【広島発】マツダが中心となり産学官を連携して仕掛けるイノベーションとは?
■2015年、「ひろしま自動車産学官連携推進会議」(ひろ自連)が誕生。
25年ぶりのリーグ優勝が実現した広島東洋カープ。それに伴い、広島が活気づいている。経済面でみても、「一部に弱めの動きがみられるものの,緩やかな回復基調を続けている」(H28年5月~6月/広島県・商工労働局)と分析されており、求人倍率も1.69倍(H28年6月)と近年でも最高値を記録。回復基調を裏付けている。 これを牽引しているのが、地元の最大手企業であるマツダだ。2015年7月、マツダを含め、広島大学、広島県、広島市など6団体から構成される「ひろしま自動車産学官連携推進会議」(ひろ自連)が設置された。広島地域の自動車産業を活性化するための旗印として掲げた『2030 年産学官連携ビジョン』の着実な実現を図ることが、「ひろ自連」設置の目的だ。 なお、『2030年産学官連携ビジョン』は以下のような内容のもので、中・長期的に戦略的な技術振興を行い、イノベーションを起こすことをビジョンとして掲げている。 ●広島を、自動車に関する独創的技術と文化を追い求める人々が集まり、世界を驚かせる技術と文化が持続的に生み出される聖地にする。 ●産業・行政・教育が一体になり、イノベーションを起こす人財をあらゆる世代で育成することにより、ものづくりを通じて地域が幸せになる。 ●広島ならではの産学官連携モデルが日本における「地方創生」のリードモデルとなり世界のベンチマークとなる。
■各団体が一丸となり、イノベーションを起こすための地盤作りを推進。
このビジョンを達成するための産学官メンバーの代表者会議が7月1日に開催され、白熱した議論の末、以下の方向性・取り組みが発表された。 ●2030年においても自動車の主流は内燃機関であり続ける予測される中、「内燃機関専門部会」を設置。広島大学・マツダで共同研究講座を立ち上げ、内燃機関において最も重要な燃焼をより深く研究する体制を強化。 ●IoT や Industry4.0 など、デジタル技術を活用した技術革新が世界に広がる中で、モデルベース開発を重要技術と位置づけ。「モデルベース開発専門部会」を設置し、世界に先駆け、広島でこの技術を確立するためにロードマップを策定。その第一歩として地域企業のモデルベース開発力の基盤強化を目的に、広島大学に「モデルベース開発基礎講座」を開設。 ●「地場サプライヤ活性化委員会」を設置し、サプライヤ数社が振動・騒音技術領域において、共同して研究開発・共創活動を行う「新技術トライアル・ラボ」を開設。 ●「イノベーション人財育成委員会」を設置し、マツダにおけるインターンシッププログラムの充実及び、受入枠の倍増と共に、ひろしま産振構による地場サプライヤ向けにものづくり人財を育成する場を提供する取り組み(イノベーションインストラクター育成塾)を開始。 「ひろ自連」誕生からわずか1年で、2030年に向けた多くの取り組みが既にスタートしている。同時に、本会議に参加する団体も、当初の 6 団体から現在では 28 団体まで拡大。未来の広島経済を見据え、着実な進展を実現させている「ひろ自連」。まさに、地方創生を見据え、産学が連携し、地方からイノベーションを興していく一つのモデルケースになり得るだろう。