
再生可能エネルギー時代を支える新事業――三井不動産が「エネルギー・リソース・アグリゲーション事業」の実証実験を開始
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの主力電源化が進む中、電力の需給バランスを維持することが大きな課題となっている。こうした背景のもと、三井不動産株式会社は、不動産アセットが持つ分散型エネルギーリソースを統合管理・制御し、調整力として市場に提供する「エネルギー・リソース・アグリゲーション事業」に乗り出した。2025年冬、柏の葉スマートシティを舞台に、業界初の実証実験が開始される。
エネルギー・リソース・アグリゲーション事業とは何か
本事業は、建物内の空調機器、給湯器、発電機、蓄電池、EV充電器などの分散型エネルギーリソースを統合し、一つの仮想的なエネルギー資源として管理・運用する仕組みである。これにより、電力の需給バランスの確保に貢献し、再生可能エネルギーの活用をより柔軟に行うことが可能となる。
電力の安定供給には、供給量と需要量のバランスを常に一致させることが不可欠である。バランスが崩れると、電力の周波数が乱れ、大規模停電につながる可能性がある。需給調整市場は、このバランスを取るために必要な「調整力」を調達する市場として2021年に創設され、2024年度から本格運用が開始された。
業界初の挑戦――不動産アセットの活用
三井不動産は、自社の保有・管理する不動産アセットが持つエネルギーリソースを統合管理し、需給調整市場に調整力を提供することで、電力の安定化に貢献する。これまで需給調整の手段としては蓄電池の活用が一般的だったが、建物内のあらゆるエネルギー機器を統合的に制御することで、より効率的な調整力の創出が可能となる。
本実証実験では、三井不動産を中心に、ダイキン工業、エクセルギー・パワー・システムズ、Yanekara、Shizen Connectといった企業が連携し、技術開発と市場運用の検証を進める。具体的には、以下の3ステップで実証実験を実施する。
制御実証:分散型エネルギーリソース機器の調整力を詳細に分析
市場投入実証:需給調整市場の模擬指示に応じた制御の達成度を評価
市場運用実証:実際の市場運用を想定し、事業の経済性を検証
オープンイノベーションによる新たなエネルギー産業の創造
今回の実証実験の特徴は、公民学連携によるオープンイノベーションを活用し、持続可能なエネルギー社会を実現する点にある。柏の葉スマートシティを舞台に、各社の先端技術を組み合わせ、エネルギーリソースの最適な活用方法を探る。

ダイキン工業:「DK-CONNECT」を活用し、業務用空調機器の制御による調整力を検証
エクセルギー・パワー・システムズ:「エクセルギー電池®」とEMS(エネルギー・マネジメント・システム)を活用した蓄電池と発電機の制御を検証
Yanekara:「YaneCube®」を活用し、EV充放電器の制御による調整力の創出を検証
Shizen Connect:分散型エネルギーリソースの統合システム構築に向けた環境整備を担当
本事業は、単なる電力調整の取り組みにとどまらず、新たなエネルギー産業の創造を視野に入れたものである。電力の安定供給と再生可能エネルギーの普及を両立させるこの挑戦は、日本のエネルギー政策にとっても重要な一歩となる。三井不動産は、今後もパートナー企業と共に事業を進化させ、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強化していく考えだ。
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(TOMORUBA編集部)