【スマートライフイノベーション】 北海道ガスによるアクセラレーター説明会開催!
北海道ガス株式会社(北ガス)は「ガスや電気だけじゃない。エネルギーのその先へ。北海道ガスとともに、540万人へ新しい暮らしと体験を。」をテーマに、アクセラレータープログラム<KITAGAS SMART LIFE ACCELERATOR>を始動させた。(エントリー締切:10/10) 寒冷地ならではのエネルギー需要大都市として、新たなエネルギーのあり方を考え、快適でより良い暮らしを提供するために、オープンイノベーションを行うのが狙いだ。
これに先立ち9月20日、コワーキングスペース「SPACES大手町」(東京都千代田区)で説明会が開かれた。北ガスの担当者がプログラムの詳細を説明したほか、同社がセキュリティ業界最大手であるセコムと綜合警備保障(ALSOK)と手がけた共創事例についてのパネルディスカッションが実施された。会場には数多くのスタートアップが集い、盛り上がりを見せた。
▲上画像は、北ガスポーズ(ロゴ参照)で記念撮影した様子です
エネルギー企業が挑む、スマートライフイノベーション。
説明会の冒頭に、北海道ガス 執行役員エネルギーサービス事業本部長、前谷浩樹氏(下写真)が登壇し、挨拶。「社会が大きく変化する中で、エネルギー会社ができることはたくさんある。一方で、何ができるかという点に気づいていないのが現状」とし、ダイナミックな発想をして行動に移していきたいと明言。「ある意味で、北海道ガスという社名を変更してもいいのではないかと思っている」と、アクセラレータープログラムという新たな挑戦に対しての熱い意気込みを語った。
続いて、エネルギーサービス事業本部スマートエネルギー推進室主任の松森拓東氏(下写真)がプログラムや北海道の特性について説明。北海道は食や観光、体験などの面で大きな魅力を持つ一方で、人口減少、高齢化、過疎化などの全国的な課題がより早く深刻化することを指摘した。特に、北海道の人口減少は全国に比べても著しく、現在約540万人の人口は、2045年には約400万人へと縮小すると予測されている。全国と比較して社会課題の進行スピードが早いということは、逆説的にとらえれば「ビジネスチャンスがとても大きい」と松森氏は強調した。
一方、北海道の歴史は約150年と国内では新しく、好奇心旺盛でこれまでにないことにも取り組みやすい風土がある。さらに現在札幌は2030年の冬季オリンピック・パラリンピック招致に向けて動き始めており、同時に北海道新幹線の札幌延伸というプロジェクトも進行している。「2030年」という区切りに向けて、北海道は経済的にも注目を集めている。以上を踏まえ、松森氏は、「全国的な課題解決の実証地に北海道は最適である」と語っている。
また、同社は売上1035億円、従業員700人で「中小企業の規模」であるとし、そのため、「スピード感を持って先進的事業に取り組める」と話した。松森氏は9月に発生した北海道胆振東部地震にも触れ、「全道の停電を目の当たりにして、自分の力が及ばないことを痛感した。再び災害が起こることを想定し、その時、自分たちに何ができるかを真剣に考えたい」と熱弁を振るった。
なお、プログラムは以下の3分野で募集が行われ、採択数に上限はなく、良い案は積極的に採用すると伝えられた。選考基準としては、「革新性(新たなニーズを創出できるか)、社会意義(社会に貢献することができるか)、市場性(将来にわたり市場が存在するか)、話題性(社内外においてガス会社としてのイメージを変革できるか)、チーム(一緒に取り組みたいと思える企業か)」などが提示された。
募集テーマの中でも特に重点的に説明されたのはエネルギーマネジメントシステム「EMINEL」についてだ。寒冷地である北海道は全国に比べて一世帯あたり約3倍のエネルギーが暖房に消費されている。そうした社会課題を背景に、環境省と3年間の実証実験を経て2018年10月からスタートするのが「EMINEL」である。契約した家庭に新開発したマルチセンサーを導入し、温度・湿度・照度・人感の4つの住環境データを計測。合わせてタブレットなどで操作できるEMINELアプリで暖房スケジュール設定や省エネのアドバイスが受けられるというものだ。
今回のプログラムを通じ、「EMINEL」で得られる設定温度やガス・電気使用量、家族構成などの各種データを提供することが可能だという。例えば、ウエアラブル端末と融合させた新しいヘルスケアサービス、人感センサーを応用した宅配業者との事業連携といったことも視野に入れている。プログラムテーマや提供できるリソースについては下記およびプログラム詳細ページをご覧いただきたい。
<募集テーマ>
①北海道ガスのHEMS「EMINEL」(※)のプラットフォームや収集データを活用した新たなサービスの創出
※EMINEL(エミネル)は同社独自の家庭用エネルギーマネジメントシステム
②次代のエネルギー活用と、新たなエネルギーシステムの構築
③エネルギー事業の枠を超えたゼロベースからの事業創出
<提供リソース>
①豊富な顧客基盤・データ
②「EMINEL」プラットフォームの活用・実証実験
③住環境データ(住環境マルチセンサーによるリアルな宅内データ)
④東京都内での活動拠点(都内コワーキングスペースでの商談/ミーティング)
⑤実証実験の推進(省庁・自治体の連携検討、ガス供給基地・発電所等のエネルギー供給施設)
⑥販促活動場所(ショールーム、クッキングスクール等)
⑦グループ各社との連携
また、上記提供リソースの④にあるように、アクセラレータープログラムの事務局メンバーは10月1日から東京に常駐する。松森氏を含めた複数名のメンバーが銀座のWeWorkに拠点を構え、商談やミーティングを実施することができ、意思決定の迅速化を図ることも伝えられた。また、北ガスは、2018年4月に創設した公式野球部を含め、「提供できるリソースは全て提供していきたい」と話す松森氏。
そして、「私たち自身が気づいていないリソースがあるかもしれません。共創パートナーとのコミュニケーションの中で、そうしたリソースも発掘し、新しい価値を生み出していきたい。人々の暮らしに関わり、あらゆる共創可能性のあるスタートアップに応募してほしい」と語った。
セキュリティ業界最大手2社との提携はどのように進められたか?
