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今夏開業する「羽田の新たな街」から飛び立つ、イノベーションとは?採択チームが遂に決定!

今夏開業する「羽田の新たな街」から飛び立つ、イノベーションとは?採択チームが遂に決定!

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羽田空港国際線ターミナル近く、羽田空港跡地第1ゾーンに誕生する「HANEDA INNOVATION CITY」(以下、HICity <エイチ・アイ・シティ>)。――2020年7月3日にまち開き(先行開業)するHICityを、よりインスピレーションと賑わい溢れる場所にすべく、事業アイデアをブラッシュアップする2日間のプログラム『HANEDA INNOVATION CITY BUSINESS BUILD』(以下、HBB)が実施されている。

本プログラムは以下の3つの募集テーマを掲げ、経済産業省関東経済産業局・大田区・羽田みらい開発・eiiconが運営。実装パートナーとして大手企業を中心とした7社(鹿島建設/大和ハウス工業/京浜急行電鉄/日本空港ビルデング/エイベックス・エンタテイメント/京セラ/ソフトバンク)が協力している。

【HANEDA INNOVATION CITY BUSINESS BUILD 募集テーマ】

1.街との新たなタッチポイント創出

2.ここでしかできない賑わいを生み出す体験価値

3.先端技術を活用した新たな社会価値創造

本記事では、2日間でブラッシュアップされた事業アイデアと、そのプレゼンテーションの模様を詳しくレポートしていく。なお、今回のHBBにて選出されたアイデアは、実装パートナーとさらなるブラッシュアップを行いながら、2020年7月初旬のHICityオープンに向けて実装準備を開始する予定だ。

▲HANEDA INNOVATION CITYは、羽田空港の第3ターミナル(現:国際線ターミナル)から1駅の「天空橋駅」に直結する、延床面積約13万㎡超の大規模複合施設。

本プログラムに参加した9チームの中から、4チームの事業アイデアが採択!

1/31(金)〜2/1(土)の2日間、渋谷TECH PLAYにて実施された本プログラムに参加したのは、9チーム。2日間にわたるアイデアのブラッシュアップとプレゼンが終了し、採択チームの発表とそれぞれのチームへの講評が行われた。審査には白熱した議論が繰り広げられ、全9チーム中、4チームの採択が決定した。――それぞれの講評とともに採択された4チームの事業アイデアを紹介していく。なお、審査は以下の3つの観点から行われた。

①新規性

・アイデア自体に独創性、 新たな付加価値の創造が見られるか

②テーマとの合致度

・今回のテーマ・コンセプトとの整合性があるか

・来訪者に対して、価値を提供する観点に立っているか

③実現可能性

・実現に向けての計画性があるか(体制・資金・リソースなど)

・資格の必要性や法律的な規制を考慮しているか

【HANEDA INNOVATION CITY BUSINESS BUILD】審査員・メンター陣

■関東経済産業局 地域経済部 門田 靖氏

■大田区 臼井 正一氏

■羽田みらい開発株式会社 加藤 篤史氏・河合 慶氏

■日本空港ビルデング株式会社 志水 潤一氏

■ソフトバンク株式会社 IoTエンジニアリング本部 浅井 恭子氏

■エイベックスエンタテインメント株式会社 渡部 宏和氏

■京セラ株式会社 研究開発本部室 大崎 哲広氏

■大和ハウス工業株式会社 井上 一樹氏

■京浜急行電鉄株式会社 藤峰 裕子氏

■eiicon company 代表/founder 中村 亜由子

▲実装パートナーや運営を手がける各社の審査員が、各チームのプレゼンを真剣に評価した。

採択企業は、「株式会社GATARI」「宇都宮大学」「株式会社BONX」「株式会社Catalu JAPAN」の4社!

