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【住友生命×Mellow】共創の舞台裏――日本初 「インシュアランス・モビリティ」で、新たな風を巻き起こす。

【住友生命×Mellow】共創の舞台裏――日本初 「インシュアランス・モビリティ」で、新たな風を巻き起こす。

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保守的なイメージを抱きがちな保険業界。しかし、新たな風が吹き始めている。それを牽引するのが、業界のトップランナーである住友生命保険相互会社(以下、住友生命)だ。

同社は2019年4月に、「新規ビジネス企画部」を設置し、ベンチャーとの共創によるオープンイノベーションに力を入れている。立ち上げから2年を待たずして、220社以上と共創に向けたミーティングを実施し、そのなかから現在18社と共創の検討をすすめており、4件については具体的な実証実験(準備段階含む)に、2社と事業化を検討しているという。

本記事で紹介するのは、その中のひとつ。住友生命がモビリティビジネス・プラットフォームを提供する株式会社Mellowとともに、2021年2月から実証実験を開始する「インシュアランス・モビリティ(移動型保険アンテナショップ)」(※)についてだ。本プロジェクトをリードする住友生命の藤本宏樹氏と、Mellowの森口拓也氏に、共創の舞台裏について詳しく話を聞いた。

※プレスリリース:「住友生命とMellowが業務提携しお客さまとの新しい出会いを創出。業界初の「インシュアランスモビリティ」始動」


■住友生命保険相互会社 執行役員 新規ビジネス企画部長 藤本宏樹氏

1988年、住友生命保険相互会社に入社。2005年より秘書室長、2007年より経営総務室長を務める。2011年からは新ブランド戦略立ち上げを担当。2017年には担当したテレビCMで「ACCグランプリ」を受賞。2019年4月より新規ビジネス企画部にてオープンイノベーションを推進。2020年4月より執行役員に就任。


■株式会社Mellow 共同代表 森口拓也氏

2013年、早稲田大学在学中に起業。100万人以上が使うチャットアプリを複数開発し、2014年に同社を上場企業に売却。その後、企業のデータ分析基盤構築など多くのプロジェクトに従事。2016年、株式会社Mellowの創業メンバーとして参画し、フードトラックと空きスペースをマッチングするプラットフォーム「TLUNCH(トランチ)」を展開。18年より現職。

日本初 「インシュアランス・モビリティ」とは

――2021年2月から始まる「インシュアランス・モビリティ」の実証実験について、具体的な取り組みの中身を教えてください。

住友生命・藤本氏: 住友生命グループの保険ショップ「ほけん百花」と連携して、移動販売車に保険ショップの機能をのせるというものです。言わば「移動型保険アンテナショップ」ですね。保険ショップの全機能をのせることはできませんので、移動販売車でお客さまと接点をつくり、店舗へと送客するモデルで検証を行います。場所は品川駅東口にある品川インターシティから始め、都心にあるオフィスビルや郊外の大型商業施設などへと広げていく予定です。

――「インシュアランス・モビリティ」を形にするにあたり、もっとも意識した点は?

Mellow・森口氏: 今回の実証実験は、ビジネスとして成立するかを検証することが目的です。準備を進める上でもっとも意識したことは、この取り組みが「ビジネスモデルの立証のための検証になっているかどうか」です。

なので、最初に「保険ショップのPL(損益計算書)」を見せてほしいと伝えました。損益ラインを具体的に把握したうえで、設計したかったからです。今回、店舗へ送客するビジネスモデルを検証しますが、「どのラインを超えれば投資を回収できるのか」までを考えて構築しました。

住友生命・藤本氏: 出先(移動販売車)から店舗へ送客するモデルにチャレンジするのは、今回がおそらく日本初。Mellowさんの既存ビジネスも、その場で商品を提供するモデルですから。外部で接点を持って店舗に誘導するモデルを成功させるためにはどうすべきか、かなり時間をかけて深掘りしましたね。


