FRONTEOがAI創薬拠点「KIBIT AI Biology Lab」を開設 創薬の最上流を担う体制を本格稼働
株式会社FRONTEOは、AI創薬研究の中核拠点となる「KIBIT AI Biology Lab」を新たに開設した。あわせて、同社が展開するAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」を大幅にアップデートし、創薬バリューチェーンの最上流を担う体制を本格稼働させる。希少疾患やがん領域を中心に、製薬企業へのライセンスアウトを視野に入れた創薬パイプライン拡大を加速する狙いだ。
今回開設された「KIBIT AI Biology Lab」には、数十人規模の研究者やAIエンジニアが所属。AIを活用した「標的分子探索」や「仮説生成」といった、創薬プロセスの起点となる領域を担う。創薬において標的分子の発見は、開発全体の成否を左右する重要工程であり、同社はここにAIを本格投入することで、創薬効率と成功確率の向上を目指す。
AIが創薬プロセス全体を駆動する“共創型エコシステム”
FRONTEOは本拠点を起点に、大学・研究機関・バイオベンチャー・製薬企業を横断した「共創型創薬エコシステム」を本格稼働させる。
具体的には、DDAIFによる新規標的分子候補の探索やドライ実験、仮説検証を出発点とし、東京科学大学や米国オクラホマ大学などとの共同研究を通じたウェット検証、さらには臨床研究へと接続。その後、バイオベンチャーとの研究開発連携を経て、製薬企業への導出までを一気通貫で推進する体制を整備した。
従来、創薬領域では、大学研究・基礎研究・製薬企業の開発が分断されがちだった。一方でFRONTEOは、自社が“創薬プロセスの起点”となることで、継続的にイノベーションが生まれる循環構造の構築を目指す。
すでに複数の製薬企業と導出に向けた協議を進めており、同社は今回の拠点本格稼働によって「非連続的な収益機会」の拡大を狙う。
「論文を読むAI」から「研究データを学習し続けるAI」へ進化
今回の発表における大きなポイントの一つが、DDAIFの進化だ。
これまでDDAIFは、論文などの文献データベース解析を中心としていた。しかし今後は、「KIBIT AI Biology Lab」や共同研究機関で取得したウェット検証データや臨床研究データも解析対象として取り込む。
つまり、単なる“論文解析AI”ではなく、自社研究・共同研究を通じて得られるリアルな研究成果を継続学習するAIへと進化するというわけだ。
同サービスには、FRONTEO独自の自然言語処理AI「KIBIT」が活用されている。KIBITは、教師データや巨大計算資源への依存を抑えながら、高速かつ高精度な解析を実現する“方程式駆動型AI”を特徴としており、日本・米国・欧州・韓国で特許を取得済み。創薬分野では、疾患関連遺伝子ネットワーク解析や標的分子候補の仮説生成に活用されている。
近年のAI創薬市場では、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の活用が加速しているが、FRONTEOは「専門家の意思決定支援」に重点を置く独自アプローチを採用している点が特徴だ。
希少疾患・すい臓がんから、素材・食品分野へも展開視野
FRONTEOは今後、重点領域としてきた希少疾患やすい臓がん領域を軸にしつつ、将来的には素材、食品、化粧品分野などへの応用も視野に入れる。
また、AI創薬研究体制の拡大に向け、将来的な複数拠点化も検討しているという。
同社は2025年以降、「FRONTEO共創型創薬エコシステム」の始動、米Q Partnersとの戦略提携、オクラホマ大学との共同研究、東京科学大学との産学連携拠点開設などを段階的に推進してきた。今回の「KIBIT AI Biology Lab」は、それらを束ねる“中核拠点”として位置付けられる。
FRONTEO代表取締役社長の守本 正宏氏は、「日本の医薬品輸入超過は深刻な経済課題であり、創薬力の強化は喫緊のテーマ」とコメント。その上で、「医薬品産業を自動車・半導体に次ぐ日本の基幹産業として再興させるため、本拠点を起点としたエコシステムをグローバルに展開していく」としている。
AI創薬は、研究期間の短縮や開発コスト削減だけでなく、従来見落とされてきた疾患メカニズムや新規標的分子の発見にも期待が集まる分野だ。FRONTEOの今回の取り組みは、日本発のAI創薬基盤を構築し、産学連携型の創薬エコシステムを拡張していく動きとして注目されそうだ。
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(TOMORUBA編集部)