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OKI新体制対談 | “仕組み”でイノベーションを全社に実装する、OKIの戦略とは

OKI新体制対談 | “仕組み”でイノベーションを全社に実装する、OKIの戦略とは

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イノベーションは、一部の“スーパースター”から生み出される――。この定説に疑問を投げかけ、あらゆる社員がイノベーションを興せる「仕組みづくり」に取り組む企業がある。沖電気工業株式会社(以下、OKI)だ。

同社は2017年、イノベーションを興すための仕組み「イノベーション・マネジメントシステム(IMS)“Yume Pro”」の開発に着手。約3年にわたり、このIMSの試行を続けてきた。昨年12月には、社長自ら「全員参加型のイノベーション」を推進すると宣言。新規事業を担う部門だけではなく、全社のあらゆる部門がイノベーションに取り組むことを対外的に発信したのだ。

IMSの全社実装を担うのが、新たに執行役員に就任し、CINOとCTOを兼務することとなった藤原雄彦氏と、イノベーション推進センター長に着任した前野蔵人氏だ。今回、「全員参加型のイノベーション」構想の中身や、3年間にわたるイノベーション活動の振り返り、さらにニューノーマル時代に求められるイノベーションについて、藤原氏と前野氏に話を聞いた。


【写真左】OKI 執行役員 イノベーション責任者(CINO)兼 技術責任者(CTO)藤原雄彦氏

1987年入社。交換機の開発に従事し、局用交換機サブシステムのプロダクトマネジャーとして米国アトランタに駐在。帰国後はパートナービジネス、モバイルルータ等の商品企画、マーケティング部長、共通技術センター長、情報通信事業本部 IoTアプリケーション推進部 部門長を歴任。イノベーション推進には準備期間から携わり、2019年よりイノベーション推進センター長へ。2021年4月より現職。

【写真右】OKI イノベーション推進センター長 前野蔵人氏

1995年入社。入社当初より、画像処理・統計解析・機械学習などの研究開発を担当。2000年、米国コロンビア大学に留学し、画像処理・セキュリティに関する共同研究を行う。2008年からは、中央大学とセンサーを用いたAIに関する共同研究を約10年間継続し、2017年よりOKI研究開発拠点である研究開発センターでイノベーション推進室 室長を務める。2021年4月より現職。CEATECで展示された「AIエッジロボット」の事業コンセプトを起案。

「IMS Ready」な体制を、全社レベルで構築

――まず、CINO(イノベーション責任者)兼 CTO(技術責任者)に就任された藤原さんに、新体制発足にあたっての意気込みをお伺いしたいです。

藤原氏: OKIは2017年よりイノベーション活動を続けてきました。昨年10月には、中期経営計画を策定・発表しましたが、その中では「社会の大丈夫をつくっていく。」をメッセージに掲げ、OKIの強みである「AIエッジ技術」と「モノづくり」を活用して、社会の課題解決を目指すことを表明しています。また、昨年12月に開催したイベント「OKI Innovation World 2020」では、鎌上社長が「全員参加型のイノベーションを推進する」と対外的に宣言しました。

こうした流れを受け、我々が取り組むべきことは、これまでイノベーション推進センターの中で試行してきたイノベーション・マネジメントシステム(IMS)“Yume Pro”を、事業部も含めて全社員に浸透させることです。新体制ではこの「全員参加型のイノベーション」を徹底的に推進します。そのために、まず行動できる手順を作成し、事業部内のプロジェクトでも活用できるようにします。「IMS Ready」な体制を構築し、IMS認証規格(ISO 56001※)取得に向けた準備を進めていきたいと考えています。

※IMS認証規格(ISO 56001)とは、2022年に標準化が決まる見通しのイノベーション・マネジメントシステム(IMS)のこと。IMSとは、企業においてイノベーションの実現を促すための仕組み。

――全員参加型のイノベーションに取り組むことを、社内外に向けて宣言された後、どのような反響がありましたか。

藤原氏: 全員参加型を謳ってイノベーションに取り組む企業が少ないことから、「どのような考えから全員参加型になったのか」という質問をよく受けます。また、この方針をトップも含めて意思決定したことに対し、「素晴らしいですね」と賞賛する声も多いです。社外からは先進的だと評価されている感触がありますね。