▲移動販売車では、ヘルステックのツールも活用した健康増進関連のイベントも実施する。移動販売車を「ひとつの実験の場」として機能させていく。

ミレニアル世代以降が、保険との接点を持たなくなってきたという課題感から始まった。

――そもそも御社は、どのような方針や課題から、パートナー企業を探されていたのでしょうか。オープンイノベーションの取り組みについても、お伺いしたいです。

住友生命・藤本氏: もともと住友生命はベンチャースピリッツの強い会社で、これまでも保険のイメージを刷新する健康増進型保険「住友生命Vitality(バイタリティ)」など、会社をあげてイノベーションを推進しています。この流れを更に加速するために2019年4月に「新規ビジネス企画部」が発足しました。この部署は、新規事業開発を目的とした組織で、オープンイノベーションに取り組んでいます。

オープンイノベーションには、さまざまな取り組み方がありますが、私たちはアクセラレーションプログラムやピッチ大会などの「イベント型」よりも、できるだけ足を運び、しっかりとビジネスの話をする地道な取組みを重視していて、「ひらめ筋型オープンイノベーション」と自称しています。これまで220社以上と共創に向けたミーティングを実施し、18社と共創の検討を進めており、4件については具体的な実証実験(準備段階含む)に、2社と事業化を検討しています。

取り組む分野は、以下の図の通り4象限に分けて考えています。

とくに注力している分野が右側です。背景には、昨今企業のセキュリティ強化に伴って、営業職員がオフィスに入りずらくなっていることなどもあって、ミレニアル世代以降が、保険と接点を持てなくなってきたという課題があります。この世代とどうコンタクトをとって、保険の価値を体感していただくかは、私たちの掲げる大きなテーマのひとつです。そこで、「保険が街に出かけていく」というコンセプトで、こちらから接点を持つようにしたいという背景から今回の共創に至りました。

【オープンイノベーションの領域】


「ランチ」以外で、移動販売車にのせて成立するモデルを模索

――次に、Mellowの森口さんにお聞きします。御社は、どのような方針や課題から、パートナー企業を探されていたのでしょうか。

Mellow・森口氏: 私たちのビジネスモデルからお話すると、不動産デベロッパーにアプローチをして、ビルの空地を契約させていただき、そこにフードトラック(移動販売車)を配車します。日替わりでサービスを組み、空地周辺のお客さまにサービスを提供するというモデルです。

他社連携の仕方は大きく2種類に分かれます。1つ目は、空地をお持ちの企業との連携で、大小問わず土地を持つ不動産デベロッパーや地権者が対象です。2つ目は、移動販売車にのせるサービス提供者との連携です。こちらのサービサーサイドについては、どこと組むべきかまだ手探り状態です。

モビリティにおけるビジネスには、「時間」「場所」「コンテンツ」「オペレーション」などの変数があり、全部が噛みあえば利益が出るし、噛みあわなければ利益が出ません。その中で、現在成立しているモデルは「ランチ」のみです。

――「ランチ」以外で、移動販売車にのせてビジネスとして成立する、新しいサービスを探している段階だと。

Mellow・森口氏: はい。新しいサービスについては、投資する前に「ビジネスとして成立するか」を実証する必要があります。そのために、リスクをとったトライをしていくわけですが、とれるリスクのサイズが大きい方がいい。

そう考えると、資本力のある大企業と連携した方がうまくいくはずです。ここ数年で、大企業はリスクに対する許容値を広げつつあるので、私たちはそれをポジティブに捉え、大企業との連携を考えるようになりました。


双方の思惑が合致し、新たなビジネスの共創へ

――見込み顧客との接点を増やしたい住友生命さんと、移動販売車にのせる新たなサービスを模索するMellowさんと、それぞれの思惑がある中で、両者はいつ、どのように出会われたのですか。

住友生命・藤本氏: 2018年の冬頃、ICC(Industry Co-Creation)のイベントで森口さんのピッチを聞きました。ピッチの中で、「ランチ以外のサービスを検討している」との説明だったので、その後の懇親会で「保険はどう?」と聞いてみたんです。

森口さんは肯定的な反応で、「人と人との関係性の構築が大事で、店主さんとお客さまのコミュニケーションが深まると売れる」とおっしゃっていました。それを聞いて、保険と共通項が多いなと感じたんです。見込み顧客との接点が減っている課題がありましたから、移動販売車で街の中に保険が出ていくアイデアはおもしろいと思い、本格的に検討を始めました。

