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【特集インタビュー】なぜ今「オープンイノベーション」なのか。日本の大企業がイノベーションを起こせない理由とは?<前編>

【特集インタビュー】なぜ今「オープンイノベーション」なのか。日本の大企業がイノベーションを起こせない理由とは?<前編>

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IoT(モノのインターネット)が、人々の暮らしを変える新たなテクノロジートレンドとして注目を集める中、スマホで家やオフィスの鍵の開閉ができるスマートロック商品『Qrio Smart Lock』の登場に大きな期待が集まっている。 

この製品の開発・製造、販売を行うQrio株式会社は、投資育成会社WiLとソニー株式会社による合弁会社で、同社を率いるのは、サイバーエージェントで長く藤田晋社長の右腕を務めてきた西條晋一氏だ。<起業家・投資家・経営者>全ての経験を積んだ西條氏が、自ら旗手となり、大企業とのオープンイノベーションを推し進めたのはなぜか。その実情を聞く。 

 

Qrio代表取締役/WiL General Partner
西條晋一 Shinichi Saijo 
徳島県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、伊藤忠商事に入社。財務部、為替部で活躍ののち、2000年サイバーエージェントに入社。多くの新規事業立ち上げに携わり、5社以上で代表取締役社長を経験。2008年に本社取締役CCOに、2010年には米国法人の社長に就任したが、2012年に退職。2014年には、伊佐山元氏と共に、日本とシリコンバレーに拠点を置く投資育成会社WiLを設立。同年、WiLと株式会社ソニーによる合弁会社「Qrio株式会社」を設立し、社長に就任。スマートロック製品の開発・製造・販売を行う。  

■スピード感プラス「好きであること」

―Qrio株式会社(以下キュリオ)は、WiLとソニーによる合弁会社で、大企業によるオープンイノベーションの試金石としても注目を集めていますが、設立の経緯からお聞かせいただけますか? 

西條:私が所属するWiLは、数々の事業会社が出資する投資育成会社です。出資者の多くは日本の大企業ですが、長引く景気の低迷で、中核事業の不振が続き、大規模なリストラを実施してきました。多くの経営者は、「何か新しいことをやらないと先がない」ということは分かっている。 

一方で、何千億規模の既存ビジネスを動かす中で、数十億の売上が出るか出ないかという新しいビジネスに注力できないし、そもそも社内にハードウェアを作る以外の部分のノウハウがない。だったら、ちょっと外の企業と組んでみてもいいんじゃないですか? と、外部連携の提案をしたのです。   

―数ある出資企業の中で、ソニーとの連携を決めた理由は? 

西條:一つは、提案に対する反応のスピードの速さです。ソニーはちょうど、平井一夫社長直轄で、「Seed Acceleration Program(SAP)」という新規事業創出プログラムを始めたところで、新たなビジネスコンセプトの、スピーディーな事業化に積極的でした。 

フットワークが実に軽く、与えていただいた自由度も高かった。出資比率を半々ではなく、WiL側が60%、ソニー40%とすることで、事業計画はもちろん、会社の方針づくり、従業員の雇用まで全てを任せてもらっています。それと、ソニーというブランドそのものが好きだったので(笑)。   

―「好き」であることは重要ですか? 

西條:僕はこれまでのキャリアの中でも、いつも「好きであること」を重視してきました。好きだから、自分自身に情熱ややる気も沸いてきますし、それに、好きじゃないと人を巻き込めないので。人を誘うときって、情熱が伝わるものなんですよ。 

僕の世代だと、「ウォークマン」とか「ハンディーカム」、「プレイステーション」や「アイボ」、社名をもらっている「キュリオ」というロボットもそうですが、ソニーは、エンターテイメントやライフスタイルを変える製品を出しています。IoTで家電がインターネットとつながるという文脈の中で、黒物家電のソニーが挑戦を始めると面白いんじゃないかと。  

■大企業だから実現できたこと

-キュリオ設立から2年近くになりますが、これまでをどう評価をしておられますか? 

西條:描いてきたサービスとものづくりの融合はできているし、いい人材も採用できたので、あとは実績ですね。ものづくりって、思った以上に時間がかかるんですよ。スマートロックだと、結露対策や静電気対策など、色々とケアしなければならいないことが多い。言われたらわかりますが、経験が浅いので抜け漏れするわけです。   

-それをソニーの技術力で乗り越えてこられたわけですね。 

西條:技術だけではなく、部品の調達一つ取ってみても、普通のベンチャー企業では、相手にされなかったと思います。ソニーの信用と購買力があるから、小ロットでの取引が可能になり、開発のスピードを落とさなくて済む。こうした会社としての認知やつながり、人的資産も含めて、大企業の資産の大きさを感じました。   

-キュリオでの経験を通して、企業が外部連携を進める上で不可欠なものは何だと思われますか? 

西條:ソニーとの連携がうまくいった理由として、ソニーに技術的、人材的な優位性があったというだけでなく、イノベーティブな企業風土が顕在で、ベンチャーの経験を持った理解者がいたということが大きかったと思います。 

イノベーションを起こすためには、経営者がイノベーティブであるべきなんです。僕がVCとして投資の判断をする場合も経営者をみますが、経営者が環境の変化に対応できるかとか、いい人材を採用してモチベーションアップできるか、というのはとても重要になります。  


西條氏インタビューの前編は、キュリオ設立の背景と、ソニーとの具体的な連携の仕方を伺った。「好き」であるからこそ、情熱的になり、それがモチベーションになる。そして、タッグを組む相手が大企業であれど、スピードが速く、イノベーティブな風土が根付いていれば、「オープンイノベーション」によって新しい“ものづくり”に挑戦できる。それが、西條氏のインタビューから具体的な事実として得られた。 

さらに次回の後編では、「オープンイノベーション」において何が重要かを西條氏に語ってもらった。(※後編は、11月1日掲載予定です) 

<構成:眞田幸剛、取材・文:古賀亜未子(エスクリプト)、撮影:佐々木智雅>


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