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IBMグローバルチームが見据える、イノベーションの世界的潮流

IBMグローバルチームが見据える、イノベーションの世界的潮流

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日本IBM(以下、IBM)は「IBM Garage」のコンセプトのもと、イノベーション創出支援をスタートさせており、現地法人の枠組みを超え、グローバルの共通課題として取り組んでいる。IBMのGarageサービスが日本国内で本格的に始動したのは2016年5月のことだ。そして、2018年10月には心理的にも物理的にもよりオープンになることを目的として、箱崎事業所(東京都中央区)から銀座GINZA SIXのワークスペース「WeWork」内に移転したという。

▲WeWorkギンザシックス内のIBMスペース

「WeWorkに来てわずかな時間しか経っていないが、日々、大企業やスタートアップとのさまざまな出会いが生み出されている」と、戦略コンサルティング&デザイン統括事業にてGarageサービスをリードしている木村幸太氏が語るように、よりオープンな環境を得たことによって IBMのGarageサービスの進化は、さらにスピードを増しているようだ。

そのIBM Garage内のチームとして、グローバルにソリューションを提供しているのが「Advanced Analytics Center of Competency」(通称:AA CoC)と呼ばれるチームだ。同チームはアナリティクスを専門に扱い、既に多くの企業とパートナーとして共創に取り組む実績を残している。――AA CoCがグローバルにイノベーションを支援する中で、見えてきたことは何か。そして、グローバルではどんなことが起こり、何が求められているのか。AA CoCチームに所属する野村尚氏、黒木俊介氏、上甲昌郎氏の3名にお話を伺った。

▲【写真左から2番目】 日本アイ・ビー・エム株式会社 Advanced Analytics Center of Competency Japan Lead

Associate Partner 野村尚氏

2005年、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現・IBM)に入社し、コンサルタントとして活躍。AA CoCの日本チームに立ち上げ段階で参加している。また、イギリスに留学し、技術経営(MoT)を学んだ経験を持つ。

▲【写真左】 日本アイ・ビー・エム株式会社 Advanced Analytics Center of Competency マネージングコンサルタント 上甲昌郎氏

新卒で日本IBMへ入社。学生時代は機械学習を学び、AIを先駆的に手がけていた同社へと進む。システム開発から戦略コンサルティングまで幅広いプロジェクトに携わった後、この4月にAA CoCに加入する。

▲【写真右から2番目】 日本アイ・ビー・エム株式会社 Advanced Analytics Center of Competency

マネージングコンサルタント 黒木俊介氏

新卒で日本IBMへ入社。AA CoC日本チームに立ち上げの段階で参加。国内外のデータサイエンス関連の案件に携わり、多様な業種でアナリティクスを用いたコンサルティングなどを手がけている。

▲【写真右】 日本アイ・ビー・エム株式会社 戦略コンサルティング&デザイン統括事業

Garage and IBM BlueHub Lead 木村幸太氏

新卒でIBMビジネスコンサルティングサービス(現・IBM)に入社。コンサルタントとしてさまざまなプロジェクトで活躍。現在、同事業部にて、スタートアップのIncubationを支援するIBM BlueHubと、GarageサービスのLeadに着任。

各国の壁を超えたグローバルチーム。

――野村さん・黒木さん・上甲さんの3名は、イノベーション・ガレージ内の「Advanced Analytics Center of Competency」(AA CoC)というチームで活動を展開されています。まずはAA CoCがどんなチームなのか教えていただけますか?

野村氏 : IBM内のグローバルチームだと思ってください。IBMは全世界でビジネスを展開していますが、基本的には各国での事業が主軸になります。一方で、お客様に立ってみると、グローバル企業ならではの情報やソリューションに期待することが多々あります。そこで、グローバルの壁を乗り越え、具体的には人材や情報を各国で共有し合いながら、お客様を支援していくチームがCoCです。

――なるほど。グローバルチームなのですね。

野村氏 : はい。CoCには私たちを含めて各国合計で数百名以上のメンバーが在籍しており、それぞれが得意分野を持っています。私たちは” Advanced Analytics”とある通り、アナリティクスを専門に扱っています。

――各国の専門家が集まって、一つのプロジェクトに取り組むということですか?

野村氏 : そうですね。必要な時に必要な人が集まり、コミュニケーションを取っています。また、AA CoCの大きな特徴は先ほども申し上げたように得意分野を持ったスペシャリストが在籍している点にあります。具体的には、コンサルティング、データサイエンス、エンジニアリングのスキルを持っているメンバーが集まっています。つまり、コンサルタントとして支援し、報告だけして終わりではなく、具体的なモノやサービスを生み出しているのです。

”技術ファースト”ではなく、課題を徹底的に洗い出す。

――それは、お客様から求められるニーズに変化があるということなのでしょうか?

