3Dプリント義足事業を展開するインスタリムが、シリーズAラウンドで2.4億円の資金調達を実施
3Dプリンティングおよび機械学習(AI)技術を活用して、世界初となる3Dプリント義足を海外で製造販売するインスタリム株式会社は、インクルージョン・ジャパン株式会社、Mistletoe Japan合同会社、株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ、三菱UFJキャピタル株式会社、および株式会社ディープコアの計5社を引受先とする第三者割当増資を実施し、シリーズAラウンドとなる総額2.4億円の資金調達を完了した。
▲上写真:同社が販売する下腿義足(写真左2本)および大腿義足(右2本)
今回の資金調達を通じて、フィリピン事業の全国展開や、更なる海外事業展開の実現を目指すとともに、Afterコロナに対応した完全非対面での義足製造販売システムの開発を進めていくという。
同社の事業概要
同社は、従来の約10分の1以下となる低価格・短納期の3Dプリント義足をフィリピンで製造販売する日本発のスタートアップ。
義足は、一人一人の体に合わせて医学的に最適な形状を手作りする必要があるため、義肢装具士の医学知識と技術力が必要で、通常の品質のものでも1本あたり30~100万円と高価であり、また納期に通常1ヶ月程度を要していた。
そのため、糖尿病性壊疽などの血管疾患や交通事故などで脚の一部を無くしたにもかかわらず義足を購入できない人が、未だ世界に4,000万人以上(※1)も存在すると言われている。
特に、障害者への社会的支援が不十分な開発途上国においては、義足を購入できない人は仕事に就くなどの社会参画が著しく困難となっており、深刻な社会課題となっている。
(※1)世界の四肢切断者が全世界で6,500万人の”義足=約70%”をかけた数字である4,550万人に、国連レポートの”現在(義足など)アシスティブ・デバイスにアクセスできるのは10人に1人”より、90%をかけた4095万人を、「脚の一部を無くしたにもかかわらず義足を購入できない人」とした。
このような社会課題を解決するために、同社は3DプリンティングおよびAI技術を活用した新しいデジタル製造ソリューションを開発し、従来の約10分の1水準となる低価格・短納期の3Dプリント義足を、2019年よりフィリピンにて製造販売している。
新型コロナウイルスの影響で現地の移動制限や経済状態悪化が続く中でも、すでに400名以上のユーザーに好評で、1,600名以上の人が同社の義足提供を待つ状態(※2)となっている。
(※2)2021年8月現在の、同社が収集するウェイティングリストに掲載される患者の数。
今回の資金調達の目的
同社は、今回の資金調達、および先般採択された経済産業省による事業再構築補助金(卒業枠:1.0億円)や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による課題解決型福祉用具実用化開発支援事業(0.5億円)などの各種支援を通じて、以下のような事業展開を行う予定。
1)フィリピン事業の全国展開の実現
現在首都圏に限定されている販売網を地方都市において複数拠点化。また、現地製造販売体制の強化やマーケティング施策を通じたグロースの実現
2)サブスクリプション販売の開始
より多くの層が義足を購入して仕事に就けるように、初期出費を抑えた新販売形式の開始
3)更なる海外展開
フィリピンで検証した事業モデルに基づき、次なる展開国(インドを予定)で事業開始
4)完全非対面での義足製造販売システムの開発完了・実装
測定、試着、製品提供までを非対面・リモートで対応する装置やアプリなどの開発完了と実装
同社は、「必要とするすべての人が、義肢装具を手に入れられる世界をつくる」というビジョンの実現に向けて、日本発のグローバルスタートアップ、SDGsスタートアップとして上記社会課題の解決を目指していくという。
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