――森口さんは、藤本さんと出会う前、移動販売車にのせるサービスとして「保険」を検討したことはありましたか。

Mellow・森口氏: 保険も考えてはいました。理由はいくつかありますが、ひとつはオフィスビルの空地を昼だけしか使えていないことに課題感があり、時間を拡張したいと思っていたからです。「夜の飲み」や「昼食後のおやつ」など、ランチと同じ飲食領域に広げる手はあります。しかし、もっと集客性質の異なるサービス、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の観点で息の長いサービスにトライしたいと考えていました。

そんな中で、街中を歩いていると、駅近に保険ショップがたくさんありますよね。駅近は賃料が高いはずですが、それでもビジネスとして成り立っている。私たちのビジネスの地価・地代の金額感を考えると、保険は検証してみる価値はあるだろうなと。

正直、保険ビジネスは経験がないから、集客の方法も分からない。保険会社の人ってイノベーションに興味なさそうだしな…と、保険の業界イメージから、積極的に進められずにいたんです。

――そんな時に出会ったのが、藤本さんだったわけですね。

Mellow・森口氏: そうです。藤本さんは大企業の方ですが、大企業っぽくないパーソナリティをお持ちです。カンファレンスで話してみて、一緒に進めやすそうだと感じました。

私は大企業連携がうまくいくかどうかの鍵を握っているのは、一緒にプロジェクトを進める担当者だと思っています。どんなに企業体質が硬直していても、推進力のある人に出会えたら進みますから。


▲新規ビジネス企画部のユニフォームともなっているパーカー。

――2018年冬頃の出会いから、準備期間は約1年。どのようなプロセスで、今年2月からスタートする実証実験に至ったのでしょうか。

住友生命・藤本氏: 今回、私たちがやろうとしていることは、かなり突飛な取り組みなので、最初に森口さんに当社の役員会に出てもらって、プレゼンをしてもらいました。すると、「おもしろいじゃん」と、とてもポジティブな反応で、想像以上に盛り上がりました。スタートアップの方に役員会に来ていただくのは、今回が初めてだったんですけどね。

Mellow・森口氏: とても前向きに聞いていただけました。このモデルは、叩こうと思えばいくらでも叩けます。でも、そうはならなかった。役員会があれだけポジティブな雰囲気になったことから、住友生命さんのカルチャーというか、「組織を変えていくぞ」というトップのコミットを感じましたね。

住友生命・藤本氏: 役員会で承認を得た後は、具体的なオペレーションについてディスカッションをしました。「車はどうするか」「説明役のスタッフはどうするか」「保険ショップのどの機能を車にのせるか」などです。保険専用の車両がないので、新たに車両の製造を行いましたし、数カ月かけてスタッフの教育も実施し、今回の実証実験を迎えました。


――今回の実証実験の結果をふまえ、その後、どのように展開をしていく予定ですか。

住友生命・藤本氏: 実証実験で終わりではなく、実際のビジネスにしないと意味がないと考えています。やってみることで「成功のポイント」が見えてくるはずなので、それをいかにビジネスに落としていくのかを一緒に考えたいですね。

スタートアップは経営のスピードが速いので、実験の結果をふまえて、Mellowさんのビジネスモデルは進化していくでしょう。私たちも、それとともに進化していきたいです。加えて、今回は「リアルでの接点」を創出するものですが、そこにデジタルをどう絡ませるかについても検討しています。掛け算でビジネスを拡大していきたいですね。

Mellow・森口氏: 今回、仮説の問いがたくさんあります。「店舗機能をどこまで切り離して車にのせるべきか」「移動販売車にのせた場合、どの場所、どの時間帯、どのような見せ方で訴求すべきか」などです。これらを色んな組合せで検証してみて、結果を一つ一つ紐解き、次のアクションにつなげていきたいですね。

粘り強く続けて、5年後にようやくビジネスになるという可能性もあると思います。実証として成り立つところまで、取り組みを継続したいと思っています。



取材後記

本プロジェクト以外にも、住友生命では検討段階や準備段階にある共創プロジェクトが複数あるという。また、2020年5月から社内インキュベーション制度の「スミセイInnovation Challenge」を開始し、同年11月20日にCVC「SUMISEI INNOVATION FUND」を設立する等、新たな挑戦を続けている。保険会社の取り組むオープンイノベーションから、どんな新たなサービスが生まれるのか。今後も注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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  • 中 和都

    中 和都

    • 合同会社Potato
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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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