【特集インタビュー】激変するクルマ社会でイノベーションに挑む。IDOMが共創型事業創造プログラム「Gulliver Accelerator」を始めた理由とは。(前編)
2016年7月15日に「ガリバーインターナショナル」から社名を変更した「IDOM(いどむ)」。同社は2015年7月から共創型の事業創造プログラム「Gulliver Accelerator」を開始し、コネクティッドカーや自動運転技術など、既に到来しつつある「新しいクルマ社会」において、イノベーションの創造に取り組んでいる。そして現在は、スタートアップ3社とタッグを組んだ3チームとの取り組みが進行中。そこで今回は、同プログラムを推進した北島昇氏に、前編・後編2回にわたり、オープンイノベーションの事例として話を伺った。
株式会社IDOM 執行役員 新規事業開発室長 北島 昇 Noboru Kitajima 2007年入社。人事、経営企画、広報、マーケティング改革、店舗フォーマット開発、事業投資など幅広い業務に携わる。現在、執行役員・新規事業開発室室長として、コネクティッドカー事業、C2C事業、アクセラレータープログラム、サブスクリプション事業の責任者を務める。
■「Gulliver Accelerator」の源泉は、“危機感”。
ー「Gulliver Accelerator」プログラムについて紹介していただけますか。 北島:クルマ業界においてIDOMの持つアセットを開放して、社外のベンチャー企業と一緒に新しい事業を創造しようとする取り組みです。2015年1月頃にプログラムが動き出し、7月に情報をリリース。最終的にスタートアップ3社のチームを選出し、12月には「Demo Day」を開催して、プログラムの成果を発表しました(※)。 ※Gulliver Accelerator 「クルマ社会×イノベーション」の新たな夜明け 〜3チームの事業化が決定!〜 http://221616.com/idom/news/press/20151223-17598.htmlー同プログラムを始めた背景を教えていただけますか。 北島:大きな理由としては、何よりも危機感です。クルマの売買において一定の地位を築いている当社であっても、新しい事業を始めなければ、クルマ業界で生き残っていけないという思いがありました。 ーそれほどの危機感を持つのはなぜなのでしょうか。 北島:IDOMは、旧社名のガリバーインターナショナルの時代から、既存の領域に参入して事業を作ってきたという自負があります。ということは今後、同じことが起きる可能性も十分にあるわけです。つまり、かつての私たちが行ったように、新規参入の企業に取って代わられるということです。 ー具体的には、今後クルマ業界にどういった変化が起こると考えていますか。 北島:近年では、インターネットとつながったコネクティッドカーや、自動運転といった技術が急激に発展していますよね。そこで今後、クルマに関する新しいプラットフォームが生まれるかもしれません。クルマ業界以外の企業が進出してくる可能性もあります。例えば、Amazonさんの存在も私たちにとっては脅威のひとつです。 ーそこでなぜ、社外のベンチャー企業と協力して事業を創造しようと考えたのでしょうか。 北島:将来的に考えうる事業領域は広範囲ですから、私たちのケイパビリティだけでは対応できないだろうと考えました。足りない部分は、力のある企業と一緒にやっていく必要がある。IDOMの持つアセットを活かすためにベンチャー企業と協力することにしました。
■トップ自身が率先して、イノベーションを牽引している
ー「Gulliver Accelerator」を始めるにあたって、社内ではどのような意思決定プロセスを経ましたか。 北島:私たちの場合は少し特殊かもしれません。先ほどお伝えした危機感はみんな持っていましたから、特に障壁はありませんでした。何よりも当社のトップ自身が一番危機感を持っており、率先して行動していましたから。社名変更もトップの発案によるものなのです。 ーたしかに、2016年7月15日から社名を「株式会社IDOM」に変更していますね。 北島:変革には必ず自己否定も含まれます。これから変わることと、これからも変わらないことを伝えるために社名を変更しました。実は最初、私は反対したんですよ(笑)。ですが、それくらい変わることを厭わないトップがいてくれたおかげで、新規事業創造プログラムもスピーディに進みました。 (後編へ続く ※後編は29日(木)朝 配信!※)
前編となる今回は、北島氏に「Gulliver Accelerator」プログラム誕生の背景を中心に語っていただいた。後編となる次回では、プログラムを通じて何が得られたのか、そして「オープンイノベーションに必要なもの」は何か。引き続き、北島氏にインタビューを行った。 (構成:眞田幸剛、取材・文:玉田光史郎、撮影:佐藤淳一)