①株式会社GATARI 「デジタルツインの作成とセマンティックによる次世代情報インフラの整備」

「デジタルツイン(※)の作成とセマンティックによる次世代情報インフラの整備」という最先端技術を活用したプレゼンに挑んだのは、株式会社GATARI。GNSSに基づいた3次元位置情報の紐づくデータを利用してモビリティや物流への活用、決済アプリとの連携を行いユーザーの軌跡データや購入データの蓄積で空間にパーソナライズされた広告の表示も可能にする。

GATARIでは、空港を「出会いと別れの場」と捉え、デジタルツインを過去(アーカイブ)、現在(運用商法の表示、モビリティロボット、人とのコミュニケーション等)、未来(移動ルートなどのシミュレーション)の三段階で構想。

デジタルツインの上に乗るエンターテインメントのレイヤーとして日本各地でデジタルツインの作成を行い、HICityに居ながら京都や神戸の町並みを定点観測ができ、何十年分の歴史を体感できるインバウンドや旅行者向けのコンテンツも提案。デジタルツインのさらなる価値創造とユースケース開発をぜひ一緒に考えてやっていきたいという、新たな可能性を模索する前向きな姿勢が印象的なプレゼンとなった。 

※デジタルツイン…フィジカル空間の情報をIoTなどを活用してデータ収集し、サイバー空間上に同様の環境を作り出す技術

■講評

審査員からは、最新技術を使っての先進的なアイデアという新規性の高さが評価された。HICityでの運営メリットや、どういった活用方法があるかはまだまだ議論の余地があり、これからその議論をしていきたいという将来性にかけた採択である、との講評を受けた。

GATARIは「デジタルツインは新しい取り組みで前例も無く解像度も低い。この機会に解像度を高めたいという気持ちで応募したので驚きもあるが、採択されたからには役に立つ価値を作り出せるよう、世界に先駆けた展開をしていきたい」とコメントした。

②宇都宮大学 「人の混雑空間における多目的スモールモビリティ」

人の混雑空間における多目的スモールモビリティの創造をテーマにプレゼンを発表したのは、スモールモビリティを研究する宇都宮大学。HICityでのロボットによる自律移動を提案した。

サステイナブルなビジネスへの展開を目指し、5Gによる遠隔操作で自律移動の物流支援や移動営業を可能にするだけでなく、HICityで遊びながら使ってもらえる、集客力もあるモビリティを作りたいと提案。日本初となる夜間モビリティにも挑戦し、デモの開催や論文にも展開していきたいと語った。

 

■講評

審査員からは、数年前から実証実験を行っている点と、HICity内をロボットが自律移動する姿を見てみたい、ということで採択をしたという講評が寄せられた。採択を受けた宇都宮大学は、「大田区が誇るモノ作り企業とも連携しながら今後も頑張っていきたい」とコメントした。

③株式会社BONX  「日本全国遊び場化計画」

現場クルー向け音声コミュニケーションプラットフォームを提案する株式会社BONX。BONX Grip(ワイヤレスイヤフォン) + BONX for BUSINESS(VoIPアプリ)による音声AR(拡張現実)サービスを提案した。

BONX GRIPによるBotとのコミュニケーションで、音声ガイダンスによる買い物や地図案内のサポート、そして旅行手配、音声決済を実現することで、日本の玄関口となるHICityをより快適にするだけでなく、地方活性化にも一石を投じたいという力を入れたプレゼンとなった。

審査員からのイヤフォンを導入するトリガーについての質問には、サンプルの配布やブランドとのコラボレーションなどで対応していきたいと回答。「スマホを見るばかりでなく街を楽しんでもらいたい」という思いを込めた発表となった。

■講評

審査員からは、完成されたソリューションと、これからの時代に必要な先進的なハードの開発を評価した、という講評があった。

音声サービスということで、エイベックス・渡部氏からは「羽田の新しい街でどんなコンテンツを作るかが課題。一緒に考えていきたい」、ソフトバンク・浅井氏からは「多言語ソリューションの具体的なイメージがあったことと、ハードのつながりにも魅力があった。今回の座組で他のことにも挑戦していきたい」とコメントが寄せられた。

