【共創学(3)】<ジャングルポケット×eiicon founder中村亜由子> お互いを認めつつ、個性を活かす秘策とは?
【シリーズ「共創学」 …… その道のプロでも、一人では成し得なかった仕事がある。彼らの成功メソッドとは】
コンビが多い中、三人組で活躍するのがトリオだ。今回、eiicon founder・中村亜由子が話を聞いたのは、そんなトリオ芸人のなかでも、若手として勢いがあるジャングルポケット。昨年、キングオブコントで接戦の末、2位となり、話題となった。暑苦しい斉藤、肉体派の太田、天然ぶりが注目される武山(おたけ)と、それぞれの個性を引き立て合い、笑いを「共創」するにはどうするのか?互いに認め合いつつ、個性を活かす秘策に迫る。
▲お笑い芸人 ジャングルポケット
太田博久(1983年12月10日生/写真中央)、斉藤慎二(1982年10月26日生まれ/写真右)、武山浩三(1982年12月2日生まれ/写真左)により、2006年4月に「ジャングルポケット」結成。いずれもNSC東京校12期生。『キングオブコント2016』では決勝進出し、優勝したライスと競り合ったが惜しくも2位となる。三者三様のキャラを活かし、『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系列)や『一夜づけ』(テレビ東京)をはじめ、テレビや舞台で活躍している。
トリオとして三者三様に輝くための模索
中村:昨年の『キングオブコント』決勝で披露されていた、勢いのあるコントがすごく面白かったです! 自分たちの芸風を理解してもらうためにやったことや苦労などはありましたか?
太田:ありがたいことに斉藤のインパクトがすごくあるんですよね。良くも悪くも斉藤の演技っぽさ、暑苦しさみたいなのは僕らの名刺になっていて。でも、そのネタはごく一部で、僕らとしてはほかのカードもいろいろあって。最初は斉藤の暑苦しさみたいな部分を推してやらせてもらってたんだけど、それで出させてもらったがゆえにそれに縛られた時期もあった。それを今回のキングオブコントで斉藤がツッコミをすることでそれが少し払拭されたので、その意味ではすごく大きな意味があったように思います。
▲太田博久
斉藤:ネタ番組でも最初から「こういう熱いコントで」と求められることもあるんです。もちろん、それに答えるのも芸人だと思いますし。でも、そればかりにならないように番組の個性をこちらでも考えながら「この番組では分かりやすいネタで」「これは少し尖っててもいい」と変えていきました。
太田:だから、斉藤のそのイメージをどう崩すかで苦労したかもしれません。演技っぽい斉藤がただ暑くやるっていうことじゃない斉藤を出さないと勝てないなと。わりと戦略的に「斉藤のそれを排除したコントで」というテーマで単独ライブをやったりもしました。そうすると、意外とおたけの飄々とした演技がハマったり、そういう部分も見えてくるんですよね。
中村:アツい斉藤さんと飄々としたおたけさん、トリオとしてのバランスっていうのもあるんですね。三人でトリオとしての戦略じゃないですけど、そういう話もされるんですか?
斉藤:しますね。例えば、おたけがコントを好きじゃないので、まずおたけにコントを好きになってもらおう、今年はおたけを推して行こうという風に決めて(笑)、少しずつおたけを芸人価値を示すようにしていったり。それが少しずつ発揮されて、今、「モニタリング」などの番組でもおたけの天然ぶりもフィーチャーされていて。そういう流れで自信がついて「コントでも頑張りたい」ってなってくれたら僕らはうれしいなと思っています。
武山(以下、おたけ):……コントって難しいんですよね。コントは嫌いってわけじゃないけど、コントで自分を出すのは難しい。与えられたキャラを演じなきゃいけないわけですから。なんていうか、見返りがあんまりないので好きじゃなかった(笑)。三人のコントだと、ボケの太田と斉藤がかけあいしているところだけカメラがアップになったり、そういうこともあるんですよね。
斉藤:おたけはジャングルポケットとしてより、自分が注目されたいっていう気持ちが強かったんでしょうね。それは大事ですよ、うん! でも、おたけは月島のさんまさんと言われていたくらい、地元ではお笑いのトップだったわけです。それなのにいつの間にか…ってことですよね。
おたけ:正直、ずっと我慢してきた部分もあって。でも10年やってきて、ようやく自分もチャンスが出てきたので、そこは一生懸命やろうかなと。
太田:そこなんですよ。でも、その前に斉藤のキャラでバーンと世に出た10年がなければ、今、おたけにフィーチャーされるチャンスも生まれてないから。やっぱり蓄積ですから。これまでのことがあって、今がある。ネタの中で自分が注目されなかったとしても、三人でやるネタが評価されれば、いずれチャンスは生まれるので、今を頑張ることで巡ってくることってあるんですよね。
斉藤:おたけは主軸となるコントになると、そのときはイキイキしているんですよ。そのコントが忘れられなくて、自分の芸名をおたけにしたくらいですから。でも、僕はそのコント、嫌いでしたけどね(笑)。
10年経って、ようやく掴めてきた自分の範囲
中村:2006年の結成ということで芸歴10年を経て、今、すごくいい状態にあるんですね。
斉藤:そうですね。今のこの関係性が続けばいいなと思えています、これが壊れるような障害とかがこの先、現れないといいなと。
▲斉藤慎二
太田:オリエンタルラジオの中田さんから言われて「なるほどな!」と思ったのが、『芸人の世界では沈まなきゃいい』と。確かにその通りで。誰かに注目が集まっていることでジャングルポケットという船が浮いているならそれでいいんですよね。個人でもいいし、トリオとしてでもいい。昨年、キングオブコントでジャングルポケットとして「キングオブコント」で2位になれたのはすごくいい形でしたね。
斉藤:考え方も全然変わりましたね。以前は、太田だけ一人でよばれた仕事とか「うわっ!くやしい」と思っていましたけど、三人でのコントもちゃんと評価されてくると、「誰でもいいからジャングルポケットとして誰かが活躍してるのがうれしい」と落ち着いてみれるようになる。それぞれピンでフィーチャーされたり活躍しても、トリオとしてコントという帰る場所がちゃんとあるわけですからね。
中村:今は三人の中で「ジャングルポケットという船が浮いていればいい」という共通認識があるようですが、それが途中で崩壊するような危機はありましたか?
