ロボティクススタートアップ・TriOrb、シリーズBで28.8億円を調達 量産化と米国展開を加速、累計調達額は42.3億円に
福岡県北九州市発のロボティクススタートアップである株式会社TriOrbは、シリーズBラウンドにおいて第三者割当増資および融資により総額28.8億円の資金調達を実施したと発表した。今回の調達により累計調達額は42.3億円に達する。調達資金は、独自開発する球駆動式360°全方向移動プラットフォーム「TriOrb BASE」のプロダクト化と量産体制の構築、米国市場への本格展開、組織拡大および開発強化に充当される。
同社は「移動プラットフォームで、次世代産業の基盤をつくる」をミッションに掲げ、製造業の自動化や柔軟な生産ライン構築を支える新たな移動インフラの実現を目指している。
実証実験から量産フェーズへ 本格導入に向けた転換点
今回の資金調達における最大のテーマは、これまでのPoC(概念実証)中心の事業フェーズから、市場への本格導入と量産化フェーズへの移行だ。
TriOrbが開発する「TriOrb BASE」は、球体を駆動輪として利用する独自機構を採用しており、従来のAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)が苦手としてきた狭小空間や複雑な動線環境でも高い機動性を発揮する。360度全方向への移動が可能なだけでなく、高精度な位置決め性能も備えており、生産現場における柔軟なレイアウト変更や工程間搬送の自動化を実現する技術として注目を集めている。
同社はすでに基盤ソフトウェアの大幅アップデートを実施し、重量物搬送モデルの製造現場への導入も開始している。今回調達した資金を活用し、量産モデルの設計最適化や品質管理体制の整備、安定供給を実現するサプライチェーン構築を進める方針だ。
デトロイトを拠点に米国市場へ本格進出
TriOrbはグローバル展開も加速させる。
同社は2026年1月、米国ミシガン州デトロイトに拠点を開設した。自動車産業をはじめとする世界有数の製造業集積地である同地域を足掛かりに、米国市場での事業拡大を進める。
米国では人手不足や製造現場の自動化需要が高まっており、生産ラインの柔軟性向上に対するニーズも大きい。TriOrbはこうした市場環境を追い風に、独自技術を活用した新たな搬送ソリューションを展開し、将来的には世界標準となる移動プラットフォームの確立を目指す。
同社は「世界の、未来の、足となる。」をビジョンに掲げており、日本発のロボティクス技術をグローバル市場へ展開する体制づくりを本格化させている。
製造業ネットワークを取り込み経営基盤を強化
今回のラウンドでは、新規投資家として未来創生3号ファンドを運営する スパークス・アセット・マネジメント と みずほキャピタル が参画した。
第三者割当増資には、 東京大学エッジキャピタルパートナーズ 、 三菱UFJキャピタル 、 DRONE FUND 、 国立研究開発法人科学技術振興機構 、 AIST Solutions などが参加。融資については みずほ銀行 と 三菱UFJ銀行 が実施した。
また、スパークス・アセット・マネジメント執行役員の 出路貴規 が新たに社外取締役へ就任。製造業分野における知見やネットワークを経営に取り込むことで、意思決定の高度化と事業成長を後押しする。
さらに、自律走行技術や生産ライン制御システムの開発を担うエンジニアを中心に採用を強化し、組織体制の拡充も進める予定だ。
製造業の課題解決を支える“移動インフラ”へ
代表取締役CEOの 石田秀一 氏は、「私たちは単なる搬送自動化ではなく、『移動』そのものを産業インフラとして再定義し、ものづくりの在り方そのものを変えようとしている」とコメント。PoC段階を終え、本格的な現場導入と量産化に向けたフェーズへ移行することを強調した。
少子高齢化による労働力不足や多品種少量生産への対応が求められるなか、製造現場ではより柔軟で自律的な生産システムへの転換が急務となっている。TriOrbは独自の球駆動技術を核に、工程間搬送や協調搬送システムを実現し、次世代のスマートファクトリーを支える基盤づくりに挑む。
北九州発のディープテックスタートアップが、量産化と米国進出という新たなステージに踏み出した。今回の大型資金調達は、日本発ロボティクス技術のグローバル展開に向けた大きな転換点となりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)