④株式会社Catalu JAPAN 「出会いから飛び立つストーリー。買いたい!行きたい!の接点 HICity」


株式会社Catalu JAPANは、製造者と店舗をつなぐプラットフォーム「カタルスペース」を提供している。大田区そして全国の製造業者が想いを込めて作った製品と、大田区に立地し全国へのアクセスポイントから近いHICityという場所を、カタルスペースを用いて繋げる。

消費者はHICityで製品と出会い、QRコードにアクセスするとECサイトから製品を購入できる。また、製品を通してそこに込められた製造者の想いと出会い、その地域へ興味や行ってみたいという思いの創出にも繋げる狙いだ。

 すでに完成・提供されているサービスということもあり、審査員からは「HICityでカタルスペースをどう展開させるのか」という質問があがった。Catalu JAPANは、「羽田は交通の要所であり、購入だけでなく周辺への移動にも繋がりやすい場所である」とした上で、「購入の導線だけでなく、移動の導線にもなるのは初の試みとなり、地方創生にも繋がる」と回答した。

■講評

審査員からは、「大田区としてHICityを考えたときに、地方創生という意味で最も実現したいものが近い。実現に向けてはまだまだ細かい相談が必要なので、大田区はもちろん、他の地方のことも知ってもらえるような仕組みにしていきたい」という講評を受けた。 

Catalu JAPANは、「メンター陣や応募企業の熱気が非常にあり、高レベルなプレゼンだったので選ばれて嬉しい。地方創生をど真ん中でやっているサービスで、地方の期待を一身に背負っているという責任感があった。選ばれてホッとしている」とコメントした。

その他のプレゼン内容は以下の通り

⑤株式会社ネッコス 「LINE1to1コンシェルジュfrom 羽田ミライちゃん」


現在、試験運用中のサービスを加速させるLINE-API開放サービスtunalio(ツナリオ)で、LINEを活用した1to1コンシェルジュサービス「羽田ミライちゃん」を提案したのは株式会社ネッコス

お土産案内、道案内、避難誘導などの防災を、AIによる自動応答で可能にするというサービスをプレゼンした。将来的には全国のショッピングモールや空港にも導入もしていきたいという意気込みを語り、属性データの蓄積で流動マーケティングにも活かせるといったビジネス面での強みも提案した。

審査員から「HICityにはオフィスも多いが、商業テナントだけでなくビジネスマンへの訴求も考えているのか?」という質問に対し、ビジネスマンには会議室への案内やアポイントメント時のサポートなどで訴求していきたいと回答した。

⑥リフリード株式会社 「HANEDA INNOVATION CITYをハブとした手ぶら観光」

空港での過ごし方を快適にする「flarii(フラリー)」というサービスをプレゼンしたのは、リフリード株式会社。旅に「手ぶら(自由)」と「贅沢」を提唱する旅行者向けシェアリングサービスだ。HICityでの手ぶら観光を提案する。

荷物を預け、施設で何か必要なものがあるときはオンラインでもオフラインでもレンタルでき、レンタルだけでなく商品の梱包や受取り、返送に至る全ての体験をパッケージ化。モノの貸し出しや返却でタッチポイントを創出し、賑わいを生み出す体験価値や先端技術を活用した新たな社会価値を創造していきたいと語った。

「拠点の増やし方やHICity以外での展開については?」という審査員からの質問には、「大手旅行会社と提携しているアセットと相談しつつ、営業で開拓していきたい」と回答した。

⑦株式会社AsMama 「世界と地元の先端産業・文化事業者コンソーシアム × 子育て・ファミリーのコミュニティを創る」

世界と地元の先端産業・文化事業コンソーシアムで、子育てファミリーのコミュニティ作りを提案したのは株式会社AsMamaだ。

HICityで文化事業とファミリーイベントを実施し、子供たちの文化体験の機会を創出。オンラインでは、地元である大田区やHICityの情報を配信・共有する。さらに、食育やモビリティといったテーマでサブコミュニティを形成し、関わる全ての企業と連携し、企業と地元ファミリーを繋ぐ役割も果たす。