一方で、我々がより一層、力を入れていかねばならないのが社内に浸透させる活動です。イノベーションは、ひとつの組織で始めても、なかなか広がっていきません。やはり忙しい事業部からは「それやって意味あるの」と返されてしまいがちです。ですから、イノベーションを創出できる活動が、具体的な行動として落とし込めるレベルまで、考え方や仕組みを浸透させていくことが重要だと思っています。


▲OKI 執行役員 イノベーション責任者(CINO)兼 技術責任者(CTO)藤原雄彦氏

――なるほど。前野さんは、イノベーション活動の現状について、どう捉えておられますか。

前野氏: 2017年度から仕組みの構築や社内の文化改革など、様々な活動を続け、新規事業のタネの仕込みも行ってきました。事業部門では仮説検証プロセスが商品企画プロセスの中に入り、POCを実施しながら共創等による事業化を進める事例も活発で、こうしたものはイノベーション活動に位置づけられます。イノベーション推進センターは、そのような活動に連携し、研究開発成果を事業に提供し続けてきました。IMSの全社実装は、こうした活動を支援してきた仕組みをIMSとして整理し、より一層進めやすくするものです。

既存の事業部門を主体としたイノベーション事例は沢山ありますが、しかしまだ、当センターの事業創出部隊からは、事業化につなげられた例を生み出せていません。この部隊は、既存の事業部門が見ていない新しい事業分野を対象としており、難易度は高いですが、大きな期待を背負っています。IMSの全社実装は、先ほどの位置付けにくわえて、我々のような新規事業創出機能を既存の事業部門に繋ぐ仕組みという側面もあります。

今まで育ててきた事業のタネを、どう成功させ、事例を生み出すのか――これからが、まさに我々の真価が問われるフェーズだと捉えています。経営陣からは「富士山に例えるなら、今はまだ6.5合目だね」と言われたりもしますが、5合目までは車で行けるので、ここからが大変というところに到達し、そこからはまだ1.5合しか登れていないイメージです。


▲OKI イノベーション推進センター長 前野蔵人氏

――さらなる高みを目指すために、どのような取り組みを推進していかれるのでしょうか。

前野氏: 今年度、イノベーション推進センターが掲げるキーワードは「Real-ize(リアライズ)」です。我々の強みである現場のリアルと、イノベーション活動の成果の具現化(Realize)を掛け合わせて、このようにしました。2021年度は「成果の具現化」に真剣に取り組みます。新しい事業分野にむけて、研究開発成果もいれて下準備してきたものを、いよいよ成果として市場に出していく。そういう意味では、ようやく入口に来たという感覚ですね。

――「全員参加型」については、どうお考えですか。

前野氏: 全員参加型というのは、新規事業創出部門に限らず、既存事業部門や間接部門も含めた全員を意味します。すべての社員が、昨日よりも改善した取り組みで生産性を日々高めていく。それを後押しする仕組みづくりや社内文化改革を、我々もしっかりと取り組んでいきたいと思います。

藤原氏: 全員参加型について私からもお話をすると、Yume Proがスタートする前からOKIは、新商品や新しいソリューションの開発・導入を行ってきました。その中で、仮説の立案や検証も、事業部門にて丁寧に行ってきたんです。しかしそれらは、品質マネジメントプロセスの中で行う仕組みになっていました。

これをISO 56002に沿って、試行錯誤の「コンセプト構築プロセス」として、より行動がしやすい手順に変えていくこと、さらには、導入先であるお客様やパートナーと共に活動しながら、常にプロセスを見直しながら形にしていきます。これをプロセスとして整備したものが、イノベーションのOS “Yume Pro”です。全員参加型というのは、この試行錯誤のプロセスを新規事業の部門だけでなく、全部門が日常の活動の中で活用できるようにしていきます。

ビジネスコンテストの応募数が飛躍的に増加、現れつつある「社内の変化」

――御社は全社員向けに「イノベーション塾」を開講されたり、社内ビジネスコンテスト「Yume Proチャレンジ」を開催されたりと、イノベーション活動に積極的です。これらの取り組みの現状や、強化ポイントについてお聞きしたいです。

藤原氏: 教育という観点から、年間1000人以上に対して「イノベーション塾」を実施しています。昨年度からは新型コロナの影響もあり、グループワークの仕組みを導入したオンライン研修も取り入れ、より多くの人たちに基礎研修を受講してもらえるよう改善しました。加えて、実践研修も強化中で、IMSの手順に則って実践できる人を、さらに増やしていく考えです。

