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KDDI | 社内イノベーターたちが語る「IoT戦略」~デバイスから分析基盤、ビジネス創出まで~

KDDI | 社内イノベーターたちが語る「IoT戦略」~デバイスから分析基盤、ビジネス創出まで~

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KDDIは「通信とライフデザインの融合」を掲げ、通信を基軸として、生活を楽しくするライフデザイン事業を展開し、新しいユーザー体験の提供を目指している。同社ではイノベーション人財がこれまで以上に力を発揮できる風土が醸成され、強力なアントレプレナーシップを持つ人財が続々とジョインしているという。

――こうした中、多様な切り口でイノベーションを共に考えるイベント『KDDI Innovation Makers』を2018年9月から4回のシリーズで開催している。12月18日にはシリーズ最終となる「KDDIが仕掛けるIoTビジネス ~デバイスから分析基盤、ビジネス創出まで~」がTECH PLAY SHIBUYA(東京・渋谷)で開かれ、訪れた新規事業の担当者やスタートアップの経営者たちがIoTの可能性に理解を深めるとともに、活発な交流が行われた。

オープニングで、『KDDI Innovation Makers』を運営するKDDI株式会社 Innovation Makers事務局の仙石真依子氏が挨拶。「KDDIの新しい取り組みを聞き、意見交換をさせてほしい」と会場に呼びかけた。この後、IoT事業を手がける3人が、KDDIが積み重ねてきたIoTの歴史や具体的な事例を説明した。その内容を詳細にレポートしていく。

<セッション>KDDIのIoTの取り組み

まずは野口一宙氏がKDDIのIoTの取り組みの歴史に触れながら、IoTビジネスの概要を説明した。野口氏は「KDDIは実はかなり以前からIoTに携わっている」と言う。「M2M(マシーントゥマシーン)と言われていた1998年に端末を世に送り出している」と語った。

▲KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 サービス企画1グループリーダー 野口一宙氏

2000年にKDD(現:KDDI)に入社。SMS(Cメール)や動画配信等auの商品・サービス企画を担当。2008年より電子書籍やフォトフレーム等コンシューマー向けIoT端末の企画開発に従事。2011年よりソリューション事業本部に異動後、2015年よりグループリーダーとして法人向けIoTの中期戦略・サービス基盤企画を担当。

◆2001年はGPSを使った、見守り端末の先駆けとなる製品を発表

2001年になると、セキュリティー大手のセコム株式会社とIoTの見守り端末の先駆けとなる、トラッキング技術を応用した製品を共同開発し、世に送り出した。「ココセコム」と名付けられた同端末は、初年度に13万台が売れるヒットとなった。また、この間、2002年にはトヨタ自動車とカーナビに最新のニュースなどを届けるG-BOOKを発表。

このほか、電力量を通信で上げる電力スマートメーターを全国各地に導入するなどしている。2016年からは「IoT」の名称も使用するようになり、ますます本格的に事業を推進するようになった。このようにKDDIでは約20年にわたり、IoT分野で実績を積んでいる。

◆約4兆円に上るとされるIoTの市場

IoT市場は今後、大きな成長が期待され、2023年には4兆円市場になる調査結果もあるという。ソフトウェア、サーバー・クラウド、回線管理、デバイスの各領域での成長率は20%以上と予測されるとのことだ。一方、通信領域の成長率は10%で、野口氏は「通信会社としては悩ましいところでもあるが、他の領域が伸びていることが重要」と強調した。

また、日本企業のIoTへの期待度は高いが反面、不安も多く特に「どの分野から手をつけていいかわからない」との声が多くある。野口氏は「データ収集、通信、分析などすべて自社を行わねばならないと捉え、戸惑いがあるのではないか。しかし、そうした必要はなく、他社に任せられる部分は任すこともできるし、当社であればすべてを一貫して対応できる」と伝えた。

◆通信規格の進化

野口氏はソフトウェアやサーバー・クラウドなどについては他の二人より説明があるとし、ここでは通信に絞りIoT規格の進化を解説した。現状、通信は高速・大容量に向かっているが、高コストで消費電力も大きい。一方でIoTは大容量である必要はなく、むしろ低コスト、省電力、広いエリアの通信が好まれる。

