Spectee×日本気象協会×福井県 | AIによる「路面状態判別技術」の実証実験を福井で開始
株式会社Spectee(スペクティ)と一般財団法人 日本気象協会、および福井県は、2020年12月~2021年8月にかけて、道路に設置されたカメラより得られた画像から、AIにより路面状態(※1)をリアルタイムに判別する実証実験を行う。リアルタイムに路面の凍結や積雪状態を判別することで、通行の安全や除雪作業・凍結防止剤散布作業の実施判断、作業効率の向上を目指すという。
※1: 道路の路面は降水や降雪の有無、気温によって、乾燥、湿潤、シャーベット、凍結、積雪等の状態に変化する。この路面状態によって路面とタイヤのすべり摩擦係数が異なる。特に、凍結や積雪ではすべり摩擦係数が小さくなる(道路がすべりやすくなる)ため、凍結防止剤の散布や除雪作業が必要だ。したがって、路面状態を適切かつリアルタイムに把握することは、安全・安心な道路交通を確保するうえで極めて重要な情報なのである。
実証実験を行う背景
近年、冬期の豪雪や吹雪による雪害や大規模なスタックが発生したり、普段は雪の降らない地域でも豪雪災害に見舞われたり、毎年のように雪害が発生している。特に、降雪や気温低下にともなう積雪路面や凍結路面の発生は、車両の事故やスタックを引き起こす誘因であり、道路管理において大きな課題とされてきた。福井県では平成30年2月豪雪において、立ち往生車の発生により、国道8号に約1,500台もの車両が長時間にわたり滞留し、県民生活に大きな支障をもたらした。
雪害対策としては、冬季の防災情報に対する計測機器は高額であったり、技術的に開発途上であったりなどの理由から、これまでは人の目に頼らざるをえないのが実情だった。また、計測機器と比較して安価な路面状況確認カメラやライブカメラの設置が、道路管理者などによって進められてきた。
このような状況の中、日本気象協会とスペクティは、2019年からカメラ映像に着目し、最新のAI技術を駆使した冬季の各種防災情報の取得とリアルタイム提供サービスの開発を共同で実施してきた。この共同技術開発をもとに、日本気象協会とスペクティが共同開発したAIによる「路面状態判別技術」を福井県内にある路面状況確認カメラに応用し、精度検証を目的とした実証実験を行う。
今までは計測機器が設置されている箇所の情報しか得られなかったが、広範囲に設置されたカメラ画像を用いてAIで判定することで、路面状態の面的な分布が得られるため、より網羅的な実況把握が可能になる。
日本気象協会とスペクティは、本実証実験により詳細な路面状態をAIでリアルタイムに把握することを可能にし、福井県のみならず全国に展開して道路管理者や自治体など、道路管理や防災事業に関わる事業体での適切な道路管理や通行、自動運転の推進に役立てることを目指すという。
担当者のコメント
■一般財団法人 日本気象協会 常務理事 事業本部長 辻󠄀本浩史氏
冬期における道路上の積雪や凍結の情報は、道路の安全通行や道路管理において重要な情報ですが、従来、高額な気象計器や人の目による監視で路面状態の把握を行ってきました。今回の実証実験では、日本気象協会とSpecteeが共同開発したAIによる路面状態判別技術を福井県の道路管理に適用し技術の有効性を検証します。自動かつリアルタイムに路面状態を判別するため、積雪寒冷地の効率的な除雪作業や凍結防止剤散布作業、また日本気象協会の予測情報の高度化に役立てたいと思います。
■株式会社Spectee 代表取締役 村上建治郎氏
降雪時の道路状態の判定は定点に設置された計測器による観測だけでは限界がありました。また近年の激しい気象変化には、よりリアルタイムなデータをもとに迅速な初動対応が必要になっており、今回のカメラを使ったAIによる路面状態の自動判定は、初動対応に必要な網羅的なデータを取得するのに役立つとともにMaaS技術への応用が期待されます。
■福井県 土木部長 小川俊昭氏
福井県は大量の降雪に見舞われる豪雪地帯であり、平成30年2月の豪雪の際には、北陸自動車道や中部縦貫自動車道が通行止めとなり、国道8号では最大で約 1,500 台の車両が長期間に渡り滞留したほか、県道においても除雪作業に膨大な時間を要しました。このたび、日本気象協会とSpecteeが開発した路面状態判別技術を本県で共同実証するとともに、その結果を踏まえて、県の行う凍結防止剤の散布や、除雪作業の効率化につながるような手法を検討していきたいと考えています。
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