
ミズノ発スタートアップDIFF.が資金調達、糖尿病患者向け3Dプリントシューズで新市場開拓へ――
「足が喜ぶ、あしたをつくる。」を掲げるスタートアップ、株式会社DIFF.が、糖尿病患者向けの3Dプリントシューズ事業「DIFF.3D」を新たにスタートする。池田泉州キャピタルおよびライトアップベンチャーズから総額4,500万円の資金調達を実施し、既存事業である「片方ずつシューズを買えるサービス『DIFF.ONE』」に加えて医療分野に本格参入する。
糖尿病性足潰瘍──“がんと同等以上”の死亡率に挑む
糖尿病患者が直面する深刻な合併症のひとつが、足の潰瘍や切断である。世界の糖尿病人口は2045年には7億人に達するとされ(※1)、神経障害や血流障害によって足にできた小さな傷が悪化し、切断に至るケースも少なくない。その5年後の死亡率は、がんよりも高いとされている(※2)。
そうした現実に立ち向かうべく、DIFF.は3Dプリント技術を活用し、患者一人ひとりの足に最適化されたシューズを提供する「DIFF.3D」を始動。医療機関や義肢装具士、整形靴職人との連携を図りながら、2025年内の実用化を目指している。
足元から変える、靴業界の当たり前
DIFF.は2022年にミズノ出身のシューズエンジニア・清水雄一氏によって創業。「DIFF.ONE」では、足のサイズに左右差がある人や、片足のみ必要とする人向けに“片足単位でシューズを購入できる”仕組みを提供している。従来の“両足セット”という靴の流通慣習に一石を投じるサービスであり、オーダーメイドよりも手頃な価格帯で個別最適化を実現してきた。
新たに立ち上がる「DIFF.3D」は、さらに一歩踏み込んだ形でこの思想を具現化するものだ。3Dスキャンや医療データを活用し、より精密に足の形状と健康状態に合わせたシューズを製造する。製造方法も金型不要の3Dプリントを用いることで、従来の大量生産の制約を超え、真に“その人のための一足”を提供できる体制を整えていく。
「共創」で広がる価値、そして未来へ
DIFF.の強みは、単なる技術やプロダクトの開発にとどまらず、多様なステークホルダーとの“共創”を事業の軸に据えている点にある。患者、医療従事者、義肢装具士、メーカー、小売店――足元の課題に向き合うあらゆる関係者と協働し、「誰もが自分に合った靴を履ける社会」の実現を目指している。
今回の出資にあたって、池田泉州キャピタルの武川敏也氏は「DIFF.の歩みは、関西発の大企業スタートアップの成功事例として期待できる」と述べ、SDGs目標③「すべての人に健康と福祉を」に資する社会的意義を強調している。
また、ライトアップベンチャーズの中村忠嗣氏も、3Dプリントを活用したシューズの個別最適化における可能性を高く評価。「足の健康を守る」という新たなテーマのもと、追加出資を決断した。
革新的な靴の開発とともに、「靴を通じて当たり前を変える」──そんな未来に挑むスタートアップの動向から目が離せない。
(※1)International Diabetes Federation. IDF Diabetes Atlas, 10th edition. 2021.
(※2)J Foot Ankle Res. 2020 Mar 24;13(1):16.
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)