を取り入れ、天然素材の組み合わせで美味しさと安全性を両立させた点も特徴だ。

こうした取り組みは高く評価され、ラグジュアリーブランド3社との契約を獲得したほか、航空会社とも契約の最終調整に入っているという。現在は商品企画と開発に集中するため、技術力の高い地元工場と提携し量産体制を整備中だ。和菓子の伝統と技術を現代の食文化として再解釈し、日本の和菓子を世界に広げていくことを目指している。

●アクティブ体操クラブ 小柳勇真氏

『「体操で地域を元気にする」~アクティブの挑戦~』

同団体は、運動不足という社会課題に対し、体操と頭脳を使う「コーディネーション」を組み合わせた独自の運動習慣モデルを展開している。遊びを通して運動能力を向上させるプログラムは、運動が苦手な子どもでも継続しやすく、退会率はほぼゼロだという。今後は施設展開や障がい児向け運動療育にも取り組み、地方からのIPOを目指す。体操と教育を掛け合わせ、地域から新たな産業を生み出す人材育成にも挑む構想を掲げた。

●株式会社真空断熱研究所 中村圭介氏

『経験と勘に頼らない工場へ 温度の見える化が生んだ現場の革命』

同社は真空断熱技術を活用した超小型・軽量の温度ロガー「V-Thermo」を開発した。工業炉内を製品と一緒に通過させることで、空間ではなく製品そのものの温度履歴の見える化を実現している。これにより経験と勘に頼っていた温度管理をエビデンスベースに変え、エネルギー消費の削減や品質向上に貢献する。今後は機器の提供にとどまらず、計測データの分析から改善に至るまでの伴走支援サービスを事業の柱として展開していく。

●藤戸薬局/株式会社藤乃森 藤戸淳夫氏

『薬局アトツギの第二創業~次世代へ繋ぐ未病ケアプラットフォームづくり~』

医療現場で解決できない健康課題に立ち向かうため、薬局の役割の転換を試みている。そこで同社は、「産業薬剤師」という新たな概念を提唱。見えない労働生産性の低下を防ぐ未病ケアプラットフォーム構築を進めている。従来のオフィス向け健康ボックスの提供に加え、従業員のストレスを定量化して可視化し、現状分析から改善のための戦略設計、効果検証までを一気通貫で伴走支援する業務改善プログラムを新たに提案した。

アイデアを事業へ――「インキュベーションプログラム」の受賞企業とは

●最優秀賞:株式会社Vital core 山中信人氏

『金属加工業に届ける現場分析主体の新しい健康経営』

同社は、金属加工業など身体的負荷の高い現場に向けた介入型の健康サポートプログラムを展開している。現在、製造現場は人手不足や高齢化に加え、肩こりや腰痛などの健康不調による生産性低下という深刻な課題を抱えている。既存のマッサージや医療機関の受診は一時的な対処にとどまり、現場の作業環境に起因する痛みの根本解決には至っていない。同社はこの課題に対し、現場の作業状況を直接観察して改善を図る新たなアプローチを提案した。

提供するプログラムは、分析、共創、継続支援の3つのフェーズで構成される。最初にアンケートを用いて従業員の健康課題を抽出し、企業が抱えている労働損失額を可視化する。続いて現場に赴き、作業中の姿勢や個人の身体的特徴を詳細にチェックすることで、痛みの原因を特定する。最大の特徴は、ケア方法を一方的に指導するのではなく、従業員自身が痛みのメカニズムを理解し、現場で無理なく継続できるケア策を共に創り上げる点にある。

既に導入企業では痛みの訴えが半減するなどの成果が現れている。同社は年間伴走型の固定報酬モデルを採用し、まずは三重県内の金属加工業をターゲットに実績を積む方針だ。将来的には建設業や運送業など他の身体負荷の高い業種へ展開し、モノづくりの現場から健康経営の変革を目指す。