そこで出てきたのは、LPWA(ローパワーワイドエリア)のIoT向けの通信規格で、電池でも動き、端末は低コストだ。なお、LPWAには複数種類あり、KDDIなど携帯電話会社の周波数を利用する、免許が必要なセルラーと呼ばれるもの、免許を必要としない周波数、LoRa、SIGFOX、このほか、LTEのインフラが使えるLTE-Mがある。KDDIは顧客の要望にあわせいずれの種類も使用可能だ。

◆スタートアップ、ソラコムとの連携

KDDIは、通信プラットフォームを提供し、IoT領域のスタートアップ、ソラコムを子会社化した。この背景を「IoTのすそ野が広がった際には、時代のニーズに対応するためスタートアップの連携は欠かせない」と述べた。同社はAWSのIoT機能が使える、LTE-M のデバイスを出しているという。デバイスはボタン式で、「ボタンにどのような意味、機能を持たせるかは、ユーザーが決めることができる」とのことだ。

◆IoTビジネスの全体感

IoTの活用の仕方について、日米の比較が紹介された。野口氏によれば、日本はコスト削減を目的に利用、対してアメリカはビジネスモデルの変革を目指すことが多いという。現状、アメリカの方が攻めの姿勢の傾向があるが、今後日本でもビジネスモデル変革への活用が活発化されると見通す。

例えば、自転車と通信がつながると、フィットネス、保険、メンテナンス、ゲーミフィケーションなどとの連動が考えられ、これまで接点がなかった業界からの収入を視野に入れることができる。だからこそ、一社のみでサービスの提供が難しくなり、KDDIではデジタルゲートと呼ばれる共創の場を作っている。

<セッション>パートナー様とのIoTビジネス創出事例

続いて、武内康知氏が登壇し、実際に行われたプロジェクトを紹介した。

▲ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 サービス企画3グループリーダー 武内康知氏

1998年SIベンダー入社。一次代理店として海外ベンダー機器の輸入販売におけるマーケティング、営業、SE業務に従事。2005年パワードコム(現KDDI)入社。法人向けのSI事業において営業、SEを担務。途中2009年より2年間の東京電力出向で、EVやHEMS、スマートメーターの企画開発に従事し、2017年より現部門にてIoTを中心としたビジネスIT、特に上位レイヤのサービス企画を担当。

◆コーポレートITからビジネスITへの変遷

武内氏はKDDIの携帯電話のビジネスについて触れ、以前は端末を使ってもらうことが中心だったが、近年は顧客の課題解決を目指し、事業用に携帯電話を提案することが増えてきたと、「コーポレートITからビジネスITへの変遷」を伝えた。この結果、顧客の持つ課題に知見が深まり、課題解決に向けた取り組みが盛んになっている。

◆共創事例/機械の安定稼働

故障発生のメカニズムは一定の流れと法則がある。具体的には、負荷抵抗、負荷電力、熱、異音などの発生があり、これらをどのタイミングで認知するかが重要になる。KDDIでは、機械の動きなどを複数のセンサーで検知し、クラウドでつないでデータを分析。この際、センサーに関する高い技術力が必須となるため、パートナー企業との協業でプロジェクトを推進している。

また、データ分析については、アクセンチュアと合弁で設立した、データアナリティクスを手がけるARISE analytics (アライズ アナリティクス)が行っている。このように一気通貫でサービスを提供し、一連のサービスをパッケージ化していると話す。クライアントからは「センサー設置から分析まで全部行う会社は他にない」との高い評価を得ているそうだ。このほか、在庫管理や発注についてパッケージ化したサービスなどを提供している。

◆共創事例/ドローンの活用

実は、電波は地上から離れた空中で発してはいけない。KDDIは総務省が制定する制度を使って実験を行っているが、制度利用の申請ができるのは、通信キャリアに限られている。このため、ドローンと通信キャリアは密接に関わっている。KDDIでは、ドローンについてもパッケージ化を進め、自社で対応できないところはパートナー企業と協業している。

武内氏は「ドローンにLTEを積んだだけではビジネスにならない。ユーザー目線に立ち、ドローンで何をどうするのか、という話し合いをしている」と述べた。同社ではこれまでに、防災や警備などでドローンを使った実証実験を手がけている。

◆未来のIoTへ、スマートグラスの共同開発が進む

現状、工場パッケージの分析結果などはパソコンやタブレットで確認することになる。しかし、将来は、スマートグラスを通じ、即時的に機械のデータを確認できるようにしたいと語る。同社は既に、スマートグラスを手がけるODG(米国)と協同で開発を進め、IoTの新しいビジネスの創出を目指しているとのことだ。

