【文部科学省】「オープンイノベーションの本格的駆動に向けて」の報告書をリリース
文部科学省が大きな注目を寄せているオープンイノベーション
先日、eiicon labでも取り上げた「平成29年科学技術白書」。同白書は、6月に文部科学省から発表されたもので、「オープンイノベーションの加速~産学官共創によるイノベーションの持続的な創出に向けて~」というタイトルが付けられており、オープンイノベーションにフォーカスした内容となっている。
さらに、7月10日には、文部科学省が実施している「オープンイノベーション共創会議」(※)の議論をもとに、「オープンイノベーションの本格的駆動に向けての報告書」を発表した。
※大学などの研究機関と企業の産学連携やベンチャー企業創出などを促すための具体的な方策を話し合うための会議体。大企業・ベンチャー企業の経営層や大学教授などが参加している。
オープンイノベーションの本格化に向けた「改革方策」
報告書では、オープンイノベーションの本格的駆動を推進していく背景として、まず以下の2点が挙げられている。
●産業構造が資本集約型から知識集約型に大きく変化しようとしている中で、我が国の経済社会が発展を続けていくためには、国を挙げた産学官連携の拡大によりオープンイノベーションを加速することが必要不可欠。
●日本の大学等の産学官連携は欧米に比べて低調。米国の大学では、活発な大学発ベンチャー等による新産業創出はもとより、寄附文化と相まって、産学官連携は教育研究の高度化や財務基盤の強化に大きく貢献。
上記のような背景を踏まえながらオープンイノベーション共創会議の議論に基づき、産学官連携の拡大を阻害する要因を整理。それらを克服するための具体的な改革方策が、以下の(1)〜(4)となっている。
(1)企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究の集中管理体制の整備(オープンイノベーション機構)
(2)産学官連携収入等の増大による自己財源の創出(「稼ぐ力」の強化)と財務基盤強化、それによる経営トップの裁量の拡大
・国立大学・国研がベンチャー企業等から株式取得できる方法や保有期間の緩和を検討
・ベンチャー企業等へ出資できる国立研究開発法人の拡大を検討
・オープンイノベーション機構の構築支援(再掲)
(3)資産運用に関する規制緩和
(4)その他
・事業化の観点からの研究成果等の質的向上
・イノベーション人材の育成
オープンイノベーション機構の整備
上記のような方策の中でも特に注目したいのが、「(1)企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究の集中管理体制の整備(オープンイノベーション機構)」だ。(下記図参照)
▲「オープンイノベーションの本格的駆動に向けて 要点」より抜粋
これは、経営トップ主導により、プロフェッショナル人材を集めた特別な集中管理体制の構築し、優れた研究者チームの部局を超えた組織化することで大型共同研究を推進するというもの。さらに、改革に高い意欲を有する大学を5年間集中的に支援し、支援終了時には一定程度の自立経営を目指している。
このような取り組みにより、国内外からこれまでにない大型の共同研究を呼び込み、企業との緊密な連携を通じた研究者の意識改革等に寄与するという効果を期待している。
最後に
今回紹介したのは、「オープンイノベーションの本格的駆動に向けて」の報告書の要点のみ。文部科学省のウェブサイトには、オープンイノベーション共創会議検討のまとめとしてより詳細なレポートが掲載されている。文部科学省がオープンイノベーションを推進していく背景や目的がさまざまなデータを引用しながら述べられているので、興味をお持ちの方はぜひ参考にしてほしい。