●優秀賞:toboso株式会社 大萱威往吏氏

『支えあいを、地域の力に。【tobosoが描く、地方買い物の未来】』

同社は、人口減少で地域の生活インフラが維持できない地方の深刻な課題に対し、持続可能な買い物支援モデルを展開している。南伊勢町のスーパーが直面する、店がなくなれば地域の食卓を誰が守るのかという切実な声から事業を着想した。地方では家が点在しているため、専用車両などが必要となる既存のネットスーパーでは採算が合わず、構造的な解決が求められていた。

これを打破するため、業務の再設計と労働力の再定義という新たなアプローチを提案した。まず、訪問介護の枠組みに注文支援を組み込み、ヘルパーを通じてお年寄りの確実なニーズを吸い上げる。さらに、既存の配送網であるプロの定期便と、地域住民の「ついで」の移動を掛け合わせて商品を届ける仕組みを構築した。

このモデルの強みは、福祉現場の信頼を通じた顧客獲得チャネルの独占と、アクティブシニアや主婦層など新たな担い手の発掘にある。独自のノウハウで白ナンバー配送の法的課題もクリアし、資本力では容易に真似できない参入障壁を築いている。わずか9カ月で実証実験の段階まで進み、公共と民間のスペシャリストが集結した強固なチーム体制も完成している。同社は地域経済を再生する伴走者として自治体や金融機関に協力を呼びかけ、三重から2040年の新たなスタンダードをつくる決意を語った。

●YJAPAN株式会社 三崎友輔氏

『時給200円の壁をぶっ壊す!大企業との共創による新しい障がい者雇用モデル』

就労支援が抱える出口がないという構造的課題を解決するため、企業が就労支援事業所を内製化して運営するフランチャイズモデルを提案。企業側に採用コストの削減と事業収益化のメリットをもたらしつつ、障がい者の時給向上と高い定着率の実現を目指す。企業の課題と福祉の課題を同時に解決し、障がい者が輝く仕事の舞台を創出する。

●MovieTWO 奥林さや香氏

『あなたの価値に気づく!プロジェクト「YOU」』

診断の有無に関わらず、生きづらさや障がいを抱える人とチームを組み、それぞれの特性を生かしたSNSアカウント運用代行を行う。苦手を克服するのではなく、集中力が高い人は分析、在宅希望者は動画編集など、得意を生かした役割分担を徹底する。安心できる環境での成功体験を通じ、自らの価値に気づき社会や仕事へ繋がるよう伴走する。

●Creative Mind Lab/極美株式会社 栗田裕之氏

『化粧品・サプリ事業への参入支援サービスの展開』

美容院などの労働集約型事業に対し、小ロットで開発可能な自社ブランド化粧品やサプリメントの提供を提案。製薬会社での研究開発経験を活かし、処方設計や薬事対応、補助金申請から販売戦略までワンストップで伴走する。初期リスクや在庫リスクを抑えながら、顧客へのアフターケアを通じた労働力に依存しない新たな収益の柱構築を支援する。

●URESHINO株式会社 小山隆幸氏

『感情推定アプリ「ウレシーノ」』

松阪市で重度障がい児向けのNPOを運営する原体験から、発話が困難な子ども向けの感情伝達アプリ『ウレシーノ』を開発。脳波と心拍の生体情報を読み取って感情を推定・可視化し、推測に頼らないコミュニケーションを実現する。まずは福祉現場での実証を進め、将来的には高齢者の認知症ケア市場への展開や海外進出も見据えて課題解決を目指す。

●山と人 土本雄祐氏

『鈴鹿山脈を守りたい!!登山道整備プロジェクト』

登山者増加による登山道の荒廃を防ぐため、登山道整備を特別なボランティアではなく日常の小さなアクションにする文化の醸成を目指す。ガイドがさりげなく道を直すステルスツアーを通じて、山を守る精神を伝播させる。また、共同事業者の杉野氏とともに、子ども向けのキャンプや炭焼き体験も展開し、次世代の山の守り人を育成していく。

