NTTドコモ発、IP監修の効率化をAIで実現するプラットフォーム「AIPEX」がスピンアウトで独立
AIを活用したIP(知的財産)監修効率化プラットフォーム「AIPEX™(アイペックス)」を開発・運営する株式会社AIPEXは、株式会社NTTドコモからスピンアウトし、2025年9月16日より事業を開始した。NTTドコモグループの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP®」から生まれた本事業は、2024年度の「docomo STARTUP DAY」で金賞を受賞。代表取締役社長の大城敦司氏を中心に、奥村康生氏、中里健也氏の3名が創業メンバーとして参画した。今回の独立にあたり、株式会社ANOBAKA、株式会社CINCA、NTTドコモが出資している。
IP監修のメールや目視確認に依存する非効率を打破
日本のキャラクタービジネス市場は約2.7兆円規模に達し、安定成長を続けている。しかし、収益の中核であるIP監修業務は依然として、メールや表計算ソフトによる手作業に頼るケースが多い。監修担当者が大量の案件をガイドラインと照合して目視確認するため、修正対応が重なり負担が増大。結果として、新規ライセンス案件を断念するなどの機会損失も生じている。
AIPEXは、こうした課題をAI技術によって抜本的に解決する。IPホルダー(版権元)とライセンシー(IP使用者)が一つのプラットフォーム上で監修業務を完結できるSaaS型の仕組みを構築。複数のIPホルダーとの実証実験では、監修にかかる作業時間を平均6割削減し、確認漏れの防止にも成功した。これにより、コスト削減とガバナンス強化の両面で高い効果を実証している。
経験や勘に依存しない仕組みを構築
AIPEXのプラットフォームでは、監修依頼や進捗状況を一元管理できるほか、提出された制作物をAIが自動でガイドラインと照合し、違反の可能性がある箇所を指摘。担当者は単純な確認作業から解放され、企画立案やパートナー戦略など、より創造的な業務に時間を割けるようになる。
さらに、監修事例をAIが継続的に学習することで、人によって異なる判断基準のばらつきを吸収し、監修品質を均一化する。属人的なノウハウをデータとして蓄積することで、担当者の異動や退職によるナレッジロスのリスクも最小化できる点が強みだ。
スピンアウト起業が示す新たな挑戦
AIPEXは今後、キャラクターやアニメ、マンガ、ゲームなど幅広いIP事業者への導入を推進し、ライセンスビジネスにおける「監修インフラ」の標準化を目指す。ANOBAKAの萩谷聡氏は「AIPEXがこの領域をリードする存在になる」と期待を寄せ、CINCA代表の阿部拓貴氏も「研修から生まれた挑戦が新しい仕組みを生み出したことを誇らしく思う」とコメントした。
NTTドコモ 経営企画部 事業開発室長の原尚史氏も「AIネイティブなチームがエンタメ業界の可能性を広げる挑戦を続けてきた」と称賛する。大企業の枠を越えたスピンアウト起業として、AIPEXは「監修業務のDX」という新たな市場を切り拓く存在となりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)