【イベントレポート】テックアクセルベンチャーズ主催「Tech Sirius 2018」。11社のスタートアップピッチ!
リコー、オムロン、SMBCベンチャーキャピタルが運営母体であるテックアクセルベンチャーズ主催のビジネスプランコンテスト、「Tech Sirius 2018」が、2月6日に開催された。同コンテストには、1年以内に起業を予定するチームまたは創業5年以内の企業が48社応募し、ファイナリストである11社のピッチが行われた。
今回は各社のピッチの様子をお届けする。
①株式会社シナモン
AIを扱うスタートアップで、ホワイトカラーの生産性を改善する人工知能ソリューションを展開。畳み込みニューラルネットワークや再帰型ニューラルネットワークなどを組み合わせて学習を行い、従来のOCR(光学文字認識)と比べ、95~98%と高い精度で文書を読み取ることが可能と言う。情報の分類や、不特定の文書フォーマットでも高精度に読み取ることができる。
CEOの平野氏は、東大在学中にIPAの育成事業「未踏ソフトウェア創造事業」に採択されたエンジニア。同社はベトナムに人工知能ラボを保有し、AIサイエンティストを採用できる体制を整えているという。
クライアントのほとんどが、煩雑な書類業務を抱えるトラディショナルな業界が多く、ホワイトカラーの面倒な仕事をなくすためのプロダクトを今後も展開していくとのこと。
②株式会社マッシュルーム
スマホ通信認証技術を用いたスマート宅配ボックスを展開。
宅配事業者がスマホをかざしてボックスのロックを解錠し集荷・配達を行うと、ユーザーにはアプリで完了通知が届く。ユーザーがスマホをかざすと解錠・取り出しを行うと受取完了通知が行くというもの。このスマート宅配ボックスでラストワンマイル、再配達問題を解決したいと言う。
同社の特徴は、スマホ側通信のみを用いたセキュアに認証可能な双方向通信技術。この技術を宅配ボックスに組み込むことで、設置側ネットワーク敷設や電源確保が不要となり、低コスト・低設置負荷を実現している。スマート宅配ボックスをハブとし、より人々の生活に便利なサービスを広げていきたいと展望を語った。
③アキュルナ株式会社
がんや感染症など難治性疾患の治療を、ナノテクノロジーで前進させていくことを目指す同社。
人の遺伝子のうち3000もの遺伝子が病気に関係しているにも関わらず、既存の医薬品の標的となるのは300前後のみ。また、薬は飲むと体内をまわるため、病気の細胞だけでなく健康な細胞まで破壊し副作用を起こすこともある。同社は、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)と核酸医薬でこれらを解決したいと言う。
次世代の医薬品と言われ期待が寄せられるが、まだまだハードルが高い拡散医薬を、ナノテクノロジーを用いた高分子からなる核酸DDSプラットフォームにより、高い生体適合性や体内での安定性改善、腫瘍内への集積性を実現する。また設計がシンプルなため、簡便な製剤を可能にすると言う。
④ユニロボット株式会社
日本発のパートナーロボット「unibo」を展開。ロボットで初めて、一人ひとりの個性(好き嫌いや趣味嗜好、生活習慣等)を学習するAIを搭載し、人との連続した会話や雑談を可能にした。また、専門的な知識がなくても使いこなせるSDKを搭載しているため、さまざまな人が「unibo」を活用して、新しいサービスを創ることができるという。
感情認識できるコミュニケーションロボットとして多くのメディアに取り上げられているという「unibo」。今後も、発話内容、表情、音声などからの感情認識をより強化していくとのこと。
⑤Nicebot(早稲田大学)
高い安全性で操作が簡単な、人間と一緒に働けるロボット”Nicebot”を開発。
現状の協働ロボットの問題点である安全性や速さ(人間が接近すると低速になってしまう)を両立すべく、3軸触覚と接近感知を備えたロボットアームを開発した。
