炭化技術で廃棄ゼロ社会へ――Gabが新循環ソリューション「.Garbon」始動 トヨタ自動車のカーボンニュートラル推進活動「TOYOTA UPCYCLE プロジェクト」との実証実験を開始
社会課題(環境・廃棄物)をユニークに解く循環型社会を目指す株式会社Gabは、これまで再利用が難しかった廃棄物を独自の炭化技術によって資源化する新循環ソリューション「.Garbon(ガーボン)」を始動した。炭化によって廃棄物を人工皮革などの高付加価値素材へと変換し、廃棄ゼロ社会の実現を目指す。第一弾として、トヨタ自動車のカーボンニュートラル推進活動「TOYOTA UPCYCLE プロジェクト」との実証実験を開始した。
“焼却依存”を超えて──第4の循環手段「Next Cycle」へ
日本では年間約316万トンの焼却灰が埋立処分され、残り約22年で容量が限界に達するとの試算がある。さらに、廃プラスチックの輸出や環境汚染が問題視される中、従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)だけでは対応が困難な状況にある。
こうした課題に対し、.Garbonは“第4の解決策”として「炭化による資源化」を提案する。炭化は廃棄物を無酸素状態で加熱・熱分解し、CO₂排出量を30〜50%抑えながら、黒色粉末の炭化物を生成。プラスチックや衣類、食品残渣など分別困難な有機系廃棄物も再資源化できる。炭化により廃棄物の約8割が熱エネルギーに、残り2割が固形炭化物として再利用可能な形で残る。
廃棄物から生まれる新素材「.Garbon Synthetic Leather」
.Garbonの象徴的な成果が、廃棄物由来の炭の粉末を原料とした「.Garbon Synthetic Leather(ガーボン・シンセティック・レザー)」である。消臭・抗菌機能を持つうえ、遠赤外線効果の実証も予定。高耐久・高意匠性を備え、レザージャケットやシューズ、インテリア、建材など幅広く応用できる。
また、使用後は再び炭化して100%再資源化が可能。本革と比較してCO₂排出量を大幅に削減し、企業が自社の「資源循環ストーリー」を具現化する素材として注目されている。
技術の中核を担う「大木工藝」との連携
炭化処理の中核を担うのは、炭化技術のパイオニアである株式会社大木工藝だ。同社の特許技術により、金属を除く多様な有機物を炭化し、高品質な炭化物を安定的に供給することが可能になった。Gabは大木工藝と独占ライセンス契約を締結し、炭化から素材化、製品化までの一貫体制を構築。焼却依存から脱却し、社会全体の循環率向上を目指す。
トヨタと挑む循環型社会の新モデル
今回の実証実験では、トヨタ自動車の製造工程で発生する端材や使用済み素材を対象に、.Garbonによる資源化プロセスを検証する。
トヨタアップサイクルプロジェクトの中村慶至氏は、「.Garbonの技術は、“循環をあきらめない文化”を実現してくれる」と期待を語る。廃棄物を新素材として再流通させる仕組みを構築し、持続可能なモノづくりを目指す。Gabは今後、自動車業界にとどまらず、ファッション、建材、日用品などへの展開を計画。さらに、炭化以外の再生利用技術を持つ企業との連携により、「ゼロウェイストコンソーシアム」の立ち上げを構想している。廃棄物を「処理するもの」ではなく「選べる素材(再資源)」として再定義する.Garbon。炭化を軸にした“Next Cycle”は、企業と社会がともに廃棄ゼロを実現する新たな道を切り開こうとしている。
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(TOMORUBA編集部)