トータルSIerのDTSが、慶應義塾大学・中西研究室と共同研究を開始 「人間の創造性を引き出すAI」実現に向けた知的協働プロセスの設計へ
トータルSIerの株式会社DTSは2026年1月28日、慶應義塾大学 環境情報学部・中西泰人研究室と、「人間の創造性を誘発するAI」に関する共同研究を開始したと発表した。AIを単なる業務代行や効率化の手段としてではなく、人の感性や文脈に寄り添い、思考や発想を刺激する「アフェクティブ(感性)AIエージェント」として再定義する試みである。
AIを“答えを出す存在”から“思考を揺さぶる存在”へ
生成AIの急速な普及により、業務効率化や自動化は大きく進展してきた。一方で、企業や社会においては「AIと共存しながら、いかに新たな価値を創出するか」が次のテーマとなっている。DTSは、これからのAI活用において重要なのは、「人間とAIエージェントが織りなす知的協働プロセス」をいかに設計するかであると捉えた。
そこで同社は、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)および創造活動支援分野で先進的な研究を行う中西研究室と連携。AIが人の思考に能動的に介入し、新たな気づきや発想を促すメカニズムを、実証的かつ科学的に解明する共同研究に乗り出した。
アセット×宇宙事業開発力で、新たなサービスモデルを構築
今回の提携では、三菱HCキャピタルが有するアセット保有・ファイナンス機能、開発力、幅広い顧客基盤と、Space BDの宇宙事業開発における実績・実務対応力、産官学を横断するネットワークを融合する。宇宙関連設備へのファイナンスやリース、宇宙関連アセットの保有、衛星データ活用など、これまでにないサービスモデルの創出を通じ、宇宙ビジネスの可能性を拡張していく考えだ。
さらに、事業創造を通じて得られる知見を生かし、国内外の業界団体や規制当局と連携。宇宙産業におけるルール形成や制度設計にも関与し、市場形成をリードする立場の確立を目指す。
アフェクティブAIエージェントの行動モデルを検証
本共同研究では、「人間の感情や文脈に寄り添い、創造性を誘発するAIエージェント」のプロトタイプを開発。その上で、AIによる問いかけや情報提示といった介入が、人間の思考プロセスにどのような影響を与えるのかを検証する。
具体的には、創造的な共創を促進するための「AI行動モデル」を構築し、AIと人の協働の質を高める設計指針を明らかにすることを目指す。AIの振る舞いをブラックボックスとして扱うのではなく、創造性に寄与する要素を構造的に捉えようとする点が特徴だ。
産学の強みを生かした三つのアプローチ
研究は、以下のようにDTSと中西研究室それぞれの環境をフィールドとして進められる。
DTSが中心となり、状況に応じて人の思考を刺激するAIの振る舞いをパラメーターとして整理・体系化。これに対し、中西研究室がHCIの学術的観点から助言を行う。
中西研究室主導で検証用プロトタイプを実装し、大学環境とDTS社内という異なる文脈で実証実験を実施。産学双方の環境でAIエージェントが人に与える影響を多角的に評価する。
人間とAIの対話データを分析し、どのような相互作用が創造性を誘発するのか、そのメカニズムを学術的に解明していく。
創造性を高めるAI活用の社会実装へ
DTSは本研究で得られた知見を、社内業務におけるAI活用に展開し、単なる効率化にとどまらない「創造的価値創出」の実現を目指す。さらに、顧客企業における「人とAIの協働組織」の設計支援や、創造性を高める知的協働基盤(アフェクティブワークプレイス)、顧客体験(CX)向上に資するソリューション展開も視野に入れる。
中西泰人教授は「人間の知的な喜びは『問い』を立て、試行錯誤するプロセスにある」と語り、AIを人の思考を揺さぶる“他者”として再構築する意義を強調。DTSの北村友朗社長も「産学連携を通じ、創造性を引き出すAIの行動モデルを社会実装につなげていく」と意欲を示した。
AIと人が共に考え、価値を生み出す時代――。その知的協働の設計に向けた本共同研究は、次世代のAI活用のあり方を示す一歩となりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)