市民のドラレコ映像を行政活用するプラットフォームを展開するセトラス、ドラレコ映像と暗号通貨を組み合わせた新モデルを始動
ドラレコ映像を行政の防犯・防災に活用するプラットフォーム「CETRAS」を展開する株式会社セトラスは、市民が日常的に撮影するドライブレコーダー映像を活用し、行政の道路保全や防犯・防災業務を支援する新たな市民参加型プロジェクトを開始した。特徴は、映像提供という「市民によるDX支援」で生まれた行政側の信用を暗号通貨に紐づけ、市民へ還元する点にある。地方自治体が抱える財政制約と人手不足という課題に対し、持続可能なCivic Techモデルの構築を目指す。
Civic Techが直面してきた「インセンティブ不足」という壁
これまでCivic Techは、市民と行政が協働して地域課題に取り組む仕組みとして注目されてきた。一方で、多くのプロジェクトが継続できずに終わってきた背景には、市民側へのインセンティブ不足という構造的課題があったという。
市民が担うデータ収集は一つひとつの負担は小さくても、時間や費用の積み重ねによる負担感は大きい。行政側は業務効率化という恩恵を受ける一方、市民が十分な見返りを得られない状態が続くと、やがて参加者が離脱し、データが集まらなくなる。こうした「価値の不均衡」がCivic Techにおける失敗の本質だ。
行政で生まれる「信用」を市民へ還元するGARコイン
この課題に対し、セトラスが提示する解が、行政支援報酬暗号通貨「GARコイン(Government Assistance Reward Coin)」。
従来の暗号通貨が「将来の期待」に信用を依存してきたのに対し、GARコインは行政が市民データを活用することで“すでに生まれた信用”に裏付けられて発行される点が特徴だ。行政によるデータ活用で生じた信用の総量と、発行される暗号通貨の総量を一致させることで、通貨価値の安定性を担保する仕組みとなっている。
これにより、行政が市民データを無償で利用する「フリーライド状態」を解消し、市民へ適切な価値還元を可能にする。
財政難の自治体でもDXを進めるための実証実験へ
セトラスは本モデルの有効性を検証するため、実証実験に協力する自治体を募集している。対象は、財政難や人口減少に課題意識を持つ地方自治体、面積が広くインフラ管理負担の大きい自治体、新たな取り組みを模索する自治体などだ。
日常生活で撮影された映像のうち、行政が必要とするもののみを提供し、その対価が暗号通貨として市民に戻る仕組みが機能すれば、行政の業務効率化と市民の資産形成を同時に実現できる可能性がある。
人口減少時代の新しい社会参加モデルを目指して
人口減少と高齢化が進む中、CETRASは「データ提供者」という新たな社会的役割を提示する。高齢者であっても日常の行動が地域を支え、その価値が正当に評価・還元される仕組みをつくることで、地域内の経済循環を生み出す――。
持続可能な地域社会の構築が求められる今、行政DXと市民参加を両立させるこの試みは、地方創生の新たな選択肢として注目されそうだ。
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)