「Yume Proチャレンジ」については、これまで3回開催してきました。応募数の推移を見ると、2018年度に37件、2019年度に45件でしたが、2020年度は147件と、たった1年で約100件も増加しました。

――飛躍的に伸びましたね!Yume Proチャレンジでは、具体的にどのようなことに取り組むのですか。

藤原氏: Yume Proチャレンジでは、IMSの仕組みを用いたコンセプト構築のプロセスを実践します。コンセプトを創造し仮説を立案、BMC(ビジネスモデルキャンバス)を作成します。これをお客様のところに持っていき、お客様にとって価値があるかどうかをディスカッションし、ビジネスアイデアを練り上げていくというものです。2020年度から、イノベーション塾の塾長をはじめとした「加速支援者」に伴走してもらうなど、応募後の支援体制も強化しました。


▲イノベーション塾やYume Proチャレンジでも活用されているBMC

私は、今年度よりCINO(イノベーション責任者)に就任しましたが、シリコンバレーなどで言われるCINOの重要な活動の一つが、全社からビジネスアイデアを収集・評価し、優れたアイデアには予算をつけて、社会に繋ぐことです。

社会に繋ぐというのは、お客様に提案をしたり、事業化に向けた活動をしたりということですが、それらの活動を先頭に立って牽引していくのがCINOの役割。つまり、Yume Proチャレンジの活動そのものなんですね。ですから、Yume Proチャレンジはさらに強化していく方針です。

――応募数が伸びたことで、ビジネスアイデアの「質」にも変化はあったのでしょうか。

前野氏: 年々レベルが向上していると感じます。とりわけ2020年度は、明確にレベルが上がりました。加速支援者によるサポートが大きく影響しました。Yume Proチャレンジは、一次審査で10件にまで絞り込むのですが、2回目の開催までは10件中、筋のいいものが2~3件程度でした。しかし3回目は10件すべて筋のいいものが揃っていたので、こうした点からも質の向上を実感しています。

藤原氏: 加速支援者が伴走することで、解像度が上がるということだと思います。また、BMCを仮説の絵と共にお客様に説明し、ご意見を聞いてくることで、より事業化に近いアイデアが生まれてきていると感じています。


「技術オリエンテッド」から「デザインオリエンテッド」へ

――イノベーション塾やYume Proチャレンジが、「普段の仕事」に影響を与えているという手ごたえは?

前野氏: 全社に対しては、Yume Proチャレンジがイノベーション文化を浸透させ、Yume Proを実践するための動機付けツールとして上手く機能していると思います。今回のYume Proチャレンジでは、非常に幅広い部門からの応募があり、それらに対して加速支援者が、まさに実践で教育を施し、より強く浸透させています。

一方、我々の所属するイノベーション推進センター内では、これまでもIMSを試行してきましたが、研究者たちにもBMCを描くよう促しています。技術トレンドの延長線でただ漠然と研究開発を行うのではなく、事業的な成果を真剣に考えたうえで研究開発に取り組まなければ、成功確率は上がらないからです。

事業的な成果を目指すための一つのツールとして、BMCは非常に有効だと思っています。出口も見えますし、「自分たちに足りない部分をどうパートナーで補完すれば、ビジネスが成立するのか」を含めた全体感を理解できます。

――たしかに、BMCの作成から始めると、事業化という出口に向かって最短コースで、研究開発を進められそうです。

前野氏: はい。しかしそうはいっても、研究開発は時間を要するものです。1年で終わるものもあれば、3年程度を見込まないといけないものもある。その間、社会の状況は刻一刻と変化していきますから、社会情勢に合わせて、イノベーションの試行錯誤を許容しながら、進めていくことが重要だと思います。

たとえば、1年目に描いたBMCと3年後のBMCは、全く異なるものであってもいいと思います。しっかりと世の中の変化やお客様のニーズの変化を把握し、硬直的に進めるのではなく、時代を見つめ直すと同時にBMCも見つめ直す――そんな風に自分たちの目指す方向に向かって、能動的に研究開発が行えるようになってきているのではないかと思います。