質疑応答では早くも実現を見据えた質問が相次ぎ、子育てコミュニティによってどんなメリットが生まれるのか、という質問には、「交流会などで地域活性、シェアで働き方の改革や保育施設の建設も省くことができ、PRや集客にも大いに役立ちます」と回答。HICityが「コミュニティが集まるハブステーションになってほしい」という期待を込めたプレゼンとなった。

⑧ボクシーズ株式会社 「「場所のIoT」で羽田イノベーションシティを日本一の安心・安全な街に」

ボクシーズ株式会社は、『「場所のIoT」で羽田イノベーションシティを安心・安全の街へ』というプレゼンを発表。ビーコンの技術特許を所持するボクシーズ株式会社は、インダストリー4.0を支援する企業でもある。

HICityにおける「場所のIoT」では、空間付箋でタスク管理というデジタルトランスフォーメーションを提案。空間に付箋を貼りロケーションタスクを管理するという初の取り組みとなる。掃除や警備などの対応事項を紐付け、「ゴミが落ちている」「不審者がいる」と行った付箋を空間に貼り、タスク管理を行うといった仕組みだ。付箋は実際にはアプリで表示され、自動的に該当する場所とタスク内容が知らされる。

設備投資額の目安は1個あたり月500円。500個つけても月額25万円と、約1人分の人件費でタスク管理ができ、利益をあげるというよりコスト削減という観点に重きを置いた提案内容となった。

⑨ハタプロ・ロボティクス株式会社 「AIロボ×音声AR、5Gによる新情報体験「ZUKKUスポット」」


ハタプロ・ロボティクス株式会社は、AI×IoT領域で国内有数の実績を持つものづくりベンチャー企業。

同社が開発した手のひらサイズの小型ロボット「ZUKKU」に自動対応AIと分析クラウドを搭載した「ZUKKU×音声AR」を提案。最新情報の取得・配信から、説明映像に配信、言語対応機能付きでその場のQ&Aにも対応してくれる自動音声ARサービスだ。

街のあらゆる場所に設置、連携が可能で、データをクラウドに蓄積・分析することで、HICityを成長する街にしていきたい、と力強いプレゼンとなった。

実はすでに「ZUKKU」自体は、HICityに本導入されることが決まっている。さらなる進化をさせるべく、今後も様々な技術を持つパートナーと共創していきたい、と語った。

「街づくり」は、いろんな企業があってこそ成り立つ

最後に、経済産業省 関東経済産業局の門田氏が登壇し、全体講評を行った。

「今回の応募アイデア全てにチャンスがあった。採択したのは4チームだが、採択に至らなかったチームも、7月初旬の実装に間に合わないなどの条件的なものや、羽田にとどまることなく、大田区や関東経済産業局が推進する政策全般との親和性が高いという理由が多い。また、今回、オープンイノベーションで街づくりのプロジェクトを考え、いろんな企業があってこそ街は成り立つということを実感した。メンターとしてサポートしてくださった皆さんを始め、今回のプロジェクトに関わっていただいた全ての関係者の方々に本当に感謝したい。」と述べ、2日間にわたるHBBの締めの挨拶とした。

取材後記

最新技術やビジネスアイデアが集結した今回のHBB。前例も無いような先進的なアイデアだからこそ、2020年7月3日のまち開き(先行開業)に向けてのこれからが楽しみなプレゼン発表となった。「街づくりはいろんな企業あってこそ」という門田氏の全体講評通り、一つの企業ではなく、一つのアイデアに様々な企業が関わることで新たな価値が生まれる可能性を感じる内容となった。羽田という日本の玄関口から、どのようなイノベーションが生まれるのか。今後の動向にも注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:阿部仁美、撮影:加藤武俊)

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