野村氏 : ここ数年、お客様の要望は変化しています。新しいコンセプトを紙に落とすだけではなく、ソフトウエアという形で「動くモノ」を試作することまで求められることがほとんどです。こうした傾向は、USでは5~6年前、日本では2~3年前から始まっています。それも、数週間~2、3カ月といった短期間で成果を生み出したいと言われます。これまでとははっきりとした違いがありますね。

――なるほど。具体的な成果と短期化は、一つの大きな潮流ですね。そのほか、グローバルな観点から感じられる、ここ最近のトレンドがあれば、教えてください。

黒木氏 : ここ数年で、例えばVR/ARやドローンなど多くの新しい技術やプロダクトが生み出されました。一方で、それをどう活かすか、ということについて答えが見えていないケースが増えていると感じます。これまで、技術ばかりに目が向かい過ぎていて、どちらかと言えば、技術指向に陥りがちだったのではないでしょうか。

――新しいプロダクトを生み出して、そこで止まっているということですね。

黒木氏 : はい。技術的に優れたものを生み出しても、お客様の抱える課題を解決できるとは限りません。仮にお客様が「こういうものを作ってほしい」とおっしゃられても、それで本当にお客様の抱える課題を解決できるのか、理想を実現できるのかは別です。また、技術力を駆使して作り上げても、コストに見合うのかという問題もあります。私たちのチームでは、お客様の課題について徹底的に議論します。真に求められているものをあぶり出しているのです。

――IBMグローバルの知見を得ながら、課題をとことん深掘りし、そこからお客様と一体になってソリューションを生み出していくことがCoCというチームの一番の強みと言えそうですね。実際に、”本当の課題”を見つけだした例などはあるでしょうか。

黒木氏 : ある日本のお客様との例があります。もともとは「店舗で海外から来られたお客様とコミュニケーションを取るために翻訳機を作ってほしい」という依頼でした。言葉の壁があるために接客業務がスムーズに進まないということが課題であり、困りごとだったのです。お客様からの言葉をそのまま受け取れば、「いかにして精度の高い翻訳機を作るか」ということになるでしょう。

――確かに、その通りですね。

黒木氏 : しかし、議論を進めていくうちに、真の課題は「いかに短い時間で来店客の要望や疑問に応えられるか」ということだとわかりました。つまり、本質的には高い精度の翻訳機を求めているのではなかったのです。――それならばと、私たちは別のアプローチを取りました。販売員に声をかける前に困り事を調べられるソリューションを短期間で作り、販売員に声をかける際には限られた確認で済むようにしたのです。これなら、来店客との会話は数分になり、大幅な時間短縮だけでなく、来店客にもストレスフリーな体験を提供できるようになります。

課題を見つけ、スピーディーに開発する。

――そのほかに、お客様の本質的な課題を抽出した事例はありますか?

上甲氏 : では、私が担当した事例をお話しさせていただきます。製造業のお客様が、BtoCでいわゆるコト作りに取り組んでいました。モノに付随してロイヤリティを上げるようなアプリを作ることがテーマです。

――なるほど。

上甲氏 : BtoCのアプリを作る場合、課題感を強く持っている顧客、いわゆるアーリーアダプターの声を聞くことが重要です。しかし、それは非常に難しい。自分で自分の明確な課題をきちんと言える人は少ないですよね。これを受け、私たちはアナリティクスを用いて、課題感を持っている顧客を見つけることにチャレンジしました。

――コトづくりを支援するために、アナリティクスを使ったということですね。

上甲氏 : そうです。友人やそのまた友人に聞くなどして、課題感を持っている人をアナログに探していくことを基本としつつ、より科学的なアプローチで課題感を表す代替指標を見つけ、課題感の強い顧客を特定しました。アナリティクスを通じて、より課題感の強い顧客の声を聞くことができるようになり、コトづくりの支援ができたことはやりがいがありました。クライアントからの評価も上々です。今回のプロジェクトではアナリティクスの新しい使い方ができ、私たちにとっても学びのあるプロジェクトでした。

――CoCでプロジェクトを進める上で、これまで行ってきたこととの違いは感じますか。

上甲氏 : 個人的なロールでいうと、これまではお客様にプロジェクトデリバリーすることが中心でしたが、CoCに入り提案活動が多くなりました。その中で、多くのお客様がIBMにグローバルの知見を期待していることを改めて感じています。CoCではグローバルの過去の事例や知見にすぐにアクセスできるので、お客様に提供する価値の質・スピードが格段に上がっています。

野村氏 : 少々繰り返しになりますが、今や即時的な結果を求められることがほとんどです。実際、具体的なモノやサービスに触れ、使ってもらわないことには、本当に課題解決が図られているかわかりません。お客様の期待に応えられるよう動くことが、私たちの義務であり使命だと思っています。

取材後記

ここ数年で、いくつかの先進的な企業は、斬新な技術を世に送り出してきた。技術的な側面から見れば、大きな成果を上げたのだと思う。しかし、その一方で、その技術をどう使うか、どんな課題に対するソリューションになるか、という観点が抜け落ちていた。だから今、グローバルの最先端にいるIBMでは、課題の発見・抽出ということに注力しているのだろう。それも、目の前の課題を深堀することで、真の課題や問題点を見つけようとしている。今後、こうした活動がさらに求められるようになるはずだ。同時に、結果を求めるスピード感についても、大きな変化がある点も見逃せない。課題とスピードということが、共創には欠かせない観点になると考えられる。

 ※IBMが支援するデジタルイノベーション創出について 詳細はこちらから

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:西村法正)

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