――今のお話しを受けて、藤原さんはどうお感じですか。

藤原氏: OKIのイノベーション・マネジメントシステム(IMS)は、「デザイン思考(※)」そのものです。社会課題やお客様の困りごとを解決できるものでなければ、当然、お客様はお金を払ってくれません。ですから、着手する段階でそういったことを徹底的に考える。そうすると、自ずと研究の目的も明確になりますし、事業化へのスピードも上がります。

今年の4月、私が執行役員に就任した際、「デザインオリエンテッドを目指す」という話をしました。OKIといえば技術が強みなので、「技術オリエンテッドな会社」と世の中からは言われてきましたが、技術の強みを持ちながら、デザインオリエンテッドに変えていかないと、提案型企業への変革はできないと思っています。「技術の目的は何なのか」、出口をしっかり分かったうえで研究開発をする。そうすることで、研究者のモチベーションも上がってくると考えています。

※デザイン思考(Design thinking)とは、課題や困りごとをユーザー視点で考え、仮説の立案・検証を行い、プロダクトやサービスに落とし込む考え方のこと。

――「研究者のモチベーション」というお話に対して、前野さんはどうお考えですか。

前野氏: そうですね、研究開発はお客様の色々な要望を漫然と聞いているだけでは、永遠に開発が終わらず成果も出せません。やはり、お客様としっかり対話し、重要で普遍的な課題を見つけることが重要です。

デザイン思考は、徹底的な顧客理解のプロセスだと捉えていますが、「お客様にとって何が重要か」「重要なことに対して何を解決すればいいのか」「それがどういう価値を生むのか」をしっかり見つめる。そこに対して目標を定め、マイルストーンを設定して、アウトプットを出す。それをもとに、OKIのプロダクトが生まれ、事業として社外に出ていき、世の中の皆さんに喜んでもらえる――こういったことができてこそ、研究者のモチベーションが高まるのではないかと考えています。

事業部門の皆さんは、事業化の出口を実感しやすいと思いますが、研究開発部門は事業化という「出口」が見えづらい。事業化できる確率も100%ではないので、事業に基づくモチベーションの維持が難しいのは事実です。しかし、徹底的に顧客理解を深め、事業部門と一体となり最後まで取り組む姿勢で臨むことで、成功確率は高められるはずですし、研究者のモチベーションアップにも繋げられると思いますね。

――研究者にも「お客様との対話」が大事だと。

前野氏: はい。対話をしながら課題を解決するという視点を持つことで、研究者の視野が広がりますし、視野が広がれば「T型人材(※)」へと成長できます。さらにひとつの分野だけではなく、第二、第三の専門性を持った研究者が増えてくると、OKIの人材開発という面においても、大きな効果を発揮するのではないでしょうか。

OKIは技術に強みを持つ会社ですが、それはすなわち「技術力のある人材層の厚み」です。それをさらに高めていけるのが、顧客理解でありお客様との対話だと思います。


※T型人材とは、特定の領域において高い専門性を持ちながら、その他の領域についても幅広い知見を持つ人材のこと。「I型人材」(ひとつの領域を極めたスペシャリスト)と「-型人材」(特定の領域はないものの幅広い領域に長けたゼネラリスト)を組み合わせた人材を指す。

ニューノーマル時代に求められるイノベーションとは?

――現在、コロナ禍で経済・社会が劇的に変化していますが、ニューノーマル時代において、OKIはどのように強みを発揮していくのか。それぞれの見解をお聞きしたいです。

藤原氏: OKIはこれまで、社会インフラにおける「現場の課題解決」をやってきた会社であり、この強みは今後も変わりません。

コロナによる感染症拡大は社会的な観点で見ると大変な事態ですが、ビジネスの観点ではチャンスだと思っています。さらにコロナ禍で、毎日会社に行くといった常識が覆り、郊外の生活圏にいながら働くことが当たり前になりつつあります。そうすると、社会は「都心崇拝型」から「分散型」へと変わっていくでしょう。それに伴い、スマートシティの考え方も変わってくるはずです。こうした分散型のスマートシティにおいて、スマートフォンだけでは得られないデータを含めて活用し、現場の課題を解決、支援していくことが、「社会の大丈夫をつくっていく。」というOKIのメッセージにつながります。