続いて、パネルディスカッション「北ガス×セコム・ALSOK 共創事例~北海道ガスアセットを活用した事業開発の裏側を大公開!~」が行われた。3社は知見やノウハウを組み合わせた新たなサービスの開発を目的として提携を推進。10月からは北ガスのエネルギーマネジメントシステム「EMINEL」(エミネル)で「かけつけサービス」(※)を提供する。セコム・小泉氏、ALSOK・菅原氏の2名が登壇し、北ガス・稲垣氏がモデレーターを務めた。
※かけつけサービス……外出先で人感検知に不安を感じた際に、お客様から警備会社へ出動要請ができるサービス。
【写真中】 セコム株式会社 企画部 小泉英之氏
【写真左】 綜合警備保障株式会社(ALSOK) 営業部 菅原貴志氏
【写真右】 北海道ガス株式会社 エネルギー企画部 エネルギー企画グループ課長 稲垣利陽氏/モデレーター
北ガス・稲垣氏 : まずサービスについて簡単に紹介します。私たちが提供するEMINELのマルチセンサーには人感検知器が搭載されており、スマートフォンと連動されています。そこで、EMINELのオプションプランとして「かけつけサービス」を企画し、業界最大手のセコムさん、ALSOKさんと提携を実施しました。
――この共創に至った背景は、エネルギー業界の大きな変化があります。エネルギー以外にどのような付加価値を提供できるかということが、当社内では2015年の後半から議論されていました。その中の一つで、人感検知知機能と警備会社のサービスを組み合わせて何かできないかということを2017年から考え始めていたんです。当社は、全道でサービスを提供したいという思いがあったので、全道展開している2社に声をかけさせていただきました。
ALSOK・菅原氏 : 我々としては大きな話だと感じましたので、前向きに取り組もうと考えました。
セコム・小泉氏 : 緊急対処員によるかけつけは警備会社の最大の財産です。それを安価で利用できるかけつけサービスを提供するには社内で検討時間が必要でした。
北ガス・稲垣氏 :サービスのリリースについては2018年10月と期限を区切っていたので、EMINELの技術情報を2017年の12月には開示しています。その後、詳細な打ち合わせを進めましたが、大きな障壁となったのが警備に関する規制でした。
セコム・小泉氏 : そうですね、規制についてはやはり大きな壁でした。例えば、警備業法というのがあり、警備業務は警備会社にしか提供できないというルールになっています。しかし、北ガスさんは警備会社ではありません。その中で、どうサービスを提供していくか。解決策としては、お客様はEMINELのサービスを北ガスさんと契約し、かけつけサービスについては当社もしくはALSOKさんと契約するということにしました。そうすると、付随してさまざまな課題が出てくるのですが、その一つ一つに対応していきました。
北ガス・稲垣氏 : 最終的には両社に同じ料金を設定していただき、お客様に選んでいただけるようになっています。そうした形にできたのは、当社としてはとても良いことでした。普及も加速度的に進められると考えています。
セコム・小泉氏 : 現在、IoTなど新しい技術や機器が多く生まれています。スマートホームやAIスピーカーが流行るなかで、警備会社はどのように適応していくかは非常に重要です。その意味で、当社が持ちえないライフデータなどを豊富に持ち、EMINELを提供する北ガスさんと将来を見据えた協業ができたことは財産だと思っています。
ALSOK・菅原氏 : これからの商品、サービスの拡大を考えた場合、エンドユーザー様の満足度を上げることは必要不可欠です。北ガスさんと同じ目的を持ち提携できたのは本当に大きく、当社の代表もとても喜んでいます。正直、2社の協業から、ライバル会社含めた3社との協業になり、社内の状況は大きく変わりました。ただ、思いは一つですので、変に出過ぎないようにし、共創がうまくいよう動きましたね。
北ガス・稲垣氏 : 当社が共創できたのは、お2人に会えたからだと思っています。良い出会いが新しい価値を創造するのだと、実感できた共創でした。
取材後記
北ガス・松森氏は、北海道は魅力あふれる土地であると同時に、国内の課題先進地域だと紹介した。このため、北海道で成功したものは、全国へ広まっていく可能性が高いことを示した。加えて、新しいもの好きの土地柄があり、イノベーションも起こしやすいという。事実、北ガスはセコム・ALSOK以外にも、地場企業や自治体との共創に積極的に取り組んでいる。
さらに北ガスは、事業内容からは想像しづらいが、規模としては中小企業であり、大企業に比べスピード感も柔軟性もあるということだ。そして、北ガスが蓄積している多くのライフデータも魅力的だ。――<KITAGAS SMART LIFE ACCELERATOR>に少しでも興味を持ったのなら、ぜひご応募いただきたい。
※<KITAGAS SMART LIFE ACCELERATOR>の詳細やエントリー方法については、コチラをご覧ください。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)