●株式会社ゆめスタ 飯田思遠氏

『“なんとなく就職”と”若者流出”にメスを刺す。三重発・次世代型教育メディア「ゆめスタ」』

自身が感じた学校教育と社会のギャップや地域の体験格差を解消するため、高校生向け情報誌『ゆめマガ』を発行。高校生自身が表紙を飾り、企業へ取材に行く実践的な授業やインターン機会を創出する。さらに北勢地域の高校で年間を通じた授業を受け持ち、若者の主体的なキャリア形成を支援しつつ、地方企業の採用難という課題解決にも貢献する。

●mit Spaß 井内琢斗氏

『Why? "ハナセル" ヨウニナル ジャパニーズピーポー!?』

自身の挫折経験から、日本人が英語を話せない原因は完璧主義や間違いへの恐れにあるとし、マインドセットの変革に焦点を当てたプログラムを展開。1〜3カ月という短期間で脱恥・脱完璧主義を実現し、気づきをシェアする安心できる環境で実践的なコミュニケーション能力を養う。企業研修やBtoC向けに提供し、グローバル人材を輩出する。

●株式会社HALO 鵜飼幸子氏

『新設日本語学校「和心学院」』

桑名市の廃校を活用した日本語学校の設立を目指す。単なる語学学習にとどまらず、地元住民とのお祭り参加や避難訓練、地元企業でのインターンなどをカリキュラムに組み込む。留学生が地域に愛着を持ち、将来的な人材不足を補う次世代の担い手として地域と共に成長する新たな共生モデルを描く。2027年4月の開校に向けて準備を進めている。

●松浪琢也氏

『町まるごとシェアリング〜紀北町の遊休資産を稼ぐインフラに変える〜』

人口1.3万人以下の過疎地域・紀北町で、観光客向けカーシェアを展開。ガイドドライバーとの連携で移動の不便(運転によるお酒の制限など)を解消しつつ、地域の美味しい食事や体験を組み合わせたオールインクルーシブな深い旅行体験を提供する。都市部ではなくあえて過疎地を舞台にシェアエコを成立させ、移動の憂鬱を町の利益に変えていく。

●伊丹彩乃氏

『2026年、熱量を形に』

同氏はプログラムを通じてさまざまな現場に足を運ぶ中で、視覚障がい者支援の分野に携わりたいという思いや、素晴らしい技術や取り組みを人に伝える活動への関心を深めた。頭で考えるだけでなく行動することの重要性を学び、起業という言葉に縛られず、まずは同行援護従事者の資格取得や留学など、自身の興味に従って人生経験を積み重ねていくという、等身大の決意表明を語った。

●アズメド株式会社 西直哉氏

『外国人介護人材定着化プラットフォーム』

三重県で増加するインドネシア人労働者(特に介護人材)の定着を支援するため、三重弁などのローカルな方言や生活ルール、宗教的な文化の違いなどを反映したAI翻訳プラットフォームを開発。自身のバックパッカー時代の恩返しの思いから事業を着想。言語や文化の壁によるミスマッチを防ぎ、働きやすい環境を構築して三方よしの社会を目指す。

取材後記

三重県という地に根を張り、新たなビジネスを生み出そうとする起業家たちの熱量は、会場全体を巻き込む大きな渦となっていた。『TOKOWAKA-MIE REBORN PROGRAM 2025』で発表された事業は、地域課題の解決、教育、福祉、観光、グローバルビジネスなど多岐にわたる。共通していたのは、地方から新しい価値を生み出そうとする強い意思だった。行政や支援機関、地元企業が一体となって起業家を後押しする温かくも熱いコミュニティの存在は、三重でスタートアップエコシステムが確実に育っていることを証明している。

続く<後編>では、三重県内企業と全国のスタートアップが連携し、新たなビジネス創出を目指す『TOKOWAKA-MIE オープンイノベーションプログラム 2025』の共創ピッチやトークセッションの模様をレポートする。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)

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