具体的には、「ネットワーク技術」「センシング技術」「オンライン24時間保守」といったリアルな世界での強みを活用して、ニューノーマルに向けた、人手不足、非対面・非接触といった社会課題解決に向けては、24時間働き続けるロボットを活用した「高度遠隔監視ソリューション」を実用化に向けて開発中です。

また、我々は「音」のセンシングにも長けていますから、遠隔でのオンライン会議や教育現場での授業など、コミュニケーションおいても、雑音を排除するといった技術も保有しています。このように、語りはじめたらキリがないぐらい、ニューノーマルで活用できるOKIの技術はたくさんあります。そういった観点でも、中長期的にはたくさんのチャンスがあると考えています。

――CEATECでお披露目された「AIエッジロボット」は、まさに遠隔操作を実現するものですが、事業化の目途は?

前野氏: CEATECでお見せしたのはプロトタイプでしたが、今、具体的なお客様と共創活動を進めています。今年度内にお客様のフィールドにおいて、価値を提供できる状態で動き続けるものを実現する予定です。OKIの事業品質には達しないかもしれませんが、「これであれば価値を提供できる」というものを、この1年で完成させます。


▲Yume Proチャレンジから生まれたAIエッジロボット。事業化に向けて開発が進められている。

――今年1月に発表された、2030年までの「イノベーション戦略」の中で、具体的な「ロードマップ」も公表されました。

藤原氏: このロードマップ策定に向けた動きは、昨年の3月に開始しました。中期経営計画と並行してイノベーション戦略の作成も進めたわけですが、コロナ禍の視点が抜けると時代にそぐわないものになってしまいます。

そこで、「アフターコロナイノベーションプロジェクト」を立ち上げ、コロナ禍による社会・経済の変化を徹底的に調査したんです。世の中に起こっているファクトを何千件と調べて、その中から「OKIのチャンスは何か」を抽出しました。それらを盛り込んで策定したのが、1月に発表したイノベーション戦略です。


――前野さんは、ニューノーマル時代において、OKIの技術が活用できる可能性をどうお考えですか。

前野氏: OKIは通信やITの会社で、それがまさにコロナ禍での社会課題解決手段として期待されています。OKIはこれまで、様々な遠隔コミュニケーションに関わる研究開発を行ってきました。たとえば、ユーザーインターフェースの技術や、臨場感のあるコミュニケーション、AR・VRを使った色々なツールなども研究してきたんです。

しかしコロナ前だと、「あったらいいけれど、ビジネス的な価値は分かりづらいね」という風に、ビジネスへと昇華しきれずにいました。それがコロナ禍で一気に、喉から手が出るような勢いで求められています。

コロナ禍で皆さん、テレワークをするようになって、様々な気づきを得ていると思います。「今までなぜ、毎日会社に行っていたんだろう」だとか「この方法でいいのではないか」といった気づきです。コロナ禍は感染症という意味ではやく収束してほしいと思いますが、収束した後も皆さんが「効率的で便利だ」と気づいたものは継続していくでしょう。

――おっしゃる通りですね。

前野氏: 「アフターコロナイノベーションプロジェクト」で、数多くのファクトを収集・分析しましたが、ソフト面とハード面において様々な変化が見られました。ソフト面では、「会社に行かなければならない」といった決まったルールや意識が、ガラリと変化しました。リモートに対する効率性への気づきも、多くの場面に広がりました。

一方でハード面では、社会への投資先が変化しています。それに伴い、今後、起きる技術革新のフィールドも変わってきています。そして、それらの技術に基づき創られる未来の社会の形も変わってくるだろうと思います。

そういったところを議論し、2030年までのロードマップを策定しました。先ほど話に出た通り、OKIにとって大きなチャンスとなる部分も多分にあります。それらの分野にシフトし、投資・育成を行い、社会の課題解決にしっかりと貢献していく。これこそが、今後、OKIの取り組んでいくべきことだと思いますね。

取材後記

「全員参加型のイノベーション」という方針を打ち出したOKI。その舵取りを担うお二人の言葉からは、変革に向けた強い意志を感じ取ることができた。属人的なイノベーション創出とはまた違った、全社巻き込み型のイノベーション創出。この斬新な取り組みが、どう会社を変えていくのか。OKIから生まれたイノベーションを興す“仕組み”が、今後、イノベーション創出に本腰を入れる多くの企業にとって、ヒントやモデルになるのではないだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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  • 富田 直

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