住友商事＆セイノー、千葉県でAAM物流の実証実験—ドライバー不足対策と災害時輸送の可能性を検証

住友商事株式会社とセイノーホールディングス株式会社は2025年2月20日、千葉県内でAdvanced Air Mobility（AAM）の社会実装を見据えた物流実証実験を実施した。本実証では、ヘリコプターを仮想AAMとして活用し、通常時の物流効率化と災害時の緊急輸送の有効性を検証する。物流業界が抱える課題の解決に向け、新たな輸送ネットワーク構築の可能性を探った。

物流業界の課題とAAMの可能性

近年、日本の物流業界は「2024年問題」に象徴されるドライバー不足や輸送コストの増加といった課題に直面している。特に過疎地域や長距離輸送の効率化は喫緊の課題であり、加えて地震や豪雨などの災害発生時には迅速な物資輸送の確保が求められる。住友商事とセイノーHDは、これらの課題に対応するため、AAMとトラック輸送を組み合わせた新たな物流モデルの開発に取り組んできた。

西濃運輸の配送データを用いたシミュレーションでは、千葉県南エリアにおいて年間約1億円のコスト削減とドライバー5人分の人員負担軽減が可能であることが示唆された。本実証では、シミュレーションだけでは見えない実運用上の課題を明確にするため、実際にヘリコプターを活用した輸送フローの検証を行った。

実証実験の概要

本実証は、木更津市・袖ヶ浦市・鴨川市・勝浦市の4地域で行われ、以下の点について検証が行われた。

• 通常時の貨物輸送：勝浦ルートでは、商店街向けの商品（1パレット／200キログラム相当）を輸送。トラック輸送が非効率な地域でのAAM代替輸送の可能性を検討した。

• 災害時の緊急輸送：鴨川ルートでは、食料・飲料水・簡易トイレ・粉ミルク・おむつなどの支援物資を輸送。災害発生時の迅速な物資輸送手段としての有効性を検証した。

• 運航コスト・輸送効率のデータ収集：ヘリコプター輸送の実運用データを収集し、今後のAAM導入に向けた課題を整理した。

本実証には、住友商事（プロジェクト統括）、セイノーHD（物流オペレーション）、朝日航洋（ヘリコプター輸送）、安房運輸・Mobilco（ラストワンマイル輸送）など、多くの企業が参加。また、袖ヶ浦フォレスト・レースウェイや日本航空学園、鴨川市などの自治体・施設が協力し、実験環境を整えた。

AAM物流の導入により、長距離トラック輸送の一部を空輸に置き換えることで、輸送時間の短縮と人員負担の軽減が期待される。さらに、AAMの離発着場を物流ハブとして活用することで、平時の配送効率向上と災害時の緊急輸送拠点の機能を担う「フェーズフリーモデル」の構築が可能となる。

将来的には、量子技術を活用したAAMのリアルタイム制御や、荷積み作業の自動化を導入し、さらなる効率化を目指す。また、AAMの社会実装に向けて、自治体や企業間の連携を強化し、安全かつ持続可能な物流ネットワークの構築を推進していく方針だ。

関連リンク：千葉県でAdvanced Air Mobility（AAM）の物流実証実験を実施 | 住友商事

（TOMORUBA編集部）