Arm、半導体関連スタートアップ企業を支援する新プログラムを発表
英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)は、好評を博しているArm Flexible Accessプログラムを発展させた、「Arm® Flexible Access for Startups」の提供開始を発表した。この新たな取り組みは、初期段階の半導体関連スタートアップ企業を対象としたもので、業界をリードするArmの膨大なIPへのアクセスを無償提供すると同時に、グローバルなサポートとトレーニングのリソースも提供する。これによりスタートアップ企業は、半導体の商用生産とビジネス拡大への道のりを歩み始めることが可能となるという。
発表の概要
●新プログラム「Arm Flexible Access for Startups」の提供により、世界で定評のある広範なArm IP、各種ツール、トレーニングを無償提供し、半導体設計における実験や評価、試作をフルサポート
●新プログラムとArmエコシステムを活用することで、リスクを抑えつつ、市場投入までの期間を6~12カ月短縮可能に
●半導体スタートアップを専門とするインキュベーター企業であるSilicon Catalyst社と協業
Armのオートモーティブ/IoT事業部門シニア・バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるディプティ・ヴァチャーニ(Dipti Vachani)氏は、次のように述べている。「今日の厳しいビジネス環境では、イノベーションをいかに実現できるかが成否を分ける鍵となります。素晴らしいアイデアを持つスタートアップ企業にとって今まで以上に必要なのは、成功と規模の拡大に向けた、最もスピーディかつ信頼できる道のりです。Arm Flexible Access for Startupsは、半導体分野への新規参入を目指す企業にとって、実用に向けた試作を行う上での迅速かつコスト効率に優れた手段となり、今後の資金調達に関して投資家からの信頼を獲得する上でも有効です」
Arm Flexible Access for Startupsにより、初期段階の半導体スタートアップは広範なArm IPに無償でアクセスし、製品開発サイクル全体にわたってさまざまなArmソリューションを活用しながら、半導体設計における実験や評価、試作を行えるようになるという。Armでは、最大500万ドルの資金を獲得しているスタートアップ企業を「初期段階(アーリーステージ)」と定義している。こうした基準を満たすスタートアップ企業は、Arm Cortex®-A/-R/-Mプロセッサファミリー、一部のArm Mali™ GPU、ISP、その他の基本的なSoCのビルディングブロックを含む、Armベース・プロセッサの広範なIPポートフォリオを利用できる。さらに、スタートアップ企業の社内のスキルや経験を補うものとして、半導体デバイス設計やソフトウェア開発、サポート、トレーニング、ツールなどを提供するArmの包括的なエコシステムも活用できるという。
Semico Research社によるレポートが示した新たな知見からも明らかな通り、エッジAI、自動運転車、IoTなどの分野で新たなユースケースが登場しており、新世代の半導体スタートアップの勢いが高まっている。同レポートの主な内容は以下の通り。
●2016年から2019年にかけて、調達資金は10倍に上昇。半導体スタートアップの過去5年間の調達資金は、総額13億米ドルを上回る。
●過去5年間で誕生したスタートアップ企業の3分の1以上は、自動車業界をターゲットとしており、さらに3分の1はIoTアプリケーションに関連している。
●重要な課題として、半導体スタートアップが有する小規模なエンジニアリング・チームは、SoC設計の複雑化に直面しており、多様化の進む顧客と市場からの要件に対して、可能な限り短期間で対応する必要がある。
●市場投入の時期を逸することは、成功と失敗の分岐点となる可能性がある。スピードと高いコスト効果を維持しつつ、自社製品を概念実証(PoC)段階からその先の段階へと進めるにあたって、迅速かつ低コスト、堅牢な製品開発を実現する強力なエコシステムの存在は、企業にとって大きな頼りとなる。
Arm Flexible Access for Startups導入の一環として、Armでは、半導体ソリューションの開発の迅速化を目指すスタートアップに特化したインキュベーター企業であるSilicon Catalystとの戦略的パートナーシップも発表した。Silicon Catalystの投資企業は今後、ArmのIP、EDAツール、プロトタイプ・シリコンを無償で利用でき、事業立ち上げの重要な段階におけるコストを大幅に削減できる。
Arm Flexible Accessが期待を上回る成果を達成
昨年提供開始したArm Flexible Accessは、パートナー企業が年間利用料を支払うだけで広範なテクノロジー・ポートフォリオを直ちに利用できるプログラムとして、いち早く好評を博しており、この発表は、その成果を踏まえたものとなっている。プログラムの勢いは著しく、採用企業数は40社を上回り、IoT、エッジAI、自動運転車、医療用ウェアラブル端末などの分野を網羅している。革新的な小規模企業とのパートナーシップに関しては、Armはすでに優れた実績を有している。AIチップ・ベンダーのHailo社や、ファブレス半導体企業のAtmosic社をはじめ、数百社もの顧客企業がArmテクノロジーを活用して大きな成功を収めている。今回の新プログラムは、新興の半導体スタートアップとのエンゲージメントをさらに推し進めるものという。
Armのオートモーティブ/IoT事業部門シニア・バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるディプティ・ヴァチャーニ(Dipti Vachani)氏によるブログ記事(*1)では、この新しい取り組みと、Armとスタートアップ企業とのこれまでの成功事例に関する詳細について解説している。
*1) https://www.arm.com/blogs/blueprint/arm-flexible-access-for-startups
Arm Flexible Access for Startupsの対象となるArm IPの一覧は、こちら(*2)を参照。
*2) https://www.arm.com/products/flexible-access/product
Armについて
Armのテクノロジーは、コンピューティングとデータによる革命の中心として、人々の暮らしや企業経営のあり方に変革を及ぼしている。そのエネルギー効率に優れた高度なプロセッサ設計は、1,600億個以上のチップを通してインテリジェントなコンピューティングを実現してきた。Armのテクノロジーは各種センサーからスマートフォン、スーパーコンピュータまで、さまざまな製品をセキュアにサポートしており、世界人口の70%以上に使用されている。さらに、このテクノロジーにIoTソフトウェアやデバイス管理プラットフォームを組み合わせ、顧客がコネクテッドデバイスからビジネス価値を生み出すことを可能にしている。Armは現在1,000社以上のテクノロジーパートナーとともに、チップからクラウドまで、演算が行われるあらゆる分野における設計、セキュリティ、管理を支える技術の最先端を担っている。
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