ハナマルキ×東京電機大学が共同研究で未利用資源「塩こうじ粕」から美容成分を創出
味噌・醸造製品メーカーのハナマルキ株式会社は、東京電機大学との共同研究により、これまで未利用資源とされてきた「塩こうじ粕」から、皮膚の保湿機能に寄与する成分の抽出に成功したと発表した。本成果は、同社の主力商品である「液体塩こうじ」の製造過程で生じる副産物に新たな価値を付与するものであり、アップサイクルの観点からも注目される取り組みである。
未利用資源の活用に向けた産学連携
「塩こうじ粕」は、液体塩こうじの製造工程で発生する副産物であるが、これまで有効活用の手段が確立されていなかった。一方、近年の皮膚科学研究において、皮膚のバリア機能維持に重要な酵素「Caspase-14」を誘導する脂質成分の存在が報告されている。
こうした背景を踏まえ、ハナマルキと東京電機大学は産学連携による共同研究を開始。発酵由来の未利用資源に着目し、塩こうじ粕の中に皮膚機能に有用な成分が含まれている可能性を検証した。
保湿機能に関わる成分を特定
研究の結果、塩こうじ粕から抽出された成分には、肌の保湿や修復に関与する「遊離スフィンゴイド塩基類」が含まれていることが明らかになった。これらは、皮膚のバリア機能を支えるセラミドの基礎構成要素として知られている。
さらに、ヒト表皮角化細胞(HaCaT細胞)を用いた評価では、この抽出成分を添加することで、保湿に関わる酵素「Caspase-14」の発現量が添加量に応じて増加することを確認。皮膚が本来持つ水分保持機能を高める可能性が示唆された。
Caspase-14は、角層において天然保湿因子(NMF)の生成に関与する酵素であり、その活性化は肌の水分保持力やバリア機能の向上に直結する。今回の成果は、発酵副産物由来の成分がこうした生体機能に働きかけることを示した点で意義が大きい。
アップサイクルによる新たな価値創出へ
本研究は、食品製造の過程で生じる副産物を「廃棄物」ではなく「資源」として再定義し、新たな価値を生み出すアップサイクルの好例といえる。これまで活用が難しかった塩こうじ粕が、美容・ヘルスケア領域での機能性素材として転用される可能性が見えてきた。
今後、ハナマルキと東京電機大学は、本成果をもとに新たな商品開発や事業化を視野に入れた検討を進める方針だ。食品と美容という異分野を横断する形で、発酵技術の価値を再定義する動きとしても注目される。
学会発表を通じた社会実装への布石
なお、本研究成果は2026年3月12日に開催された日本農芸化学会2026年度大会にて発表された。発酵粕からの機能性成分抽出と皮膚保湿機構への影響というテーマは、食品科学とライフサイエンスの融合領域として、今後さらなる研究の進展が期待される。
未利用資源の高度活用と、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みは、今後ますます重要性を増していく。今回の成果は、発酵食品メーカーと大学が連携することで、環境価値と機能価値を両立する新たな産業創出の可能性を示したと言えるだろう。
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(TOMORUBA編集部)