<セッション>データ分析の進化

最後に、新井宏行氏が、データ分析に関し、主に法人向けの取り組みについて紹介した。

▲ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 データビジネス開拓グループリーダー 新井宏行氏

1998年KDD(現KDDI)に入社。決済システムの運用保守業務に従事。2003年より法人モバイルの位置情報、セキュリティ等のサービス企画を担当。その後、現場のソリューションSE(プリセールス/ポストセールス)を経て、2016年より現部門にてIoTのサービス企画に従事。現在は、データを用いたサービス企画、個別案件を担当。

◆IoTビジネスの進化

IoTビジネスはこれまで、自社内でデータの収集から活用までを行うのが基本だった。しかし、近年は業種を超えた連携が活発化し、複数のデータの掛けあわせなどを実施している。

顧客からは「データをどう使えばいいのか?複数のデータを掛けあわせて活用できないか?そもそもデータ分析はどうするのか?」との声が多く寄せられるという。新井氏はこうした声にソリューションを提供するのはもちろんのこと、パートナーとアライアンスを組み、「多様なサービスをトータルで提供している」と強調した。

◆KDDIが保有するデータ

同社は、最新の店舗の数や立地の情報、地域別の将来人口推定、エリアによる住民の購買特性・金融資産の情報、避難所、事故量、交通量、訪日外国人の動向解析など、非常に幅広いデータを保有している。

これらのデータを組み合わせることで、例えば、より詳細に商圏を把握し、適切な出店計画を立てられるようになる。また、同社はGISでトップクラスのシェアを持つESRIジャパンと簡易分析ツールなどを共同開発し、サービス提供しているとのことだ。

◆キャリアのデータを災害時で活用

商圏の分析のほか、災害時の活用を視野に入れている。例えば、災害時の人口動態をキャリアが持つデータで推定することができる。性別や世代もおおよそ確認できるという。これにより、例えば、混んでいない避難場所を見つけたり、効率的な物資搬送ができるようになる。なお、現在、建設コンサルティングの応用地質、トヨタ自動車と連携し、自治体向けに災害対策の支援システムの提供を目指している。

同システムはKDDIの人口動態データをはじめ、応用地質の各種災害モニタリングセンサーデータ、トヨタ自動車の交通データを掛けあわせ、災害時の交通量の状況などを把握し、次のアクションを起こすための支援をする仕組みだ。

◆人の流れの未来予測

データは基本的には過去のものである。しかし、KDDIでは「人の流れの未来予測」をする技術開発も行っている。例えば、イベント時の人の流れなどを予測するなどが考えられる。新井氏は「これまで以上に、より幅広いデータ利活用が可能になる」と意気込んだ。

<質疑応答>

野口氏、武内氏、新井氏のプレゼンテーションを受け、最後に質疑応答が行われた。会場からは、「IoTのニーズはどこから出るのか」という質問が多く寄せられた。これに対し、武内氏が答え、「センサーやクラウドなど、個別に提案しても反応は薄い。また、それらを組み合わせてIoTいかがですか?という提案も結局はバラバラに映るので受け入れられにくい傾向がある。しかし、パッケージ化されたものを示すことで、お客さまのイメージが具現化され、興味を持ってもらうことが多い」と述べた。なお、KDDIでは10種類前後のパッケージサービスがあるとのことだ。

また、「LPWAを注目しているのは、どんな企業か」との問いに、野口氏が「LPWAは電池で動き、商用電源を持たなくとも長時間動作するので、安全を重視するガス会社などで注目度が高い。農地や山地など電源がとりづらいところでの活用もある。意外なところとしては、観光客が行方不明になったなど、特殊な状況にのみ使用したいとするケースもあった」と答えた。

取材後記

IoTというと、ここ数年の新しい技術とのイメージが強いが、KDDIはM2Mと呼ばれていたころから取り組んでおり、約20年にわたる実績がある。通信という独自の強みを活かしながら、複数のパートナーと連携を果たし、顧客にトータルソリューションなど高い価値を提供している。今後、IoTの活用が「守りから攻め」に変わるにあたり、同社の価値がますます発揮されるだろう。さらにKDDIは未来を見越し、一歩先の取り組みも開始している。IoTに興味がある、ビジネスの創造にチャレンジしたい、と考えるのであれば、KDDIを頼ってみてはどうか。何らかのソリューションやサービス、テクノロジーを手にできるはずだ。

(構成:眞田 幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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