
日本特殊陶業×日立プラントサービス CO₂の回収・液化で地域循環型社会を目指す実証実験へ
日本特殊陶業株式会社と株式会社日立プラントサービスは、愛知県小牧市にある日本特殊陶業・小牧工場にて、工場のボイラーから排出される二酸化炭素(CO₂)を回収・液化し、地域資源として利活用することを目的とした共同実証実験の開始に合意した。開始時期は2026年10月を予定し、回収・液化量は1日あたり最大3トン、液化CO₂の純度は99.95%以上を見込む。脱炭素社会に向けた一手として、工場排出物の「資源化」に挑む。
技術融合でCO₂の「見える化」と地域循環を実現
今回の実証実験では、日本特殊陶業が独自開発したCO₂の回収装置と、日立プラントサービスが手がけた小型CO₂液化装置を連携。ボイラーの排ガスから二酸化炭素を効率的に取り出し、高純度の液化CO₂へと変換する。製造された液化CO₂は農業、工業、食品産業など、地域での活用方法を検討・実証する。これにより、CO₂を「排出物」から「資源」へと位置づけ直し、カーボンリサイクルを軸とした循環型社会のモデル構築を目指す。
両社の役割は、日本特殊陶業は回収装置の提供と実証全体の設計と地域連携を担い、日立プラントサービスは液化装置の提供と液化工程の最適化を担う。また、排出から利活用までのCO₂の流れを「可視化」することで、サプライチェーン全体の最適化も視野に入れる。
1日3トン→10トンへ 2027年には事業化フェーズへ移行予定
本実証を通じて得られる知見は、2027年以降の本格的な事業化にもつながる予定だ。両社は、愛知県内で液化CO₂の販売を2027年中に開始する。加えて、1日あたり最大10トンの処理能力をもつシステムの販売開始を目指し、CO₂回収・液化の技術確立と普及に取り組む。これは、日本国内の中規模工場に対しても十分に導入可能なスケーラビリティを有しており、今後の産業界におけるカーボンニュートラル推進の一助となることが期待される。
技術と地域をつなぐ両社の強み
日本特殊陶業は、世界トップシェアのスパークプラグをはじめ、セラミックス製品を製造・販売する企業だ。近年では「モビリティ」「半導体」「環境・エネルギー」を重点分野に掲げ、事業の多角化と社会課題解決型のビジネスを加速している。
一方、日立プラントサービスは、空気・水・エネルギーといったインフラ領域での総合エンジニアリング企業。設備の設計からメンテナンス、デジタルソリューション「Lumada」との連携による運用効率化まで、幅広い顧客ニーズに応える体制を有する。
本実証はそうした両社の技術・ネットワーク・思想が融合することで、単なる環境対策にとどまらず、「地域と産業の循環をつなぐ装置」としての可能性も秘めている。
今回の日本特殊陶業と日立プラントサービスの協業は、CO₂を“排除すべきもの”から“活用すべき資源”へと位置づける大きな転換点となり得るだろう。
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(TOMORUBA編集部)