また、高価なトルクセンサを使用していないため、ロボットの導入の障壁となっている理由に多い、「価格が高い」「安全性に不安がある」といった課題を解決し、中小企業に導入していきたいとのこと。
⑥株式会社tiwaki
滋賀のスタートアップである同社は、機械学習に不可欠となる”事前学習プロセス”が必要なく、少数のサンプルを登録するだけで、物体を検出・認識できる技術を世界で初めて開発。
誰でも手軽にモバイルデバイスを用いて、さまざまな現実の物体を検出・認識することを可能にした。独自技術によるARプラットフォームを構築し、現実とバーチャルをスムーズに融合させていきたいと語った。
チームには、機械学習(特に深層学習)、画像認識の専門家が複数在籍しているとのこと。
⑦ヒラソル・エナジー株式会社
東大発ベンチャーの同社は、太陽光発電所向けの次世代IoTプラットフォームを提供。
太陽光パネルは時間とともに不具合が発生し、発電量が低下することがしばしば発生するという。これを、独自の電流型電力線通信技術を活用し、パネルにとりつけたセンサーから収集したデータを解析することで、遠隔からでも異常を自動で検知できる。
太陽光発電は、長期的に発電した電力を売ることで投資を回収していくため、安定して発電ができるよう発電量の保守は重要なポイントだという。
⑧株式会社O:
体内時計を可視化し、睡眠改善・生産性を向上させるサービスを展開。不眠で悩んでいる人は国内に2300万人おり、不眠症は国民病といわれている。睡眠には、メラトニンという体内時計にはたらきかけるホルモンが重要とのことで、これを計測できる腕時計型体内時計測定器を開発。
計測したデータは、アプリで蓄積・解析が行われ、不眠の認知行動療法を基にした体内時計コーチングが受けられる。企業の導入を促進し、会社が個人の健康をつくる世の中にしていきたいと語った。
⑨exiii株式会社
グローブ型の触覚デバイス「EXOS」を展開。もともと3Dプリンターで電動の義手を作るというところから起業したという同社は、デバイスを身に着けた人の手に、バーチャルな物体に触れた感覚を提示することができる「EXOS」を提供している。
例えば、自動車のモックアップ制作には高額な費用と時間がかかるというが、「EXOS」を使用すれば、3D CADで作成したデータから、製品を作る前に触って設計を確認することができる。これにより、デザイン/設計のフローを効率化することが可能になるという。
⑩FunLife株式会社
AR技術を用いたスポーツトレーニングプラットフォームを展開。
ユーザーの姿勢や動きが3D計測され、プロのトレーナーの動きとのギャップをリアルタイムで検出。ユーザーは浮かび上がってくるプロのトレーナーの正しいフォームを真似ながら、自分の体を動かすことで効果的にトレーニングができるという。このAR×モーションセンシング技術により、疑似的にいつでもどこでもプロのトレーナーによるコーチングを受けられる次世代の効果的なトレーニングを提供している。
⑪チトセロボティクス(立命館大学)
最短3分で利用できる、ロボットの月額派遣サービスを展開。
通常、ロボットは高額でプログラミングの納期も長い。同社は、人間の神経システムを模した独自の制御技術により、ロボットの知識がないユーザーでも、ロボットを簡単かつ高精度に運用して単純作業の自動化を行うことを可能にした。
「すべての企業が単純作業から解放され、創造的な生産活動に集中できるように」というミッションを掲げ、今後もサービスを展開していくという。
優勝に輝いたのは、睡眠改善アプリのO:。
各社の熱いピッチが終了し、最後には表彰が行われた。
優勝に輝いたのは、株式会社O:。その他3位までの受賞と特別賞のDJI賞は以下の通り。
・優勝:株式会社O:
・2位:株式会社tiwaki
・3位:Nicebot(早稲田大学)
・DJI賞:exiii株式会社
休憩時間やピッチ後は、各スタートアップがブースを構え、参加企業と連携に向けた話で盛り上がる姿が見られた。ここからどのようなイノベーションが生まれていくのか。今後も注目していきたい。
(取材・文:田中みどり)