衛星データ解析システムの開発・提供するスペースシフトと地図事業を行うジオテクノロジーズ、地図整備における建物更新率1.8倍のDX効果を実現
株式会社スペースシフトとジオテクノロジーズ株式会社は、合成開口レーダー(SAR)衛星データとAIを活用した「建物変化点抽出ソリューション」による協業を通じ、地図整備業務の効率化と品質向上を実現した。2024年度の実績では、ジオテクノロジーズの地図整備における建物更新率が従来比約1.8倍に向上し、整備コストも13.2%削減されている。
地図データの正確性と鮮度は、モビリティ、防災、都市計画など多くの分野で社会インフラとしての重要性を増している。一方で、日本全国という超広域を対象にした地図整備は、膨大なデータ調達と人手を要する高コストな業務でもある。こうした課題に対し、衛星データとAIを組み合わせたアプローチが、実務レベルで成果を上げ始めている。
超広域・高頻度更新を阻む地図整備の課題
ジオテクノロジーズは、日本全国を対象にデジタル地図の整備・更新を行ってきたが、その過程では膨大な衛星画像データを調達・確認する必要がある。一方で、取得したデータの中には変化のないエリアも多く含まれ、必ずしも整備業務に直結しないケースが課題となっていた。そのため、どのエリアに実際の変化が生じているのかを事前に把握し、調達データや調査リソースを最適化する仕組みが求められていた。
PoCを経て全国規模での本格導入へ
スペースシフトは2022年より、建物変化検知AIの研究開発を進め、ジオテクノロジーズと協業を開始。限定地域での技術実証や比較検証を重ね、2023年9月には日本全国の約4分の1を対象とする大規模なPoCを実施した。
このPoCで業務効率の大幅な改善が確認されたことを受け、2024年度から「建物変化点抽出ソリューション」を正式に導入。SAR衛星データをAIで解析し、建物の新築・解体といった変化点情報を提供することで、更新対象エリアを高精度に特定できる体制を構築した。
更新率向上とコスト削減を同時に実現
導入効果として、調達データに対する建物更新割合は平均約5.7%から約10.1%へと向上し、更新率は約1.8倍に拡大。また、変化量の多いエリアに絞ったデータ調達が可能となったことで、調達を含む整備コストを13.2%削減した。
さらに、「建物の変化量」という客観的指標を用いることで、全国規模で更新優先度を判断できるようになり、地図整備計画の精度も向上している。
現場理解と技術力が生んだ協業の成果
ジオテクノロジーズの簗場氏は、「現場の整備プロセスを理解した上での提案が、スムーズな導入と生産性向上につながった」と評価する。
スペースシフトの元村氏も、「SAR衛星の広域性と安定性、AI自動解析を最大限活用した理想的な事例」と語り、今後も衛星データの価値拡張に注力する姿勢を示した。
今後、ジオテクノロジーズはスペースシフトが運営する事業共創プログラム「SateBiz」にパートナーとして参画し、地図整備における衛星データ活用のさらなる可能性を追求していく。SAR衛星とAIが切り拓く地図整備DXは、インフラ管理や防災など多分野への波及も期待されている。
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(TOMORUBA編集部)