太田:正直、危機だらけでしたね。何回も解散危機ありましたし。例えば、斎藤が一人で仕事に行っている間に、俺とおたけがマックでネタを考えておくことになっていて。でも、ただしゃべってただけで何も考えてなくて。斉藤が仕事から戻ってきたときに「なんも考えてないのか!解散だ!」と。
斉藤:でも、解散危機の9割はおたけが原因でしたね(笑)。ひどかったんですよ。おたけの遅刻とか態度とか。前日酒飲みすぎて、仕事を飛ばしたり。でも、そういう解散の話になると決まってタイミングよくテレビのレギュラーが決まったり。
おたけ:僕がそうだったのは、さっき話したトリオの中で自分にだけフィーチャーされない鬱憤があった時期なんでしょうね。
太田:三人ともに鼻息の荒い時期もありましたけど、そんな時期も必要で。でも、それが10年経って、自分の範囲がわかってきたのかなと思います。それは諦めているとかネガティブな意味ではなく、トリオのジャングルポケットとして活躍できるのはどんなかっていうのが見えてきたように思います。
斉藤:どんな形でもいい。それぞれの役割が発揮できて、それでいてトリオとしても機能するのがいい。
おたけ:数年前からは「誰かがニュースになっていればいちばんいい」と言ってたんですけど、結果的にその戦略は正しかったと思います。
▲武山浩三(おたけ)
自分の良さは意外と自分では気づけないもの
中村:このeiiconは社外の人と連携して新しいサービスを生もうというコンテンツなのですが。最後に、経営者やサラリーマンなど読者の方にひと言いただけますか?
太田:どの世界でも一緒だと思うんですが、得意分野は得意な人に任せた方が圧倒的にいい。時間的にも無駄がないし、想像していなかった提案ももらえますから。僕らも単独ライブなどでは作家さんと組んでやっています。ネタ自体は僕が考えるけど、作家さんの目が入ることによってきちんとした台本になり、それを見た舞台監督さんが当日の段取りもしてくれる。得意な人に得意なことをお願いすることで、自分たちが考えた以上のものがしっかり出来上がるので。スペシャリストと手を組むメリットはそこにあると思います! 「新しいことを始めたいと思うなら、そのスペシャリストと手を組むのがいい」と前に読んだ本に書いてありました!
おたけ:いや、結局、読んだ本の言葉じゃんか!
太田:僕もビジネス本とか読んで取り入れているんです!
斉藤:僕は芸人になる前、営業マンだったんですけど、やりたくないことを仕事にしている人が多いんですよね。今、自分がやっている仕事が好きでないなら、自分はどうすればその仕事が楽しくなるのかってことを見つめ直すといいのではと思います。時間をかけてでも、自分の内面と向き合うことは大事だと思うので。自分自身が仕事が好きだという意識がないと、それは一緒に仕事をする人にも伝わってしまう。そのあたりの基礎的な部分は大事だと思います。僕は好きなことができているのはすごいラッキーだと思うので、偉そうなことは言えないんですけど。
中村:では、おたけさん、最後にお願いします。
おたけ:……すいません、もう一回質問を説明してもらえますか?
太田:ぶははっ! お前、何聞いてたんだよ! (とおたけ、詳しくeiiconの説明をもう一度、聞く)
おたけ:ふむふむ、なるほどね。思うには、けっこう、僕らって盲目なんですよ。自分のことって意外と見えていなかったりする。じつは他の人から見たほうが、自分の魅力や長所にうまく気付いてくれたり、引き出してくれたりするもので。僕なんかは先輩から「おたけって意外とこうだよね」と言われると、「あ、そうなんだ!」と気付きになり、意識して舞台などでそれを出してみるとすごい爆笑でハネたりする。会社もそうかもしれない。自分たちの強みの部分も、ほかの会社の人からしたら「こういう活用したらもっとよくなるのでは?」ということがあると思うので! 挑戦してみたらいいと思います!
中村:すごいうまくまとめてくださり、ありがとうございます!
斉藤:……でも、質問の意味をもう一度、説明した後でのコメントってことはちゃんと書いといてくださいね(笑)。そこがおたけのおたけな部分ですから!